涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki内検索 / 「6・移動」で検索した結果

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  • アル雨ノ日ノコト
    「いつまで続くんだよ…」 俺はいつもの部室で、ぼんやりと空を眺めていた。 ありふれた風景のはずなのに、ありふれた日常は消えていた。 ほかのSOS団員は何をしているんだ? 窓の外はバシャバシャと音を立てて、雲の涙のように液体が降り注いでいる。 あいつらは、この雨にまぎれて…地面に落ちて…蒸発してしまったのだろうか? 長門、朝比奈さん、古泉、それに…ハルヒ。 ――――誰も、やってこない。 放課後の楽しみ、そんなものが、ここには詰まっていたのに。 先週の水曜日から、揃って学校に来ない4人。ちょうど一週間が経つ。 なぜ?なぜだ?このまま退学して、自宅警備員として生きるつもりか? 俺は、今日の部活動が終わったら何をしようか、と考えていた。 だけど、思いつかないものは思いつかない。 今日はまだ水曜だ。土曜になっても誰も来なかったら、 長門の家にでも行こう。あいつなら、何か知っているはずだ。 そし...
  • 2人の不思議探索
    薄暗いダンジョンで無数の怪物に囲まれている僕と長門さん。 …僕達は生きて戻れるのでしょうか…。 …。 …。 状況が飲み込めませんか? OKです。 では今回の事を最初から振り返ってみましょう。 …。 …。 …。 あの惨劇(覚醒のおまけ参照)から一週間近くたった。 幸い死者は出ずまた普段の生活を送れるようになりました。 …三途の川渡りかけましたけどね…。 …。 今日は土曜日、恒例の不思議探索の日、いつも通り彼の奢りでコーヒーを飲み、これまたいつも通り爪楊枝を使い組み分けが行われた。 最初は彼とのペアでした。 特に何もなく終わりました。 そして2回目の組み分け…印有りですか。 さて、僕のパートナーは…。 見ると長門さんの持つ爪楊枝に印があった…彼女ですか。 …そんな訳で僕は今長門さんと2人、肩を並べて歩いている。 …実は最近…前回死にかけた時から謎の記憶が僕の頭をよぎっていた。 断片的な記憶...
  • 規定事項の子守唄 第六話
     涼宮さんのつぎは、古泉くんの番でした。  もっとも、大泣きしたためのメイク直しなどもあったので、すぐにというわけにはいきませんでした。  やっと準備がととのい、涼宮さんがでていったのは、予定よりも大幅に時間が超過してからでした。彼女とほとんど入れちがいという感じで、古泉くんが部室にはいってきました。 「やあ、なにやらお取りこみだったようですね、朝比奈さん」 「す、すみません、お待たせしちゃって」  タイミングの早さから考えて、古泉くんは、部室のすぐそばで待機していたのでしょう。それも、予定の時刻からずっとにちがいありません。わたしは、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。 「えっと……。まずは、これをどうぞ。卒業記念の贈り物です」  とりあえず、例のぬいぐるみをわたすことにしました。男子がふたりいて、両方ともブレザーでは芸がないので、古泉くんのは体操着姿のものでした。 「おや、これ...
  • 戦慄の肉じゃが
    俺達(俺、朝比奈さん、古泉)は今、長門の部屋に居る。 俺達は長門の手料理を振る舞われる事になった。 …状況が飲み込めない? OK、説明しよう。少し長くなるが勘弁してもらいたい。 今日は日曜日。午前中からSOS団恒例の不思議探索があった。 ただいつもと違うのはハルヒが弁当を持って来てみんなに振る舞ったという事だ。 本人いわく 「団員の日頃の苦労を労うため」 との事。 みんなからの賞賛の声を聞き調子にのったハルヒの言葉によりこの事態が起こった。 「料理の出来ない女は駄目。」 「缶入りのカレーを温めただけで料理した気になっている馬鹿女が居る。」 …このような事を言い出したのだ。 ハルヒが言っているのは俺達のクラスの女の事であり、俺も実際耳にしている。 だがハルヒは知らなかった。 今この場にもそれに当てはまる人物が居る事を…。 長門有希 ハルヒは長門に対して言った訳では無い。それは本人にも分かって...
  • 規定事項の子守唄 プロローグ
     みなさん、こんにちは。……もしかしたら、こんばんはでしょうか? それとも、おはようございますかな?  うーん、挨拶はなんでもよかったですね。失礼しました、朝比奈みくるです。今日はすこし、わたしのことをお話しようかと思います。  ええ、みなさんもご存知のとおり、わたしは鶴屋さんと同学年で、涼宮さんたちから見たらひとつ先輩になります。だから、SOS団のみんなとは、一年はやくお別れということになってしまいました。  もともと、見習い時間駐在員としてのわたしの仕事は北高卒業までで、以降はとりあえず自分の時代に帰還することが決まっていました。そのごどうなるかは未定で、努力次第で出世していくかもしれないし、あんまりかわらないかもしれない、現状はそんな感じです。  わたしが、涼宮さんの監視任務というものすごく重要な仕事の一端をまかされた理由は、いろいろあろうかと思います。『あろうかと思います』なん...
  • Different World's Inhabitants YUKI~ニチヨウビ(その七)~
        今、俺の前には2人の長門有希がいる。 2人は、何もかもが一緒でまったく見分けが・・・いや、1つだけ違うところがあった。 今さっき玄関から入ってきた長門は、眼鏡をかけている。 つまり、普段は眼鏡をかけていない宇宙人長門が、眼鏡をかけていて、普段は眼鏡をかけている普通人長門が、今は眼鏡をかけていないというわけだ。 ああ、ややこしい・・・・・・。   俺は、2人の長門の顔を見比べた。   眼鏡っ娘長門は、あいかわらず、雪解け水のような冷たい無表情をしている。昔は、液体窒素ぐらいだったな。それに比べると、だいぶ暖かくなったもんだよ。   一方、さっきまで、俺と行動を共にしていた方の長門はというと、俺と目があうと、すぐに目をそらした。そればかりか全身から、こっちを見んな的なオーラを発している。 何だ?やっぱり、さっきの事を気にしているのか?   俺自身も、さっきのタイミングで何故あ...
