――Asahina Mikuru


とても綺麗な春の夜空を見上げ、わたしは思います。
このあと未来に帰らなきゃいけないこと。
そして、あの人のことを。

わたしがこの時間に来て、もう五年になるかなぁ?
なぜわたしみたいな役に立たない人が送られたんだろう?
わたしは初め、不思議に思っていました。
でも今なら、分かります。
『役に立たない』わたしを時間が必要としているんだって。

わたしはなんであの人を好きになってしまったんだろう?
顔なら古泉君のが何倍もかっこいいし、
背だって高くって、笑顔も素敵だしね。
でもわたしはあの人が好き。大好き。
でもでも、この時間での恋愛は最重要の禁則なの。
障害が大きいほど恋は燃え上がるって言うけど、そんなの嘘。
だって、あの人は絶対振り返ってはくれないもん。
胸の大きさは彼女に負けてないし、
顔だって彼女よりかわいいと思うんだけどな。どうしてだろう。
わたしに足りないものってなに?

わたしはあのベンチに座り、星空を眺めます。

わたしはなんであの人を好きになってしまったんだろう?
あの人の心は移り気だし、
古泉君のほうが女癖もなさそうだし、幸せになれるにね。
でもわたしはあの人が好き。大好き。
どうしたら、わたしを好きになってくれますか?

ああ、苦しいな。
こうして、あの人が来るまでベンチで待つ。
早く顔が見たい。早く、好きっていってしまいたい。
それにしても星空が綺麗だな。街灯にまとわりつく蛾はまるでわたし達のよう。
彼女が街灯で、わたし達が蛾なの。光を放つ彼女の元に集まるの。
でも、朝が来ない夜はないっていうでしょ?
そうしたら街灯は消えて、わたし達はバラバラになっちゃうの。
二度と会えない。一夜だけのダンスパーティー。
いつか別れる時が来るの。
それが、早いか遅いかだけの違いだけ。なら、遅いほうがいいよね。
そんなことを考えていると、わたしはとても悲しくなる。
だって、わたしは彼女がいないとあの人とは一緒にはいられないんだもん。

わたしってかわいいよね? 彼女より、かわいいよね?
あの人の彼女を見る目に、わたしは嫉妬する。
そう、わたしはあの人が好きなんです。大好きなんです。

わたしは溜息を一つつくと、星空を見上げます。

もうすぐあの人がやってくる。
手ぐしで髪を整えて、わたしの最高の笑顔を作る。
自分でも気持ち悪いと思う。あの人に媚を売ってるみたい。
でも、どうしたらいいか分からないの。
どうしたら、わたしを好きになってくれますか?

少し泣きたくなってきちゃった。
だって、だって。
わたしのこと好きになってくれないんだもんっ!
それに、あの人とは今日でさよならしないといけないの。
ああ、好きってまだいえてないな。言わなきゃ伝わらないのは分かってる。
わたしは怖くて言えない。だって、断られるに決まってる。
あの人が好きなのは彼女なの。むかつくくらいお似合いだしさ。

もうすぐあの人がやってくる。
この手紙をあの人に渡さないと。二つ書いてきた。
本当の気持ちが書いてある長いものと十分の一も気持ちを伝えられてない短いもの。
どっちを渡そうかな。
本当の気持ちを言ってしまったら、わたし達はバラバラになってしまうのでしょう。
でも、わたしはあの人が好き。大好きなの。
どうしたら、わたしを好きになってくれますか?

もうすぐ愛しいあの人がやってくる。
いつものあの笑顔でわたしを迎えてくれることでしょう。
でも、わたしが欲しいのはその笑顔じゃないの。
わたしだけの、特別の、そんな笑顔が欲しかった。

わたしはゆるやかに流れる時間を感じながら、星空を見上げます。

どうしたら、わたしを好きになってくれますか?
もうすぐ愛しいあの人がやってくる。
特別じゃない、いつもの笑顔で。

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