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翌朝、俺は七時にセットしておいた妹目覚ましに物理的な衝撃でもって起こされた。
朝の慌ただしいいろいろを済ませ昨日の夜に準備しておいた服に着替える。

 

時計を見ると七時半を少しまわったくらいだ。

 

我ながらここまでは計画通りに進んでいる。この分なら八時には駅前に着くだう。
さすがにあのハルヒでも一時間も前から駅前で独り突っ立っているような愚行は犯さんだろうから、俺の罰金刑放免はすでに確約されたも同然、
……のはずだったんだが、いつもと変わらないオーダーをしているのは何故なんだろうね。
さすがにここまでコーヒー一本にこだわり続ける客は俺くらいしかいないんじゃないのか?
まあそんな他愛もない疑問はどうでもいいとして、ハルヒ、お前いつから駅前にいたんだ?

 

「さ、さっき着いたばかりよ!」

 

ということは、俺はすんでのところでコケたのか! くそ、我ながら情けない。

 

「それよりキョン! 今日は一日中私に付き合ってもらいたいんだけど、いいわよね!?」
「嫌だと言ってもどうせそうずるんだろ? それくらいの覚悟ならとっくの昔からしてるさ」
「そう、それじゃ行きましょ!」
ハルヒは百万ワットの笑顔でそう言った。

 

俺とハルヒは電車に乗り街へと向かった。

 

一体何をするのかと訝しんでいたのだが、意外にも危惧していたようなことにはならなかった。
映画にゲーセンにカラオケにショッピング、と俺たちは普遍的なカップルが行うベタなデートみたいなことをした。
まあ普通に楽しかったんだがな。

 

これまたベタな表現だが、楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りはオレンジ色の光に包まれていた。
十分に遊びきって疲れ果てていた俺たちはどこか休める場所を求め、その結果俺は本日二度目のいつもと同じコーヒーを味わっていた。

 

「今日はこれで終わりなのか? 団長様よ?」
「そうね……今日はもう疲れたし、暗くならない内に帰りましょ!」
「そうだな。俺ももう疲れたし、ここで解散にするか」
そう言って俺は会計を済ませるために席をたとうとした。
すると何の発作なのか、ハルヒは昨日と同じようにまたもがもがし始めた。
「ちょ、ちょっと待って! キョン!」
「ん? どうした?」
「その……あの……あした……その」
「何だって?」
「だから、その……あしたも……その……」
「アシカがどうしたって?」
「っ! このバカキョン! アシカじゃないわよ! あ・し・た!」
「明日がどうかしたのか?」
暫しの沈黙の後、

 

「明日も遊ばない?」

 

と、今にも消え入りそうな声でハルヒはそう言った。
特に断る理由もなかったので俺はハルヒの申し出を受理する旨を伝えた。
ハルヒはそれを聞いて満足したのか「じゃあまた明日ね!」と無駄にデカい声でそう言い残し自分の会計などつゆいささかも気にせず喫茶店を後にした。
まあ初めから俺が払うつもりだったからそんなことはどうでもいいのさ。
それに帰り際のハルヒのあの百万ジュールの笑顔を拝めるんなら、百円硬貨の二三枚なんぞ安いもんだ。

 

そんなことを考えながら俺も喫茶店を後にした。

 

この時の俺はハルヒの微妙な変化にまだ気づいてやれていなかった。
与えられるものだけに満足し、それ以上何もしようとはしない俺に、ハルヒの微妙な変化などどうでもいいことだったのかもしれない。
我ながら思う。つくづく最低な野郎だ。
この時点でハルヒの気持ちに気づいてやれていたなら、おそらく今の状況なんぞにはならなかっただろう。
いや、確信を持って言える。

 

決してこんなことにはならなかった。

 

回想にはまだ続きがある。

 

時は今日の午後三時、場所は昨日と同じく北口駅前まで遡る……
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