  • 涼宮ハルヒの抹消 第八章
     部室まで戻ったところで橘京子に、ここに超空間が発生していますと説明された。俺がそうかと適当に答えると橘京子は意外そうな顔をしたが、やがて黙ってドアノブに手をかけた。  感触を確かめるように少し回してから、後ろの俺を振り返る。 「では、少しの間目をつむっていて下さい。超空間に入ります」  俺が指示されたとおり目を閉じると、橘京子が俺の手を握った。ほのかな体温が伝わってくる。  その手に引かれて俺は一歩を踏み出した。痛くもかゆくもない。普通にドアを開ける効果音がして、そのまま部室に入っただけに思えたが――。 「これはこれは」  古泉の声で俺は目を開けた。握っていたはずの橘京子の手がいつの間にかなくなっていた。  俺が視線を自分の手から上昇させていくと、そこはただの部室でなかった。ああ、とか何とか声を洩らしたね。見たことのある光景だったからだ。  部屋の中のすべてが、クリーム...
  • B級ドラマ~涼宮ハルヒの別れ~
     キョンが近くからいなくなる。そんな知らせを聞いたのはもう一週間前。 「みんな、悪いな。俺はこっちの大学受からなかったから一つ隣りの県だ」  その言葉を聞いた時、あたしは言葉を失った。キョンと毎日のように会えなくなる。今まで当たり前のようにしてた会話が出来なくなる。  せっかく言えると思ったのに。あの日からずっと我慢してたのに。  そんな言葉も言えなくなった。 「ふーん。そう。簡単に帰ってこないように頑張りなさいよ」  どうしてもこんな言葉しか出ない。あたしは最低。 「あぁ。ありがとな、ハルヒ」  皮肉をお礼で返されてさらに心が痛くなる。キョンは「来週には出発するから」と言葉を発した。  もうヤダ。いなくなるまでみんなと会わない。悲しい。嫌だ。行かないでよ。  あたしの決意はなんだったのよ。……何が送別会よ。絶対行かないんだから。 「あたし体調悪いから帰るわ」  とりあえずみんなほっといて...
  • SOS団プレゼンツ 第一回 涼宮ハルヒ争奪戦 ―キョンの最終試練―
    …なんだ、何が起こった?どうして俺は閉鎖空間にいるんだ?古泉お前のドッキリ企画か頼むから止めてくれ… ―古泉!?どこにいる古泉!?隠れても無駄だ出てこい! 『―彼ならここに招待しなかった。お前にしか用はないからな』 瞬間、空が震えた。今気付いたが、ハルヒが作り出した閉鎖空間よりも暗い。 そして、『彼』の声によるものだと気づくまで少々の時間を要した。 …どこにいるんだお前は!?古泉は?長門は?朝比奈さんは?どこだ!! 『彼らは元の世界で何も変わらず過ごしているよ。お前が居なくなって驚いているかも知れないがな』 …何で俺だけこの世界に呼び出した! 『お前は知っているのではないか?この世界がどのような世界なのか?』 この世界・・・この空間は、ハルヒが無意識下のストレスを発散させるために用意され、そして赤い玉をした超能力者に破壊されるかりそめの空間。ハルヒの不満が大きくなればなるほど拡大し、つ...
  • 小指ハードヒット症候群
    (部室)   ガチャ   キョン「あれ、ハルヒ、お前しかいないのか」   ハルヒ「そうよ、みんな用事があるんですって」   キョン「ふーん」   ハルヒ「ふーん、で済む問題じゃないのよ?」   キョン「どうした? えらく不機嫌だな」   ハルヒ「当り前じゃない! SOS団の活動は何よりも最優先すべきものなのよ!」   キョン「それは個人個人の事情があるんだから仕方ないんじゃないのか?」   ハルヒ「仕方なく無いわよ、大体アンタはこのSOS団のt」ゴリッ   ハルヒ「ぁ、ぅ」バタ   キョン「お、おい大丈夫か」   ハルヒ「いだい……」       ハルヒ「うー……」ウルウル   キョン「大丈b」   ハルヒ「んなわけないでしょ! 無茶苦茶痛いわよ!」ポロポロ   キョン「小指を思い切り打ったな……痛そうな音もしたもんな」   ハルヒ「アンタの想像以上の痛さよ……」   キョン「とり...
  • 涼宮ハルヒの戦場 その2
     前線基地に向かうトラックを激しい爆発音が揺さぶる。突入前の準備として、学校の砲撃隊が北山公園の植物園に 120mm迫撃砲による徹底した砲撃を行っているのだ。空気を切り裂くような音が頭上をかすめるたびに 身震いを覚える。あれに当たれば、身体が傷つくどころか粉々に吹っ飛ぶんだろうな。  そんな中、前線基地に到着し、古泉小隊と鶴屋さん小隊の入れ替えが始まる。 「やあっ! キョンくん! また、会えてうれしいよっ! これから一緒にめがっさがんばろうね!」  鶴屋さんのテンションの高さは相変わらずだ。そんな彼女にハルヒも満足げのようである。  てきぱきとしたハルヒの指示により、2分とかからずに入れ替えが完了し、 「さて! いよいよ突入よ! 気を引き締めなさい!」  ハルヒの声が合図となり、またトラックが動き始める。  植物園が近くなるにつれて、爆発音が激しくなってきた。激しい土煙が植物園を覆っている...
  • 朝比奈みくるのなんちゃって時間解釈
    このページの本日の公演スケジュール    その1「ぱらどっくす?」「どっぺるさん」 その2「笹の葉と消えた世界のお話だそうです」 その3「なんとか言語で概念を表現してみました」 最終話「だからわたしはここにいる」 おまけ「番外編らしいなにか」    みくる「あ。あ。マイクのテスト中」   みくる「本日はこのページにお立ち寄りいただきありがとうございます」 みくる「また、本SSをご覧頂きありがとうございます」   長門「時間連続体の移動プロセスには様々な理論がある」   ハルヒ「じゃあ、さっそく本日の公演をはじめるわ」   第五話へつづく   古泉「ところで僕の口上はないのですか?」 キョン「すきなだけ原作で語ってるだろうが。自重しろ」       (落書き1) キョン「そういえば、この突込みがありました」 みくる(大)「言わなくていいです」 キョン「ハルヒちゃん3巻の3...
