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修学旅行。
学生生活で最大のイベントの一つである。そうだろ?

ちなみに俺たちの高校の修学旅行の予定は
初日。目的地まで移動。クラスで観光地を見学。
二日目と三日目。班別に自由行動。
最終日。帰る。
となっている。

ここで注目してほしい。
「二日目と三日目、班別自由行動」

そう、今、俺たちはHRで班分けをしている。

ところで、二年になってクラス替えがあったわけだが、
俺はまたハルヒの前の席に座っているし、谷口や国木田とも一緒のクラスだ。
長門や古泉はいない。残念だ。あいつらにもハルヒのお守りを押し付けてやろうと思ったのに。
あぁ、そうそう、阪中もいるぞ。

閑話休題。今の俺の関心ごとは班分けだ。

男女で三人、または四人の班を作り、くじ引きでくっつけようと提案したやつがいた。

そんなに愛に飢えてるんだな、谷口。


それがあっさり通ったわけだが。
なんだよお前ら、そんなに愛に飢えているのか?

で、俺は谷口、国木田と組んだ。
相手の女子たちは誰かと言うと、分かるだろ?

ハルヒだよ。
正確には、ハルヒと、阪中と、ハルヒが引っ張ってきたよく知らん女子だ。

クラスの奴らの視線とニヤニヤ笑いが痛い。
勘違いすんなっての……。

やれやれ。

班別自由行動、とは言ったものの俺たちには、計画表の提出が義務づけられていた。

修学旅行ってのは、名所回って、名物でも食って過ごすのが
一般的で、普遍的なパターンだ。
しかし、それを嫌うやつが俺たちの班にいるわけで、
そいつの名を涼宮ハルヒと言う。

雪山のときに聞いた話だと、一般大衆とは逆方向を歩くことにしているやつだ。
こいつに計画を立てさせたら、地元の心霊スポット、とか、
変な言い伝えのある場所、とか回りそうだ。

案の定、そう主張し始めたハルヒを俺が止め、
アヒル口を作って教室をでたハルヒを追いかけ部室へ。
後のことは国木田あたりに任せればまともな計画を立ててくれるだろう。
俺を追うクラスメイトの視線がなぜか痛い。


部室をノックすると、団長の不機嫌ボイスが響く。おぉ、怖っ!

そこにはハルヒしかいなかった。古泉は多分、バイト、だろう。
がんばれ、古泉。

俺がパイプ椅子に座るとハルヒが口を開く。

「キョン、団長に逆らった罪は重いわよ。罰ゲームだから、とっておきの」
声がものすごい沈んでる。そんなに不思議探索したいのか、こいつは?
「まぁ、待て。SOS団だけならともかく、今回は一般市民も混じってるんだ。
あいつらは普通の修学旅行を楽しみたいと思ってるぞ」
多分。
「そんなに修学旅行で不思議探索したいなら暇なときに俺がつきあってやるからさ。
昼間は、あいつらにあわせてやれ」

て、このセリフまずくないか、少し?
別に、二人でどこか行こうなどと提案しているわけではない。絶対に違う!

「まぁ、いいわ」
どうやらハルヒの腹の虫は収まったようだ。
やけにあっさりと、な。

国木田たちが、行動計画を立ててくれているらしい。
らしい、ってのはあいつらが計画を立てるのはなぜか放課後で、
放課後、俺はSOS団アジトに向かわなければ行けないのだ。

部室の扉をノックすると、朝比奈さんの返事があった。
安心して扉を開けて、いつものように席に着き、朝比奈印のお茶を飲む。

「朝比奈さんの修学旅行はどんな感じだったんですか?」
「鶴屋さんに引っ張られていろいろ回ってました。お寺、とか」
鶴屋さんに振り回される朝比奈さん、情景が目に浮かぶ。
「キョン君は涼宮さんと一緒ですか?」
「ええ、そうですが」
「道理で涼宮さんが近頃嬉しそうだと」
「嬉しそう、ですか?俺にはいつも通りのハルヒにしか見えませんが」
朝比奈さんはフフッ、と笑った。
「涼宮さんいろいろ計画たててましたよ?夜景がきれいなとことか調べてました」
夜景、ねぇ。ハルヒは俺が前に言った
『そんなに修学旅行で不思議探索したいなら暇なときに俺がつきあってやるから。
昼間は、あいつらにあわせてやれ』
という発言を夜の不思議探索のお誘いととったようだ。


