6話


 夢で見た、真っ白な世界に辿り着いた。
 これが元のハルヒの深層の中……か?
「キョン、久しぶり。……って毎日会ってるわね、兄妹だし」
 今回は声だけじゃなくて本体付きらしい。正直、久しぶりの本物のハルヒとの再会がうれしい。
 本当に会えて……うれしいぞ。
「な、なに真顔で恥ずかしいこと言っちゃってんのよ! バカキョン!」
 確かにバカかもしれん。ハルヒが目の前にいるだけでそれしか見えなくなってる。
 しかしだ、何でハルヒの姿が少しだけ薄くなってるんだ?
「え~と、せっかく来てくれたけど……あたし、戻ってあんたを待つわね。約束だし」
 そう言うと、ハルヒの姿は少しずつ薄れていった。
 ちょっと待て!
「なによ、あんたも早く戻って来なさいよ。……キョン兄」
 小悪魔のようにハルヒは俺に微笑みかけた。……何が『キョン兄』だ、洒落になんねぇよ。
 違う、お前が戻るんだ。早く俺達の日常に帰ってこい。
「……嫌よ。今の生活の方がずっといいわ。少し刺激にはかけるけどね」
 何なんだ、このわがままさは。まるで意地を張ってる時の妹のようだ。

 しばらく言い合うと泣き出すんじゃないのか? ……あるわけないか。
 お前、言ってただろ? 宇宙人とかを見つけ出して一緒に遊ぶって。お前が妹ならそんなのも出来ないぞ?
「だから、構わないわ。あんたを起こして、一緒に学校に行って、何でもない話をして帰る。
 それだけであたしは幸せなの。鈍感なあんたは気付いてないだろうけどね」
 俺の妹になるだけで幸せだと言うのか、こいつは。
 ……ふざけるな、俺がどんな気持ちかもわかって無いくせに。
「あんたがふざけないでよ。普通の人間って自負してるなら気付いてたんでしょ?」
 何をだよ。
「だ、だから……その……あ、あたしの気持ちよ」
 ここで考えてみよう。こいつの俺に抱いてる感情とはなんだ?
 1、SOS団の団員その1 2、パシり 3、自分の行動の邪魔をするウザい奴。
 ……くらいだよな?
「……呆れた。よくわかんないけど、あたしは消えるわ。もうあんたとは会えないわね。
 あたし自身なにが起こってるかわかんないけど、これからはずっと《妹》として顔を合わせるのよ」
 ハルヒの姿がほとんど消えかかっている。マズい、時間が無い。
 待て! まだ言ってないことが幾つかある!
 勢いで叫んでみたが、本当に言いたいことは一つだ。なんて情けない。
 ハルヒは振り向くと、うんざりしたような表情で俺を睨みつけた。
「何なのよ、バカキョン。いい加減にしなさい」
 俺は、お前が好きだ。
「へ?」
 妹じゃない、お前が好きだ。《涼宮ハルヒ》が好きなんだよ。
 お前の気持ちがどうであろうが、俺の気持ちはそういうことらしい。

 よくもまぁ、スラスラと言葉が出るもんだ。愛の告白って雰囲気じゃないぞ、これは。
「ほんと? あっ……」
 俺の目前で、ハルヒは消えた。……と思ったら、すぐに出てきた。
 なにがしたいんだ、こいつは。
「キョン兄、まさか帰ってこないつもりなの? ……嫌だからね!」
 おい、ハルヒ。演技はいいから何か答えろ。
「演技って何よ。それより、早く帰って来なさいよ! ……話があるって言ったじゃない」
 ……あぁ、そういうことか。このハルヒは妹ハルヒだ。ということは元のハルヒは俺を置いて戻ったのか?
 くそ、頭がゴチャゴチャだ。
「ゆびきりしたじゃない……針千本のますわよ」
 妹ハルヒは俯いてそう言った。
 ……元のハルヒと妹ハルヒの立場が逆転したのか? つまり、この白い世界の外は元の世界か?
 ひとまず置いておくか。
 悪いな、針千本も飲むわけにはいかない。……帰りたいんだ。わかってくれ。
「わからない! あたしだってハルヒよ! ずっとキョン兄が好きだったの!」
 ………………すまん。思考回路が限界に達した。
 人間、考え過ぎると知恵熱が出るって本当なんだな。
 俺は頭が痛くなり、全身が熱くなって、目を閉じた。容量オーバーってやつだ。……やれやれ。