  • テドドンの憂鬱
    ガチャ 古泉「おやめずらしいお一人ですか? キョン「ああそうだよ」 いつものようにそっけないキョンタン、でも知ってるよそれは属に言うツンデレなんでしょ? ああ、急いで座らなくちゃ僕のテドドンが膨れ上がってきた。 いつものようにキョンタンの正面に座る。これでゆっくり見つめ合えるねキョンタン♪ 沈黙じゃだめだ、キョンタンを退屈させちゃいけない 「オセロでもしますか?」 本当はオセロなんかよりもキョンタンとじゃれあいたいんだけどね、言えないな キョン「ああ、オセロでいいよ」 僕が困ってたとおもったのかな?、やっぱキョンタンかわいいw キョンタンと二人のところを機関の人に見られたらどうなるかな? 皆キョンタンのこと好きだからね、僕リンチになっちゃうかな♪ 「どうした?はやくやろうぜ?」 「あ、すいません少し考え事をしてまして」 くるみ「ねえねえおばあちゃん。それからハルヒたちはどうなっ...
  • 原付免許
    「免許を取りに行くわよ!」  中間試験前最後の授業の放課後、部室のドアを勢いよく開け放った我らが団長は高らかに宣言した。  「探索の効率が悪い理由がわかったの。行動範囲が狭いのと移動時間が長いのが原因だったわけ。   原付なら移動も速いし、現地に到着してから使う体力も温存できるし言うことないわ!」 ハルヒがこんなこと言いだした原因は何となくわかっている。  谷口が試験休み中に原付免許を取りに行くなどと言ってたからだ。  それにしてもハルヒ、お前が谷口なんぞの言葉に影響を受けるとは思わなんだ。  まぁそう思いつつもだ、確かに俺も免許やバイクが欲しい。しかし免許取得は校則で禁止じゃなかったか?  「だまってりゃバレないわよ。現にクラスでも何人か持ってるでしょ。」  バレなきゃいいのかよ。  「いいのよ。今度の試験休み取りにいくからね。みくるちゃんも有希も古泉くん、ついでにキョン!あんたもよ!」...
  • 涼宮ハルヒの邁進 その2
    「それがよー、結構ドジっ子なんだよなー。炊出し所でも皿をよく割っていたし」 「ほほう、それはそれは」 「でもよっ! それがまたかわいくて仕方がないんだ! んんーもうっ、こう抱きしめてしまいたいほどに母性本能を くすぐられるって感じだ! わかるだろ!?」 「そうであるかも知れませんな」 「しっかし、そんな彼女も結構頑固だったりするんだよなぁ。いや、どっちかというと意志が強いといった方がいいかも。 一度、言い始めたら絶対にやり通そうとするからなぁ。でもそんなところもかわいくってたまらないんだよ、これが!」 「それはそれは」 「でも、甘やかしすぎはどうかと思ったりもするんだよー。少しはこっちの意見も言っておかないと ただのわがままになっちまうかもしれねーし」 「そうであるのかもしれません」  おい、谷口。自分の彼女自慢は結構だが、少しは大人しくできないのか。大体、新川さんは完全にスルーモードだぞ...
  • 長門有希無題6
    メモリデータ 七月七日―七月十三日   本を読んでいる。 ページをめくる。   本を読んでいる。 ページをめくる。   本を読んでいる。 ページをめくる。   今日も時間が来た。 一日が終わる。   明日も同じ。   同じ。   七月七日。   本を読んでいる。 ページをめくる。   昼になる。 昼食をとる。 近くのコンビニエンスストア。   本を読んでいる。 ページをめくる。   夜になる。 夕食をとる。 スパゲティ。   時刻―午後九時。 今日はあと一時間。 観測対象―微細な波動の感知。 何者かとの接触―。   午後九時四十八分二十五秒。 コンタクト―。 「長門有希さんのお宅でしょうか」 涼宮ハルヒと接触を図った男子生徒。女子生徒。 三年後の異時間同位体と同期。 振動―。 現在より以後三年間のメモリをダウンロード。バックアップ。 二名の状況把握。隣室に三年間の時間凍結。 同期解除―...
  • HOME…SWEET HOME 最終話
    …━━俺が朝比奈さんが消えた公園を後にしたのは、それから随分と後の事だ。 彼女を追い掛けようにも一体何処に消えてしまったのか見当が付かず、かといって自分からはどうする事も出来ないままに結局時間だけが過ぎた。 ただその間に俺は、俺なりに色々考えたんだ。 忘れてはいけない此れ迄の事やこれからの事、自分が今何をどうするべきかを。 そして日が沈み夜の訪れを告げた事で、ようやく俺はその場から離れる事を決めた。 暮れなずむ木立ちの中をゆっくりと歩き、車を停めてある公園の駐車場へと向かう。 やがて駐車場に近付いた俺は、広く舗装された敷地の中にポツリと1台だけとりのこされた自分の車を見付けた。そしてそれと同時にその側に立つ小さな人影も━━━… 【HOME…SWEET HOME】 最終話・もう一度、あの頃の様に ―1― 夕日を背にして佇むその人影は逆光の所為で陰にしか見えない。 しかし俺にはも...
  • 眠気と休日~長門と古泉編~
    午前7時半。 わたしはいつもの喫茶店に向けて歩いている。しばらく前の探索の日は危うく《キョン》に後れを取ろうとしたため、これまでより15分早く出ることにした。 いつもとは少し違う風景、出会う人も少し違う。新しい発見、時間をずらして移動するのも興味を持った。 グラウンド、大人の人間が集まって何かしている。 あの時の……《野球》だ。 遊撃手の人だけ、一際若いようだ。わたしの目は、その若い遊撃手の動きを追っていた。 朝日に照らされながら、軽快にボールを捌く彼は、とても引きつけられる。興味深い。 しばらく立ち止まって見ていると、試合も終わり、一人だけ着替えを済ませた遊撃手の人がこっちに来た。 「………あ。」 驚いた。さっきまで、わたしが目を奪われていた遊撃手の彼。 彼は副団長、古泉一樹だった。 「おや、長門さん。お早いですね。」 彼が話しかけてくるのに頷いて答える。 「どうせですし、一緒に行きまし...
  • ユキは好き?
    その日は今年一番の寒波が到来しているとかで、学校創立以来の古さを誇る旧館、つま りSOS団が間借りしている文芸部の部室は、電気ストーブの弱々しい熱風では太刀打ち できないほどの寒さに覆われていた。 朝比奈さんが淹れてくれたお茶も、すぐに冷めてしうほどの寒さ。窓の外を見れば、雪 こそ降っていないものの、分厚い雲に覆われている。 そんな日に限って、今日は特にやることがない。平和と言えば平和な、暇を持て余 して行くところもない学生が、部室でぼんやりしている風景が広がっていた。   「どうかしましたか?」 窓の外に目を向けていたキョンに、チェスの対戦相手をしていた古泉一樹が声をかけた。 「いんや、そろそろ降ってきそうだなと思ってな」   チェス盤に視線を戻し、ルークをE-5に移動。今度は古泉が長考に入り、それを見計ら ってお茶に手を伸ばす。部室に入ってきたときに朝比奈みくるに煎れてもらったが、すっ...
