…………。

…………?

…………。

学校だ。

気がつくと俺は、いつもの教室に立っていた。
薄暗い教室に、窓から月明かりが差している。
また、か。
俺は、自分の席に腰掛けてみる。窓の外の月が綺麗だ。

………誰もいないのか。

まだ俺は夢の中なんだよな。随分と長い夢だ。夢はいつから始まったんだっけな。……わからない。覚えていない。まぁ、とにかく早く覚めて欲しいものだ。
……そういえば、ハルヒと初めて出会ったのもこの教室だったな。何と言ってたっけ。「ただの人間には興味ありません!」だったっけか。ははは。

「ただの人間には興味ありません!」

突然背後から発せられた声。ハルヒの声だ。
俺は振り返ってみる。……しかし、そこには誰もいなかった。何だ、今のは。
「そっちの方が面白いじゃないの!」
また、ハルヒの声。今度は、横から聞こえてきた。俺は視線を横に滑らせる。……誰もいない。
「あー、もうつまんない!」
まただ。声をした方を確認する。……やはり、誰もいなかった。
俺は、軽く息を吐いて、再び窓の外に目をやった。
「ね。」
背中に何か鋭い物が刺さる感覚。

振り返ると、ハルヒが俺の背中をシャーペンでつついていた。

「もしかして、あたしを探してる?」
いつものような表情で微笑むハルヒ。
「探してるんでしょ?」
ハルヒはシャーペンの先を上下させながら言う。
「でもね、無駄よ。」
シャーペンをちょいと立てると、ハルヒはふっ、と息を吐いて、

「だって、あたしはいないんですもの。」

……気がつくと、そこにはハルヒの姿はなく、誰も座っていない机だけがあった。
何だってんだ。
俺は、不気味に感じて教室を出た。







いつもの習慣か何なのかはわからないが、教室を出た俺の足は、気付くと自然にSOS団の部室に向かっていた。
こんこん、とドアをノックする。これもまた、いつもの習慣。
「どうぞ。」
ドアの向こうから発せられた、可愛らしい声。朝比奈さんの声だ。……もしかして、朝比奈さんがいるのか?
俺は、ノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開いた。
………。
部屋には誰の姿も無く、ただ月明かりが部屋を照らしていた。
軽く息を吐き出す。何なんだろうね、これは。俺は、いつものように長テーブルの前に歩いていき、パイプ椅子に腰掛けた。誰も、いないな。俺は、長テーブルの一点をじっと眺める。
「お待たせしました。」
突然、視界にゆらゆらと湯気を放つ湯呑が入ってきた。それを持つ白い手を辿ってみる。
「朝比奈…さん?」
朝比奈さんは、ふふふ、と微笑むと、
「いないよ。」
「え?」
次の瞬間、朝比奈さんの姿は無くなっていた。手元には緑色の液体で満たされた湯呑だけが残っている。
「今日はチェスを持ってきてみました。」
声のした方を見る。今度は古泉か。
「あ、僕はいないからできないんでしたね、失敬。」
気付くと古泉の姿は消えており、しんとした空気が再び部室を満たしていた。
何だ。さっきからこんなのばっかだぞ。

ぺらり。

静まり返った部屋の空気を僅かに揺らす音。窓辺を見ると、いつものように長門が本を読んでいた。
「おい、長門。」
俺が呼びかけると、長門は視線を本に落としたまま、しばらく間を空けて、
「いない。」
……消えた。
何だ何だ。さっきから何なんだよ、これは。
バンッ
「やっほー!」
大声が部室に響く。ハルヒか、と思って、声のした方を見る。しかしそこにあったのは、風でぎいぎいと揺れるドアだけだった。