「キョン!」「キョン兄!」
 目を覚ました俺を迎えてくれたのは、白い世界と二人のハルヒだった。
 どうやら、元のハルヒと妹ハルヒ、どっちもいるらしいな。……もう何でも来いって感じだ。
「キョン兄、あたしと帰ろう? ご飯作ってあげるわ」
「キョン、さっきの言葉ね……もう一回部室で聞かせてよ」
 二人のハルヒはお互いに違うことを言いつつ、俺に手を差し延べた。

 ……多分、手を取った方だけが残るんだろうな。しかし……。
 もう片方はどうなるんだ? 消えちまうのか?
 ハルヒ二人に向かってそう言った。
 元のハルヒのいる世界に戻したいが、妹ハルヒとの約束も破りたくないくらい、情が移っている。
 そんなバカな俺に、元のハルヒは声をかけてきた。
「どっちでも、あたしはあたしよ。消えたりなんかしないわ。
 ……あんたが楽しいと思う生活を選びなさい」
 迷わず、元のハルヒの手を取った。やっぱりこいつがいなきゃ俺はダメだ。
「嘘つき。針千本飲んでよね……バカ兄。どこにも行かないって……バカぁ……。
 帰ってきたら……告白しようって……」
 妹ハルヒは、泣きながら消えていった。……どこに行ったのかを、後でここで起こっていたこと全てを長門に聞こう。
 それよりも、今はとりあえず帰ろう。暖かい手を握ったまま……な。
 目を閉じて、流れに身を任せて頭の中で呟いてみた。聞こえるかはわからないけどな。
『おい、長門。全部終わったぞ』
 それが通じたのか、グルグルと回る感覚の後、俺は気絶した。


 手には暖かい感触……というより、ハルヒの手があった。
 ここは……長門の部屋か。
 朝比奈さんと3年間、寝続けた、いわくつきの場所で、ハルヒと手を繋いで寝ていた。
「んぅ……バカキョン」
 寝言か? ……幸せな奴め。
 とりあえず、ハルヒは元に戻ったようだ。一安心だな……。
「お帰りなさい。成功してよかったですぅ……」
 朝比奈さんと、長門に古泉。見事に3人揃って襖から覗いていた。……変態か?
「こっちに来て。話がある」

 わかってるよ、長門。全部詳しく聞かせてもらうぞ。
 ハルヒの手をゆっくり離し、布団をしっかりと着せてから長門の元へ歩いた。

「あなたが涼宮ハルヒと話をしている途中で、何回か入れ替わりが起こった。
 だから、涼宮ハルヒを肉体ごとさらってきた」
 お前な……さらうってなんだよ。しれっと怖いことを言うな。
 俺のツッコミなど完全に無視で、長門は続けた。
「あなたの目の前の涼宮ハルヒが入れ替わったり、同時に出てきたのは、本体の精神の移りかわりの影響」
 ニヤニヤと笑っている古泉も口を挟んできた。
「あなたの告白で、涼宮さんの気持ちも揺らいだのでしょう。妹もいいけど、恋人も……みたいな感じです。
 そこからこのような事態になったと推測されます。
 しかし、あなたが元の涼宮さんを選んだことでその揺らぎが止まり、元の涼宮さんが帰ってきたのでしょう」
 解説ありがとよ。これでお前等が全部わかってるってこともわかったよ。
 ところで、気になるのは二点だ。聞いていいか? 長門。
 少し斜め上を見た後、『いい』と返事が返ってきた。
 ここ数日のハルヒ以下、その他の人物の記憶はどうするのかと……妹ハルヒはどうなったんだ?
「両方とも、涼宮ハルヒの力を使い、消去する。記憶については改竄まで施す」
 いつもと変わらない調子で話す長門の中に、安堵の色が見えている。
 俺達の無事を喜びながら、俺の質問に答えているんだろう。
 しかし消去か……。嫌なもんだな。どうにか残せないか?
「不可能。残した場合、涼宮ハルヒの記憶がそれによって甦り、自分の能力に気付く恐れがある」
 だろうな……。悲しいもんだよ、あれでも妹として可愛がってたんだ。

