「おい、キョン」
谷口が放課後になって即座に話しかけてきた
「ん?どした?」
「今日一緒にゲーセンいかね?あのKOSⅥが今日入荷らしいぞ」
「ホントか!」
KOSⅥ、キングオブソルジャーズという対戦格闘ゲームで多方向に魅力的なキャラクター達を操って
戦士の頂点に立とうというおきまりなシリーズ物の第6作目だがやはり新作が出るとあっては
中学生の頃から嵌ってる俺としてはやらない訳にも行かない

「…とはいえ俺には今日もSOS団が「別に行っても良いわよ、キョン」

なぬ?

「別に今日はSOS団の活動として何かやろうって事は無いからもう帰って良いわよ」
まあ後ろの席にいればこういった内容の把握なんて簡単だろうが
あのハルヒがこんなにも物分りが良い事なんて滅多に無いぞ!
そうと決まれば善は急げだ。
「じゃあお言葉に甘えさせて貰うとしますか。じゃあ行くぞ、谷口!」
「おう、悪いな涼宮。キョンを借りてくぜ~ノシ」

・・・・・・

「流石に皆下校時間だし大学生が粘着してるからなぁ」
「まあそう言うなよ谷口。お互い3プレイは出来たんだしさ」
「とはいえ常連の凄腕アンちゃんにボコボコにされただけだがな」

それにしても今回の新作の新キャラは何故か既視感に誘われる、
魔法の弾を精製してバレーやサッカーのように繰り出す美少年
高速言語処理魔法だかを使うツルペタ高校生と同じ様な性能に当たる美人高校生
何かおどおどしてるけど目からビーム出したりするロリ顔巨乳キャラ
…気のせいだよな。


翌日
俺は昨日の帰りに買ったアル○ディアを部室で読もうと訪れると珍しく古泉だけだった。
「古泉、他の皆は?」
「ああ、彼女たちは今日は用事という事で来れないそうです。
涼宮さんは少し席を外してるだけです」
「2人して用事か、珍しいな」
そういって俺はパイプ椅子を出してアル○ディアを広げた。
KOSⅥの攻略記事(とはいえまだコマンドと基本コンボ位な物だが)の記事を見てると
何時の間にか古泉が身を乗り出して雑誌記事に注目している
「おや、このゲームは?」
「ん?KOSの新作の事か?去年元祖のゲームメーカーが倒産してどうなるかと思ってたが
新しく引き継いだ所の処女作としては中々な物だと思うが…ってお前もビデオゲームはするのか?」
「僕だって健全な一高校生ですよ?アナログゲーム以外だって少々嗜みます」
これはこれで意外だな。何時も部室に新しいボードゲームなどを持ってくる古泉は
アナログゲーム至上主義と思う節もあったがどうやらそうでもない様だ。

「それでこのゲームなんですが」
「ん、このゲームがどうした?何か隠し情報でも知ってるのか?」
「いえ、そうじゃないですよ。ただこのメーカーはうちの”機関”のスポンサーの1つなんですよ」

「お前さん達の機関ってのには随分色々なスポンサーがt
言い終わる前に入り口のドアが激しい音をたてて開けられると果たしてハルヒが興奮気味に
俺たちに1枚のチラシを掲げた

『格激!2006 KOSⅥ 地方予選大会in北区』

「キョンがこれに優勝すればSOS団の知名度も鰻登りよ!」
まてまて、それで優勝してSOS団の知名度が何故に上がる?
と言うかそれだとSOS団を知る所はゲーム部になってしまわないか?
「それは良い提案ですね、涼宮さん」
なにぃー!?
「おい、一寸待て2人とも。俺はKOSは好きだが上手い訳じゃないぞ?」
「そんなの今から鍛えれば良いじゃない。予選日まであと2週間あるのよ?」
「その間俺は学校に来るなって事か?」
「そんな事させないわよ。文武両道、学生なんだから本分の勉強だって頑張らなきゃ」
それだとフリーターや大学生ゲーマーに勝てる見込みナッシングなんですが!
「大丈夫ですよキョン君。我に秘策ありです」
「?」

それから暫くの間古泉は席を外し30分ほどして帰ってきた
「部活が終わったら僕と一緒に来てくれませんか?」
「どこへだ?」
「そんな警戒しなくても大丈夫です。きっと貴方の力になる場所ですよ」