「何も無いのって、怖いでしょ。」

朝倉の声。
「失うのも怖いし、何も無いのも怖い。
なら、失わないような世界にすればいいじゃない。」
俺は辺りを見回す。朝倉の姿は無い。
「どうして現実に戻りたがるの?
現実では、持ってるものはいずれ無くなっちゃうでしょ?
どうして、そんな世界に戻りたいの?
こっちの方が、ずっといいよ。」
不気味な声で朝倉は続ける。
「あなたが望むのなら
私は何でも用意してあげられるわ。
だって私はあなたで、あなたは私だもん。
仲良くしましょう、ね?」
何を言ってるのかさっぱりわからん。
「そんなのどうでもいい。
お前と仲良くする気も微塵も無い。」
俺は、姿が見えない朝倉に向かって言ってやった。
「あらあら。」
くすくすと朝倉が笑う声がする。
「本当は望んでいるんでしょう?
あなたは、涼宮ハルヒとキスをしたじゃない。」
キス? 何の話だ。
「とぼけないでよ。
あなた、結婚式で、キス、したでしょ?」
結婚式……。俺の頭の中にふとある場面が浮かぶ。そうだ、ついさっきの話だ。
「あなたはハルヒと結ばれる事を望んでいた。
だから、あの結婚式は現れたの。」
何だって? 誰が誰とどうすることを望んでいただって?
「もういいじゃない。意地を張らなくても。
ここにいれば、そんな意地を張る必要もないわ。
でも、現実じゃそうもいかないでしょ?」
何を言いたい。
「だから、何度も言ってるじゃない。
あなたが望むのなら、私は何でも用意してあげられるって。
ハルヒとの、幸せな生活でも、SOS団の団員との友情でも、何でも。」
………何でも?
「そう。
だから、一緒に生きようじゃないか、俺。」
朝倉の声がみるみる低くなっていく。
「共に生きよう。この世界で。
俺はお前でお前は俺なのだから。」
その声は、俺の声だった。
俺の声……。お前は、俺なのか?
「そうだ。もう我慢することはない。
無理することは無い。
お前の事は俺が一番よく分かっている。」
気付くと、目の前に俺が立っていた。
「さぁ。」
俺は、俺に手を差し伸べてきた。
この手を取れば、俺は、俺と………。

――駄目。――

……! 何だ、今の声は。
「気にするな。お前の心の闇が聞かせる幻聴だ。」
目の前の俺が言う。

――その手を取っては駄目。
     その手を取ってしまうとあなたはもうこちらに帰って来れない。――

この声は……。……長門?
「惑わされるな、俺。さぁ。手を。」

――よく聞いて欲しい。あなたの身体は今、昏睡状態にある。――

「何を迷っている? 幻聴に惑わされるほど、お前の心は弱かったのか?」

――あなたの身体は情報ウイルス体により乗っ取られている。
     このウイルスは、人の心の闇を巣食い、そこを住処にする。――

「お前の心は弱くない。俺が一番分かっている。
そうだろう? 俺はお前なのだから。」

――目の前にいる人物は、あなたではない。ただのウイルス。――

「俺は、お前だ。お前は俺だ。
そうだろう?」

――惑わされないで。涼宮ハルヒはあなたを待っている。――

「仮に、だ。このまま、元の世界に戻ったとしよう。
戻ったとしても、そこに、ハルヒや古泉や朝比奈さんや長門がいる保障は無い。
目覚めたら全員死んでいて自分独りだという可能性もある。」

――私もあなたが帰ってくる事を望んでいる。私は、あなたとまた図書館に行きたい。――

「それに、先程も見ただろう?
現実の世界に存在する、妬み、恨み。
失う悲しみ。何も無い寂しさ。
現実は、そのようなものが溢れているんだ。」

――こちらにいる者は皆、あなたの帰還を望んでいる。――

「もう、無理をすることは無い。
こちらの世界にもハルヒはいる。古泉もいる。長門もいる。朝比奈さんもいる。」

――お願い。――

「さぁ。手を。」

目の前の男は、再び手を差し伸べてきた。
どうすればいい? ……いや、もう心は決まっている。

俺は男の手に自分の手を伸ばすと――

その手を弾いた。

「誰だ。お前は?
お前は俺なんかじゃない。
俺は一人しかいない。お前なんかが俺の名を語るな。」
男は顔を歪ませる。
「何を言うんだ、俺よ。
俺は、お前だ。お前も俺だろう?」
「いいや、違うね。お前なんかと一緒にするな、このウイルスめ。」
男は眉間に皺を寄せ、
「ウイルス?
何を言う。俺はお前の全てを理解している。
お前の事に関して知らない事など無い。」
知らないことなど、無い、だと? 何大口叩いてやがる、このウイルスが。
「なら、お前。
俺が一番好きな奴の名前を言ってみろよ。」
男は、俺の問いかけに、にやり、と笑うと、
「涼宮ハルヒ、だろう。」