 思わず溜息が出た。ちょっとした出会いと別れか。……仕方が無いと言えばそれまでだけどな。
 隣りの部屋で寝ているハルヒのことを思いだした。
 記憶の改竄をするなら、あの告白も覚えてないのか。……約束も。
 部室で聞かせろ……だったよな。
 長門。ハルヒの記憶をいじったら、俺とハルヒを眠らせたまま部室に送ってくれないか?
 珍しく、長門が誰にでもわかるような驚きの表情を浮かべた。
「……何故?」
 約束したんだよ。あいつが忘れてても、俺が忘れられん。……それに、約束を破ると針千本飲まされるからな。
 指に光るリングに目をやった。消えちまったあいつも『ハルヒ』だからな。
 長門は古泉や朝比奈さんとしばらく顔を見合わせると、頷いた。
「……わかった」
 よし、これで俺の役割はここまでだ。
 襖を開けて、ハルヒの手を握って横になった。
「ふふふ、キョンくん。やっとわかったみたいですね」
「そうですね。最初からこのように出来れば手間はかからなかったのですが……」
 二人の話し声を聞きながら俺は深い闇に潜っていった。次に目が覚めたら部室か。
 ハルヒはなんて言うかな……。


 目を覚ますと、見慣れた景色はなく、ハルヒの寝顔がそこにあった。……天使みたいだ。
「ん……ぅ……わわっ! キョン、何で!? えぇっ!?」
 ハルヒはかなり慌てて起き上がった。そりゃ、起きたら俺と一緒に部室で寝てたら慌てるよな。
 軽く暴れるハルヒの手を、離さないように強く握り締めて声をかけた。
 おはよう、ハルヒ。
「あぅ……は、はい。おはよ……」
 キャラが変わってるな。まだ、全然状況を把握出来てないんだろうな。

「……って、バカキョン! 何してたのよ、何日も学校来ないってどういうこと?」
 長門の記憶改竄によると、俺が何日も学校を無断欠席したってことになってるらしいな。
「し、心配したんだからね……。団長として……」
 あぁ、悪かった。いろいろとあったんだ。
「そう……じゃなくてあんた! どうして手を握ってるのよ! 離しなさい!」
 ……嫌だね。離したら距離とるだろ。とりあえず落ち着いて話を聞け。
 ハルヒにしては珍しく、従順におとなしくなった。妹ハルヒの名残か?
 いや、そんなのはどうでもいい。今はたった一つの言葉を伝えるのが先だ。
 ハルヒ、よく聞けよ。

『俺は、お前が好きだ』

 ハルヒは、口をパクパクさせて、目を丸くして顔を近付けてきた。
「な、ななな何言ってんのよ! ……あ、あたしちょっと用事が!」
 だから、逃げるなって。
 さらに手を強く握って、引っ張った。
「は、離してってば! ほら、家に帰んないと心配かけるし、ね!?」
 ……俺のこと、嫌いか? もし、そうなら……離すから。
 握る力を緩めて、ハルヒの意思に任せた。……まぁ、心変わりなんてよくあることだしな。
 昨日までのハルヒが俺を好きでも、今日になったら変わった……でもしょうがないさ。
 すでに、俺達の手は指先が触れ合ってるだけになっていた。……と思ったら、俺の手は包まれた。
「バカ。嫌いなわけないじゃない。ただ……驚いただけよ」
 両手で包まれた俺の右手は、そのままハルヒの胸元に持っていかれた。
「……うれしい。ありがと」
 俺も、うれしいよ。

