ストーリー参考:X-FILES シーズン1「三角フラスコ」


X-FILE課が設立された後、あの長門が俺たちを殺そうとしたり、
喜緑さんが俺たちを救ってくれたり、『機関』のスポンサーが
アメリカ政府になったことを鶴屋さんに告げられたりと、
俺の周りではSOS団時代と違った新しい歯車が回っている事を
常に気にせずにはいられなかった。ただ、ハルヒとそのことに
ついて話し合ったことはなかった。お互い、『何を信じればいいのか』
ということが胸につっかえていたのだろうと思う。
そしてついに回っていた歯車は急速にスピードを上げ、俺たちの
前に危機として襲い掛かってきたのだった・・・


一台の車がパトカー2台とカーチェイスを繰り広げている。車は暴走したかの
ごとくスピードを上げ倉庫が立ち並ぶ場所へと逃げ込んだ。
『応援を送ります。現在位置を報告してください。』
警察無線がけたたましく鳴る。
「現在エイプリル通りから造船所のほうを西へ向かって走行中。」
『了解。応援を送ります。』
追いかけられている車はついに袋小路に入り込んだ。
”警察だ!車を止めろ!”
車は荷物にぶつかりスリップして止まった。止まった車から1人の男が
運転席から逃げ出し、近くの柵を乗り越えて逃亡しようとした。
しかし、すぐに駆けつけた警官に取り押さえられ柵から引き離された。
「動くな!地面に付け!」
警官が怒鳴る。しかし男は必死に抵抗を続ける。男は油断した警官から
警棒を取り上げると次々と警官を倒していった。そのとき応援に駆けつけた
若手警官が電気ショックガンを男に発射した。しかし、男は何の変化も
受けなかった。男はショックガンの電極を抜くと一目散に桟橋へ駆け込んで
いった。
「止まらないと撃つぞ!」
警官が威嚇する。しかし男は止まることなく桟橋の端に向かって走っていった。
”パンパン”警官が銃を男に発射した。しかし男は止まることなく走り続け、
ついに海へ飛び込んでいった。
「確かに命中したはずなのに・・・どこへ行ったんだ・・・出血がひどいはずなのに」
警官はまるで信じられないという顔で海を見つめた。桟橋の端に着いた警官が
見たものは赤い血ではなく、緑色の液体だった・・・


あたしは家でテレビを見ながらソファーに横になっていた。その時電話が鳴り、
受話器をとって耳に当てて、
『8チャンネルを見ろ。』
この一言だけ言って電話は切れた。
「ったく。なんなのよもう・・・」
そういいつつTVのチャンネルを8チャンネルにした。そのチャンネルでは
夕方、車の追跡激が行われたという現場からのニュースを流していた。
あたしは急いでビデオに録画を始めた・・・


次の日あたしはオフィスで録画しておいたニュースを繰り返し見続けた。
「ハルヒ、さっきから何十回も見てるぞ。一体何を探しているんだ?」
キョンがあきれたような口調であたしに言った。
「あたしもわからないわ。」
そう答えるとあたしは怪しいと思われる人物が写っている画像をプリントした。
「彼・・・ディープスロートがテレビを見ろって言ったのか?」
キョンが言ったディープスロートというのは以前から私に情報をもたらして
くれている初老の男性のことだ。最初にあったのはエレンズ空軍基地事件の時だった。
「そうよ。」
「警察はなぜその男を追いかけてたんだ?」
「ニュースではスピード違反としか伝えていないわ。」
「スピード違反にしては随分大げさな報道だな。」
「絶対になにかあるわ。」
そう言いつつ今度は1台の車が写った画像をプリントした。
「ニセの情報なんじゃないか?」
「どうして?」
「彼は前にも嘘をおまえに伝えたろ。」
そう、彼は以前宇宙人が捕獲されたという事件があったとき、
あたしたちの身を案じて一部嘘の情報を教えたことがあった。
「いや違うわ。彼は何かを知らせたかったのよ。きっとなにかあるに
違いないわ。だからあたしに電話してきたのよ。」
「だとしたら一体何を?」
「それをこれから探すのよ。」


