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その日俺は、まだ少し気怠い体にむち打ち駅前まで向かった。
いつものように俺が最後な訳だが、罰金はなかった。
そのかわり俺は、俺に取っては最悪なハルヒのわがままを聞くはめになった。
「今日は、あたしと古泉君。ほか三人ってわけるから。
首脳陣と雑用でわけるってわけ」
間が悪いと言うかなんと言うか。いやに積極的だな。
そして俺たち三人はハルヒと古泉の後をつけている。
長門により俺たち三人は誰の目にも見えないし、俺たちの声も聞こえない。
よって、ぎりぎりまで接近して二人の様子を観察している。
「古泉一樹が告白しそうになったら、即座に、且つ自然に、妨害する」
とは長門の弁。ほんとにいつもお前に頼りっぱなしだな。すまん。
「キョン君。とりあえず来週中には誤解を解きましょう。あたしも全力を尽くします」
ありがたいお言葉ですが、
朝比奈さんは近頃ドジッ子になって来てるので少し心配なんですけど……。
「キョン君、怒りますよ」
冗談です。
今は何か冗談でも言ってないと古泉に襲いかかってしまいそうなんです。
「やらしい」
おい、長門。言葉の意味を取り違えるな。
「ユニーク」
どこがだ!!!
「こうしていれば気がまぎれる」
……あ。
長門にまで気を使わせているのか、俺は。

「後で必ずお礼はします」
「水臭いですよ、あたしたちSOS団員じゃないですかあ」
「そう」

そう言うわけで、長門、および朝比奈さんが
『二人はいい雰囲気だ』と判断すると、
どこからともなくバナナの皮が現れ古泉がこけたり、
工事中のマンホールの中に古泉が落ちたり、
運ばれて来た昼食に長過ぎる髪の毛が入っていたりとものすごいことが起きていた。
やりすぎな気もするんだがな。

それでも古泉は、朝比奈さんと長門の一瞬の隙をついてとうとうやり遂げてしまった。
しかし、それは『告白』ではなかった。

「涼宮さん、お話があります」
しまった!
「実は、あたしも」
「いえ、あなたの期待する物とは全く違う物です」
どういうことだ?
「どういうこと、古泉君?」


「僕はあなたが嫌いです」

なんだと?
古泉、それはいったい……。
「どういうこと、古泉君!?」
「当たり前だと思いますよ?あなたが今までして来たことを振り返ってみてくださいよ」
やめろ……。
「いろんな人に迷惑をかけてきましたよね。最初は長門さん。
文芸部室を乗っ取って、しかも強制的にSOS団のメンバーに入れてたそうですね。
次は朝比奈さん。強制的に連れて来て、コンピ研からコンピュータを強奪するのに使って」
やめろ、古泉。
「そんなあなたを今まで我々は我慢して来たのです」
やめろ、古泉!俺たちは、そんなこと思っちゃいない!
「でも、もう限界だったのです」
「だから……。だから、キョンはあの子と?」
「そうです」
違うぞ、ハルヒ、違う。
「はは……ははは」
そのとき俺の見たハルヒの表情は酷かった。
信じて来た人たちに裏切られ、捨てられた顔だった。

「もう、傷つきたくないと思いませんか?」
古泉の口調が変化する。言い聞かせるような口調だ。
「簡単な話です」
「簡単?」
ハルヒは精神への過負荷でぼーっとしている。
「世界に誰もいなければいいんです」
「誰も、いない?」
古泉は言い聞かせるように、刷り込むように、続ける。
「あなた一人だけで暮らす世界。そこには信じるべき他者はいない。
ゆえに裏切られて、傷つかなくてもいい」
「傷つかない」
「そうです」
「誰もいなければ、傷つかない。そんな世界――」
突然長門の目が驚きで見開かれる。
「閉鎖空間がものすごい勢いで発生している」
その言葉を裏付ける光景が俺の前でおこった。
ハルヒが消えたのだ。

「涼宮ハルヒは新しい世界を創造している。そこには誰もいない。何もない
ただ彼女が楽しかった思い出に浸るだけの後ろ向きな世界。
古泉一樹が彼女に示した理想郷」
怒りがわき上がる。
あいつがハルヒに優しくしたのはあいつ自身の恋心のためではなかった。
ただ、この新しい世界を作らせるためだった。
理由なんか知ったこっちゃない。ただ、俺がやるべきことは……。
「長門!ここから俺をだせ」
「なぜ?」
「あいつを一発殴ってくる」
長門がうなずくと同時に俺は駆け出して、古泉の顔を思い切り殴っていた。
鈍い音とともに古泉が吹っ飛ぶ。しかしあいつは笑っていた。
「ははは、やっぱりいましたね」
「どういうことだ、古泉!なんであんなことを言った!」
「いいでしょう、説明しますよ。ちゃんと全部」

「始まりから、世界の終わりの今この時までのことを」


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