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古泉の独り語りは終わった。最後に大仰にお辞儀までしてみせた。
何が『心残り』のないように、だ。
俺の『心残り』はもう、別世界に引っ込んでるんだよ。
「さて、僕はもう行きます。たとえ世界が終わるにしても、
僕には『機関』からの制裁が待っています」
それから、逃げるってのか?
「いいえ。甘んじて受けるつもりですよ。何せ、僕の復讐は果たされたんですから。
それこそ『心残り』なんてありませんよ。
この清々しい気分を抱いたま死ねるなら幸せです。
さようなら、世界。
さようなら、皆さん。
さようなら」
狂気を秘めた笑い声とともに古泉はどこかへ去っていった。

あいつのことは放っておこう。それより俺にはやらなければいけないことがある。
たとえ逆転が絶望的なゲームだって、諦めなければ可能性は残ってるんだ。
最後まで頼りっぱなしというのは気が引けるが、
「長門」
最後はこいつに頼むしかない。
ところが、振り向いた俺の目は嫌な光景が映った。
朝比奈さんが、薄れていた。
「朝比奈さん!?」
「キョン君、落ち着いて聞いてください。今この時間は未来の分岐点なんです。
世界が崩壊の方向に進んだから、私たちの時間平面も消え始めているんです」
「でも!」
俺は未来のあなたに会っています、と言おうと思ったがいえなかった。
「最後まで言わせてください。
大丈夫です。キョン君なら。
キョン君と涼宮さんなら。うまくやってくれます。
信じてるんじゃないんです。分かってるんです。
だから、『さようなら』だけ言ってお別れなんてしませんよ?
『また会いましょう』って言ってお別れです」
そう言うと朝比奈さんは消えてしまった。

精神の安定を図るため、俺は長門に一つ質問をする。
「長門、俺は朝比奈さんの――何て言ったけな、そうだ――異時間同位体に会ってるぞ。
朝比奈さんがあそこまで成長するのは『規定事項』じゃないのか?」
長門は空を見上げて、首を振った。
「現在のこの時間は朝比奈みくるの言ったように未来の分岐点。
彼女たちは崩壊しなかった世界から来た」
「つまり、世界は崩壊の未来の方にハンドルを切っちまったわけだな」
そんなこと、認めてたまるか。ここが分岐点というならば
「そう。今からでも未来はかえられる。あなたの行動が、
世界をもう一つの未来につなげる可能性がある」
やってみせるさ。

「長門。俺を閉鎖空間に連れて行ってくれないか」
「分かった」
早口で呟く長門。突然目の前が暗くなる。
そして、長門の声が聞こえる。
「あなたは今閉鎖空間にいる。涼宮ハルヒは誰もいない世界を作った。
でも、あなただけはそこにいることが出来る。
あなたは鍵。閉じこもってしまった彼女を再び外に連れ出すための。
あなたに全て任せる。あなたになら任せられる」
その言い方に不穏な物を覚える。
「長門、お前は?」
「私はそこへ行けない。あなたをそこに送るのが私に出来る精一杯。
あたしはここに残ることになる。
残って、新世界の創造に巻き込まれて……消える。
さようなら。がんばって」
どういうことだ?
お別れ?
そんな、まさか……。
おい、長門!
「さようなら、また――」
そして俺の意識は途切れた。


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