ハルヒ「鳥人間コンテストに出るわよ!」
…はじまったか。
いつもの放課後の部室、皆がそろそろ帰り支度でも始めようかとしていた時にハルヒの声が響いた。
最近おとなしくしていたのでそろそろ動き出しそうなはしていたのだが…鳥人間コンテストねぇ~。
鳥人間コンテスト…説明するまでも無いと思うがとりあえず説明しておこう。
毎年琵琶湖で開催される人力飛行機の大会だ。
ハルヒ「反対意見は?無いわね!それじゃ明日の土曜日、午前10時にここに集合!
予定ある人はキャンセルしてきなさい。
以上、それじゃ。」
…好き勝手な事を言って帰って行った。
まぁ~今更ハルヒの言葉に驚い奴はここには居ないのだがね。
みくる「鳥人間コンテストですか…」
古泉「相変わらず唐突ですね…でもそろそろこちらでイベントでも用意しようかと思っていた所です。
面倒が省けました。」
キョン「…それじゃ明日から忙しくなりそうだし俺達も帰ろう。」
俺達も帰り支度を済ませ部室を後にした。
…一人部室に残った少女がつぶやいた。
長門「鳥人間コンテスト…」

~次の日~
10時ジャストか…当然みんな揃っているんだろう
…ドアを開けたとたん
「遅い!罰金よ!」
…なんだろうな。
ガチャ
キョン「うぃ~す。」
俺は部室に入った…予想していた言葉は無かった。
…ってか予想外の光景が目に飛び込んできた。
みくる「あ…キョン君おはようございます。」
古泉「…おはようございます。」
ハルヒ「…おはよう。」
キョン「おはよう…えっと…古泉、説明を求めたい。」
古泉「…いえ…僕が求めたいぐらいなのですが…。」
ふと朝比奈さん、ハルヒの顔を見る。
…なるほど…俺を待っていた訳だ。
はいはい、期待に答えて俺が聞きますよ。
俺はそのまま"それ"の前に行きたずねた。

キョン「…長門…いや、ペンペン君、何故そんな格好をしているんだ?」
"それ"は見ていた本から視線を外し俺を見ながら言った。
長門「…鳥人間コンテスト」

俺の目の前には一羽のペンギンが座って本を読んでいた。
正確に言おう。ペンギンの着ぐるみを着た長門だ。
胸には[ペンペンくん]と名札が付いている。
キョン「長門…その格好もの凄く似合っていて出来る事なら家に持って帰りたいくらいってくらい可愛いんだが。」
長門「…?。」
キョン「鳥人間コンテストってのはだな…」
俺は長門に鳥人間コンテストとはどんな大会なのかの説明をした。
キョン「…な訳なんだ。」
長門「…そう。」
長門はそうつぶやくと再び本に目を落とした。
キョン「長門?。」
長門「問題無い。」
キョン「…問題無いそうだ、ハルヒ。」
俺は団長どのにそう告げた。
ハルヒ「そ…そう、ご苦労だったわねキョン。特別に今日の罰金は無しにしといてあげる。」
そりゃどうも…
ハルヒ「それじゃミーティングを始めるわよ。」
今度開催される鳥人間コンテストに参加する。

設計はハルヒ。組み立ては俺達でする事に決まった。
材料は…適当に手に入る物で作るって事になった。金が無いからしかたない。
その日の午後、ハルヒは飛行機の設計。
俺達は材料の調達となった。
古泉「材料ですか…涼宮さんは「拾ってこい」と言いましたが…なかなか見つかりませんね。」
…当然だ。簡単に見つかるなら苦労はしない。
みくる「…どうしましょうか…まだ角材一本しか見つかってません。」
…どうしたものか。
古泉「しかたありませんね…機関の方で用意しましょう。」
古泉はそう言うと携帯を取り出しどこかに電話した。

キョン「…材料はなんとかなりそうですね。」
みくる「そうですね…正直これ以上は…」
俺達は早く部室に戻りたかった。何故ならば…
ペタペタ…
後ろを振り返るとペンギンがついてきている。
おかげで俺達は注目の的だ。
キョン「…なぁ長門…」
長門「問題ない。体温調節機能は付いている。暑くはない。」
キョン「いや…そうじゃ無くて…。」
俺がペンギンと話していると…
古泉「お待たせしました。学校へ戻りましょう。」
キョン「話はついたのか?」
古泉「戻る頃には学校に届いているはずです。」
やれやれ、俺達は学校へ戻った。
~部室~
ハルヒ「早かったわね。」
部室に戻るとハルヒがそう言った。
キョン「ああ。」
ハルヒ「…で首尾は?」
キョン「バッチリだ。ついでに制作場所に使えそうな場所も確保して来たぞ。」
ハルヒ「へぇ~やるわねぇ。」
キョン「んでお前は?設計図は出来たんだろうな。」
ハルヒ「当然よ!」
そう言ってハルヒは設計図を見せた。
古泉「…これは…さすが涼宮さんですね。」
キョン「…よくわからん。」
古泉「この通りに作れたら問題無く飛ぶでしょう。」
キョン「後は俺たち次第って事か…。」
ハルヒ「んなら早速組み立てよ。」