あたしたちは現場へと向かった。そこで事件を担当している警官に
説明を求めた。
「昨夜は3つの捜査機関が動員されてたんだ。」
「たかがスピード違反なのに?」
あたしはオフィスでプリントした写真を見せながら、
「この私服の男だけど、署の人間なの?」
「いや、ちがうな。知らない男だ。昨夜は人がうじゃうじゃいたからな。」
「容疑者は逃げた形跡もなく遺体も出ないの?」
「見ての通り捜索中だ。ダイバーも動員してるしそのうち見つかるだろう。」
「でも、もう18時間も経ってるわ。おかしいんじゃない?」
「いや、海底の探索には時間がかかる。それよりも、FBIがなぜこの事件に?」
「容疑者の男の顔が手配中の逃亡犯に似て・・・」
「ほう、それは不思議だ。人相は発表していないのに。」
「差し支えなければ車を見たいんだけど。」
「署の駐車場にある。」


俺たちは担当している警察署に向かった。
「所有者はゲイザスバーグのレンタカー会社だ。店は盗まれたものだと
言ってるが。これじゃ車の線を洗うのは無駄なんじゃないか。」
俺はハルヒに言った。
「きっと何かあるはずよ。」
ハルヒはオフィスでプリントした車の写真を見ながら車の周りを探ってた。
「この写真じゃナンバーも見えないわね・・・」
ハルヒが車の正面に立ったとき、
「ちょっとキョン、見てみて。」
「なんだ。」
「ほら、写真の車にはガラスにシールが貼ってあるわ。」
「でもこの車には貼ってないな・・・」
「車が違うってことよ。」


俺たちは一旦オフィスに戻り改めてビデオを検証してみることにした。
「この写ってるシールは『使者の杖』と呼ばれるもので医学のシンボルらしい。」
「ってことは車の持ち主は医者ね。画質を補正してみたんだけど、ナンバーは
”3AYF”ね。」
「前半部分はどうなんだ?」
「隠れてて見えないの。だからそれしか分からないわ。」
そういうとハルヒは電話を取り、
「ダニー、ハルヒよ。車の割り出しをして欲しいの。ナンバーは
一部しか分からないんだけど、多分持ち主は医者よ。よろしく頼むわ。」
電話の先でダニーが調べている間私はキョンに、
「偽装工作のために車をすりかえられたのよ。」
と言った。
「何のためにだ?」
「持ち主に何か秘密があるに違いないわ。」


俺たちは判明した車の持ち主がいると思われるメリーランド州の
ゲイザスバーグにあるエムゲン社を訪れた。
そこでは1人の男が白衣を着て研究をしていた。
「ハルヒ、とりあえず尋問は俺がやるから、部屋を注意深く見ていてくれ。」
「わかったわ。」
そうハルヒとやり取りした後、俺は男に声をかけた。
「ベルービ博士?」
「そうだが。」
「FBIです。お話が。」
「悪いが今忙しいんだ。」
「実は昨日起きた事件に博士の車が使われたもので。」
「私の?」
「銀色のシエラをお持ちですよね?」
「何に使われた?」
「犯罪です。ご存じない?無くなった事も?」
「初耳だ。」
「あの車は普段家政婦が使っているから・・・」
そのとき、ハルヒが檻に入った実験用のサルに触ろうとした。その途端
サルが興奮し始めた
「危ない!興奮させないでもらいたい。」
「ごめんなさい。可愛かったもので・・・」
「これは実験動物なんだ。」
そう男が言った後俺は、
「何の実験を?」
「それは尋問かね?」
「いいえ。」
「だったらもう帰ってくれ。仕事が山ほど残っているんだ。」
「どうも。」
そういうと俺とハルヒは黙って研究室を出た。


「ハルヒ、噛まれなかったか?」
「大丈夫。でもちょっと危なかったわね。もうすぐ17時ね。博士の家に
行って話を聞きましょう。」
「いや、断る。」
「どういう意味?」
「こんな無意味な捜査に付き合いきれないってことだ。謎めいた電話に
振り回されて謎々を解くのはもうたくさんだ。」
「ヒントは出てるわ。」
「あれがヒントか?そもそもあのディープスロートって何者なんだ?
本名は?」
「彼は機密を知る立場にいるだから用心深いのよ。」
「ただのゲームかもしれないじゃないか。駆け引きを楽しんでいるん
じゃないのか。」
「じゃあ、彼は私を試しているとでもいいたいわけ?」
「いや、オモチャにされてるんだよ。」


