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日の光を浴びて彼女は目覚め、彼に電話をかける。
電話からは眠そうな声が響く。
彼女は用件を告げ、電話を切った。
髪を後ろでくくると、彼女は家を飛び出した。
太陽が走る彼女を見送っている。



三月にあった文芸部休止未遂事件や、幽霊騒ぎなどもはや過去の話となり、
今はもう、四月である。

そして俺はハルヒと町をうろついている。
最初にいっておく。デートじゃない、断じて。
市内不思議探索だ。そこのところ、勘違いしないように。

いつものように突然電話で呼び出され、駅前へ向かった俺を、
魅力度36パーセントましのハルヒが迎えた。
まぁ、つまりポニーテールだったわけだな。

そこにはハルヒしかいなかったが、あいつは開口一番
「遅い、罰金」
と言い放った。
「おい、そりゃ無いだろう、ハルヒ。まだ三人がきてないぞ」
「急用があってこないって」
「そうかい」
あいつらが来ないってのは二回目以来だな。


さて、今日はどこに行くかね、なーんてことを考えているとハルヒが
「映画でも、見に行かない?」
「ん?あぁ、構わんが」
普段は命令形で俺を引っ張るやつが疑問形で聞いてくるものだから、
返答が遅れる。
「じゃぁ、行きましょう」
と、ハルヒが、あのハルヒがだぞ、俺と手をつないで歩き出す。
いつもなら手首つかんで引っ張ってくのにな。なんかやりづらい。
変なものでも食ったか、ハルヒ?
ハルヒが選んだ映画は流行りの感動ものだった。
てっきりマイナーな映画を見るものだと思っていたから、意外だ。
そしてこれも意外なのだが、ハルヒのやつはものすごい泣いている。
俺の中では、泣き顔が見られそうも無いランキングで長門と並び一位なのだが。

映画も終わり、ちょうどいい時刻なので昼飯にする。
場所は何ていうか、男一人では入りづらい雰囲気の喫茶店だ。
去年のミヨキチの時のことといい俺はあれか、
この時期、女子と映画を見て、入りづらい喫茶店に入る運命にあるのか?
まぁ、悪くはないけどな。

昼飯を食った後は、あちこちの店を冷やかしたりして過ごした。
はたから見ればこれはもう立派なデートだ。

俺が前から言っているように、ハルヒは性格以外は完璧である。
そして今日のハルヒは、まるで普通の女の子のようだった。
何が言いたいかって?

今日のハルヒは実に可愛かった。以上だ。

ただな、俺としてはハルヒの魅力は、まぁ、表面的なものもあるが、
どちらかと言えば、あの無駄に活動的なとこにあると思うんだ。
何より、あいつに振り回されて過ごす日常が俺は好きだからな。
断っておくが、被虐趣味は無いぞ?俺には。


そして気づけば、あたりは夕日に照らされている。
俺とハルヒは川沿いのベンチに並んで座っている。
「キョン…」
ハルヒが呼ぶので、そっちを向いてやる。

夕暮れのベンチで向かい合う男女。
何だこの雰囲気は。
あれか、いい感じってやつか?
「今日は楽しかった?」
びっくりだ。ハルヒが人の感想を気にするなんて。
「まぁな。しかし今日のお前はなんか変だったぞ」
「失礼ね。……がんばったのに」
「何だって?」
「がんばったて言ったのよ!普通の女の子っぽくしたりして!」
「なんで?」
次の瞬間俺は信じられない言葉を耳にする。


「あんたが好きだからよ!」
好き?ハルヒが?俺を?
「でも、普段のわがままなあたしなんて誰も好きになってくれないって思ったから。だから、だから……」
軽くパニクってるぞ、俺。
オーケー、まずは状況把握だ。
オレハ ハルヒニ コクハクサレタ。
……すまん、もう一回。
俺はハルヒに告白された。
オーケー、分かった。
次に、だ。俺はハルヒをどう思っている?
俺は、ハルヒが……。

と、自分の気持ちの整理のために黙ってしまった俺を見て、ハルヒがうつむく。
そりゃそうだ。告白して沈黙されたら、たまったもんじゃない。

突然、ハルヒはくくっていた髪をほどきながら顔を上げてにやりと笑った。
そのにやり笑いが心なし固かったのは気のせいだろう。
なぜならこんなことを聞いてきたからだ。


「ねぇ、キョン。今日は何月何日か知ってる?」
確か今日は……
「四月一日だろ?」
待てよ。まさか、まさか……。
「そうよ。エイプルフールよ、エイプリルフール!」
フールを強調しやがった。
「四月馬鹿の日!あんたにはぴったりね、バカキョン。本気にしたでしょ?」
おい誰か、広辞苑をもってこい。
「さえないあんたに一日夢のような体験をさせてあげたあたしに感謝しなさい!」
なんだろう、この腹の底からわき上がっているのは?
そう、まぎれも無い怒り。ではなかった。

落胆だった。

なんで落ち込むんだ、俺?

理由は簡単。

今まで認めずにきた感情。

とっくに知ってたのに。


俺は、ハルヒが好きなんだ。


あーあ、認めちゃったよ。
もう引き返せないな。
つーか、吹っ切れた。

「何よ、あんたすごい顔してるわよ?そんなにだまされたのが頭にきた?
それとも、落ち込んでんの?」

「そうとも。ものすごいへこんでる」
開き直りと呼びたければ呼べ、だ。

「へ?」

俺は気づけばハルヒを抱きしめて、
「ハルヒ、俺はお前が好きだ」
こう囁いていた。
「ちょっと、キョン。言ったでしょ、エイプリルフールだって」
「確かに今日はエイプリルフールだ」
だがな、と俺は続ける。

「あいにく今日は、冗談が通じないんだ」

「それは、どういう意味?」

「言っただろ、お前が好きだって」


ハルヒの手が俺の後ろに回される。小さな声でハルヒはつぶやく。
「よかった……」
その声は少し湿り気を帯びている。
「黙っちゃうから、グスッ、ふられたと思って……。それでもまだ、
あんたといたいから、ウゥ、エイプリルフールなんて言ったけど、
よかった。キョンがこんな、こんなあたしを好きでよかった。」
すっかり泣かせちまったようだな、やれやれ。
俺はハルヒの背中に回していた手をほどき、肩に乗せる。
ハルヒが涙目でこっちを見ている。理性がはじけ飛びそうだな。

「ハルヒ、好きだ」

俺はつぶやき、目を閉じ、そして……



軽やかな足取りで彼女は家路をたどる。
彼女は世界を肯定し、現実に満足している。
そんな彼女を月が見守っている。

fin.
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