まぁ、つきあってやるさ。

出発当日である。
国木田たちの立てた計画は、普通に普通だった。
名所回って、名物食って、そんなんだ。

初日は特に触れることはない。
いろいろあったのは二日目だった。

今日から、自由行動が始まるわけだが、どうしたことだろう。
俺はハルヒと二人で歩いている。

なんでって?
簡単だ。人ごみでほか四人とはぐれた。
おかしなことに、携帯にかけてもつながんなかったので、谷口に
「十二時に昼飯食う場所で」
とメールをうっておいた。

ハルヒはなぜか上機嫌で
「どこ行こうかしら、キョン?不思議そうなところ知らない?」
とのたまっている。
「この辺りは不案内なんだ。」
「そう。んじゃ、適当に歩きましょ。きっとそのうち不思議なことに出くわすわ」
そう簡単にいくんだったら、今までの市内探索で何か見つかってるだろう?
なんて言うと鉄拳が見舞われるのは見えているので、黙っている俺。

しばらく歩いていると雨が降り出す。さっきまでは晴れだったのに。
雨宿りが出来そうなところにハルヒを連れて行き、

「おい、ハルヒ。少しここで待ってろ。さっきコンビニを見たから傘、買ってくる」
「気が利くじゃない、キョン?団長に風邪引かせたら一大事だもの」
かわいげ無いなぁ、ハルヒ。ここでお礼の一つでも言ってみろよ。
……いや、やっぱいい。素直なハルヒはなんか怖い。
俺は走ってコンビニへ。

そこで、俺は傘を買った。
買ったはいいのだが、一本しかないってのはどういうわけだ?
誰の陰謀だ?

なんてことを考えても仕方ないので、俺はハルヒを待たせているところまで走っていく。


「遅いわよ」
ここで言い返してはならない、なぜならハルヒが遅いと言ったからだ。
天上天下唯我独尊、それが涼宮ハルヒというやつだ。
「あぁ、すまん」
「やけに素直ね?感心、感心」
……殴っていいか?
いや、冗談だ。本気にすんな。


「って、アホキョン!一本しか無いじゃない!」
「最後の一本だったんだよ」
ちょっと沈黙。
「本当に?」
「本当だ」

……なんだよ、残念そうな顔すんなよ。似合わないだろう?

そんなやり取りがあって、俺とハルヒは一本の傘を共有している。
とは言っても、相合い傘で町をぶらつくのは疲れるので、
観光地に少なくとも一つはあるところへ行くことにした。
どこへって?展望台だよ。
「あたしね、高いところって好きなのよね」
何となく理由が分かる気がする。
「普通、人は地上にいるからか?」
「そうね」
「てことは、海底、とか、上空、とかも好きなのか?」
「そうよ」
と言うとハルヒは笑った。
その笑い方がいつもの明るさ一辺倒ではなく、華やかさも含んでいるのを見て、
俺はどきりとする。
こいつってこんな笑い方も出来るんだ……。
ほれちまいそうだ。
「キョン、あんた何言ってんの?」
もしかして、口に出てた?まずっ!
「俺何か言ってたか?」
「何かしちゃいそうだって。最初の方は聞き取れなかったけど」
助かった。
「いや、なんでもないぞ」
「ふーん」
明らかに信用してねぇ。そりゃそうか。
「変なこと考えんてんじゃないでしょうね?」
「断じて、違う」
ハルヒがこっちを見ている。その目はまるで何かを計っているようだった。
「まぁ、いいわ。ずっとここにいてもしょうがないし、次いきましょ」