結局収穫の無いまま夜になり、あたしは家に帰ってきた。アパートの
入口に入ろうとしたとき、
「少し帰りが早すぎやしないか。」
その声はディープスロートだった。
「遅くなると母親が心配するのよ。」
ディープスロートは近づいてきて、
「失望したよ。熱意が薄れたようだな。」
「なぜよ?」
「真実を追い求め夜を徹して捜査しているものと思っていたのに。」
「あんな情報じゃ少なすぎるわ。」
「今提供できるのはあれだけだ。」
「ニュースが?」
「どこまでわかったんだ?」
「何も分かってないわよ。」
「まったく・・・君に見えていないだけだ。」
「まって、あたしは今まであなたの条件に従い何の注文も出さなかった。
でも、いい加減勿体ぶるのはやめてちょうだい。」
「私に頼りすぎては困る。」
「なら言うけど、あたしのほうこそ謎々ゲームはもうたくさんよ。
いつまでもあなたの言う通りに動くと思ったら大間違いよ。」
「涼宮捜査官。私を信じろ。あと一歩で君は真実に触れることができる。」
「後一歩で・・・何の真実よ。」
あたしのその言葉を聞くとディープスロートは夜の闇へと消えていった。


エムゲン社の研究室にて夜を徹してベルービ博士が研究を続けていた。
博士が顕微鏡をのぞいていると研究室のドアが開いた。
「誰だ?」
返事が無い。
「返事をしてくれ。」
「残業かしら。」
若い女性の声が聞こえた。
「何しに来たんだ?」
女性は博士に近づいた後、
「彼は生きてるんでしょ?連絡はあったのかしら。」
「頼む。今すぐ帰ってくれ。」
檻のなかにいるサルたちが興奮し始める。
「誰か知らんがFBIならもう質問に答えたろ。」
「なんと答えたのかしら?」
「私は何も知らん。何度聞いても同じだ。」
「セケア博士はどこ?」
「何の話かわからんな。」
女性は黙ってサルを見つめる。
「頼む。重要な仕事の最中なんだ。邪魔せんでくれ。」
「あなたの仕事は・・・もう終わりよ。」
そういうと女性は博士の首につかみかかった。とても女性とは思えない
力で締め付けていた。
その光景をサルたちは興奮しながら見ていたのだった・・・


次の日、エムゲン社の研究室にてベルービ博士が死亡したとの連絡を
受けた。あたしとキョンは急いでエムゲン社の研究室向かった。
研究室内はめちゃめちゃに荒らされており、博士は首をつった状態で
発見されたらしい。
「現場検証の責任者は郡の保安官になってるな。中間報告を見る限り
では自殺と記述されてるな。」
「自殺ですって?」
「自分で室内を荒らしたうえで死んだらしいと。」
「方法はなんて?」
「この報告書によると・・・丈夫なガーゼで首を縛り、その片端を
ガス栓に結んで飛び降りたとあるな。」
「目撃者はいるの?」
「誰もいないらしい。」
「昨日あった感じでは綺麗好きでこんなことをするような男には
見えなかったけどね。」
「死に方も問題だな。」
「不自然よ。自殺にしては少し念入りすぎてるわ。確実に死ぬために
首吊りと飛び降りをいっぺんにやるなんて聞いたことが無いわ。」
「ベルービ博士の経歴は・・・と。テレンス・ベルービ。74年に
ハーバードを卒業。専門は”ゲノム”か。知ってるか?」
「遺伝子の解析でしょ。科学史上最も野心的な研究のひとつよ。」
「さすがだな、ハルヒ。」
「キョンとは頭の出来が違うもの。」
「へいへい。でも、それがどうかしたか?」
「ゲノムの研究をしている人は大勢いるけど、銀色のシエラを所有し
首にガーゼを巻いてバンジージャンプしたのは彼一人よ。」
「でも、それだけじゃ一昨日の事件とは繋がらないな。」
あたしは調整装置の中にあった三角フラスコを取り出して底を
見てみた。”純度調整”と書いてある。