「違うね。」

やっぱりな、こいつはウイルスだ。俺なんかじゃない。
俺は、驚いたような表情をしている男に向かって言ってやった。
「俺が好きなのは、"本当の"ハルヒだ。
俺の妄想の中のハルヒなんかじゃない!」
俺が叫ぶと、周りの部室がガラスを割ったかのように、音を立てて砕け落ち、白い空間が現れた。
「この…………!」
男は、歯軋りをしている。
「さぁ、自称俺さんよ。
さっさと俺を元の世界に戻してもらおうか。」
瞼を伏せると、ふぅ、と小さく息を吐き出し、落ち着いたような顔になって、
「どうしても、戻る、というのか。
何故、そんなに現実にこだわる。」
はっ。愚問だな。
「俺は俺の妄想の中でなんて生きたくない。
それに、俺が知っているのはこの世界の奴等じゃなくて、
元の世界の奴等だ。
長門とは図書館に行く約束をしているし、
古泉のボードゲームにも付き合ってやらんといけないし、
朝比奈さんの淹れてくれたお茶も飲みたいし、
うるさいハルヒの世話もしてやらないといかん!」
男は、俺の目を見て、肩をすくめ、小声で「やれやれ」と呟く。
「そんなしょうもない事のために現実に戻るっていうのか?」
やはり、こいつはただのウイルスだ。
「お前は全然分かっていない。
しょうもない事? ふざけんな。
俺にとっては、それがどんな事より大切なんだ。」
俺の言葉に、男は真面目な顔をする。
「どうしても、なのか。」
「どうしても、だ。」
男は、深く息を吐き出し、
「仕方ないな。」
元の世界に戻してくれるのか?
「いいや。」
男は、俺に向かって何かを投げた。それは床に落ちると、カランカラン、と、金属音を発する。
これは……剣?
「戦え。
俺はお前。お前は俺。
敵対した俺同士は、どちらかしか生きれない。
どうしても、現実に戻りたい、というのなら。
俺を斬り捨てていけ。」
男は、右手を開いて、手の甲を顔の鼻に近づける。次の瞬間、男の掌に切れ目が入り、そこからぬるりと刃が生えてきた。男は、なぎ払うようにそれを振ると、
「行くぞ。」
重心を低くして、俺に向かって突進して来た。俺は、急いで、落ちている剣を拾う。
男は、俺の目の前まで来ると、右手を上に振り上げ、一気にそれを振り下ろした。俺は剣を横にして、それを受け止める。くそ、アクションゲームは得意なんだが、実際に剣を握るとそうもいかんようだ。
男は手を引くと、刃を俺の胸を目がけて突いてきた。俺は肩を後ろに下げ、それを避ける。ナイス、俺の反射神経! 俺は、そのまま男の右手首を掴むと、右手に握った剣を思いっきり振りかぶって―――

「やめて、キョン。」

……は?
男が、いつの間にかハルヒの姿になっている。
「……また私を刺すの?
もう、キョンには刺されたくないよ……。
やめて、もうやめてよ………。」
ハルヒを刺した時の光景がフラッシュバックし、俺の身体は凍ってしまった。
「おや? 好きなのは"本当の"ハルヒじゃなかったかな?」
ハルヒの格好をした男は、手首を掴む俺の手を振り解き、刃を縦に振った。
「……痛っ。」
刃が俺の頬を掠める。刃が当たった部分が熱くなり、その部分がパックリと割れた。
「こんの……!」
俺が剣を振り下ろそうとすると、
「……また刺すの?
また私を殺すの?
私は、キョンのこと好きなのに。」
惑わされるな惑わされるな惑わされるな!
俺は、目を瞑って、剣を振り下ろした。