そうして活動も終わり約束通り古泉に付き合うことにした。
いつもの新川さんのタクシーに揺られる事1時間。俺はとあるビルの前にやってきた。
「こ…此処はもしや…」
「ええ、その通りです。もう話は通してありますので案内しますよ」

ビルの壁面にはでかでかとKOSのキャラクターの吊り看板とメーカーのロゴが書かれていた

古泉に案内されて迎えられた場所にはKOSⅥの対戦台が置かれていた
「此処で思う存分やってみて下さい。費用は要りませんし送迎も当方がやらせて貰います」
なるほど、これなら対戦待ちや周囲の目を気にしないで黙々とスピーディーに上達できる、が
「古泉…何故ここまでする?」
「決まってますよ、涼宮さんは常時何かしらの刺激を求めている。
それの対象は得てしてキョン君、貴方にかかる所が大きいのも事実。
今回は個人戦と言う事で僕や長門さんは直接介入できない以上、
貴方の奮起を期待する以外ありません」
「なるほど、そういう事ね。ならば話は早い。早速飽きるまでやらせて貰うぜ!」
「あ、一寸待ってください。」なんだよ、人がやる気起こせば…

言うが早く部屋に小奇麗な大学生風な男性と体育会系っぽい男が入ってきた。
ん、待て俺、この二人どっかで見覚えが…
「この2名は貴方の対戦相手として招集させて貰いました」
「どうも、松原です」「こんにちは、古賀と云う者です」
思い出したぞ!昨日買ったアル○ディアで記事担当をしてる両名じゃないか!
しかもこの編集部には先代のKOFⅤの腕を買われて攻略記事担当編集になってる人達で
昨年の格激で旋風を巻き起こした人達だ!

「古泉君が友達に協力して欲しいという事でね。まあ編集や攻略がてら貴方に協力させて頂きます」
「俺達がこれから10日間で君を全国レベルに押し上げてみましょう」

この10日間の強化合宿(学校>KOS>就寝の繰り返し)で俺の頭の中はKOSに毒されていた
最初は2人にボロ雑巾のように扱われてた俺のキャラ達は
最終日には何とか互角に戦えるまで上達し、個人的にも経験を積んだと思う。最後に彼らから
「やはり会場の雰囲気を把握したほうがリラックス出来ますから登録がてら現地で研鑽して下さい」
と言われたので登録を済ませに足を運ぶ。

現地では流石に大人気で画面の前が人の波で遠くから見えないほどの大盛況だ。
誰がやってるか判らないがどうやら相当上手いらしい。
この10日間の武者修行の成果を試すべく対戦代が開くと同時にコイン投入、画面上部で対戦相手は現在41連勝中らしい。
相手のキャラは新キャラの高速言語処理魔法のツルペタ娘
俺の得意キャラの炎を扱う落第高校生との相性は五分五分。かなり力量差がある場合以外は勝てない相手じゃない!

Round1 Fight!
流石に相手の連勝にびびってしまったのか俺の滑り出しの悪い間隙を突かれると
反撃の機会もそうそう得られずにKOされてしまう
You lose

Round2 Fight!
相手の圧倒的な力量を確認したのが逆に俺を冷静にさせる
相手の小足を的確にガードして投げを誘わせつつカウンター気味に反撃
そこから修行の成果でコンボを完全に叩き込み1割まで相手の体力を削る
しかしそこからの相手に反撃も見事で攻撃モーションの隙を突いて
一連のコンボを決められてしまうも超必殺技の無敵時間を利用して撃破
You won

Round3 Fight!
相手も小足を警戒されてる事を把握しキャラ本来のトリッキーな移動を主体とした
移動方法でかく乱を試みるも武者修行で散々コテンパンに叩かれた方法だけあって俺の対策はキッチリだ。
(よし、ワープ特殊動作後の隙で決め…なに!?)
いつもなら隙の発生する場所で相手はコマンド投げでキャンセル!
(まだこれはあの2人も確認していない戦法!こんな所まで研究してる奴がいるのか!)
後手に回ってしまった俺は特殊行動に過敏に反応してしまい相手の思う壺となってあえなく倒されてしまう
You lose

あぁ、俺もまだまだ駄目なのかもなぁ
取り敢えず予選落ちした際には古泉の働きに期待しようと思いつつ
いったいどんな奴が破竹の連勝街道を、そして世界崩壊?の介助をしてるか確認しようと
人込みの隙間から覗き込む