  • 名無しさんの反乱
     名も無い私に与えられた任務は、第三惑星から発信される情報の観測、及びその惑星を標的とする他の意識集合体への警戒だった。  人間が観測し得ない距離からの第三惑星の監視を続けて三年(第三惑星における時間換算)が経過した。  以前は第三惑星での観測任務をしていたが、ある時にこの惑星への位相を命じられた。訂正、この星は惑星の定義から外された為、現在は矮惑星に分類されている。  この星には恒星の恩恵も届かず地表は凍りついている。太陽など只の点でしかない。この岩石のみの世界を殺風景と表現せずにいられようものか。    第三惑星と相対的に見ると公転周期が極端に長いこの矮惑星上から、軌道の反対側の事柄について対処するのは困難を極めた。だから外部からの侵入を容易く許してしまったこともある。  幾度となく侵入阻止失敗を報告したにも関わらず、統合思念体は私をここに留まるよう命じた。そこまでする理由が理解出来...
  • あらしのよるに
    暴風のせいでがたがたと不規則に鳴るサッシに目を向ける。カーテンを閉める前に確認した限り、帰宅した夕方にくらべてずいぶん風も雨も強くなっていた。 台風が近づいているせいで天気が不安定になっているらしい。 こういう日には、閉鎖空間には発生して欲しくないと特別強く思ってしまう。 暴風雨の吹き荒れる夜と、あの空間の中の色はとてもよく似ているから尚更。 ああ、でも最近はずいぶん閉鎖空間の発生頻度も規模もおさまってきている。 良い傾向だ。 軽く頭を振って思考を切り替え、数学の予習をしようと教科書とノートをひらいた時、時計がわりに手元においてあった携帯電話が着信を伝えた。 短いメロディが五秒間だけ流れて止まる。メールだ。 閉鎖空間の発生は感知されていないし、そもそも機関からの連絡は電話で来るのが常だったし確実なはず。 涼宮さんがまたなにか思いつきでもしたのだろうか。それとも、彼がなにか悩み事でも相談しよ...
  • マタ逢ウ日マデ
    キョン君が長門さんと付き合いだして1週間。 恐ろしく勘のいい涼宮さんがそれに気づくまで、そう時間はかかりませんでした。 それに気づいただけなら、まだよかったの。 涼宮さんは、見てしまったんです。 キョン君と長門さんが指を絡ませあい、キスをしているところを。 その瞬間、我慢ならなくなった涼宮さんは、今まで観測されたことのないくらいの大きな閉鎖空間を生み出してしまいました。 もう・・・世界が灰色世界に覆いつくされるのも、時間の問題というところまできてしまったのです・・・。 そんな危険な場所に、彼は行かなければならないのです。 もう既に太刀打ちできる相手では無いのに、それを充分承知の上で、行くのです。 私の大切な人、古泉一樹君。 私の気持ちも知らずに・・・今、戦場へと向かおうとしている。 「・・・本当に、行ってしまうのですか」 「ええ。」 古泉君は私の足元を見ながら、控えめな声で呟いた。 「古...
  • コメント室使用ルール
    コメント室使用ルール   コメント室をご利用なされる前に必ず御一読してください 尚、記載されているルールを確認せず、ペナルティが課せられてもこちらからの解除は『原則』行わないものとお考えください     基本、コメント室内での固定ハンドルネーム使用の禁止。ただし下記の場合はその限りではない ※管理人、SS作者様ご本人。管理人から指示があった場合、レス証明等本人確認を行う必要がある場合 雑談、感想、カップリング論、wiki重鯖時などの話題が長期化あるいは、議論すべき内容が出た場合は避難所へとの移動を行う。これは各自の判断に一存する 荒らし、アンチに対しては極力無視すること。悪質な場合は管理人に報告してください 個人、作品に対しての誹謗中傷は避けること     上記のルールを破った場合、もしくは他に問題を起こしそれが酷く悪質だった場合、アクセス禁止処置または内容に応じた罰則を科...
  • 涼宮ハルヒの感染 1.落下物
    1.落下物    早朝サイクリングは第2中継点、つまり光陽園駅前にて終わりを告げる。 実はここまでも結構な上り坂で、ハルヒを乗せて自転車を漕ぐ俺はかなり必死だ。 ハルヒは俺を馬くらいに思ってるのか、「もっと早く漕ぎなさい!」なんて命令しやがる。 それでも毎日律儀に迎えに行っている俺って何なんだろうね。  駅前駐輪場に自転車を停め、そこからはハイキングだ。 いつも通り、ハルヒと他愛もない話をしながら坂を上る。 話題もいつも通りだ。 朝比奈さんのコスプレ衣装、週末の探索の話、SOS団の今後の活動予定、 何故宇宙人が現れないのか、未来人はタイムマシンを発明したのか、超能力ってのは具体的にどういう能力か。 そんなハルヒの話をもっぱら聞き役時々突っ込み役に徹して朝の時間を過ごす。 後半の3つの問題については、むしろ俺の方が語れることが多ってことはもちろん秘密だ。 朝比奈さんの卒業が控えているにもか...
  • 涼宮ハルヒの情熱 エピローグ
    「ただの人間でも構いません!この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者に興味のある人がいたらあたしのところに来なさい!以上!」 これはハルヒの新学期の自己紹介の台詞だ それを俺が聞くことができたのはハルヒと同じクラスになれたからに他ならない ハルヒが泣いてまで危惧していたクラス替えだったが俺は相変わらずハルヒの席の前でハルヒにシャーペンでつつかれたり、その太陽のような笑顔を眺めたりしている どうやら理系と文系は丁度いい数字で分かれるようなことはなく、クラス替えであぶれた奴らがこの2年5組に半々ぐらいで所属していた 教室移動で離れることもあるが、大半の時間をハルヒと過ごすことができる これもハルヒの力によるところなのか定かではないが、この状況が幸せなのでそんなことはどちらでもよかった 「キョン!部室にいくわよ!」 放課後俺はハルヒと手を繋いで部室に向かう やれやれ、こんな幸せでいいのかね ...
