キョン「…何だと?」
古泉「ですから涼宮さんは世界改変能力を失われたんです。
   これで、もう涼宮さんの動向に一喜一憂する必要もなくなりました。
   いやあ、正直すっとしましたよ。僕もあんな頭がゴキゲンな輩の相手をするのはそろそろ限界だったもので」
キョン「……」
古泉「というわけで、僕は明日この学校を転校する事になります。元の学校に戻りますよ。
   僕にも、あちらでの生活というものがありましたから。」
キョン「・・・朝比奈さんと長門はどうなったんだ?」
古泉「おや、まだ分からないんですか?僕やあなたはともかく、朝比奈みくると長門有希は、
   物理法則を超越しない限り、絶対にこの世界には存在できないんですよ。
   ですから、消えるのは当然でしょう?」

古泉「もちろん、僕の能力も失われていますよ。今朝起きてみたら超能力を失っていたんです。
   組織は解散、晴れて僕もアルバイトをクビです。このSOS団という部活ごっこもこれでお終い、
   と言った所でしょうか。あなたも、もうこんな部活動にいる必要はないんですよ。」
…俺はまだ混乱から抜け切っていない頭で、朝比奈さん、長門、古泉の居なくなった後の
SOS団について想像をめぐらせてみる。部室にはぽつんと俺とハルヒが黙って座っているだけ。
辺りには低いPCのファンの音だけが響き、俺とハルヒの間には長い長い沈黙が横たわる。

いや待て。俺も部室に来なくなったらハルヒは一体どうなるんだ?

よく考えてみるとハルヒに友達と呼べる者はSOS団にしか居なかった。
俺とも疎遠になれば、学校内で完全に孤立する事になるだろう。

奴は中学でも完全に浮いた存在となっていたらしいが、今とその時じゃ状況が全く違う。
今のハルヒは、SOS団全員で遊ぶという日常に浸かりきってしまっている。
そこからたった1日で完全に孤立してしまったら、果たしてハルヒは耐えられるのだろうか?

ドアノブを捻る音に思考を中断された。古泉はいつの間にかどこかに行ってしまったらしい。
ということはこの人物は―――

「キョン。…ふたりぼっちに、なっちゃったね・・・・・・」

キョン「…ああ。そうだな」
ハルヒ「………みんな、居なくなっちゃったわね」
キョン「……」
ハルヒ「ねぇ、キョン。あんたは…あんたも、やめちゃうの?SOS団。」
俺は俯いて迷う。確かに古泉の言うとおり、俺にはもうSOS団に居る理由なんてないのかもしれん。
そもそも、俺は今までハルヒの暴走につき合わされることに迷惑していたんじゃなかったのか。
今SOS団をやめれば、俺に平和な学園生活が戻ってくるのは確実だ。
そう、俺には、もうここに―――SOS団に残る理由なんて、何も―――
俺は顔を上げる。ハルヒの顔には俺が今まで見たこともない、不安の表情が浮かんでいた。

俺は口を開く。
キョン「やめねえよ。なんだってそんな事を考えるんだ、お前は。」
ハルヒが驚いた顔をしている。俺も自分の口から出た言葉に驚いている。
しかし、俺はすぐに気づく。俺は馬鹿か。当然じゃないか。
むしろ、あのハルヒの不安で一杯な表情に拒絶の言葉を投げかけようとするまで気づかないほうがどうかしていた。

―――ああ、そうか。俺はずっと前から、…いや、一目見た時から、ハルヒに―――
ハルヒ「あ、あは。そ、そうよね。あんたは、栄えあるSOS団員の第1号だもんね!
    そんなわけないわよね!あは、あははははははは、は………」
キョン「…ハルヒ」
ハルヒ「ねぇ、キョン。……………キス、して」

俺は黙ってハルヒの体を抱き寄せる。
普段の体内に無限増殖炉でもあるんじゃないかと疑ってしまうようなパワー溢れる姿からは
想像も出来ない、華奢な、しかし女らしい体がそこにあった。

―――そうか、そりゃそうだ。こいつも、女なんだよな。

そんな事は、あの時にハルヒの半裸姿を見てしまったときに分かっていたはずだった。
しかし、それすら吹き飛ばしてしまうのが、今までのハルヒだったのだ。
今はおとなしく目を閉じて俺からのキスを待っているハルヒ。
俺はその唇に、静かに唇を合わせた。

傷の舐めあいでもいい。俺はハルヒを放っておけないし、ハルヒは俺が居ないと駄目だろう。
……何だ俺は。まだ素直になれんのか。こりゃ重症だ。
俺はハルヒが好きだし、ハルヒも俺の事が好きだ。ただ、それだけのことだ―――
                                                       END

|