 そう言うと、喜びがフツフツと湧き上がってきた。これが本当の幸せか。……良いもんだな。
「ねぇ、キョン。あたしのこと、どれくらい好き?」
 あ~……、海よりも深く、山よりも高くだな。
「もっと具体的に! あたしはね、これくらい好きよ」
 強烈な衝撃と共に床に倒れこんだ。妹に飛びつかれるのをハルヒにやられたわけだ。
「どう? 具体的でしょ」
 なんて奴だ。今浮かべてる笑顔が、今までに見たどんな笑顔よりもかわいい。
 こんな笑顔を隠し持っていたとは……うむ、至福だ。
 ハルヒを抱きかかえながら唇にキスをして、5秒程押しつけた後、ゆっくりと顔を離しながらハルヒに話しかけた。
 俺は、これくらい幸せだな。
「……バカキョンのくせに生意気」
 生意気でけっこうさ。とりあえず一回帰るか。
 窓を見ると、陽がそれなりの位置まできている。
 部活動生達の声が聞こえるから今日は土曜か日曜だな。……デートとかしたいな。
 立ち上がろうとした俺を、ハルヒは止めた。
 ……どうした?
「一つ、約束してよ」
 なんだ? メチャクチャ真面目な顔して。
 さっきまではしゃいでいたのが嘘のように、真面目な顔をしていた。……すぐに赤くなったが。
「あ、あ~……あたしを、し、し、幸せにしてよね!」
 正直、驚いた。今のこいつはただの一般的な恋する少女になっている。

 神様だとか、進化の可能性なんかじゃない、恋する高校2年生だ。……初めて見るな、こんな顔をしてるハルヒは。
 あぁ、任せろ。絶対に幸せにしてやるよ。
「約束なんだからね! ほらっ、小指だして!」
 ハルヒに言われるがままに、小指をだした。

――ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのます、ゆびきった――

 学園祭ライブの時のような真面目な声じゃなかった。
 それは、おどけるような、照れ隠しをするような、優しい優しい声だった。
 そんな声で歌われた『ゆびきり』の歌を聞いて、自然と涙が零れた。……恥ずい。
「ちょ、ちょっと! なに泣いてんのよ!」
 わ、悪い。ちょっとある奴のことを思い出しちまった。……なんでお前が泣いてんだよ。
 涙を拭いハルヒの顔を見る。その頬に伝うのは、一筋の涙だ。
「あたしは泣いてないわよ、泣いてるのはあんたじゃない。……まさか、照れ隠しのつもり?」
 泣いてる様子など全然見当たらないくらい平然と、ハルヒはそう言い放った。
 いや、本当だぞ。ほら。
 ハルヒの涙を指で掬い、見せてやった。
「ほんとだ……何で?」
 いや、俺に聞かれても。
「あたしには思い出すような人とか事とか無いのに……。泣いてるのも気付かないくらい自覚も無いのよ?」
 そうか、そうなんだな。この涙は、妹ハルヒの涙だ。もう消えてしまったあいつの涙なんだ。
 ハルヒに聞こえないように、顔を背けて呟いた。
 ……悪かったな、約束、守れなくて。
「え? 今なにか言った?」 いーや、なんにも。それより、どこか行くか? デートしに。
「え!? で、デートってあんた……」
 嫌ならいいんだが……。