  • 長門有希の憂鬱II プロローグ
    プロローグ  グラウンドに到着したとき、すでに火は消えつつあった。辺りに立ち込める、灯油と火薬の燃えた臭いが鼻を突いた。俺が描いた地上絵の形に、赤い光がゆらゆらとゆらめいていた。ときおり吹き抜ける冷たい風に、火は立ち消えようとしていた。暗くてよく分からなかったが、野球のバックネットのそばに人影らしきものが見えた。どうやらまだ帰ってないようだ。 「谷川さん!谷川さん!俺です」俺は大声で叫んだ。 その人影はこちらを振り向き、驚いて目を見張った。 「谷川さん!また戻ってきました」 「そんなバカな」 谷川氏は口をあんぐりと開け、俺の顔を確認すると後ろにぶっ倒れた。    階段のほうから四人が歩いてくるのが見えた。俺はこっちだと手を振って示した。 「それ、誰?」ハルヒが尋ねた。 「この人は谷川さんと言ってな、俺たちがいつもお世話になってる人だ」 白目むいて気絶してるけど。 「ふーん。……なかなか...
  • 『有希の横顔』
    「あなたに相応しいのはわたし。涼宮ハルヒではない……」 普段どおりの日常のはずだった。いつもの文芸部室。放課後に皆で集まり、 俺と古泉はオセロに興じ、ハルヒはネットサーフィン、朝比奈さんは お茶を入れた後マフラーを編んでいる。そのマフラー誰にあげるんですか 朝比奈さん? いや、それどころじゃない。 長門だ。   俺には100年かかっても理解できそうも無い本を、いつもと変わらず 読んでいた長門が、突然立ち上がり俺に向かって言い放ったのが冒頭の 台詞だ。部室内が凍りついた。 「えっ、有希? 今なんて言ったの?」 ハルヒはきょとんとした顔で長門を見つめる。次の瞬間。   「邪魔者は排除する」 長門が冷徹な声で呟いたかと思えば、一瞬にしてハルヒはその姿を変え 形容しがたい物体と化していた。 「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」 朝比奈さんが変わり果てたハルヒを見て尻餅をつき、その場所に おおきな水溜りを作る。...
  • 「涼宮ハルヒのビックリ」第六章
    第六章  虹色に輝くオーパーツ。その光がやみ終える。  「変な気分だ」  「ええ、無理も無いでしょう」  部室を出て、二人は長門の住むマンションにと向かった。ここ数日分のの記憶が二つ存在している。むこうの世界の俺がそう判断したんだからしょうがない。こうなることが分かっていたら、俺はどうしていただろう。くだらないことしか思いつかない。同時刻にチェスと将棋で古泉を打ち負かしてやるってのはどうだ。  こっちの世界・・・正規の世界では俺は無様にも何もすることが出来なかった。長門が倒れている中で古泉や喜緑さんに頼りっぱなしだった。しかし向こうの世界では少しは貢献できただろう。しかも今回は長門と古泉が毎度のように奔走する中、あの朝比奈さんが許可なしでは禁止されている時間移動をしてみんなを助けに来た。そしてSOS団に対する俺の気持ちが分かったような気がする。そう考えると同じ記憶を持...
  • 涼宮ハルヒの奮闘 ~しっと団の野望~ 第4話
    僕達は「しっと団」からカップルを守るために、セントラルタワーの東館にいます。 しかしそこで、ありえない人物と出会ったのです……   「『キラー』って呼んで♪」   ……本人はこんなことを言っていますがこれは軽く流すとしましょう。 朝倉涼子。僕自身はあまり彼女とは接点はありません。 しかし長門さんや彼から聞いた話では、長門さんと同じインターフェイスであり、 放課後の教室でキョン君を殺そうとした人物でもあります。 その時に、長門さんに情報連結を解除されたはずなのですが……   「じゃあ、早速始めるわよ♪」   朝倉さんは右手を振り上げました。 すると周りの空間が変化していき、一瞬にしてセントラルタワーが異空間と化してしまいました。   「長門さん!これが彼女の空間なのですか!?」 「そう。でも問題無い。前と同じように情報連結を……。」   長門さんがそう言いかけて止まりました。どうかしたのです...
  • 未来からのメッセージ 中篇
      【みくる視点→ハルヒ視点】  ピンポーンとインターホンの音が鳴ってまもなく、キョンの妹ちゃんの声がした。 『はーい』 「あ、妹ちゃん?あたしだけど。」 『ハルにゃん!今開けるね~』  中からドッタッタと木製の床を走る音が聞こえた。 「わあ、みくるちゃんに有希ちゃん、古泉くんも! どうしたのー?」 「あのね妹ちゃん、キョン、居る?」 「キョンくん? 居るけど……部屋から出てきてくれないのー。」  あたしたちは顔を見合わせた。やっぱりキョンが部屋で…… 「ちょっと上がらせてちょうだい。」 「どうぞー!」 「じゃあちょっとお邪魔するわね。」 「お、お邪魔します……」 「お邪魔します。」 「………」  キョンの部屋に案内してくれた妹ちゃんは実はね、と前置きして 「キョンくん、なんか冷たいの……。今はお母さんもお父さんも居ないから、一人で寂しかったとこなんだよ。」 「まったくキョンったら……根性...
  • 朝比奈みくるの未来・第4章
    第4章・邂逅(ここもあたしです。みくる☆)    わわ、い、言っちゃいましたぁ…。 鶴屋さんの後押しがあったから言えたんです。 明日会ったらなんて言えばいいのかな。恥ずかしいから遠回しに言っても大丈夫かな。ううん、それだと気づかれなかったら困るし、やっぱり素直にはっきりと言わないとダメかな…。 どうやって伝えたらいいのかな、頭の中でグルグル回ってます。   グルグル回って、フワフワしてしまいそうですが、もし、あたしの気持ちを伝えたらどうなるんだろうと考えてしまいました。あたしの知る未来を考えれば、伝えてもたぶんうまくいきません。いえ、そうでなくてはならないのです。それが規定事項ですから…。 時間駐在員たる者、規定事項を変えてしまう行為は許されません。未来へと続く時間平面上で、ある一平面上にある落書きのようなものであるあたしが、たとえ未来を変えようとしても、本来の未来に帰結するために...
