あー、いやだいやだ。なんでこんなに暑いのかね?
日本の夏の高温多湿に悩みながらも、必死に学校に通っているが、学校ではろくなことがない。
どうせ、頭のハゲた教師どもの戯言と、頭に入ってこない雑音を聴きに行くだけだ。
まあ、高校に入ってからはもう一つ俺を苦しめる騒音が増えてしまったがな…。俺はもうこれは偶然であると決めることにした。



「よっ、キョン」
よぉ、谷口。朝から元気だな…。
「ふふふ、今日俺は3組の女の子に告白するのさ、今日の髪型きまってるだろ」いつもとたいして変わってないだろ。

谷口、告白するならチャックは閉めとけよな。


ハイキングコースも会話をしながらならそう長く感じられないものだ。
しかし、ふきだす汗は滝のようにながれつづけるもので、教室の窓際の席で、吹いているのかどうか微妙な風をあびていると、あいつはやってきた。

どうした?今日はいつもより遅かったな。
「学校にはとっくに来てたわよ、でもこう暑い日にはもしかしたら謎の発熱物体がいるのかもしれないじゃない。だから、そこいらを見回ってたの」
そんなものがあったら、即刻撤去願いたいね。




時はたち、放課後。

行くところは一つしかなく、そこはすでにSOS団の占拠地となってしまった文芸部室だ。
おっと、忘れるところだった…。
コンコンッ、と音をたててノックする。すると中からエンジェルボイスで返事がかえってくるのだ。
「はぁ~い、どうぞ入っていいですよ」
開けると見慣れたメイド服、しかし、決して見飽きない、俺の癒し担当の天使がいた。

こんにちは、朝比奈さん。「こんにちは、キョン君。実はこれから一緒に行ってほしいところがあるんですが――」
もちろんいいですよ。今度はいつの時間ですか?
「去年です」

ということで、いわれるままに来てしまった…。

長門もいっしょに来ているからおれの出番は皆無であろう、と勝手にそう思った。
「………」
おい、そんな目で見るな。何を考えていたのか読まれてる気がするだろ。

ここであってるんですか?「ええ、間違いありません」

着いたところは、長門の住んでいるマンションの505号室だった…。

「この部屋です」
俺はこの部屋に来たことがあった。
でも、俺大丈夫なんですか?まだ死にたくないんですけど。
「…大丈夫」
ピンポーン
「はーい、どちらさまですか?」
その部屋から出てきたのは、谷口いわくAA+であり、俺を二度も殺そうとした、殺人鬼朝倉涼子だった。

「どうしたの?長門さんとキョン君?まあいいわ。入って」
おいおい、大丈夫なのか?長門は遠慮なく入っていった…。朝比奈さんもつられて入っていき、俺もしょうがなく入ることにした。

「どうしたの?そんな顔して」

どうやら、俺はよっぽど変な顔をしているらしい。

「…大丈夫、この朝倉涼子は無害」
あ、ああ…。わかった。
「そう、あなたたちは、異時間同位体なのね?」
「…そう」

「で、何の用事なの?」

そういえば、俺も何も聞いてなかったな…。いったい、なんで朝倉に会いに来たんだ?

「…あなたはこの後、暴走する」

やっぱりそのことか…。

「そう、やっぱりね…。エラーの蓄積がすさまじいスピードでおこっているもの」
「だから、あなたの意識が消えないうちに能力制御プログラムを注入する」
「ええ、お願い」

そんな感じで、朝倉に長門が噛み付いて用事をすませた。

朝倉は最後にごめんなさい、と謝っていた。
…朝倉もエラーに悩まされていたことがわかった。でも、それは防ぎようがなかったんだ…。
いつかの、長門のように――。

朝倉は暴走したとき、泣いていたのかもしれない。そして、長門も…。

「帰りましょうキョン君。」
はい…。

がんばれよ、俺…。頼んだぞ、長門…。
そう思いながら俺は目を閉じた。

結局、谷口はふられてしまったらしい。
原因は……まあ、言うまでもないだろ。

ハルヒは、暑さにいらだってはいるものの、いつもどおり騒いでいる。
まだしばらくは、暑苦しい日が続きそうだ…。

長門は汗一つかかずに本を読んでいる、しかし、あまり元気がないように見えるのは、思い違いではないだろう。

もし、朝倉が暴走しない平行世界があるなら長門も朝倉も幸せになれたんだろうな…………なんてな。

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