~校舎裏~
みくる「あ、こっちですよ。」
校舎裏に来た俺達を朝比奈さんとペンギンが迎えてくれた。
ハルヒ「なかなか良い場所ね。ここなら雨が降っても大丈夫そう。」
ここは校舎裏にある旧自転車置き場だ。
屋根がある上に現在は使われていない。
ハルヒ「よ~し、それじゃみんな、この設計図の通りに作って頂戴。」
俺達はハルヒの設計図を見ながら組み立てを始めた。
ハルヒ「そこ、違うわよ。もっと強くしばって…。」
…うるさいな。お前も口ばっかり動かしてないで手も動かせよ。
ハルヒ「何言ってんのよ。あたしはこれよ!」
ハルヒはそう言って左腕の腕章を見せた。
「総監督]
…へいへい。
みくる「涼宮さん、ここは…。」
ハルヒ「え、みくるちゃん、そこはねぇ…。」
ハルヒは朝比奈さんの所へ行った。
古泉「調子はどうですか?」
来たなニヤケ顔。
キョン「ああ、ぼちぼちだ。総監督どのがうるさいのがつらいがな。」
古泉「そうですか、そのわりには楽しそうに見えますが。」
キョン「…まぁな。」
…そう。実際楽しいのだ。昔から工作は嫌いではなかったし、何よりみんなでこうしているのが楽しい。

キョン「人力飛行機作り。良く考えたら別に特別な事では無いよな。」
古泉「そうですよ。」
日々を無為にだらだらと過ごしている人間にとっては特別な事かもしれない。
だが日本で今俺達と同じように鳥人間コンテストに向けて飛行機を作っている高校生は結構いるだろう。
そのいずれももこの時の事を"楽しい思い出"として将来まで覚えている事だろう。
つまりそういう事だ。
…ペンギンが近づいて来た。
キョン「おい、長門…もといペンペン君」
長門「?。」
ペタペタ
長門「何?」
キョン「今回はズル無しだからな。」
たとえ大会で優勝しようがまったく飛ばずに海に落ちようがどちらでもよい。
そのいずれになっても俺の中では楽しい思い出として残る事だろう。
長門「了解。」
ハルヒ「そこ、無駄口叩かない!」
…へいへい


こうして人力飛行機作りは進んで行った。
~3日後~
ハルヒ「出来た~。」
キョン「出来たな。」
古泉「完成しましたね。」
みくる「頑張りましたね。」
長門「コクン。」
俺達の飛行機が完成した。
連日の作業により予定より早く完成した。
ハルヒ「素晴らしいわね。これなら琵琶湖縦断も楽勝よ。」
…いつもなら
「んな訳あるか」
とでも言いそうな俺だが今回ばかりは俺もそう言いたくなった。
"こいつとならどこまでも飛べる"
がらにも無くそう思えてくる。
ハルヒ「じゃあ早速飛んで見ましょうか。」
キョン「そうだな。試飛行といくか!」
~そして~
…なんでだ?
ハルヒ「さぁ、キョン!」
…さぁ、ってお前…
今俺は断崖絶壁の前で人力飛行機に跨っている。
キョン「…試飛行で何故失敗したら確実に死ぬような場所から飛び立たないといけないんだ?」
ハルヒ「失敗を恐れてどうなるのよ。それに落ちる訳無いでしょ。」
ハルヒは自信満々だ…たしかに俺もこの飛行機は飛ぶと信じている。しかしこれとそれとは話しが別だ。いきなりここから飛ぶのは狂気の沙汰としか思えない。
みくる「あの…さすがにここは危険かと。」
古泉「…もう少し低い所にしても良いような気がしますが…。」
そうだ、言ってやれ。

ハルヒ「…何?別にキョンが絶対飛ぶ必要は無いのよ。いっその事くじ引きで…」
みくる「キョン君頑張って下さいね。」
古泉「あなたならいけます。」
…ちくしょう。
ペタペタ…
長門ペンギンが近づいてきた。
長門「…これを。」
長門は封筒を俺に手渡した。
長門「もしもなにかあったら読んで。」
…ありがとうペンペン君。俺の味方はお前だけだ。
ハルヒ「行かないと終身雑用係に格下げよ!」
…長門の保険もあるし…行くか!