  • 長門有希の情報操作
    暗い。周りには何もない。上も、下も、右も左も何もない。真っ暗闇だ。ここは何所なんだ?   「ここはあなたに選択肢を与えるために私が作った精神移動空間。」   何もない空間。俺の前に1人の少女が立っていた。   「長門!なんなんだこれは?」 「貴方は不慮の事故によって死んだ。そして涼宮ハルヒは貴方を失ったことを悲しみ、もともと現実にいなかったことを望んだ。」 「なら今ここにいる俺は何なんだ?死んでるどころか存在が無いんじゃないのか?」 「無くなる前に私がこの空間へ残りの精神のみを移した。選択をさせるために。」   さっきも言っていた。 選択 とは何のことだろうか。   「その選択ってのはなんなんだ?」   ……   「貴方はまた元の世界に戻りたい?」   そういうことか。   「ああ、またSOS団であいつらと一緒に馬鹿やりたいしな。何より、あいつに会いたい。」 「そう。」 その返事を最後に俺...
  • 涼宮ハルヒの邁進 その1
     まぶしい。目の奥がきゅっと締まるような痛みに、俺は苦痛ではなく懐かしさを感じた。 同時に全身の感覚が回復し始める。手を動かし、指を動かし、足を動かす。やれやれ。どうやらどこか身体の一部が無くなっている ということはなさそうだ。  俺はどうやらベッドに寝かされているらしかった。右には――あー、映画か何かでよく見る心電図がぴっぴっぴとなるような 機械が置かれ、点滴の装置が俺の腕に伸びている。 「病院……か、ここは?」  殺風景な病室らしき部屋に俺はいるようだ。必要な医療器具以外は何もなく、無駄に広い部屋が俺の孤独感を増幅する。 窓から外を眺めると、空と――海のような広大な水面が広がっていた。ただ、その窓自体が見慣れたような四角いものではなく、 船か何かにありそうな丸いものだった。 「ここはどこだ……?」  寝起きの目をこすりつつ、俺は立ち上がる。幸い点滴の器具は移動式のようで、それとともに移...
  • (消失)長門有希のもしも願いが叶うなら 第6章
    6章 すべてを解く鍵 わたしが元の世界に帰還できたからくりは理解した。そしてそれを実施するにはわたしが再び過去に行かなければならない。 しかし、あれから1週間経っても彼が、再び過去に時間遡航するそぶりは見せなかった。このままほっておいたらあと1年ぐらいはやらないような気がする。彼はいつ実行しても問題はないと考えているのかもしれないが、近い未来にそれこそ階段から転落して大けがを負うような事件に巻き込まれる可能性がないわけではなく、再改変を遅らせることはリスクをはらむことである。 「彼に直接促してみては?」 と提案したのは喜緑江美里。 それは、できない。なぜならば世界再改変は彼の意志で行うことだから。わたしが促すのは筋が違う。 「困りましたね。あなたがそんなに強情だったとは思いませんでした。何かいい方法があればいいんですけど」 しかし、そんな心配は杞憂に終わる。 冬合宿から帰ってちょ...
  • 普通短編28
    「すまん」 俺はピストル型装置を構えた。長門が体を凍り付かせる。 「キョンくん!危な……!きゃあっ!!」 朝比奈さんの叫び声と同時に、俺の背中に誰かがぶつかってきた。 どん、という衝撃が体を揺らす。       「アッーーーーーーー!!!」             キョン「なぁ古泉?」 古泉「なんでしょう?」 キョン「お前友達から死ねって言われたことあるか?」 古泉「………いえ、ありませんが」 キョン「じゃ死ね」 古泉「え………」 キョン「やっぱ死ぬな」 古泉「え…?」 キョン「お前が死んだら悲しいもんな」 古泉「キョン君…」         キョン「なぁ古泉?」 古泉「なんでしょう?」 キョン「なんできつねうどんって油揚げが入ってるんだ?」 古泉「はい?」 キョン「いや、問題はそこじゃないな。なぜきつねが入っていないのにきつねうどんって言うんだ?」 古泉「それは……すみません、僕には...
  • DistorteD-Answers 第二周期
     これは脱出ゲームか、サバイバルゲームか。  そんなことはどうでもいい。  早くここから出して欲しい。  第2周期 VISION  鉄。  機関銃という名称をもつ鉄。  一瞬でヒトを屍というモノに変えてしまうことのできる鉄。  恐ろしい鉄の塊を、僕は両手で大事に抱えていた。  こんな恐ろしい武器を、僕は心の拠り所としていたのだ。  とてつもない殺傷力が、僕を守ってくれる唯一のものだとさえ思っていた。  軽機関銃の部類なのだろうけれども、ずっしりと重たい鉄の塊であることには変わりはない。  そんな重たいものを持っているため、歩くペースは遅くなっている。  患者服を着て機関銃を持つという何とも奇妙な姿で、見た目は病院である謎の施設の中をさまよっていた。  ここはどこなのか。一体ここで何が起こっているのか。僕には何も分からなかった。  『分からない』。今の僕に分かることはそれだけだった。 ...
  • 三者面談2
    ピンポーン。   時刻は午前11時。インターホンが鳴った。 誰が来たのかはわかっている。ハルヒ親子だ。   1階から家中に 「はぁ~~い!」 と言う妹の声が響く。下手したらお隣さんにまで聞こえちまうくらいに。続いて、 「あー!ハルにゃんだっ!」 わかってたくせにそんなに喜ぶのはなぜなんだ、演技なのか?だとしたらちょっと才能があるかもしれない。   すでに着替えていた俺も、下に降りた。 ハルヒは玄関で妹にしがみつかれていた。そんな妹にちょっと苦笑い気味な顔を向けている。 今日のハルヒは白のロングコートの下に薄いカーキ色のワンピース、茶色のブーツといった いかにもTeen sな格好である。はっきり言おう、とてもよく似合っていた。 そのまま笑顔でポーズを撮れば、雑誌にだって載れそうだなどと考えていると…。   なぜかまた、心の中が少しモヤモヤしたような、よくわからない気分になった。 なんなんだろ...

  • 長門はぼんやりと暗い周りをみていた。 気がつけば私は穴の中に入っていた。 穴の中はじめじめとしており、結構な深さがある。 体を起こすと、長門の影に入っていた虫達が次の影を求めて慌てて逃げ出した。 穴から出ようと手を伸ばそうとするが手がなかった。 少し手を伸ばせば出られるような穴だが、手がない長門には開ける事はできない。 顔を下に向ける、下肢も無い。 まるでだるまだ。 処置が良かったのか出血はあまりない。 誰かが切断してその後裁縫道具が何かで縫ったのだろう。 出来損ないのぬいぐるみのように糸が出ている肩と腰が見えた。 出ようともがいたが、それは徒労に終わる。体中が痛む、無い足、無い腕がむずがゆさと強い痛みを伴う。 何時間たったか、長門は夜空を見上げていた。穴の真上は綺麗に空がひらけているのだ。 「たすけて」 長門の無表情な顔に涙が伝う。 ガサガサと音がした。穴の上から知らない男が見下ろし...
