アニメの孤島症候群にて。ガケから落ちたキョンとハルヒは
雨を避けるため洞窟の中に駆け込んだ。

ハルヒ「あーあ、とんだ災難よね・・・イタッ」
キョン「どうした?」
ハルヒ「足を・・・くじいちゃったみたい」
キョン「・・・外は暴風雨だし、こりゃ当分動けないな」

オレたちはずぶ濡れの服を絞った。

キョン「ぬれた服着たままじゃ風邪引くな・・・」

シャツとズボンを脱いだオレは、腰くらい高さのある岩にかけた。

ハルヒ「ちょっと!なに脱いでんのよ。女の子の前で恥ずかしくないの!?」
キョン「仕方ねえだろ。・・・お前も脱いだほうがいいぞ。風邪引くから」
ハルヒ「・・・アンタ、ヘンなこと考えてるんじゃないでしょうね」

キョン「バカいえ。そんな気などこれっぽっちもない。
   いいからさっさとしろよ。風邪引くぞ」
ハルヒ「見たら殺すわよ」

そういいながらハルヒもTシャツとズボンを脱いだ。

キョン「絞ってやろうか?」
ハルヒ「いいわよ。こっち見ないで!」
キョン「見てねえよ」

しばらくそのままじっとしていたが、やはり夏とはいえ下着一枚では寒い。
オレは軽く体を動かしながら、なんとか体温を維持していた。

ハルヒ「・・・・・ぅぅ」
キョン「どうしたハルヒ?寒いのか?」
ハルヒ「な、なんでもないわ。大丈夫よ」

しかしハルヒの声はふるえていて、あまり大丈夫そうには見えない。


一方、屋敷では
古泉「なんですって!キョン君と涼宮さんが戻ってこない!?」
森「さきほど船を確認しに外へ行ったのですが・・・それからもう40分は経っています」
古泉「なんてことだ・・・足を滑らせて海に転落していなければいいのですが・・・」
森「心配ですね・・・」
古泉「それに波止場の近くには天然の洞窟があると聞いています。
   足をくじいたかなにかで帰れなくなって、雨がやむまで待機しているのかもしれません。
   ・・・間違いが起こらなければいいのですが」
森「・・・・・」

キョン「ハルヒ、後ろを向いてくれ」
ハルヒ「な、なに?」

オレはハルヒのほうへと近づいていった。

ハルヒ「ちょ、ちょっと!こっち見るなっていったでしょ!なにする気よエロキョン!」

一方的にわめいてくるが、かまわずオレはハルヒに近づいた。

キョン「ちょっとの間の辛抱だぞ」

そういうとオレは、ハルヒを背中から抱きしめた。

ハルヒ「ちょ・・・そんな・・・ダメよキョン・・・」

ハルヒの肌はややひんやりとしていて、絹のように柔らかかった。
ほどなくして、オレの上半身全体にハルヒの体温が伝わってくる。
心臓は破裂しそうなほど鼓動を早め、まるで世界全体が振動しているのでは
ないかと思えるくらいだ。
目の前にはハルヒの後ろ髪が見える。シャンプーのいい芳香が鼻をつき、
今にも理性が飛んでしまいそうだった。

キョン「こうしていれば少しでも体温の低下が防げる。雨がやんだらお前を背負って
   屋敷に戻れる。それまでの辛抱だ」
ハルヒ「キョン・・・」





古泉「せっかくキョン君と2人きりの部屋になったっていうのに・・・」

ハルヒ「キョン・・・ごめんね。私が船を確認しに行くなんて言い出したせいで・・・」

ハルヒはかぼそい声でそう言った。普段はお目にかかることができない
ハルヒがしおらしくなっている様子を前にして、心の鼓動はさらにワンランクアップした。
…これ以上はいくらオレでも耐えられそうにない。

キョン「お前が素直に謝るなんて珍しいな。どうりで暴風雨に遭遇するわけだ」

オレはいつものハイテンションなハルヒを引き出すつもりで、わざと悪態をついた。
しかしオレの予想に反し、ハルヒはますますかぼそい声を出した。

ハルヒ「ごめんね・・・いつもムチャなことばかり言って。私、いっつもみんなに
   迷惑ばかりかけてたよね・・・」

おいおい、どうしたんだハルヒ?地球が逆回転したってお前はそんなセリフを言わないはずだ。
というか、今のハルヒはむちゃくちゃカワイイ。この体勢でそんなこと言われたら、
オレの理性が・・・・・

表情はわからないが、ハルヒの声は涙声になっている。
だめだハルヒ!SOS団でそんな声を出していいのは朝比奈さんだけなんだ。
団長はいつだって正気を保っていてもらわないと困る。
ハルヒなら理性を保てると考えたオレがバカだった。

まずい・・・一旦離れたほうがいいのか!?