「見る視点が違っていたのかもしれないわ。問題はそこね。きっと
それは目に見えない何かで結ばれているんだと思うわ。ところでこれ
なんだと思う?」
あたしは取り出した三角フラスコをキョンに見せた。
「なんだろうな・・・液体が入っているが・・・研究材料の1つじゃないか?」
「この三角フラスコの中身ちょっと興味があるわね・・・私は知り合いがいる
大学に行って解析してもらうわ。キョンはその間にベルービ博士の自宅を
捜索してちょうだい。」
「わかった。でもハルヒ、その液体がサルの尿なら捜査は終わりだぞ。」

俺はハルヒに言われたとおりベルービ博士の自宅へ向かった。家に着いた
もののベルを鳴らしても誰も出てこない。そこで家の横を観察してみたところ
1つだけ窓が開いてる箇所があった。俺はそこから侵入し家の中を捜索し始めた。
何か出てくれないとハルヒはまた癇癪起こすな・・・と心配しつつ・・・


あたしは今ジョージタウン大学の微生物部にいる。さっきの三角フラスコの
中身を知り合いの女性研究者に調べてもらっているところだ。
「細菌の培養液だと思うけどどこでこれを?」
「ある事件の現場よ。」
「最近の事件は随分科学的なのね。」
「何か出てくれるといいけど・・・まあ、あまり期待してないわ。」
「まって、この液体何でもないどころかただものじゃないわ・・・見て。」
そういうと彼女はモニターを見るように促した。
「これは何?」
「サイズは細菌だけど全然違うわ。こんなの見たの初めてよ。」
「つまり?」
「細菌なら普通は左右対称なんだけど、これは・・・なんていうか妙だわ。」
「正体が分かるかしら?」
「そうね、凍結破断してみれば解るかも。凍結させて薄く切って断面構造を
調べるの。多少時間がかかるけど・・・待てる?」
「ええ、急がないわ。お願い。」


俺がベルービ博士の自宅を捜索してからだいぶ時間が経った。依然として
有力な物証などは得られていない。外も暗くなり時計を見るともう19時を
まわっているところだ。やれやれと思いつつ、博士の机の椅子に座り卓上
スタンドの明かりをつけた。それから机の引き出しを探ってみると、なにやら
通話記録のようなものが出てきた。よくみるとほとんど同じ番号にかけている。
俺は早速FBIに電話した。
「ダニーか、すまない今度は電話番号を調べて欲しい。555-2804市外局番301だ。
持ち主を調べてくれ。ここの番号は555-7571だ。よろしく頼む。」
俺は電話を終えると通話記録を元の場所に戻した。更に別の引き出しを調べて
みるとどこかの鍵の束が見つかった。俺はこの鍵束をズボンのポケットにしまった。
その時電話が鳴った。
「早いな。」
「テリー君なのか?」
FBIのダニーではなく別な男からの電話だった。俺は調子を合わせて、
「ああ、誰かな?」
「撃たれてるんだ。3日間も水中にいたんだ。」
「今どこにいるんだ?」
「今公衆電話だ。」
「すぐ迎えに行く。場所は?」
「テリー・・・」
それ以上喋らない。どうも様子がおかしい。
「もしもし」
すると別の男の声で、
「もしもし、この人凄いケガをしてるよ。手当が必要だ。」
「場所はどこだ?」
「俺、救急車呼ぶよ。」
「待ってくれ!」


電話は切られてしまった。と、その直後また電話がなった。
「切らないでくれ。」
「持ち主がわかったぞ。」
「ダニー、君か。」
「住所を。」
「まってくれ、今書きとめる。」
俺は紙とペンを取るため椅子を回し窓のほうに向けた。すると外に
青色のバンが止まっているのが見えた。なんとなく怪しい・・・そう
思っていると、
「キョン」
「ああ、聞いてるよ。続けてくれ。」
「この持ち主はゼウス倉庫会社だ。住所はパンドラ通り1616。」
「助かったよ。ありがとう。」
電話が終わると既にバンは消えていた・・・