ずしゃっ。

ゆっくりと目を開けると、ハルヒの身体の中心に、赤い筋が入っていた。ハルヒはその場に倒れこむ。
「痛い…痛いよ……。」
まだ生きてるのか。くそ、嫌なことを思い出させやがる。次がとどめだ。

「そう、とどめ。」

朝倉の声。
「そのまま、ブスリっていっちゃえば。
あなたが、大好きなハルヒに。」
振り返ると、朝倉が立っていた。
「私のキョンくんを奪った涼宮さんなんか死ねばいいんです。」
「僕の涼宮さんじゃない涼宮さんなんて、いりません。
さぁ、とどめを。」
朝比奈さんと、古泉が現れた。
「たまに呼び出すと思ったらいっつも変なことにばっか使いやがって。
涼宮なんか消えちまえばいいんだ。やっちまえ、キョン。」
「正直、僕も涼宮さんにはほとほと迷惑してたんだよ。
いなくなった方がせいせいするね。」
続いて、谷口と国木田も。何だよ、お前等。
「正直、あたしもハルにゃんには困っていたにょろ。
さっさと殺しちゃいな、キョンくんっ!」
鶴屋さん。鶴屋さんまで、何を。
「涼宮ハルヒを観察するのにもう疲れた。
もう結果はいらない。
殺して。」
長門……。お前まで、何を言っているんだ。
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
ハルヒと俺を中心に、周りを取り囲んだ連中は、そう唱え始めた。
「キョン……やめて……。
キョン……あんただけは……
私を守ってくれるよね……?」
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
やめろ。
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
やめろ!
「殺せ。」
「殺せ。」
「殺せ。」
やめろと言っている!
俺は、持っていた剣を横に振った。
その剣の動きに合わせて、周りを取り囲んでいた奴等の腹部が真っ二つになる。
「キョン……やっぱりあんたは………。」
ハルヒが俺を見上げている。
「ハルヒ………。」
俺は、ハルヒに手を差し伸べてやろうと、右手を――


――キョン、早く帰ってきなさい!――

……! 今のは?

――団長を待たせたら罰金だって、
      何度も言ってるでしょ!? さっさと起きなさいよ!――

ハルヒの叫び声だ。

――あたしずっと待ってるのよ! 早く起きなさい! キョン!――

…………。そうか、ハルヒは――

目の前の女が俺を見上げている。
「キョン……あんたは……あたしの味方よね。」
「いいや。」
もう、迷わないさ。

俺は、刃を下にして、剣を立てると。

それを目の前の奴の額に向けて、思いっきり振り下ろした。



パキッ。
何かが割れたような音と共に、目の前が眩い光に包まれた。
強い風が吹く。


「あーあ。俺の負けだぜ、俺よ。
ま、涼宮ハルヒとお幸せにな。」



白い……。白い、天井。
焦点が合わない目で、俺はじっとそれを見つめる。
「……キョン!?」
誰の声だ?
「キョン! あんた、目が覚めたのね!」
ハルヒの声?
俺は、天井に向けていた顔を、ゆっくりと横に向けてみる。
ああ、やっぱりハルヒだ。
「大丈夫、キョン! なんかおかしいところ無い!?」
お前の顔がおかしい。
「な……! 何馬鹿なこと言ってんのよ!」
ハルヒは俺の腹に向かって固めた拳を打ちつけた。俺は思わずうめき声をあげる。
「あ。」
ハルヒはガラス窓を割ってしまった小学生のような顔をして、
「ごごごごめんキョン! あんた病人だったわよね!
ごめん、ついいつものノリでやっちゃったわ!」
ホント、とんでもない奴だな。つい、じゃねーっつーの。
「な、何よ、あんたが変な事言うから悪いんでしょ!?」
今度は逆ギレかよ。ホントにとんでもないな。
ま、こんなとんでもない奴に会うために俺は戻ってきたんだけどな。
「ハルヒ。」
「な……何よ。」
「ただいま。」
ハルヒは少し目を見開く。そして、またいつものような笑顔に作って、