そんなオレの葛藤を知らずか、さらにハルヒは続けた。

ハルヒ「グスッ・・・今だって私が足をくじいたせいで、キョンに迷惑かけてるよね・・・
    私のせいで・・・グスッ」

どうやらハルヒは本当に泣いているらしい。なぜだ?足をくじいたぐらいでなにが悲しいんだ?
オレは上がりきったテンションを下げるため、古泉の裸体を必死で思い浮かべた。
アイツのくそみそもたまには役にたつじゃないか。



その頃、古泉は別の意味でキョンの裸体を必死で思い浮かべていた。
古泉「ハァハァハァ、キョンたん・・・今どこで何をしているんだい?」

キョン「ハルヒ、気にするなよ。お前のムチャな思いつきがなきゃ
   SOS団の活動はないも同然だ。今日はたまたま運が悪かっただけさ」
ハルヒ「キョン・・・グスッ・・・ホントに?ホントにそう思ってる?」

キョン「もちろんだ。他の団員だってそう思ってるさ。出会ってからまだ数ヶ月しか経ってない
   オレたちだけど、それなりにお互いを理解できるぐらいの時間は共有してきたはずだろ」

オレは古泉の裸体の横に、朝比奈さんのメイド姿と長門の読書姿を思い浮かべた。

・・・いかん!再びオレのビートが上昇してきた!

オレは急いで脳内スクリーンから朝比奈さんと長門の姿を消し去った。
今はお前だけが頼りだぞ、古泉・・・

しかし、この状態に慣れてくると若干寒さを感じるようになってきた。
洞窟の奥からも外に通じているのか、入り口から風が吹き込んできたせいでもある。

今のオレは背中を丸くして座っているハルヒに後ろから抱きつくという
わりとヘンタイじみた格好をしているワケだが、ハルヒと密着している前面はともかく、
背中や足なんかが容赦なく寒気にさらされている。
オマケにヘンな体勢でいるせいか、足と腰が痛くなってきた。

ハルヒ「寒いの?キョン」
キョン「ちょっとだけな」
ハルヒ「・・・・・・ちょっと目瞑ってて」






古泉「・・・やはりキョンたんの貞操が心配だ」


目を瞑れだって?ハルヒはなにをするつもりなんだ・・・?
ハルヒの言葉に疑問を感じたオレだが、寒さと疲労であまり頭が働かなくなっていたせいか、
言われるままに目を閉じた。

!?どうやらハルヒの体がオレから一旦離れたみたいだ。
ハルヒの肌の温もりから離れたオレの上半身は、容赦なく寒気にさらされる。

そのときだった。やけに柔らかい感触がオレの上半身に覆いかぶさり、押し倒される格好となった。
イテ、少し頭うったな。
…って待てよ。この感触は、もしや・・・

ハルヒ「・・・なにも言わないで」

おそるおそる目を開けると、今度は裸体のハルヒがオレに抱きついている格好となっていた。
しかも体の前面から。オレのみぞおちあたりに感じている二つの柔らかさがなによりの証拠だ。
ハルヒはブラをはずしている。そんな状態でここまで密着されたら、
いくらオレでも一瞬で理性のメーターが振り切れてしまうのは間違いない。

うう・・・さすがにそれはまずいハルヒ・・・

オレは脳内スクリーンで、必死に古泉ストリップ劇場を映し出していた。

ハルヒは恥ずかしさのせいか顔を真っ赤にしてうつむいている。
オレは急いで脳内ストリップ劇場に目を移すと、この状態で何を言うべきか必死で考えた。
…ここで黙っていたらすぐにリミッターが外れそうなんだ。

古泉劇場はクライマックスにさしかかっており、ヤツはそそり立ったモノを
惜しげもなくさらしていた。ふだんなら1ミリ秒だってこんなもの視界に入れたくはないが、
今はこの状況を切り抜けるための救いの神である。
ああ、すばらしきフル・モンティ・・・理性が勝利する日は近いぞ。

キョン「さっきよりあったかくなったな」
ハルヒ「・・・うん」
キョン「みんなどうしてるかな?朝比奈さん、はやく目覚めるといいんだが」

朝比奈さんの名前を出した途端、ハルヒは少し眉の角度を変えて
オレを凝視してくる。
そうなると目を反らすわけにもいかず、オレはハルヒを見つめ返した。

オレが見つめかえすと、ハルヒは少し自信なさげに目を反らした。
おかしいな。普段なら文句の三つや四つでも言ってくる場面のはずだ。

ハルヒ「・・・今は・・・」
キョン「なんだ?」
ハルヒ「今は私のことだけを考えて!」

突然、ハルヒがとんでもないことを言い出した。なんだ?どういう意味だ?