暗闇の中を救急車が走る。さっきキョンに電話した男が搬送されている途中だった。
「患者は40代の白人男性。心拍も血圧も低下。」
救急隊員が現状を無線で報告する。
「それから右上半身の傷から緑色の液体が出ている。」
『緑色だと?肺喚起の反応は?』
「いやダメだ。静脈が浮き出て気息音が激しくなってる。皮膚も土色に。」
『緊張性気胸だ。胸膣の圧力を減少させろ。』
「注射器で減圧する。」
そういうと救急隊員は針を男に突き刺した。すると注射器から
ガスが噴出し救急隊員たちが苦しみだした。救急車は蛇行運転になり
やがて止まった。
『どうしたんだ?救急隊応答しろ。』
救急隊員たちが倒れるのを見届けると男は注射器を抜いた。
『おい救急隊、何があったんだ!応答しろ!』
男は救急車の後部ドアを開けると夜の闇に逃げていった・・・


あたしは大学から携帯電話でキョンに電話をかけた。
『キョンだ。』
「あたしよ。今どこ?」
『手がかりがあると思われる場所に向かってるところだ。』
「手がかりがあったのね。」
『それと、彼は生きていたよ。』
「彼って?」
『逃亡者さ。博士の家に電話があった。』
「どこからかけてきたの?』
『わからない。ハルヒのほうはどうだ。』
「ジョージタウン大学にいるわ。変なものが見つかったわ。」
『ひょっとして例の液体からか?』
「ええ、緑色の物体よ。」
『どんなものなんだ?』
「最近の一種で中にウイルスが生息しているの。どうやら博士は
これを培養していたみたい。その細菌には葉緑素のようなものも。
こんな細菌、研究室の人も初めて見るそうよ。」
『博士は何のために培養していたんだろうな?』
「普通ウイルスを増殖させるのは生物に注入するためだわ。これは
遺伝子治療と言う実験段階の技術よ。」
『たぶんサルを使って実験してたんだな。他には?』
「今、細胞培養とDNA分析をしてもらってるわ。とにかくただ事では
なさそうよ。こんな細菌は数百万年前にさかのぼっても───地上に
存在した形跡が無いらしいの。」
そのハルヒの言葉と同時に俺はゼウス倉庫会社についた。
「ちょっとキョン、聞いてるの?」
『ああ、引き続き検査を続けていてくれ。』
「わかったわ。そっちも何かあったらすぐ連絡をちょうだい。」
『わかった。じゃあ切るぞ。』


俺はゼウス倉庫会社の倉庫に進入した。鍵束から適当な番号を選び
その部屋に入ってみた。そこで見たものは・・・驚くべき光景だった。
人間が水槽の中で実験のようなことをされているのだ!
部屋の中を一通りまわってみると、1つの水槽だけ空っぽのものが
あった。
───ここでは一体何が行われているんだ・・・そしてこの空っぽの
水槽の中の被験者はもしかして・・・


あたしは疲れのためか大学の休憩所にあるソファーで寝ていた。
そこに知り合いの研究者がやってきて私を起こした。
「ごめんなさい、つい居眠りを。」
「涼宮捜査官、見せたいものがあるの。」
「なにかしら。」
「これはあなたが持ち込んだ細菌のDNA塩基配列よ。」
「いわゆる遺伝子ってヤツね。」
そういうと遺伝子構造を表した書類を見せられた。
「塩基対と呼ばれるものでヌクレオチドでできているの。DNAには
4種類のヌクレオチドがあるの。地球上のあらゆる生物はこの4つの
組み合わせによって作られているの。今見ているのはあの細菌の
遺伝子の連鎖よ。普通遺伝子の連鎖には切れ目がないけど、でも
この細菌にはそれがあるの。」
「どうしてなの?」
「理由は解らないわ。でも私なら今すぐに政府機関に連絡するわ。」
「何を発見したの?」
「第5・第6のヌクレオチドでできた塩基対よ。新しいDNAよ。あの
細菌は自然界に存在し得ないものなの。つまりあの細菌は・・・
地球外生命体よ。」
「なんですって・・・」


