俺は心底腹を立てていた。何にだって? 決まっている。あの自己中心的思考を持つうちの団長にだ。あいつは俺をあごで使い、まるで召使いのように接してくる。それが何ヶ月も続いている。もう限界だ。
今俺は部室で何をするでもなくパイプ椅子に座っている。部屋にはあの女と俺だけだ。三人はまだこない。
「ねえ、キョン」
あいつがPCから頭を上げた。こういう時は俺に何かを提案するはずだ。
「暑いから何か買ってきて。あ、もちろんキョンの奢りね」
何十何百と聞いたその悪びれもしないセリフに、俺ははらわたが煮えくり返った。
「ねえキョン聞いてるの?」
「何アンタ、あたしの命令を無視する気?」
「団員は団長に服従するものよ」
「ホント使えないわね」
俺が『ガタッ!』と勢いをつけて立ち上がると、「やっと行く気になったの?」とぬかしやがった。
俺は歩く。もちろん扉へではなく、団長机へだ。
 
「何よ。言っとくけどあたしは一円も出さないからね」
俺はそれには無言で、ハルヒの頭を両手でつかみ、机に思い切り叩きつけた。
鈍い音と、ハルヒの悲鳴。スカッとするね。
「何するのよ! いたいじゃない! こんなことしてただで済むと――」
うるさいので何度も黙るまでやり続ける。そのうち抵抗力が無くなって片手で済むようになった。楽でいいね。それにしても楽しい。我慢していた分、尚更だ。
机が鼻血で赤く染まっていく。なるべく血が付かないようにするが、やはりズボンや手に付いてしまう。きたねえなあ。これ落ちにくいんだよな。
「ごめ……ゆるして……おねが……」
ハルヒが懇願している。何を今更。
もうハルヒの顔は赤一色だ。鼻からとめどなく血は流れ、口からは救いの言葉を垂れ流しているだけだ。
無様だ。本当に、無様だ。あの傲慢で強欲な団長の姿は見る影もなく、ただ脆弱で醜悪な女がそこにいた。そういえばこいつは神だったな。だとしたら俺は神をも超える存在か。随分と出世したな、俺。
いい加減痛めつけるのもあきたな。俺はそばのペン立てからハサミを取り、開いて片刃をハルヒの首筋に突き刺した。
絶叫。血飛沫。それらがハルヒから放たれた。いやまったく、笑いが止まらないね。何度も刺し続けた。途中、ハルヒが痙攣を起こしていたが、大して面白くもなかった。
ハルヒが動かなくなり、ようやく一息ついたころ、古泉が部室に飛び込んできた。肩で息をし、目を見開いている。俺は笑いながら奴に言ってやった。
「ははは。見ろよ古泉、神を殺しちまったぜ?」

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最終更新:2020年08月17日 20:17