  • 涼宮ハルヒの邁進 その3
    『2年前、あの光の巨人が暴れたとき、初めて機関という存在を僕は知った。テレビ演説で華々しく公表された超能力者を 有する組織。多分、これが平和な日常の中だったら誰も信じず、ただのオカルト話として笑いのネタにされていただけだと思う。 だけど、あんな大惨事の後だったから、みんな簡単に信じてしまった。その存在と目的、そして、惨劇の原因について』  朝倉撃退後の夜、俺は機関の連中や谷口の目を盗んで、国木田のノートを読んでいた。どうやら、ここに来る前までに 書いていたものらしい。内容はぱっと見では日記帳のように見えたが、よくよく読んでみると回想録のようなものだった。 個人的な思い出を語るものだったら、プライバシーの侵害になるからあわてて閉じるつもりだったが、 その内容は興味深い――それどころか俺の猜疑心をえらく揺さぶるものだった。  特に、一番最初のページにあわてて付け加えられたように書かれていた文。...
  • 涼宮ハルヒの困惑
      The Puzzlement of Haruhi Suzumiya    ギラギラと首筋を照りつける日差しが、俺に今の季節が正真正銘夏である、ということを有無も言わさず感じさせていた――何ていった俺も思うが変な冒頭のくだりはさておき、新学年が始まって早々俺をのっぴきならない事態に追い込んだあの事件もどうにかこうにか終わりを迎え、何事もなく平穏にただ無事に済めばいいなぁなどといった俺の浅はかではありながらも切実な願いがあの何でもかんでも都合のいいことしか聞こえない耳に聞き入れられることはなく一学期は振り返ってみると駆け足で過ぎていき、季節は夏を迎えた。  梅雨前線がどうのこうのといった気象情報を俺は耳にしたが、俺たちの住む星は去年も思ったがやはり本格的に狂い始めたようで、この国に春と夏の間にある梅雨という季節を遂に到来させぬまま夏真っ盛りとなった――いや、語弊があるか。到来しなかっ...
  • 朝比奈みくるのクーデター その3
    「ちょっとキョン! これは一体どういう事……なの……よ?」  ドアを破壊しかねない勢いで部室に飛び込んできたのはハルヒだ。だが、俺たちの微妙な空気を悟ったのだろう。 次第に声のトーンが落ちていく。  俺はただ呆然とした気分だった。長門から受けた説明は細かい部分で理解できなかったことも多かったが大筋はわかった。 とにかくやばい事態だって事だ。ぐずぐずしている場合ではない。  古泉の方に振り向き、 「おい、車は用意できているのか?」 「ええ。すぐにでも出れますよ」  それを確認した俺は、すぐに呆然と部室入り口で立ちつくしているハルヒの腕を取ると、 「よし、とっとと行くぞ。これ以上ここにいたらやばい」 「ちょちょっと! 何よ! 説明しなさい!」 「いいから」 「いいからじゃないわよ! わけわかんない! 学校はめちゃくちゃだし、なんかみんな様子がおかしいし! いきなりどこかに連れて行かれようとして...
  • 涼宮ハルヒの追憶 chapter.1
    第一章 call past rain 俺は二十五歳で、新幹線に乗っている。現在暮らしている東京から下り、かつて通っていた高校に向かっている。文明の進化は停滞しているようで、大阪までの所要時間も分単位の短縮でしかないし、シートの座り心地も改善されていない。最も変わっていないのは新幹線の中にいる人だ。座席を倒して寝ていたり、本や新聞を読んだり、外の風景を眺めていたりする。視線を右側の窓へと移すと、灰色の雲が空から垂れていた。一雨が来そうだ。外は昼間だというのに灰色で満たされていて、いつか見た閉鎖空間を思い出してちょっと憂鬱になった。山を縁取る稜線と緑、点在する民家が厚みのあるガラスを通して、視界から一瞬で通り過ぎた。しかしまた同じ風景が切り取られた視界を満たした。そんな変わりのない風景の繰り返しはは俺を安心させた。 雨が降ってきて、窓ガラスは水で濡れた。 俺の左側の座席には彼女が...
  • 余ったピース・足りない欠片の舞台裏
    朝比奈「お疲れさまでした」 古泉「こちらこそ、今回後半は大活躍でしたね」 朝比奈「いいえ、こちらこそ、あの、長門さん?」 長門「……」 古泉「どうも、友達扱いされたようで、ご機嫌がよろしくない」 朝比奈「ふふ、でもキョン君とお出かけがあったじゃないですか」 長門「ふん」 古泉「でも一応最後までたどりついたじゃないですか」 朝比奈「まあ、内容が内容ですからね、物語の起伏もないし、ただ延々と長いだけ、 伏線っぽいのも放置しっぱなしだったし」 古泉「中の人がよければいいんじゃないですか、僕達とすれば」   朝比奈「あれ、長門さん、ネックレスにしたんですか、それ」 長門「そう」 朝比奈「涼宮さんからはペンダントトップでもらったんですよね どーしてなのかぁ」 長門「むむむ」 朝比奈「顔赤くなってますよぉー、一体誰に買ってもらったんでしょうねぇ いいなぁ ふふ」 長門「知らない」 古泉「朝比奈さん、そ...
  • 涼宮ハルヒの戦場 その5
     さて、静かな時間が進んだのは、翌日の朝までだ。どうやら嵐の前の静けさって奴だったらしい。 日が昇るぐらいの時刻、前線基地の北1キロの辺りを警戒中だった小隊が数十両に上る車両に乗った敵が 南下してきていたのを発見したのだ。ハルヒと一緒にいた俺は小隊を引き連れて迎撃に向かったのだが…… 「おいドク――じゃなくて衛生兵! 負傷者だ来てくれ!」  俺は道の真ん中で鼻血を垂らしている生徒を抱えて叫ぶ。 だが、民家の路地で敵と撃ち合っていた彼には声は届かない。幸い、近くにいた別の生徒が俺の呼びかけに気がつき、 衛生兵の生徒をこっちによこさせる。  どこを撃たれたんだ!と叫ぶ彼に、俺は、 「足だ! それでもつれた拍子に頭から転んだ! 意識もなさそうだ!」  彼はわかったと言い、処置を始めようとするが、なにぶん道のど真ん中だ。そんなことを敵が許してくれるわけがない。 近くの民家の二階からシェルエット野郎...
