マイクロバスが山道を登って行く。辺り一面の桜の木を見ながら、もう少し後に来ていれ

満開の桜が見れるのかな?なんて事を考えながら俺はバスの揺れに身を任せていた。
SOS団と関係者諸々を乗せたバスの行き先は、山頂にある廃校を目指している
なんでまたそんな所に向かっているかというと、春休み3日目にハルヒからかかってきた
電話が事の発端だ
「キョン!あんた明日暇でしょ?古泉君企画の不思議探検ツアー
を開催するわ、駅前に7:00時集合だからね!」
いくらなんでも急過ぎるだろ、俺にも予定が………まぁ特に無い訳だが
「動きやすい服装で来る事、遅刻したら死刑だから!」
言うだけ言うとさっさと電話を切りやがった、まぁいつもの事だし
どうせ予定があると言ったところで団長様がお許しになる訳も無い

 

翌朝、集合時間の10分前に到着して俺は驚いた。やけに大人数だ
鶴屋さんに国木田や谷口、おまけにコンピ研部長+名前は知らないが部員が2人来ている
大方ハルヒに呼び出された部長が心許なくなって連れて来たのだろう、毎度ご苦労様です
「遅い!みんなとっくに集まってんのよ!」
遅いと言われても時間前には着いているのだから責められる筋合いはないんだけどな
「まぁいいわ、じゃあ全員集まったところでバスに乗り込むわよ」

 

 

バスだって?

 

 

ハルヒが指差したバスターミナルには SOS団御一行様 と書かれた
観光バスが停まっていた
古泉の企画と聞いていたからさほど驚きはしないが
「組織」とやらは余程お金が有り余ってるらしい
毎度毎度喫茶店を奢らされる俺に少し分けてほしいものだ

 

 

「前にしたバイトの話し、そろそろいかがですか?
あなたの好きなときに好きなだけ、おまけに高収入ですよ」
俺の一人言を聞かれてしまったらしい
いつもの爽やかスマイルで古泉がアルバイトの話をまた持ち掛けてきた
あいにくだけど成績が芳しくないのにさらにバイトなどした日には
今度こそ進級出来る保証もない、学年末テストもハルヒのマンツーマン指導のおかげで
なんとか無事に春休みを迎えられたけど、下手すれば補習で今ここにいなかったかもしれ
ない
「それは残念ですね、でも貴方が留年する事はありませんよ」
「涼宮さんがあなたが留年する事を許さないでしょうし
あなたと進級することを望むはずです」
たしかにハルヒがそう願えばそうなるのだろう、しかしそんな理由でホイホイ進級出来て

谷口あたりに相当な怨みをかうだろう、なんたって共に赤点ギリギリラインであがいてい
る仲だ
そんなインチキがばれたら日にはそりゃあもう怒り狂うだろう
「勿論あなたの努力は必要です、また涼宮さんとマンツーマンで教えもらえばいいいじゃ
ないですか」
「彼女も退屈しのぎになるし、貴方には学力がつく。一石二鳥じゃありませんか」
たしかにそうだけどな…………でも
言いかけたところで古泉に遮られた

 

 

「あなたは今回の企画の内容をご存知ですか?」

 

 

そういえば古泉企画の不思議探検ツアーだとは聞いているが
行き先もなにも知らされていない
どうもハルヒは俺への連絡事項を怠る癖があるようだ、いやわざとか?

 

 

「外の山に、数年前に廃校になった学校があるのですが」

 

 

まさか肝試しだとは言うまいな

 

 

「そのまさかですよ、廃校における異常現象の調査が今回のツアーの目玉です」
それって不法進入なんじゃ……
「ご心配はいりません、廃校の所有権は機関にあるそうです、それと」
「実は今回の企画は僕が考えた物ではないのですよ」

 

 

どういうことだ?

 

 

「機関から直接企画んが送られてきたのです、私はただ涼宮さんに伝えただけ」

 

 

なんでわざわざ機関がこんな企画を作って来るんだ?