「あ~、違う違う! 行く、連れてって! えっと……街! 買い物でいいわ!」
 わかったよ。じゃあ、行くか。
 立ち上がってズボンをはたくと、ポケットに異物感を感じた。なんなんだ?
 これは……いつの間に?
 俺が妹ハルヒに買ってやったペアリングの片割れ。それが何故か俺のポケットに入っているわけだ。
「どうしたのよ。早く行きましょ?」
 ……まぁ、選択肢は一つしかないよな?
 ハルヒ、手繋ぐから手を出せ。
「む……わ、わかったわよ。まったく……普通、男なら黙って手を取るでしょ?」
 文句を言いながら渋々と出されたハルヒの手を取り、リングをつけてやった。
 これ、お揃いだからな。プレゼントだ。
 それだけを伝えると、すぐに足早に部室を出た。何故かって?
 恥ずかしくて真っ赤な顔を見せられると思うか? 俺には無理だね。
「ま、待ちなさいバカキョン!」
 俺は、階段手前でハルヒに捕まった。
 ……かと思うと、さっきのお返しと言わんばかりにキスされた。……誰かきたらヤバいよな。
 おい、いきなり何しやがる!
「んふふ~。あたしね、今、これくらい幸せになっちゃったから! 教えてあげたのよ!」
 ……ははは、ニヤけちまう程幸せだな、こりゃ。
 行こうぜ、ハルヒ。
「うん!」
 今度こそ、きちんと手を繋いで階段を降りて行った。
 付き合い始めたついでに、今日からは、奢りじゃなくてワリカンになるとうれしいんだがな。……頼むぜ、ハルヒ。


 唐突に始まった、ハルヒが妹になるという騒動がやっと終わった。
 妹ハルヒとの別れはけっこう辛いものがあったが、これはこれでしょうがない。
 それよりも、元のハルヒとずっと一緒にいれることの方が幸せ過ぎてな。

 結局、長門や古泉や朝比奈さんも、ハルヒが起こす超常現象が少なくなり、穏やかな毎日を過ごしている。
 ……まぁ、全部丸く納まってるってわけだ。
 ちなみに、今はSOS団が全員、俺の家で遊んでいる。理由は雨だ。まったくもって忌々しい。
「でね、最近ハルにゃんがよく家に来るようになって思ったの! 昔からお姉ちゃんがいてくれたらよかったのにって!」
 ……おいおい、妹よ。話が楽しいのはわかるが、頼むからふざけたことを言うな。
「ふえぇ~……、確かに、涼宮さんがお姉ちゃんだったら楽しそうですよね」
 朝比奈さんまで……頼むからその話題を煽らないでください。悪気はないんだろうが。
「わたしも、興味がある」
 おい、長門。
「僕も、涼宮さんみたいな素敵な方が姉に欲しかったですね」
 こいつに至っては確実に楽しんでやがるな。後で追い出すか。
 ハルヒ、こんなふざけたことに耳を貸すなよ。お前は俺の……いや、何でもない。
「ちょっと! 『俺の』の続きは何なのよ?」
 続きは言わなくてもわかるはずだ。そうさ、こいつは俺をからかって遊んでるだけなのさ。
 だから、たまにはやり返してもいいだろう?
 『俺の』の続きはな、大事な大事な彼女……だ。だからな、姉なんかになってもらっちゃ困る。
「おやおや」「ふえぇ……」「…………」
 3パターンの反応と共に、ハルヒは顔を真っ赤にしていた。
「ば、バカ! あんた、み、みんながいる前で何言ってんのっ!」
「ハルにゃん、顔真っ赤だよ~!」
 こういう時に、空気の読めない妹が役にたつな。ハルヒは一人、壁の方を向いて顔を見られないようにしていた。
 ハルヒへの仕返しも終わり、俺は外の様子を窺った。すっかり雨は止んでいる。
 よし、雨もあがった事だし、探索に行くか。

 手早くみんなを部屋から追い出して、ハルヒと二人になった。
 ほら、ハルヒ。みんな待ってるから行こうぜ。
「あ、あんたが仕切らないでよ。団長はあたしなんだからっ!」
 へいへい、行きましょうぜ。団長様。
「……その前に、さっきのうれしかった言葉のお礼よ」
 ハルヒは短くキスをしてきた。ほんの一瞬、触れただけのキスだったがな。
「じゃあ、遅いほうが奢りだからっ!」
 元気よく俺の部屋を飛びだして行く後ろ姿。
 やれやれ、ジメジメしてるのに元気だな。ま、そういう所が好きなんだけどな。
 階段をうるさく音を立てて降りて行くハルヒに、俺は大声で呼び掛けながら追いかけた。
「おい、ハルヒ! 俺達の分はワリカンだからな!」


おわり

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