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次の日俺は精神的な意味で重い体を引きずって登校した。
ハルヒにどんな顔して会えばいいのかわからないし、
古泉の顔を見たら反射的に殴ってしまいそうだ。

教室につくとハルヒがいた。なんだかんだで一年以上も一緒にいるわけだから
あいつの機嫌ぐらいはわかる。
そんなに悪くないようだ。全体的にどこか浮ついていて
それでいて何かもの足りなさそうな雰囲気を醸し出している。
谷口がスススッと寄って来た。
「おい、キョン。お前何をした」
何を期待しているか知らないが、谷口よ
「俺は何もしてないぞ。俺は」
一瞬、間抜けな顔をした谷口は何かを理解したらしい。
「そうか、そうか。人生そんな経験、誰もが一度や二度、いや三度や四度……」
もういい、谷口。お前が何回ふられたか分かるからそれ以上続けるな。
百回、それ以上と呟いている谷口を残して俺は席に着いた。

その後、特に何かが起こるでもなく放課後を迎えた。
一瞬文芸部室へ行こうかどうか迷った俺はハルヒから次のように命令された。
「キョン。あたしと古泉君はしばらく行かないから。
でも、今度の土曜日の不思議探索には行くわよ。九時に駅前に集合ね。
みくるちゃんと有希にも言っといて。じゃ」
そう言って立ち去るハルヒの背中を見ている俺。
凄まじい虚無感。
ああ、俺はハルヒが好きだったんだな、と今更ながらの認識。
いや、『だった』じゃない。今も好きなんだ。
昨日の古泉の野郎の質問に今なら答えられる。

こうやって、『呆然と立ち尽くして、いつまでも引きずって。
時がすべてを運び去ってくれるのを待つ』
完全にヘタレだな。

俺はガソリンの切れた車のようにその場に立ち尽くしていた。
それでも、残った力を振り絞り部室に向かう。
そこには長門と朝比奈さんがいた。
二人とも気遣わしそうな目で見てくる。
やめてくれ。いかに二人と言えど、今の俺の精神はものすごく不安定なんだ、
そんな視線を浴びせられたら、何するか分かったもんじゃない。
「だから私は昨日言った。知らない方がいいと」
確かに。昨日のあの光景を見ていなければ
今頃はハルヒが古泉と何を企んでいるかに対して戦々恐々していただろう。
今、俺は別のことに恐怖している。
俺のそばから大事な何かが、誰かが消えていくことへの恐怖。
「キョン君。大事な質問があります」
何ですか、朝比奈さん。こんなヘタレで絶望の奥底にいるような
俺でもよければ答えますよ。
「涼宮さんのことあきらめてますか?」
何かが切れた。
「そんなわけないでしょう!それならこんなにへこんでませんよ!」
八つ当たり。切れている俺の頭でも分かるぐらいに見事な八つ当たりだ。
情けない。今すぐ旅に出よう。どこか誰もいない所へ。

「そうですか。ならいいんです。でもこうなったのは全部あなたのせいですよ。
いつまでもはっきりしないでうじうじしてた、あなた自身の」
その断罪の言葉は俺のガキな怒りをさますのに十分すぎる重さを持っていた。
重すぎてつぶれちまいそうです。
「分かってます……分かって、ますよ」
「それで、ここからが本題です。古泉君はまだ涼宮さんに告白してません」
それが、どうしたんですか?
「もう、しっかりしてください。まだ、チャンスはあるんですよ。
こういうことは口に出して言葉にしないと――たとえお互いが分かっていても――
事実にはならないんです。告白っていう『確認』を通して初めて成り立つんです」
でも、ハルヒはしばらくここには来ませんよ。
「キョン君は涼宮さんと同じクラスでしょう?」
「あ」
「とりあえず土曜日までに誤解を解いておいてください。
それで土曜日は二人で一日中歩き回って、
夕日がきれいな川辺で告白でも何でもしちゃいなさい!」
誤解を解くのが一苦労なんだよな。
ていうか朝比奈さん。暗に成人指定な行為を進めてませんか?
「何言ってるんですか。その程度の誤解解けないぐらいなら付き合っちゃ駄目ですよ」
はぐらかされた。
「土曜日のくじ引きは私が操作しておく」
すまんな、長門。
「いい。あなたたち二人はお似合い。見ていてとても和む」
愛玩動物みたいな言い方をしないでくれ。

いろいろなパターンを検討した結果、まず謝って、それから話を聞いてもらうことにした。
気づくともう外も暗くなっていたので急いで帰ろうとすると、外は雨だった。
「ちえ、雨なんて予報聞いてないぞ」
傘もない帰り道を俺は確かな足取りで走っていた。

ところで、結論から言ってしまおう。
”ハルヒの誤解を解こう”計画はついぞ実行されなかった。
なぜなら、俺がその日の雨のせいで風邪を引いたからである。
土曜日には治っていたが、その間学校にも行けず、結局ハルヒの誤解をとけないまま
俺は運命の日を迎えた。


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