『lakeside love story』

《7日目》

「「……あ。」」
約束の30分前。
俺とハルヒは喫茶店の前の横断歩道でバッタリと会った。
「キョン!?あ、あんた珍しく早いじゃない。」
「昨日会えなくて辛かったんだぞ?俺は。」
本音だ。
実際、気がつくとハルヒのことを考えているのが昨日の俺だった。
「くぅ…あんたいつからそんなに歯の浮くようなセリフを連発するようになったのよ。……あたしも寂しかったんだからね?」

「合宿は俺のキザさのレベルを上げるためにあったようなもんだからな。」
と、俺は苦笑しつつ答えた。

「ふん、まぁいいわ。行きましょっ!」
何処にだよ。
まだ何も聞いてないぞ?
「公園よ、湖のとこにある公園!」
と言うと、ハルヒはニヤッと笑った。

公園まではバスで移動。
俺はハルヒの荷物を持ってやり、混んできたら老人に席を譲ったりしていた。
「あんた意外に優しいのね……。」
と、ハルヒは驚いていたが。
お前の俺のイメージはどんなだよ。
「んと……また後で言うわ。」
そうか。楽しみにしとくぜ。
公園に着いた俺達はとりあえず歩いて、静かで人が少ない場所に陣取った。
「なぁ、ハルヒ。」
「なによ?キョン。」

「なんで湖なんだ?」
そう、これが一番気になっていた。
つい一昨日まで湖に行っていたのにまた湖ってのはこれ如何に?ってわけだ。
「う~ん……なんて言うか…気に入ったのよ。この雰囲気が。」
「そうか。まぁ俺はおま「お前と一緒なら何処でも!なんてありきたりなのは無しよ。」………。」
言われたよ。
ミスった。もっと練らないと読まれちまうな。
「悪かったよ。もっと精進するわ。」
「そうしてね。……お弁当、食べない?」
弁当?この荷物って弁当だったのか?
俺が驚いた表情をしていた。

「そ、そうよ!あ、あんたが食べないならあたし一人で食べるからいいわよ!!」
「……全部手作りか?」
ハルヒは少し俯いていた。
「うん……、あんたの好きな物わからなかったから気に入らないかも……。」
俺はハルヒの頬をつねった。
「痛っ!?なにすんのよっ!」
「バ~カ。俺がお前の作った物残すわけないだろ!」
言うや否や、俺は弁当箱を開けた。
……見事な光景を見た。
俺の好きな物しか入ってねぇ、それこそストーキングされたかのように好きな物だけだ。
「……………。」
俺は驚きのあまり、絶句していた。

「やっぱ……ダメだったかな。あはは…確認…しとけばよかった。」
ハルヒは今にも泣くんじゃないかって程、悲しい顔をしていた。
そんなハルヒを俺は抱き締めた。
「………キョン?どうしたのよ、いきなり…。」
「いいか、ハルヒ。全部説明するぞ。俺が黙ってたのは驚きでだ、弁当の中身が全て俺の大好物だったからな。」
「え?そうなの?よかったぁ…。」
その顔ヤバいぜ、ハルヒ。
理性が飛ぶ寸前だ。

「で、だ。こうやって抱き締めてるのはお前がメチャクチャ消えそうなくらい悲しい顔してたから、消えないように捕まえてるわけだ。」
俺はニヤッとして言った。

「……あたし、そんな顔してる?」
「今は元に戻ってるさ。『よかったぁ…』の時は危なく理性が飛ぶような顔だったけどな。」
「っ!?」
ハルヒは自分の顔をペタペタとしながら頬を赤らめた。
「はははは!大丈夫。お前はかわいいよ。だから飯、食おうぜ?」
「……クサすぎるわよ、バカキョン。…ありがと。」

俺は大好物で構成されたハルヒの手作り弁当を完璧にたいらげた。

しばらく飯食わなくてもいいな。……冗談だが。
ベンチに二人で座り、いろいろ話をしていると、ハルヒが俺の足に頭を乗っけてきた。
「……何をやってんだ?」
「見てわかんないの?膝枕よ。ひ、ざ、ま、く、ら!!」
この場合、逆だろ。
と思ったが、受け入れた。
こいつも疲れてるだろうからな。
「あ~、やっぱりあんた暖かいわ。気持ちいい……。」
「おいおい、お前はシャミセンか。」
俺はハルヒの頭を撫でてやった。
「にゃ~。ってあたしは猫とおんなじレベルなのっ!?」
「ははは、冗談だよ。」

「ん~……でもシャミセンが羨ましいかも。ずっとキョンと一緒でこんなことしてもらってるんだし…。」

俺の膝枕で寝てるハルヒがとても愛しく思う。
「なぁ、キス……しないか?」
ハルヒはとても驚いた顔をしている。
「ちょっ……いきなりどうしたのよ?」
俺は返事をする。
「わからん。が、今ふと幸せを感じたんだ。その幸せを放したくないんだよ。」
「キョン……。」
「…なんて俺らしくなかったな。ほら、ハルヒ。この湖に映る太陽って合宿の時のと似てないか?違うのは色だけ。」

「ほんとだ…。今まで気付かなかったけど、此所も綺麗ね。……あたしもこの幸せ放したくないわ、キョン。」
ハルヒが体を起こした。
「2回!2回するわよ!お互いに1回ずつね!」
「はあ?」
俺はハルヒの言ってることが理解出来なかった。
すると、ハルヒが照れながら言った。
「だから……ほら、その…キスよ。あたしから1回、キョンから1回するの!」
そういうことか。
「俺からすることでハルヒが、ハルヒからすることで俺が幸せを掴んだままに出来るもんな。」
ハルヒはうんうん、と頷いた。
「キョン……目、つむって?」

俺は言われるままに、目を閉じた。

唇に柔らかい感触。
ハルヒはキスしたまま、10秒程離さなかった。
「……はぁ。キョン、どうだった?」
ハルヒはいたずらっぽく笑った。
「ああ、ちょっと長くて驚いたが幸せだ。」
すると、ハルヒは目をつむって返事をした。
「じゃあ……次はキョンの番ね?」
「ああ。」
俺は少しいじわるしてやろうと考えた。

目をつむっているハルヒに唇を重ねる。
ピクッとハルヒの体が動いた。

瞬間、俺は舌を入れた。
「ん……んむっ!?」
ハルヒは驚いたのだろう。
もしかすると目を開けたのかもな。知らん。
俺は目を閉じたまま、ハルヒと少しだけ大人のキスをした。
「………っふぅ。」
12、3秒くらいか。
俺が目を開けると、そこには手を振り上げているハルヒがいた。
まぁ一発くらいは我慢するか。
………来ない。
しかもハルヒは俺に顔を隠しつつ抱きついていた。
「ず、ずるい!するんならするって言いなさいよ!!」
「言ったらお前の感じる幸せが減るだろ?幸せ……感じたか?」
ハルヒの頭を撫でながら俺は聞いた。

「バカ……。幸せすぎて…ほんとに溶けちゃいそうだったわよ…。キョンは?」
「俺もだよ。メチャクチャ緊張したしな。」


それからは、少し話した後、帰ることにした。
自然と手をつなぎ、合宿所の湖より明るい湖畔を歩く。

つないだ手を二度と離したくないと思い、力を入れる。
握り返される少し汗ばんだ俺の左手。同じくハルヒの右手。

2人分の幸せが少しでも長く続くように、限りなくゆっくりと、俺達は湖畔を歩いて帰った。

《7日目終了》



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