事の始まりはもう少し前からだったかもしれない。今思えば、ハルヒの異変はあのときから始まっていたのかもな。
 
話は先週金曜日放課後へと遡る……
 
やっとこさ退屈以外の何物でもない授業が終わり、俺はいつものように文芸部部室とは名ばかりのSOS団根城へ向かおうとしていた。
さっさと教室を出ようとしたまさにその時、今週の掃除当番であったハルヒに呼び止められた。
今週といっても今日で終わるんだがな。
「キョン! ちょっといい? あんた今日ちゃんと部室に来るでしょうね?」
と、聞くまでもないようなことを聞かれた気がするのは俺の気のせいだろうか?
「もちろんそのつもりだが、何だいきなり? 来て欲しくないのか?」
「そんなんじゃないわよ。いいからちゃんと来なさいよ! 分かった!?」
へいへいわかってますよ、と俺は適当に相づちを打ち、結局いつものように部室へと向かった。
 
部室までの道のりでは特に何もなく、俺は朝比奈さんの舌足らずな返事を期待して部室のドアをノックした。
だが返事が返ってくる気配が一向にない。
こういう場合は長門が一人で置物と化し、ハードカバーの虜となっているのがいつものパターンなんだよなと思い部室のドアを開けた。
「ようながt……ってまだ誰も来てないのか」
 
珍しいこともあったもんだ。この俺が一番乗りとはな。
まあしばらく待てば朝比奈さんも長門も、古泉はどうでもいいが来るだろうと思い、俺は束の間の孤独を満喫していた。
 
ん、誰かの足音だ。このか細い足音はきっと朝比奈さんのものに違いない。
ほうらこの控えめなドアの開け方だってまさしく俺の朝比奈さん……てあれ、ハルヒ。
「ちゃんと来てるようね。それじゃさっそく明日のミーティングを開始するわ!」
「まだ朝比奈さんも長門も古泉も来てないんだが」
「みくるちゃんたちは風邪をひいたらしいわ。だから今日は休ませたの。多分明日も……来れないんじゃないかしら」
「とすると何だ? 明日は俺たち二人だけで行動するのか?」
「そ、そうよ! 何か文句でもあんの!?」
 
古泉と朝比奈さんはともかく、ヒューマノイド・インターフェースが風邪をひくなんてことがあるのか?
と、一人思索を巡らしていると、その沈黙をどう受けとったのか。
ハルヒはあからさまに残念と顔に貼り付けてあるかのような顔つきになり、
「べ、別にあんたが行きたくないんだったら……それはそれで」
「いや、別に俺は構わないz「本当!?」
俺が喋り終わるか終わらないかで食いついてきやがった。
さっきの暗いのとは打って変わって今度は炎天下に咲くヒマワリのような明るい表情だ。
今日はまたコロコロと表情を変えなさるねこの団長様は。
 
「それじゃ明日は朝九時に駅前集合ね! 遅れたら罰金だからね!」
 
へいへいといつも通りに適当な相づちを打つ俺。
それにしても進んで休日を捧げるとは、もしかしたら俺はMなのかもしれないな。いや冗談だが。
 
その日は結局他のメンバーはハルヒの言うとおり来ず、ハルヒと適当にネットサーフィンをして時間をつぶし家路についた。
 
帰り際ハルヒがなんだか知らんがもがもがやってたのは何だったんだろうな。

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