俺はある程度調べを終えるとすぐに倉庫から出た。そして車に
向かって道を歩いていると・・・さっきの青いバンが表れ中から
男が2人出てきた。俺はとっさに反対方向へ歩き出した。ある程度
歩いたところで前方からも1人走ってくるのが見えた。やばい!
俺はすぐ近くの木で出来た柵を乗り越え一目散に走って逃げた。
ある程度走ったところで横道に隠れ、銃を取り出し銃を構えて
今走ってきた道を見た。しかし追いかけてきた様子もなく、俺は
そのまま夜の暗闇の中へ走って逃げた・・・
家に戻ると電話が鳴っていたので急いで取った。
「もしもし」
『キョン、なにやってるのよ!もう朝よ、一晩中電話してたのよ!』
「すまない。まずいことが起きてしばらく隠れてたんだ。」
『キョン、例の細菌だけど自然界には存在しないらしいわ。
地球外生命体の可能性があるって。」
「待ってくれハルヒ。」
『なによ?』
「俺のほうも今すぐお前に見せたいものがある。」


あたしとキョンは一緒にゼウス倉庫会社の倉庫に来た。
「ちょっと待ってくれハルヒ。」
「なによ。」
「なんというか・・・お前に謝らなければならん。俺が間違っていた。」
「当たり前じゃない。でも、気にしないで。」
「でも俺は・・・お前の足を引っ張るようなことばかりして・・・これからは改めるよ。」
「ふふん。キョンもだんだんわかってきたじゃない。」
「おれは科学を絶対視するあまり解明されていることしか信じようと
しなかった。でも昨夜見たものは・・・俺の理解をはるかに超えていた。」
「じゃあその神の領域をも超えているようなものを見せてもらいましょうか。」
俺とハルヒは、俺が昨夜入った部屋の鍵を開け、電気をつけた。しかし
そこには何もなかった・・・
「水槽が、人間を入れた水槽が5つあったんだ。コンピュータ管理も
されてて。彼らは水中で生きていたんだ!」
「どこにいったのかしら?」
その時ディープスロートがやってきた。
「神のみぞ知る・・・だ。既に処分されているだろう。」
「誰が処分したの?」
「わからない。」
「嘘よ。」
「私の能力にも限界というものがある。情報機関の内部には”影の政府”が
存在しその中の一部が権力の中枢を握って秘密活動を行っているのだ。」
「昨夜3人の男に追跡された。」
「ああ、それは単なる脅しにしか過ぎない。相手はプロだ。殺しにも
慣れている。」
「ベルービ博士も彼らに殺されたの?」
「多分な。」
「なぜよ。」
「あれだけ調査してもまだ分からんのか。」


「博士は地球外ウイルスを培養して人体実験をしていたんじゃないのか?」
「そうとも。研究は今に始まったことではない。細菌は1947年から存在していた。」
「ロズウェルね。」
「ロズウェル事件は氷山の一角にすぎない。博士は実験に成功し、口封じの
ために殺された。彼はこの部屋で人体に対する初のDNA移植を行っていたのだ。
6人の末期患者が自ら進んで申し出てきた。その1人セケア博士はベルービの
友人だった。遺伝子移植治療の成果はすさまじく、DNA移植を受けた結果
6人の患者の容体はみるみる快方に向かっていった。セケア博士も正常な
肉体を取り戻し、おまけに超人的な体力と水中でも呼吸できる力を身につけた。」
「だから3日間も水の中で隠れ通すことが出来たのね。」
「でも、何で逃げるんだ?」
「元々セケアは生きていてはならん男だ。この実験は政府が極秘に進める
研究の一環だった。実験後は彼らは用済みだ。生きていては秘密が漏れる
恐れがある。事故で救急車に運ばれでもしたら?セケアの血液成分は異質で
かなりの毒性もある。それをマスコミがかぎつければ・・・」
「だから抹殺命令が出たのか。」
「そうだ。でもセケアはベルービからそれを聞いてしまった。」
「1つどうしても分からないことがあるわ。なぜ最初から教えないで今頃
詳しい情報を?」
「証拠隠滅の動きが早まったからだ。ベルービも殺され、ここにいた人間も
抹殺された。証拠がなければ君らも立証は出来ない。急いで証拠を集めろ。
今ならまだ間に合う。セケアを探して保護するんだ。この件で君らと話すのは
これきりだ。」
そういうとディープスロートは部屋から出て行った。
あたしとキョンはしばらく考えた後倉庫から出た。
「あたしは研究室へ戻って分析結果を取ってくるわ。」
「俺はセケアを追う。」
「どこへ?」
「さあな。感が頼りだ。」


