ある日、何時ものように長門と二人で部室に居たら…

長門「……好き。」

キョン「へ?」

長門「………。」

キョン「え…ちょっ…エェ…!?」

長門「………。」
黙々とページをめくる長門。
…幻聴か?
長門「幻聴…じゃない。」またとんでもない爆弾を落とす長門。

キョン「へ…!?」

キョン「ちょ…ど、どして?」

長門「………。」
黙ったまま本に眼を向けてる長門。

キョン「お、おい…長門…?」
長門は静かに立ち上がり、読んでた本を俺に手渡す。
タイトルは…小恥ずかしくて口には出せない。恋愛小説だ。

長門「…読んで。」
そう言って部室を去る長門。俺はその場に立ち尽くした…。

その後、俺はどうやって家に帰ったか覚えてない。
いつの間にかベットで仰向けになって呆けていた。
お袋が夕飯が出来たと呼ぶが食う気になれない。
俺は一言いらないと告げ、また仰向けになって呆ける。
机の上には恋愛小説と長門の名前が書いてある栞。

キョン「…。」
思えばSOS団初期からの付き合いだよな長門とも。

キョン「……。」
無表情、無感動、無感情の…人造人間。
いや、人造でも長門は人間だ。
誰かを好きになってもおかしくない…はず。
キョン「…俺だって、長門は嫌いじゃない…。」
だが後一歩を踏み出せない。

どーにでもなれ。

俺はその日はふて寝した。

不覚にも早朝6:00に目を覚ます。
学校に続く坂を歩きながら(まさかこんな理由で余裕をもって登校するとは)長門の事を考えていた。
これが余程ハルヒ達の仕掛けたドッキリならと何度も考えた。

キョン「…何で律義に学校来てんだ俺?」
休めば良かったじゃないかと後悔するが、文字通り後悔先に立たず。
既に我が学びやは目の前だ。俺は溜息混じりに校門をくぐる。

放課後

何て時は無情で残酷だろう。間違いなく気のせいだが、今日は通常の3倍で時間が進んだんじゃないか?それかどっかの神父が時を加速させたか?…んなわけない…昨日から俺は動揺しすぎだ。

キョン「…きっと来てるよな…長門。」
俺は重い足取りで部室に向かう。

部室に入るとハルヒに朝比奈さんに、古泉…それに長門もやっぱり定位置にいた。この部室の備品の如く何時もの姿勢で何時もの様に本を読んでる。

ハルヒ「ちょっとキョン、遅いわよ!」
うっせー、人の気も知らないで。

今日もハルヒの思いつき騒動に引っ張り回される。
何時もなら迷惑この上ないが今日だけは感謝したい。引っ張り回されてる間は長門との事を考えずに済んだ。

…ああ、『逃げ』だよ。
俺は今、誰がどうみても間違いなくヘタレ街道まっしぐらだ。
分かってんだ。いずれ答えを出さなきゃいけないって。

朝比奈「疲れましたね~。ではお先に帰ります~。」
古泉「では僕も、バイトがありますから。」ハルヒ「今日も成果無し…行動パターンを変える必要がありそうね…。」
ハルヒの暴走の後始末・尻拭いを終わらせ、朝比奈さん、古泉、ハルヒが部室を後にする。

キョン「さて…俺も帰るか。」PC研究会から掻っ攫ったパソコンをシャットダウンし、鞄を持った所で気付く。

長門が真後ろに立っていた。

キョン「うぉっ!?」
長門「…。」


キョン「…な、何だ長門?」

長門「…本…読んだ?」
以前にもしたような会話…あの時はSF小説だったか?

キョン「…悪い、まだ読んでない。」
同じような返事。

長門「…読みたくなったら…読んで。」
…前とは違う。命令調ではなく、あくまで俺が自発的に読むのを待つ言葉…。
そしてスタスタと速足で部室を出る。
キョン「…なが…」俺が呼ぼうとした時、部室には俺と俺の影しかいなかった。
自宅に戻った俺は、今度はベットに俯せになり頭を抱えていた。

キョン「…何でだよ…。」俺は恨めしげに机の上の恋愛小説を睨んだ。

キョン「何で決心出来ないんだよ…。」
何時までも答えが出ない。俺の思考はメビウスの輪状態だ。
また夕飯も喉を通らない。俺は夜中の3:24頃、ようやく睡魔に負けた。
次の日が日曜だったのは幸いだった。

翌日 AM9:07

水音が俺の意識を覚醒させた。
俺は重い身体を持ち上げ、窓を見上げた。
外は雨が降っていた…。

どういう風の吹き回しか、俺はおもむろに長門から渡された恋愛小説を手に取る。

キョン「……!」最初のページを開いてすぐに止まる。長門の栞が挟んであった。本の最初のページに栞を挟むのは貸すときに良くするが…。
俺はまさかと思いながらも栞を手に取る。
手に取って後悔する。
ハルヒ『栞に有希が何か書いてるって期待したの?あんたって本当に単純ね!まぁそこそこ楽しめたわ。気付いてるでしょ?これはドッキリよ!!』
…と書いてあったらどれだけ笑えただろう。残酷だぜ神様?あんたに俺が何をした?
栞には、長門の綺麗な、パソコンのような文字で
長門『18:00、あの公園で待ってる』
と書かれていた。
それが意味する事は一つ。長門は俺が来なかった日も公園で待ってたという事だ。
下手すりゃ、この雨の中も…?
俺は大慌てでパジャマを脱ぎ私服に着替え、お袋や妹の制止を振り切り傘もささずに家を出た。
時間はまだ午前中。だが、俺は待ってられなかった。

息を切らせ、ずぶ濡れで公園に辿り着くと、水色の傘をさして、見慣れた制服姿で長門が立っていた。
キョン「…何時から待ってた?」
ずぶ濡れの俺を、自分の傘に入れる長門。ちょうど向かい合う感じだ。
長門「…30分前から…今日は休みだから…時間を有効活用しようと思った。」
無表情だが、何故か眼が泳いでた。俺を直視しない。
キョン「また来ないかもしれなかったぜ?」長門「…問題無い…多分。」
多分、か。長門もやっぱり不安だったのか?そう、今更だが俺の心は決心がついていた。俺は長門が好きだ。きっと好きなんだ。
なら…言葉にすれば良いじゃないか。
キョン「…なぁ、長門…。」
長門「…何?」
僅かに、僅かに赤く染まる顔。
可愛いじゃねぇかチキショウ。
キョン「…俺は、俺は長門…お前が好きだ…。」
長門「……。」俺を真っ直ぐ見つめる瞳。
キョン「…俺と付き合ってくれるか?」
長門「………////」コクリと頷く長門。俺は彼女を抱きしめた。
傘が地面に落ちて、俺は長門の唇に…


キョン「…という夢を昨日見た。」

古泉「…夢分析ならフロイト博士に相談して下さい。」

キョン「…冷たいな。」

古泉「専門外ですから。」爽やかに突き放すなコノヤロウ。

キョン「……。」

古泉「あ、間違っても涼宮さんに話さないで下さいね?また閉鎖空間創られたら迷惑ですから。」
誰が話すか。

キョン「……長門…。」
今日も彼女は本を読んでる。


END

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