・・・いや、意味はよく理解できるが、なぜハルヒがオレに向かってそんなセリフを言うんだ?

再び理性が本能に負けそうになる。頑張れオレ!
しかし、ハルヒはうるんだ目でオレを見つめてくる。

ハルヒ「みくるちゃんや有希のことは考えないで。私だけを見て」

ぐあー!これはたまらん!もう1秒だって耐えられない。
いやいや待て、オレはSOS団の理性部分を担当しているはずだ。
そのオレが率先して本能に負けてどうするんだ。
頑張れオレ!そして頑張れ古泉!

ハルヒの願いとは裏腹に、オレは脳内スクリーンで必死に腰をふる古泉を
一心不乱に見つめ続けた。

突然、ハルヒの顔が間近に迫ってきた。
これはまさか!
拒絶しようかどうかをためらった一瞬のうちに、ハルヒの唇がオレの唇をふさいだ。
ハルヒの唇は柔らかく、甘かった。

…もうダメだ。これ以上本能をおさえることはできない。
だけど、オレの理性はここまで頑張ってきたんだ。誰もオレを罵ったりはしないだろう。

ハルヒはゆっくりと唇を離した。とろんとした目でオレの顔を見つめてくる。


谷口、国木田、オレはひと足さきに大人になるよ。さらば童貞、さらば少年の日々よ・・・

そうだ。女の子にここまでさせといて手を出さないなんて男じゃない。
なによりハルヒに恥をかかせることになる。
プライドの高いハルヒのことだ。もしかしたらSOS団の活動、いやそれどころではなく、
世界自体が危なくなるかもしれない。

オレはここにきてようやく覚悟を決めた。そうとなれば、脳内スクリーンに写っている
おぞましいモノはもはや必要ない。二度と思い返せないよう入念に消去しておこう。

キョン「ハルヒ・・・」

オレはハルヒの背中に手を回し、抱き寄せた。

ハルヒ「ン・・・キョン、ちょっと待って」

少し力を入れすぎてしまったか、ハルヒはわずかにオレを拒絶した。
ハルヒの顔は真っ赤になっていた。何か言いかけてはやめる素振りを見せ、
そしてようやく口を開いた。

ハルヒ「その・・・する前に、ひとつ聞いておきたいことがあるの・・・」
キョン「どうしたんだ?」

オレはできるだけやさしい声でハルヒに聞き返した。

ハルヒ「・・・キョンが私のことどう思ってるのかな、って。
    もしかしたら、誘惑されたから熱くなってるだけなんじゃないかって思って・・・」

そういうとハルヒは再び涙目になっていた。

涙目のハルヒにそう言われて、オレは少し反省していた。
そうだ、オレは理性がどうのとか童貞がどうだとか、ハルヒに恥をかかせたくないだとか
テキトーな理由をつけて、一番肝心なことを避けていたんだ。
そうだよな。一番大事なのはお互いの気持ちだったんだよな。

オレがハルヒのことをどう思っているか。そんなことは、あの閉鎖空間に
二人で閉じ込められたときに答えは出ていたはずじゃないか。
なんだってオレは今になってためらっていたんだ。

キョン「ハルヒ・・・オレはお前のことが好きだ」
ハルヒ「・・・ウソ、ウソよ。だってキョンはいつもみくるちゃんや有希のことばっかり見て、
    私のことなんて全然気にしてくれないじゃない」