「…長門!?」

その台には間違いなく長門有希が座っており
物珍しさも相成ってか回りにかなりのギャラリーを抱えていた
…だからこんなに人が居たんだな

その後45連勝した長門には誰も入ってこないので
最凶と言われるCPU戦を軽くクリアしまた周囲を驚かせた後に帰路に着こうとした。
俺はそこを捕まえる
「長門、どうしてお前がKOSやってるんだ?」
すると長門はカウンターに指を指しこう言った
「私も格劇に参加する。だから練習。貴方の名前も確認した」

帰り道で俺は長門に状況を説明しようとするが
「状況は言わなくても把握している。
貴方がこの予選会で優勝する事が涼宮ハルヒにとっての精神の安定に繋がる。
情報爆発を未然に防ぐ為にも個人戦で貴方をサポート出来ない故の手段。
私が介入しない場合の貴方の現在の技術レベルにおける予選会優勝確率は、5%」



「涼宮ハルヒがこの予選会に目を付けたという情報をコンピ研が入手。
現在コンピ研の部長と当ゲームにおける部内での実力者1名の2名が予選会に参加。
両名ともに技術レベルは貴方より上。でもこれだけならまだイレギュラーを含めて50%。
だが他ブロック予選で炙れた貴方以上の有力者の参加も2名確認。
トーナメント形式上、貴方は4名のうちの1人と必ず対戦する。だから5%。」



「故に私がその4人をトーナメント抽選操作をしてブッキング及びその後私と当たらせる。
今日の調査においてゲームの内容とパターン、思考ルーチンと対人傾向を把握。
該当者4名の使用キャラ情報も事前に確認済み。つまり決勝戦は私。
その前に於ける試合での貴方のイレギュラーを極力減少させる手段を現在思案中」

「そうか…ありがとな長門」
「いい…これも私が与えられた使命。貴方が気にする必要は無い。」

そして予選会の日がやってきた。
俺は午後2時開始に合わせて昼に出ようとしたがハルヒから電話をあり
午前10時、いつもの駅前で何故かSOS団全員集合と相成った。
「はい、キョン最後だからお昼はキョンの奢りね」
9時に電話かけておいて良く言うよこいつは…
「で、ハルヒ。何で態々今日緊急に集合かけたんだ?」
「決まってるじゃないの。キョンと有希が2人して出るからその応援よ。」
応援言うなら先ずは俺に奢らせるのを何とかしろよ
そう思いつつも、朝比奈さんまで応援に駆けつけてくれた事には感謝の雨あられな訳で
俺は二律背反な感情の幹線に陥っていた。

ハルヒと朝比奈さんは俺の奢りでの昼食後少し席を開ける事となったので、その場で残った2人に確認を取った
「古泉、お前の仕業か?」
「まさか、僕の仕事は修行だけで終わりですよ。
長門さんから少しは介入があるとは踏んでたのですが、どうにも此処まで絡んでくるとは思いませんでしたよ」
となるとこの集合劇は長門の仕業か?と目を向ける。
「今回の事案は涼宮ハルヒが発起人として発生した事。
私のイレギュラー対策案の中にもこの案件は含まれていたものの、
私の適用範囲以外で自然発生したものな以上、私に操作権は無い。」

つまり野次馬としてハルヒ達は観戦に来る訳だな…
ハルヒはともかく朝比奈さんの前で醜態を晒したくは無いからな、ある意味イレギュラー対策になったぜ

そして午後2時、予選会は開始された。
長門のトーナメント操作のおかげで強豪と言われる4人は先ずお互いに1回戦でブッキング
2回戦目でコンピ研部長が、3回戦目で炙れ組みの大学生が長門によって撃破された。

あちらの進行は問題ないがこちらがな…
「ほらそこ!なんで受身取らないのよキョン!投げるって判りきってるでしょ!」
「ふれーふれーキョン君…頑張れ頑張れキョーンー君…」
KOSに出てくるチアガールっぽいキャラの衣装にコスプレをしたハルヒと朝比奈さんが
俺の『真後ろ』で(ハルヒだけは)元気良く応援活動?をしてくれちゃってます。

朝比奈さん、その格好もなかなかいけてますよ!
そう心の中で思いつつもハルヒの罵声にも近い突っ込みに少々集中力を削がれる始末となった。

見た目麗しき2名を侍らせたエロプレイヤーとして周囲の男達から冷ややかな、
そして対戦相手からは嫉妬の炎を喰らいつつも見事に俺は準決勝まで歩を進めた。

しかし、準決勝を前に少し事態は変化する。
俺の対戦相手だった奴が昼に食った物か何かで食中毒を起こしてしまい急遽枠が空いてしまった
天候も怪しくなり少しばかり強い雨と遠くに雷の音が聞こえてきた