 

 

「僕も驚きましたよ、しかしツアーに付き添ってくれる運転手バスガイドは新川と森とのことですし」

 

 

朝日奈さんの誘拐事件の記憶が頭を過ぎる
あの二人が付添人ならばへんな事件に巻き込まれる事もないだろう
いざとなれば長門もいる、あまり迷惑をかけたくないけど
いざというときは頼りにしてるぜ

 

 

「涼宮さんを退屈させないために、上もそれなりに考えているのでしょう。肝試しにはい
ささか時期が早いですが」
「ちょっとあんたたちなにやってんの!?早く乗らないと置いていくわよ!」
古泉と話し込んでるうちにみんな乗車していたらしい、怒っているのか笑っているのか
わからないがハルヒはいつになくハイテンションだ
「とにかくバスに乗りましょう、歩いてむかうには少しばかり遠いですから」
それもそうだ、市外まで歩くなんてごめんだ
ステップを登りながら運転主の服装とバスガイドに扮した森さんと新川さんに挨拶をする
座席はみな思い思いの場所に座っているようだ、悲しいかな古泉の隣しか
空いていないためしぶしぶ腰を下ろす
「廃校までは2時間ほどで着くそうです、トランプを持ってきたんですがいかがでしょう?」
おきまりというか定番というか、観光バスでトランプか・・まあ他にすることもないしな
しばらく二人で婆抜きをやっていたがあまりのむなしさに5連勝したところでやめてしまった
ハルヒは車内カラオケでノリノリだ、朝比奈さんしか合いの手をいれていないが
そんな事は今のハルヒには関係ないらしくひたすら予約した曲を消化している
長門は珍しく私服だが、分厚い本を読みふけっているのはいつもと変わらない
コンピ研の連中はおそらく無理やり連れてこられたのだろうがそれなりに楽しんでいるようだ
谷口は・・・・まあ特にない、朝比奈さんを見つめるのはやめろ
鶴屋さんは早めのおやつタイムらしい、スモークチーズを嬉々としてつまんでいる

 

 

「あっはっは!ハルにゃんうまいねいっ!よっしあたしも歌うっさ!」
やはりというか当然というか鶴屋さんはかなり歌が上手かった
ほんとになにをやらせてもすごい人だ
宴もたけなわといったところでハルヒがマイクでしゃべり始めた
「もうすぐ廃校につくそうよ!まさか幽霊も真昼間から人が来るとは
思ってないわ!油断しているところをとっ捕まえるの!!」
「今回はスペシャルゲストも呼んでるし、間違いなく捕獲できるわよ!」
その溢れんばかりの自信はどこから来るんだ?
ん?・・・『ゴーストバスター』ハルヒの腕章に書かれている
ハルヒに捕まる位なら幽霊も亡霊も裸足で逃げ出すにちがいない
なんなら不動産屋を紹介してやってもいい。訳あり物件に借り手がついて
さぞや喜ばれることだろうしな

 

 

ここでやっと冒頭のシーンに戻る

 

 

バスはいよいよ廃校に近づいているらしく、木々の隙間から
校舎が見え隠れしている。何もこんなところに学校を作らなくても・・
まだ母校の坂のほうが緩やかだろう
それにしても静かだ、カラオケは終わったみたいだけど誰のしゃべり声もしない
あれ?みんな寝て・・あ・・なんだか眠くなって・・・・
薄れゆく意識の中ガスマスクを付けた森さんと新川さんが目にはいった
「どうなってんだよ?いったい・・」
隣の古泉の信じられないといった顔が俺の見た最後のバスの風景だった

 

 

頭が痛い・・・どこなんだここは

 

 

目を覚ますとなぜか教室の机に腰掛けていた、どのぐらい眠っていたのだろう
そうだ、バスが静かだと思ったら急に眠たくなって・・新川さんたちが・・・!?
顔をあげるとそこには黒いスーツに身を包んだ新川さんがたたずんでいた
脇には森さんもいる(やはり黒いスーツだった)

 

 

「よく眠れましたかな?」

 

 

いつもと変わらぬ調子で新川さんが口を開いた

 

 

「ああ、よく眠れたよ、それよりこれはいったいどういう事なんだ?説明してくれ」
「んん・・あれ?わたしカラオケをしてて・・・・・・・どこなのここは?」
ハルヒが目覚めたらしい、他のみんなも目を覚まし始めた
「ここ、どこですか?何で私こんなところに」
朝日奈さんの顔が引きつっている、古泉はなにやら考え込んでいるらしく
口を一文字に結んだまま黙りこんでいた
鶴屋さんがいない・・・別室にでも隔離されているのだろうか

 

 

「みなさまお目覚めのようで」
「それではご説明しましょう・・・・・簡単なゲームです。これから皆様に殺し合いをしていただきます」

 

 

いまなんて言ったんだ?殺し合い?そんな馬鹿な、そんなものは
映画の中の話だろう、俺たちは関係ない
コンピ研部長が声をあげた

 

 

「なんなんだ?またSOS団の悪ふざけなのか?」
「いえいえ、悪ふざけなどではございませぬ。」

 

 

新川さんの目は真剣だった。どうやら嘘ではないらしい
俺の脳から危険信号が出ている、最悪の事態らしい

 