「おかえり。」



エピローグ

ハルヒに聞いた話によると、部室でいきなり倒れた俺は、すぐに救急車に運ばれ、病院で検査を受けたところ、原因不明の病気だと診断されたそうだ。まぁ、ウイルスはウイルスでも格が違うからな。そんじょそこらの医者に治せるのなら苦労はしない。そのまま昏睡状態に陥った俺は、なんと1ヶ月も眠ったままだったそうだ。1ヶ月……随分寝たな。
「それで、ハルヒは一ヶ月ずっと俺の看病をしてくれてたのか?」
俺が聞くと、ハルヒは何故か焦ったような顔を作り、
「そそ、そんなわけないじゃない。
あ、あんたなんかどうでも良かったから放ったっきりにしてたわ。うん。
ここに来たのも今日が3回目よ! 3回目!
本当、あんたなんかどうでも良かったんだから。
3回も来てもらったこと感謝なさい!」
「そうかい。」
「そうよ。」
ハルヒは俺の目から目をそらし、置いてあった林檎を手に取って皮を剥き始めた。
「ところでハルヒ。」
「何よ。」
ハルヒは、林檎に目を向けたまま言う。
「お前、俺が眠ってた時に呼びかけてなかったか?」
ハルヒはぎくり、と肩を動かして、
「呼びかけて無いわよ!
そんな恥ずかしい事するわけないじゃない!」
「そうか?
団長を待たせたら罰金だから早く起きろ、だとか、
あたしずっと待ってるのよ!、だとか呼びかけられていたような気がしたが。」
ハルヒの顔がみるみる赤く染まっていく。面白い、もっと言ってやろう。
「そういえば、何か鼻声だったような気がするな。
もしかして、ハルヒ泣いてたんじゃないのか?
あれ? よく見ると、お前の顔、涙の跡が――」
「無いわよ! 馬鹿!」
ハルヒは耳まで真っ赤にして、俺をキッと睨んだ。マジで面白い。
「こんにちはー、って、あ!」
ドアの音がしたので、見ると、朝比奈さんが立っていた。
「キョ、キョンくん! 目を覚ましたんですか!」
えぇ。
「よ、良かったぁ……。」
朝比奈さんはいつかのように、その場でぼろぼろと涙を零し始めた。
「おやおや、お目覚めですか。」
朝比奈さんの後ろから、ひょっこりと古泉が顔を出した。続いて、長門も。
「いやー、心配しましたよ。
涼宮さんの毎日の看護のかいがありましたね。」
「ちょっ! 古泉くん!」
ハルヒは再び顔を真っ赤にする。
「1ヶ月も眠っていたんですから、
きっとすごい夢を見たんだと思います。どうでしたか?」
古泉はニヤニヤしながら言う。さてはこいつ、知ってて言ってるな?
「さぁな、くだらない夢で覚えていねぇよ。」
「それはそれは。」
古泉はスマイルを20%増しさせる。暑苦しいぞ、やめろ。
見ると、長門はハルヒの剥いた林檎をむしゃむしゃと頬張っていた。おいおい。
長門は、俺の視線に気付いたらしく、口の中の林檎をごくりと飲み込むと、俺に顔を向けて、首をナノ単位で小さく下に動かした。何だ、何のサインだ? 長門なりの労いのサインなのか?
「それじゃあ、一ヶ月ぶりに全員揃ったわね!」
ハルヒが叫ぶ。
「次のSOS団の活動を発表します!
文化祭に向けて、映画制作するわよ!」
ハルヒのその言葉に、朝比奈さんの顔がひきつる。また、あんなくだらん映画作るのか。朝比奈さんのトラウマがまた一つ増えそうだ。
「だから、キョン!
あんた、もう起きたんだからさっさと退院しなさいよね!」
ハルヒは勢いよく俺を指さして叫んだ。

やれやれ、やはり現実の世界は色々と大変そうだ、ウイルスさん。



fin

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