真っ白な世界。
ただ一つの目印を残して全て消えた世界。
乾ききった場所。
俺はその世界でひたすら歩き続けている。
ただ一所を目指して。
俺の会わなければいけない、いや、会いたいやつのいる所へ。


部室にて

「は?」
とは、俺のセリフ。古泉お前、壊れたのか?
「いえ、正常ですよ。自分が好意を寄せている相手が自分以外の
誰か別の人を好きだとしたらあなたはどうするのでしょう、と聞いたのですが」
突然どうした、古泉。つまり自分が横恋慕したら、ということか?
「お前がそんな突っ込んだ質問をするのは珍しいな。恋煩いか?」
「まあ、そんな物でしょうか」
マジか。お前はそんな物が似合いそうにないやつだと思っていたのだが。
「それは、どう言う意味でしょうか?」
悔しいがお前ほどのやつなら相手に不自由しないだろうよ。
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
そう言いつつ古泉はコンピュータをいじっている我らが団長の方へ流し目をやる。
……おい、本気か?苦労するだけだと思うが。
「そんなことはさておき、質問に答えてくださいよ」
そもそも俺には恋愛経験自体が少ないんだ。
そんなもん起きてみなきゃわからんだろうに。
「そう言うお前はどうなんだ」
「そうですね、こっそり後をつけたり、その二人の仲を裂くようなことをしたり……。
嫌だなあ、冗談ですよ、冗談」
一瞬、総毛立ったぞ、古泉。なんか迫力があった。

「涼宮さんはどうです?」
「あたし?」
いつの間にか俺たちの方を向いていたハルヒに古泉が話をふる。
「そうねえ……。忘れて新しい恋でも探すわよ」
「本当ですか?」
何か今日の古泉はしつこいな。ハルヒもそう思ったらしい。
「古泉君、何か今日……変、じゃない?」
「そうですか?」
やっぱり恋煩いか。
「ええ、まあ。ちょっと」
「何なら相談に乗るわよ。相手は誰、どんな子?」
さっきの流し目が芝居じゃなきゃ、お前だよ。ハルヒ。
「それを言うのは遠慮させてください」
「でも、あんな質問するくらいだから相手はほかの男に夢中なわけ?」
「そうですね。ちょっとやそっとじゃこっちを見てくれませんよ」
……?そうなのか、ハルヒが?あの恋愛は精神病の一種と宣うたハルヒが?
それともやっぱり違うんだろうか。
「そう言う時はね、古泉君。アタックしたもん勝ちよ!」
「そう簡単にいけばいいのですが」
「て言うと、相手の子はその男にぞっこんなの?」
「そうなんですよ。しかもその男性の方が鈍くて彼女の気持ちに気づいてないんです」
「ふーん」
腕組みをするハルヒ。しかめっ面で何事かを考えている。

「どうすれば彼女の気持ちがこっちに向くのやら。同じ女性の意見を伺いたい所ですね」
「そう、ねえ。失恋でもしたときに優しくされたら乗り換えちゃうんじゃない。
古泉君は格好いいんだし。
……キョンがそんなことしても撃沈するだけだろうけど」
うるさい。大きなお世話だ。
「やっぱりそうなりますかね」
思案顔になってぶつぶつ呟いている古泉。
ハルヒが俺を手招きしている。
「なんだ」
「古泉君の相手に心当たりない?」
さっきの推測を言うべきか、否か。
「……わからん」
「そうよね。何たってキョンだしね。他人の色恋沙汰なんか、ねえ」
どう言う意味だ、ハルヒ?
「そのまんまよ」
そうかい。

何か呟きながら考えている古泉とボードゲームをやる気も起きず、ぼんやりと過ごしていると
その日はそのまま解散となった。

「おい、古泉」
古泉を呼び止める。周りには誰もいない。
「何でしょう?」
「一つ確認しておくが、相手はハルヒか?」
「そうだ、と言ったら?」
まじめにハルヒに恋してんのか。
「……どうもしねえよ。ただ、大変だなと思って」
ため息をつく古泉。
「僕からもひとつ確認させてください。あなたは涼宮さんのことが好きなのですか?」
俺が?どうなんだろうな。
「好きか嫌いかで言ったら、好きだ。ただ、恋愛感情かはわからん。
餓鬼の頃求めてた非日常との邂逅を果たさせてくれたやつだからありがたいと思っているし。
後、何でも出来るしな。どちらかと言えば憧れ、かな?」
古泉が顔を寄せてくる。その眼光は鋭い。大根をすっぱりと切り落としそうだ。

「じゃあ、質問を変えましょう。あなたは去年の暮れに改変された世界にいました。
そのとき、涼宮さんがそばにいないことで、どう思いましたか?」
どうって……。
「会いたい、とか思いませんでしたか?」
つまる俺。
「そろそろ、素直になってもいいと思いますが」
「……何にだ」
ため息をつきながら
「もう、いいです。それでは、また」
と、勝手に話を打ち切って帰ってしまった。
上り始めた星を見ながら、俺は帰路についた。



|