 

「冗談じゃない、僕は帰らせてもらう!」

 

 

部長が立ち上がったと同時に鈍い音が教室に響いた
と同時にゆっくりと部長の体が倒れていく
朝比奈さんの悲鳴が響いた

 

 

あまりの事に俺は動けなかった、というよりも情けないことに腰を抜かしてしまっていた
撃った、確かに部長は撃たれた 制服が赤く染まっている
ハルヒは・・・気のせいか?笑っているような・・・そんなわけがないか
しかし妙におとなしい、ハルヒだって怖いのだろう

 

 

「勝手な行動は謹んでもらいたい、生きて帰りたければの話ですが」

 

 

長門、そうだ長門は?
「問題ない」
問題ないだって!?
「いずれわかること」
何がわかるっていうんだ?わかりたくもない、どうかしちまったのか?
「私はこのゲームに参加する」
意味がわからない、ゲームに参加する?殺し合いだぞ!?

 

 

誰も言葉を発しなかった・・・いや、正しくは誰も言葉を発することが
できなかった。目の前で人が撃たれたんだ泣き叫ぶか黙るしかないだろう
それにしてもみんな何かがおかしいな・・恐怖に引きつった顔をしているが
あまりにも冷静すぎるだろ

 

 

ゆっくりと教室内を見渡したあと荒川(もはや敬称で呼ぶ必要もないだろう)
が淡々としゃべりだした

 

 

簡単に言うとこういうことらしい、これから順番にかばん渡されて校舎をでる
中に入っている武器はかばん毎に違い、何が入っているかは運しだい
校舎を出た瞬間にゲームはスタートし、最後の一人が残るまで
殺し合いをする、まあそんなところだ。
なぜだかしらないがみんな名前を呼ばれるたびに素直に教室を出て行く
どうしたっていうんだ?なにかがおかしい
とうとう残ったのは俺とハルヒだけとなり先に呼ばれたのは俺のほうだった

 

 

「外で待ってる」

 

 

小さな声だったが伝わったようだ、コクンとハルヒがうなづく

 

 

俺はかばんを受け取ると校舎の外に出た・・・・誰もいなかった
長門のようにゲームにのったって事なのか?そんなわけないよな
しばらくしてハルヒがやってきた、表情は暗い

 

 

「なあハルヒ、取りあえずみんなと合流しよう、それからみんなで帰るんだ」
「キョン・・・あたし怖い・・」
柄にもなくハルヒは弱気だった。ハルヒだって女の子だ怖いのは当たり前だろう。
「大丈夫、何かあったら俺が守ってやるさ!」
ハルヒはうつむいて震えている、あんな恐ろしいものを
目の当たりにしたんだ、無理もないだろう
それにしても長門の言葉は以外だった、ゲームに参加するだって?
なにを考えているんだ?でもあれは俺の知っている長門だった
それゆえになおさらわからなくなる、どうしたっていうんだよ・・・長門

 

 

ターン

 

 

銃声!?
どこかで応酬が始まっている、ゲームにのっちまった奴がいるらしい

 

 

瞬間的にハルヒの手を握りしめて俺は走っていた
ここにいては危ないと本能が感じている

 

 

「ねえ!今のって!?」
「考えたたくもねえ、そんな事があるわけがない!」

 

 

気がつくと俺とハルヒは民家の中にいた、どうやら住人はいないらしい

 

 

「あれって、銃声よね・・・」
「どうやらそういう事みたいだ」
「どうなってるのよ、わけがわからない・・・」

 

 

ハルヒが両肩を抱いて座り込んでいる
俺もわからない、わかりたくもない
でもさっきのは確かに

 

 

「ええー皆様、聞こえますでしょうか?」

 

 

家の外からマイクごしの声が響いている

 

 

「私は大変感動しております、きちんとゲームの趣旨を理解していただけたようで」
「早速ですが死亡者が出ましたので発表いたします。かなりいいペースでありますな」

 

 

新川の声が響き渡る、コンピ研の二人と谷口と国木田の名前が言い渡された
嘘だろ?この4人の名前が挙がるということは手を下したのは
SOS団の誰かだということになる・・・・・長門・・・・まさか・・・・・

 

 

ガチャリ

 

 

扉の開く音がした 誰かがはいってきた!?ゆっくりと足音が近づいてくる
俺はとっさにかばんに手を伸ばそうとしたがハルヒに阻まれてしまった

 

 

「キョン・・・駄目」
ハルヒの目は真剣だった
「あんたが人殺しになるところなんか見たくない!」
どうしろって言うんだ!?すぐそこまで来てるんだ俺たちが危ない

 