キョン「よし、行くぜ!」
ハルヒ「その言葉を待っていたわキョン。ではスタンバイしなさい。」
俺は位置に着いた。
ハルヒ「これはアラン・シェパードなみに名誉な事なのよ。」
誰だよ…俺は長門をチラッと見た。
(頼むぞペンペン君…)
ハルヒ「鳥になって来なさい!」
…GO!
俺は全力でペダルをこいだ。
うぉぉぉぉぉ!
バッ
古泉「おお!!」
みくる「わぁ!」
長門「…。」
ハルヒは胸を張って言った。
ハルヒ「ほらみなさい!!」
…飛んでいる。俺は飛んでいるんだ。俺達の飛行機は見事に空を飛んだ。
キョン「すっげ~。」
初めて空からみる自分の街…悪くない。
後ろを振り返ると朝比奈さんが手を振っている。
…最高だ。
俺がそう思った時だ。
ピリ
…ん…いま…ピリって…
ピリピリ
ガクン
うを!
翼が…破れた!

俺は崩れそうなバランスを必死に立て直そうとするが…
ピリ
…焼け石に水だ。
…そうだ…長門の手紙…
俺は懐から封筒を出し中から手紙を取り出し広げた…そこにはこう書かれていた。
【がんばれ】
…長門ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
古泉「何やら長門さんの名前を叫んでいるようですが…」
長門「ズルは駄目。」
ピリピリピリ
さらに翼が破れる。
遂に飛行機は墜落を始めた。
…死ぬ…死ぬ…確実に死ぬ…
どんどん地面が近づいてくる。
…そして地面にぶつかる瞬間
俺の意識はブラックアウトした…

…君…ョン君…キョン君!
…ん?
みくる「キョン君!」
キョン「わっ!」
俺は飛び起きた。
みくる「よかった…。」
…あれ…たしか俺は…そう、墜落したはず。
体を見るが怪我一つ無い。
長門?
俺は長門を見るがペンギンは首を振った。
ハルヒ「さすが私の設計した飛行機ね。あんな動きをするなんて。」

キョン「古泉どうなったんだ?」
ニヤケ顔は苦笑いしながら言った。
古泉「実はあの時…」
~回想~
みくる「落ちちゃう!」
古泉「ああ!」
長門「…間に合わない。」
飛行機は真っ直ぐ地面に向かって行った。
その時ハルヒが叫んだ。
ハルヒ「何落ちてんのよ!あたしが設計してみんなが組み立てた飛行機が墜落する訳ないでしょ!!」
その瞬間地面と激突する寸前の飛行機は垂直に飛び上がり後は静かに着陸した…
~回想終わり~
古泉「…と言う事です。」
…それってつまり…
古泉「ええ、彼女の力です。彼女が許さなかったのですよ…墜落を…。」
…改めて思うがやはり凄まじいなハルヒの力は…おかげで命拾いしたぜ。


その後
飛行機の損傷は激しく結局鳥人間コンテストに出場する事は出来なかった。
~部室~
俺はいつもの様に古泉とオセロをしていた。
キョン「ところで古泉、」
古泉「なんですか?」
キョン「結局鳥人間コンテストに出られなかった訳だ…やっぱり例のアレは出たのか?」
古泉「アレ?…ああ、閉鎖空間ですか?」
キョン「ああ。」
古泉「心配いりません。出ませんでした。」
キョン「出なかった?」
古泉「ええ、我々も警戒していたのですが…おそらく満足したのでしょうね。
大会に出られませんでしたけどたしかに我々の飛行機は飛んだのですから。」
キョン「…なるほどね。」
古泉「…それに今回は僕も嬉しかったですよ。」
キョン「?。」
古泉「気づきませんか?話しましたよね墜落寸前に涼宮さんの叫んだセリフを。」
キョン「…あ~。」
『何落ちてんのよ!あたしが設計して
"みんなが組み立てた"
飛行機が落ちる訳ないでしょ!』
古泉「涼宮さんの力は本気で思わないと発動しません。涼宮さんは本気で僕達を信頼してくれてるって事ですよ。」
キョン「はは…そうだな。嬉しいなそれは。」
古泉は微笑みまたゲームに集中しだした。
…そろそろハルヒが入ってくる頃か。
さて、今度は何を言い出すのかな…ま、とりあえず付き合ってやるかな。
…おしまい。

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