ハルヒの目には大粒の涙が浮かんでいた。ハルヒは普段のオレを
そんな風に見ていたのか・・・

キョン「それは違うぞ、ハルヒ」

さっきよりもやさしい声でオレは答えた。

キョン「たしかに朝比奈さんはみてて危なっかしいトコがあるし、
   長門が一人でいるトコをみると心配になるのは本当だ」
ハルヒ「・・・やっぱり」
キョン「でもな、オレが一番気になってるのはお前のことなんだぜ。
    オレより頭がよくて運動神経もよくて顔もいいお前だけど、
    いつも無茶なことばかりするから、いつか大きな失敗をするんじゃないかって
    いつも心配してるんだ」
ハルヒ「・・・・・・」
キョン「でもな、オレはそんなお前がすごく魅力的に見えるんだ。たまにお前が
    元気をなくしているときなんか、すごく心配だったんだぜ?」
ハルヒ「・・・ホント?」
キョン「ああ、本当だ。オレは元気に走り回っている普段のお前が
   大好きなんだ」

そういうとハルヒはオレの胸に顔を押し付けた。

ハルヒ「キョン・・・私もキョンのこと大好きだよ。キョン・・・キョン・・・」

オレは再びハルヒの背に手を回し、やさしく抱きしめた。
するとハルヒはオレの顔を見つめ、目を閉じた。
オレはゆっくりとハルヒの顔に近づいていき、唇を重ねようとした。

・・・しかしそのとき、遠くのほうからオレたちを呼ぶ声が聞こえた。

オレとハルヒは目を見合わせると、急いで飛び起きて
あわててまだ乾いていない服を身に付けた。・・・うう、冷たい。

数十秒たって、カッパをまとった古泉と森さんがやってきた。

古泉「涼宮さん、キョン君・・・心配しましたよ」
キョン「スマン、ハルヒが足をくじいてしまってな。雨がやんだら屋敷に戻るつもりだった」
古泉「だいぶ体が冷えてるようですね・・・一刻も早く屋敷に戻りましょう。
   あなたたちは気づかなかったようですが、近くにガケの上に戻れる道があるんですよ」
キョン「そうか。来てくれて助かったよ」

ハルヒとの甘いひとときを邪魔されたオレは心の中で古泉たちに毒づいていたが、
せっかく助けにきてくれたんだ。ちゃんとお礼は言っとくべきだな。

キョン「結局、続きはおあずけか」

帰りのフェリーで、オレは一人デッキに上がって夕日を見つめていた。
自然とため息が出てくる。なんだかんだキレイ事を言ったが、
やはりオレは童貞喪失の機会を逃したことを少し後悔していた。

あんとき、助けが来るのがもう少し後だったらなあ・・・

ハルヒ「キョン、なにしてんの?」

振り向くとハルヒが立っていた。

ハルヒ「暗い顔して、なに考えてたの?」

ハルヒにそう聞かれ、一瞬言葉が詰まる。

ハルヒ「ま、キョンが考えそうなことは大体見当がつくわ。あのときのこと考えてたんでしょ?」

そう言われてオレは顔に血が上った。よくみると、言った本人のハルヒも
少し顔を赤くしている。

ハルヒ「まったく、キョンはエロっちいわね・・・」

そういいながらハルヒは恥ずかしそうにうつむいている。

ハルヒ「その、今焦んなくたってこれからいつでも・・・」

もじもじしながら言うハルヒ。意外にウブだったんだな、コイツ。
中学のときに何人も付き合っていたと聞いてたから、実は少し心配だったんだ。

・・・今はハルヒのことがいとおしい。今すぐ抱きしめてしまいたい。

夕日を背に受けたハルヒは、普段の何倍にも輝いて見える。
こみ上げる衝動をこらえ、オレはハルヒの両肩に手を置いた。



キョン「ハルヒ・・・目つぶって」
ハルヒ「え・・・ここで・・するの・・・?」

オレの言葉を聞いてハルヒは顔を真っ赤にした。

キョン「時間はこれからいくらでもあるけどさ。今のこの時間は二度とやってはこないんだぜ」
ハルヒ「キョン・・・」

そういうとハルヒはゆっくりと目を閉じる。オレは唇をハルヒの唇に重ねると、目を閉じた。

そのとき、遠くからフラッシュの光と共にシャッターを切る音が聞こえた。

みくる「えへへ、今回の合宿で一番いい写真が撮れちゃいました!」

朝比奈さんの言葉に、オレたちはみるみる顔を赤くした。

ハルヒ「ちょ、みくるちゃん・・・やったわね!待ちなさい!」
みくる「抜け駆けはダメですよー」

朝比奈さんが笑いながら逃げ出したと同時に、ハルヒが後を追いかけた。
ふぅー、キスだけでこの様子では、あの続きはどうやらしばらくおあずけのようだ。
ハルヒと朝比奈さんの追いかけっこを見ながら、オレは軽くため息をついた。



おしまい(´・ω・`)



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