 

物陰に隠れる俺たちを人影が覆った

 

 

「長門・・・」

 

 

感情のない目で見下ろしていたのは紛れもない長門有紀本人だった

 

 

「ここに・・いたのね・・・」

 

 

右手には長門には少し大きめな銃が握られていた
映画の撮影に使ったものに似ていたかもしれない

 

 

「どうしたの?・・・ゲームよ」

 

 

そういうと長門はまっすぐに銃口を向けた

 

 

「有希、ふざけないでよ!」

 

 

ハルヒが勢いよく立ち上がった

 

 

「馬鹿!なにやって・・・・」

 

 

言い終わる前に、乾いた銃声とともにハルヒは仰向けに倒れていた
なにがおこっているのか理解が出来なかった
長門が立っていて・・・ハルヒが倒れている

 

 

「キョ・・・キョン・・・・・」
「おい!ハルヒ!ハルヒー!」

 

 

嘘だろ神様、こんなことってあるかよ?いいやありえないね、あっちゃいけない
ハルヒが死ぬわけないだろ?だってあのハルヒだぜ?
SOS団団長がこんな簡単に死んでいいわけがない

 

 

「次はあなた・・・」

 

 

長門の瞳がまっすぐに俺を見ていた

 

 

「ゲームセット」

 

 

部屋の中に銃声が響いた・・・あれ?痛くないや
死ぬ間際ってこんなもんなのか?あっけないな・・・

 

 

ごめんな・・・・・ハルヒ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

って本当に痛くないな

 

 

 

 

薄れ行く意識(?)で長門を見る
気のせいか?長門の後ろに朝比奈さんがみえる
天国からのお迎えが朝比奈さんなら悪くないな

 

 

俺はハルヒの上に倒れこんだ・・・・・・

 

 

 

バキッ!

 

 

 

顔に痛みが走った、誰かに殴られたような痛みだ
同時に怒鳴り声が聞こえる

 

 

「ちょっとエロキョン!あんた誰の上に寝転んでんのよ!!」

 

 

へ?なんで?ハルヒは長門に撃たれて・・・

 

 

「さっさとどけー!!」

 

 

ハルヒに蹴り飛ばされていた、訳がわからねえ
この状況を理解できる奴がいたら今すぐで出来てほしい

 

 

とにかくハルヒは生きている、でもどうして?

 

 

長門が小さくつぶやいた

 

 

「エイプリルフール・・・」

 

 

そうか、今日は4月1日・・・一気に体の力が抜けていく、と同時に怒りが湧き上がってきた
「ふざけるな!冗談にもほどがあるぜ!」

 

 

「おや?もうおしまいですか?まだ続きがあるのに・・残念ですね」

 

 

古泉のニヤついた顔がドアを開けてやってきた

 

 

「まあまあ硬いことは言わないの♪騙されたあんたが悪いのよ!
それにしてもキョン・・かっこよかったわね~うぷぷ
大丈夫、何かあったら俺が守ってやるさ!なんて
どこの口から出たのかと思ったわよ!」

 

 

ハルヒは思い出し笑いを必死にこらえていた
あの時下を向いてふるえてたんじゃなくて笑いをこらえてやがったのかよ!

 

 

「コンピ研の連中にしっかりビデオ取らせたからね!
帰ったら編集たのむわよっキョン!」

 

 

何が悲しくて自分のドッキリビデオを編集しなければならないんだ

 

 

廃校に戻るとすでにメンバーがそろっていた
コンピ研部長は制服を真っ赤にしたまま椅子に座っている

 

 

「いんや~めがっさかっこよかったよっキョン君!あたしはシリアスな演技は苦手
だっからね!傍観者をさせてもらったよっ」
「キョン君ごめんなさい、あたしは涼宮さんの言うとおりに・・」
そんなにうるうるしなくてもおれは朝比奈さんをうらんだりしませんよ
「いやいや、なかなか男前でしたよ」
うるさいだまれ!お前の顔は見たくない
「あんまり怒らないでください、なんたって今日はエイプリルフールですから」

 

 

もはや返す言葉も見つからない

 

 

 

「まあまあいいじゃないの♪それにあんた、ちょっとかっこよかったよ・・・」
ハルヒが満点スマイルで耳元に囁く
思わずドキッとしてしまった。ハルヒ、いい顔で笑うようになったな

 

 

 

 

今の言葉だけは嘘じゃないことを祈っておこう・・・

 

 

 

「なにニヤニヤしてんのよ馬鹿キョン!」

 

 

~Fin~

 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年03月13日 01:22