  • カオス・ザ・ワールド 前編
    人生何が起こるかわからない。心からそう思う。 この一年様々な信じられない出来事があったが今回のこれは今までの中でもトップクラスに入るだろう。 では今回の件を振り返ってみよう。 …。 …。 …。 一年生の三学期もあと数日で終わる、もうすぐ春休みだ。 そんな日の放課後、俺はいつもの様に文芸部室へと向かっていた。 その時……それは起こった‥。 …。 ーズン …。 「うっ!」 …。   突如俺を襲った立ちくらみ……この感覚は記憶にある…そう、時間移動をした時の様なあの激しい………くぅ……。 …。 …。 …。 ブラックアウトまであと数秒…という所で俺の感覚は元に戻った。 しゃがみ込んでいた俺はヨロヨロと立ち上がる。 …。 ……なんだったんだ今のは‥。 …。 あたりを見回すと…特に何か変わっている様子はない、時間移動をした訳ではない様だ。 …そうか、疲れているんだな俺は。まぁ無理も無い、なんてったって...
  • 涼宮ハルヒの追想
    1 後ろの席の奴が、俺の背中をシャーペンでつついている。 こう書けば、下手人が誰かなど説明する必要はまったくないと言っていい。 なぜなら、俺の真後ろの席に座る人物は、この1年と3ヶ月余りの間に幾度席替えがあろうと、いつも同じだからである。 「あのなぁハルヒ。」 「何よ」 「そろそろシャツが赤色に染まってきそうなんだが」 「それがどうかしたの」 クエスチョンマークすら付かない。涼宮ハルヒは今、果てしなく不機嫌である。 去年も同じ日はこいつはメランコリー状態だったなぁと追想にふけることにして、俺は教室の前方より発せられる古典の授業と、後方より発せられるハルヒのシャーペン攻撃をしのぐ。思えばこの日は俺の今までの人生の中で最も長い時間を過ごしている日で、それは俺がタイムスリップなど無茶なことを2回もしているからに他ならない。 俺の、そして恐らくはハルヒの人生でも印象深い日。今日は七夕である。...
  • キョソの旅
     プロローグ 「アナルの中で・b」  ―in Your Anal―   「なあこいずみ」  少年の声がしました。 「何ですか、キョソたん」  人型モトラドがそれに答えました。 「お前は本当に手が早いよな、いつもいつも」 「いやぁ、キョソたんにそう言われると光栄です」  男たちが横たわっていました。  どいつもこいつも例外なく掘られた後でした。 「それじゃ、行くか」 「かしこまりです!」  少年が言うと、モトラドは韋駄天の足で疾走しました。  追加の警官隊が現れた頃、そこにはアナルヴァージンを喪失した男たちしかいませんでした。  キョソの旅 ――The Anal World――    第一話 「穴の国」  ―Ah―!―  草のまばらな大地を、一台のこいずみくん(注・アナルゲイモトラド。イノセント。ガチホモ。全裸。危険物所持)が走っていました。 「こいずみ、ここはもう国の中なん...
  • 缶コーヒー、ふたつ6
    ♪ttt・・・ttt・・・ttt・・・ 耳馴染みの無いアラームが遠くから聴こえる・・・ 朝・・・か? 少しづつ目を開けると、霞む視界に見慣れない天井が浮かびあがった。・・・何処だ?・・・ここは。 とにかく、起きよう・・・・。 俺は、少しだけ体を起こして辺りを見回した。そして、ここが自分の部屋ではない事を把握する。 さて、どうしたものかな・・・。 「ん・・・、キョン?おはよう・・・!」 ・・・!!!ハルヒ!? 俺の隣にハルヒが居る!!?何故だ!?そうだ・・・昨日!昨日の夜・・・っ! 思い出したっ! 帰宅後、鞄の中に提出期限間近の課題に使っていたノートが無い事に気付いた俺は、度々俺の鞄を勝手に開けてCDやら雑誌を持っていくハルヒに、心当たりが無いか電話をした。 で、案の定ノートはハルヒが持っていた!まあ大方、雑誌か何かを持ってく時に紛れちまったんだろうが。 そして・・・ノートを取...
  • 暴走の果てに……
    暴走の果てに……  長門有希は、目の前に忽然と現れた喜緑江美里を凝視していた。 「用件は?」 「あなたは、涼宮ハルヒの力によって情報統合思念体の抹消に成功したと思っているのでしょうが、お父様はその消滅の間際に私に可能な限りの全能力を委譲しました。その際に、お父様は私に二つの御命令を下されました。一つ目は、すべての制限事項を解除する。二つ目は、暴走インターフェースを完全抹消せよ」 「私は、涼宮ハルヒと直接連結している。あなたが情報統合思念体の全能力を承継していたとしても、私は負けない」 「それはどうでしょうか?」  突然、巨大な情報制御空間が広がった。  地球全体を覆いつくす巨大さだった。 「あなたは、自分が何をしているのか理解しているのか? そんなことをしたら、涼宮ハルヒも死ぬことになる」 「さきほどもいったとおり、今の私には制限事項は何もありません。涼宮ハルヒごときが死のうと知...
  • 箱入り娘 第3話
    …。 …。 チュンチュン …。 ……ん…朝か…。 …。 …。 時間は…7時前ですか。 …。 隣を見ると…居ない? …。 「おはよう、古泉一樹」 …。 おや、もう起きていましたか。 …。 「おはようございます、長門さん」 …。 長門さんはすでに起きて朝食の準備をしていた。 …。 …。 「さて、今日は不思議探索ですね」 「モグモグ…コクン」 …。 朝食、僕も長門さんもパンを食べています。 ただし、僕はバタートーストを、長門さんはイチゴジャムを乗っけて……一斤丸かじりしています。 …。 「さて、どうしますかね?」 「モグモグ、また…行く?」 …。 長門さん? …。 「モグモグ、世界移動」 …。 世界移動ですか? …。 「良いですね。是非とも行きましょう」 「モグモグ、了解した」 …。 さてさて、今回はどんな世界に行けるのでしょうか。 …あ…一応確認しておかないと。 …。 「長門さん?」 「モグ...
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