そのとき携帯が鳴った。谷口からだった。
「おい、キョン。お前今どこにいる?」
「展望台だが」
「はぁ」
ため息をつくな。
「お前今の時間分かってんのか?」
今は、もう
「一時!?」
「とっくにお前の言った待ち合わせ時刻すぎてるぞ?」
「すまん、今からすぐいく」
「いや、いい。国木田が言ってんだが、展望台からここまでは遠すぎるらしい。
というわけで、五時に宿の前でな。それまで涼宮とごゆっくり。じゃな」
きりやがった。谷口、分かってるだろうが、ハルヒとごゆっくりなんかできるわけない。

「誰から?」
「谷口だ。待ち合わせの時刻をとっくにすぎてるから、宿の前で落ち合おう、だとさ。」
「あっそ。でも、もうそんな時間なのね。昼ご飯でも食べましょ」

俺とハルヒは、展望台を下り、一番最初に目についた飯屋に入り適当に飯を食った。

午後の部が始まる。ついでに雨はもうやんでいた。
午後はハルヒに振り回されっぱなしだ。
将来こいつの旦那になるやつ。そんなのがいたら、そいつに同情しておこう。
苦労するぜ、あんた?

……傷口を広げた気分になったのは、さてなんでだろうね?

ここで、ハルヒに振り回されていった場所のほんの一部を紹介しておこう。

一、古びた土産物屋。なんか怪しいものでも売っていると思ったらしいが、
品揃えは普通の店だ。キーホルダーとか、銘菓とか、そんなんだ。
二、大昔妖怪がでた、とか言う場所。そんな大昔の話を本気にすんな。
三、歴史ある建造物。普通だって?俺もそう思う。もっともハルヒは建物より
言い伝えの方に興味があるらしく、住職や神主を捕まえて根掘り葉掘り聞き出していた。

そろそろ帰った方がいい時間になったのでハルヒに声をかけると、こんなことを聞いてきた。
「キョン、展望台で何を言おうとしてたの?」
蒸し返すな、とも思ったんだがな、なんか言ってもいい気分になってきた。
どっちにすっかな。

少し悩んだ結果俺は、正直に言ってやることにした。
「ほれちまいそうだって言った」

正直に言おう。ほれちまいそう、ではなく、ほれている。
今日一日ハルヒと一緒にいて、やっと分かったと言うかなんと言うか。
長い間意地になって認めなかっただけなんだよな。
俺は、ハルヒに巻き込まれた一般人の役でいたかった。

だから、わけ分からんやつの代表格のあいつが好きだ、なんて認めたくなかった。
だから、あいつの気持ちも分からない振りをした。
ハルヒは、間接的にだが、去年の五月に自分の気持ちを伝えてくれていたじゃないか。

じゃぁ、なんで十二月の出来事の後に告白しなかったかって?
あの後俺は自分の立ち位置を「巻き込まれたやつ」、から「積極的に世界を守ろうとするやつ」にかえた。
そのときに認めちまえばいいじゃないかって?

俺の安っぽいプライドのせいさ。
最初に言ったろ、意地になってたって。
もう半年も「やれやれ」って言ってたんだぞ俺は。ハルヒの起こす出来事に対して。
いきなり、自分の立場を変えることは、やっぱり出来なかったんだよ。
まぁ、それも今日までだが。

ぽかんとしているハルヒに続ける。

「正しくはな、ほれてるんだ、お前に」

「俺はなんだかんだでお前といる日常が好きで、お前が好きだ」

「出来ればずっと一緒にいたい」


ちょっと待て、最後のは余計だ。口が滑った。
高校生でプロポーズか、俺?
早い、早すぎるぞ。順序も糞もあったもんじゃない。

でも、ハルヒと過ごす一生も悪くない。そう思える。


「……あんた、自分が何言ったか、分かってる?」
わかってるとも。ものすごい、恥ずかしいことを言ってる。
お前の答えはどうなんだ?ここでふられたらものすごく恥ずかしいぞ、俺は?
単なる勘違い野郎だったってことになるからな。