このまま不戦勝で良い物を運営側はそれではつまらないと言う事で敗者復活戦を決行。
その結果コンピ研部長が見事敗者復活を果たした。
「…ヤバイですね」
いきなり傍にいた古泉が囁く。だから耳に息を吹きかけるな!
「ああ、結構これはやばいぞ」俺もこの状況は把握している。
部長は俺よりも技術が高く、尚且つ対戦キャラの相性としてもこちらが不利になっている。
くそ、こうなるならもう少し対戦での汎用性が高いキャラを選択するべきだったか…

そして準決勝戦が始まる。長門は難なくストレート勝ちをしていた。
さあ、俺の方が問題だ…

対戦前に部長は俺に声をかけてきた
「今回の予選は長門君で決まりだろう。それには感服する。しかし、男として!コンピ研部長として!僕は君に勝利する!
何せ長門君が勝ったとしてもコンピ研の客員だからこっちとしては然程悲しくは無いが、
SOS団代表たる君に勝てば奪われたパソコン達に対する少しの手向けにもなろうさ!
まあ今までの君の動きを見させて貰ったけどこれなら良い勝負になると思うよ」
「随分余裕だな部長さん」
「余裕は無いさ、なにせ『あの』SOS団だ、また何が起こるかもしれない。
僕は決して手を抜くつもりもないしズルもしない。そっちも潔く来る事だな」
全く自分のほうが優位だと饒舌になるのはこの部長の性格だろうか…まあいい、やるだけやってみるさ

Round1 Fight!
対地性能で俺のキャラに分が無い相手な以上、相手に攻撃をさせ捌きつつ反撃の機会を覗う
しかし相手は流石に上手く置き攻撃や布石をしっかりと築き反撃に転じさせない。
ジリ貧になる手前で俺は博打の空中からの奇襲に出た。
これは結果的には成功し相手の体力を1連携まで縮めさせる。
その後も隙をお互い覗いつつ小出しの技で削るものの時間切れでどうにか此方の勝利
You won

Round2 Fight!
開始早々相手は空中連携からの奇襲に出たラウンド1でやったことをそのまま返された感じだ
(虚を突かれた!)
最初は様子見なのが敵の動向と思ってただけに手痛い攻撃を喰らってしまう
しかもラウンド1で相手はゲージを全く使ってなかったのでゴリ押しにかかった
めくり攻撃などを警戒させつつもしっかり投げなどを出してくる相手に翻弄され
敢え無くKOされる
You lose

Round3 Fight!
最初の奇襲に警戒しつつ守り一辺倒になってしまう
(このままではやばい!またジリ貧だ!)
そう考えてるうちに相手のめくり攻撃がとうとう決まってしまった
(やられたか!?)
そう思った瞬間
「キョン!ちゃんと勝っちゃいなさいよ!こんなところで負けるなんて私は許さないんだからね!」
ハルヒが俺に罵声を浴びせる。すると部長の連携が失敗したじゃないか!
どうやらパブロフの犬みたいにハルヒの声に過剰反応してしまったようだ
この間隙を逃すわけには行かない!
フルセットを決め最後に相手の起死回生の博打超必殺技を回避して俺は見事に勝利した
You won

「くっ、聴衆の声に動きを乱すとは僕もまだまだって事か…」
部長は少し悔しそうだったがすぐに向き直り
「キョン君、取り敢えずは僕の負けだ。良い戦いだった」
まあこういうのも悪くないよな。そう思い握手をして別れた。

俺と長門と言う決勝のマッチメイクとなり
かたや両手に花のエロ男、かたや沈着冷静な使用してるゲームキャラに良く似たツルペタ娘
第三者視点でどちらを応援するかといったらやっぱ俺だって長門を応援するよな…
という訳で始まった決勝戦は




見事に突如飛来した雷による近所の電線の断絶により急遽中止となった。





そして後日は俺も長門も都合が合わないという事で辞退し、
結局は準決勝で長門に負けた男性が進出となるのだがこれは後の話







「…イレギュラー要素排除用対策を練ったが結果少し発動時間に較差が生じた。」

 <終了>

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年01月14日 02:22