突然俺の首あたりに大きな力がかかる。
気づくと目の前にはハルヒの顔がある。

どうやら俺たちはキスをしているらしい。

しばらくして、ハルヒが言う。


「あたしも、あんたが好きよ」


ハルヒは微笑んでいた。
俺はどうかと言うと……。

愕然としていた。

ハルヒにオーケーされたことにじゃない。

俺は、俺の目が俺の脳に送っている映像を信じられない。

「ねぇ、キョン。どこ見てるの?」

そんな俺の様子にハルヒも気づいたらしい。
俺の視線を追ってその先にあるものを確認すると、同じく愕然とした。

そこには、俺たちの班。つまり、谷口やら、国木田やらがいた。

谷口を締めてはかせたことをまとめると、次のようになる。

  • そもそもあいつらは俺たちとはぐれていなかった。
  • つかず離れずで監視していた。
  • 目的は、俺たちがくっつくのを見るため。
……殴るぞ、お前ら。

「いやー、でもよかったよ。キョンがヘタレじゃなくて。」
爽やかに言ってのけた国木田である。ヘタレって何だ、ヘタレって。
「ほんとは展望台あたりで告白すると思ったのになぁ。」
さらに言えば、傘が一つしかなかったのはこいつらが買い占めたから、らしい。
ほんと、ご苦労さん。もう、怒る気力もない。

「国木田、一つ教えろ。このことを言い出したのは誰だ?」
「僕だよ。二人とも煮え切らないからさ。周りで見てるとやきもきするんだよ」
中学時代は知らなかったぞ、お前がここまで野次馬だったとは。
あきれてものも言えない俺の代わりにハルヒが口を開く。

「あんたそれいい趣味じゃないわよ。人の告白のぞくなんて。罰ゲームよ!」
「あんまりきつくないのにしてね」
「あんた明日の昼食代全員分、おごり!」
「それは、ちょっと高いよ、涼宮さん。こういうところって物価が高いんだよ」

ふむ、とハルヒは少し考える顔。
そしてにやりと笑う。何かいいことを思いついたらしい。

「じゃぁ、こんなのはどう?」

三日目。俺はまたハルヒと二人で歩いている。
今度はあいつらはついてきてないだろう。
なんで、二人だけかって?

それは、ハルヒの昨日の罰ゲームのせいである。いや、おかげかな。


「明日、あたしたちが班からはなれて行動しても教師が許してくれるぐらいの
上等な嘘を作りなさい」

意訳するとデートさせろってことなんだろう。
ハルヒの顔、赤いし。
谷口ニヤニヤ笑ってるし。むかつくなぁ、お前。



とまぁ、こんなわけだ。

ハルヒの明るい声が降り注ぐ。
「ねぇ、キョン。今日はどこ行く?」

その日、宿に帰ると担任に
「あぁ、青春の日々。結構、結構。だが、まあ、あんまりはしゃぎすぎんなよ」
とか言われた。
俺もハルヒも顔が真っ赤だ。

気になってまた谷口を締めると、
「国木田、嘘なんてつかずに『二人はデートいきました』って言ってたぞ」
とぬかしやがった。

おい、国木田。俺は友達を間違えたかな?
「いくら良い言い訳作ったて、二人だけで宿に帰ってきたら意味ないだろう?」
正論だな。反論できん。
頭が痛くなったので部屋から出て行くことにした。

外には古泉がいた。
「やぁ、どうも」
なんか嫌な予感がする。
「あなたもやりますね。その年で『ずっと一緒にいたい』ですか?」
ウゲッ!そこまで噂になってんのか?
「もう学年の半分ぐらいは知ってるんじゃないでしょうか?」
谷口、国木田、覚えておけ。
「しかし僕としましては、その言葉通りになってほしいものです。」
なんでだ?
「そうすれば涼宮さんはもう、現実を変えようなんてしませんから。」
分かった、努力する。
なんてな。努力なんていらないさ。

もし、ここで俺とハルヒが破局したら世界が終わるぐらい俺にも分かる。
だが安心しろ。俺はハルヒと離れるつもりなどこれっぽちもない。

「おっと、あなたにお客さんのようです。ではまた」
と古泉は去っていった。

お客さん?想像はつくが。
「キョン!」
やっぱりハルヒだった。

「散歩でもいかない?この辺りに夜景のきれいな場所があるんだって!」

fin.
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