あたしがジョージタウン大学に着くと依頼していた知り合いは研究室に
いなかった。しょうがないので休憩室に行ってみた。
「すいません、カーペンター博士はどこに?」
そういうと研究員の一人が、
「カーペンター博士の家族全員が交通事故でお亡くなりに・・・博士自身も・・・」
なんてことなの・・・証拠がどんどん消されていく・・・


俺は再度ベルービ宅へ行くことにした。今回は面倒なので正面玄関の鍵を
FBI特製のピッキングセットを使って開けて入った。ってか最初もこうすれば
よかったな俺。中に入ると上の階から物音が聞こえた。どうやら天井裏に
誰かがいるようだ。俺は天井裏へ行くと、
「セケア博士?」
呼びかけてみたが反応が無い。天井裏を少しずつ探っていると、いきなり
後ろから男に襲われた。
「待て!」
男は聞き入れなかった。俺を殴ると胸倉をつかんだ。
「助け来たんだ。」
そういうとセケア博士とおもわれる男は胸倉をつかんだまま静止した。
と、その時”パン”と言う銃声が聞こえセケア博士が倒れた。正面を
見るとガスマスクをした男が銃を握っている。セケア博士の傷口から
毒性のあるガスが流れ出した。俺は目を開けられなくなりよろめき始め
そして気絶した。
ガスマスクの男がセケア博士に止めを刺しているとき1人の若い女性が
天井裏に上がってきた。
「あんたはいいな、マスクがいらないんだからな。」
「まあね。それよりきちんと仕事をしておくのよ。」
「わかってるさ。それよりこいつはどうする。」
「あらあら奇遇だこと、この男は・・・このまま連れていくわ。」


キョンに連絡がつかない。あたしはキョンのアパートへ向かった。
キョン・・・どこにるの・・・嫌な思いがあたしの心に積もる。
キョンの部屋の呼び鈴を押した時、
「ここにはいない」
背後からディープスロートの声がした。
「キョンは今どこにいるの!」
「分からん、私も知りたいよ。」
「きっと何かあったに違いないわ。」
「無事だ。」
「どうしてわかるの?」
「彼を殺せば目立ちすぎるし、証拠を君にぶちまけられては困る。」
「証拠はもう無いわ。彼らに抹殺されたのよ!」
「涼宮捜査官、君にしかキョン捜査官は救えない。証拠はまだ存在する。」
「どこに?」
「警戒が厳重な場所だが君なら何とか潜り込める。」
「潜り込むって・・・場所は?」
「それは・・・フォートマリン隔離施設だ。」
「そこに何があるの?そしてどうすればいいの?」
「”源”だよ。全ての始まりだ。それを手に入れろ。そうしたら彼らと
交渉してキョン捜査官を取り戻す。」


「う・・・」
俺は薄暗い廃工場と思われる場所で目を覚ました。朦朧とする意識の
中で周りを見渡すと、自分は柱に縛られ、周りには誰もいない状態だった。
「なんだったんだあのガスは・・・気絶するほどとは・・・」
「ずいぶんと長い昼寝だったわね。お久しぶり、キョン君。」
うつむいて今までのことを思い出していたとき、はるか昔に
聞いた女性の声が聞こえ、近づいてきた。
「お、お前は・・・なぜここに!」
声の主はハルヒと出会ってすぐ、俺を殺そうとし、更に長門が
暴走して時空改変を行った際に俺にナイフを付きたてた女、朝倉涼子だった。
「あらあら、久しぶりに会ったっていうのにご挨拶なこと。」
「お前は長門によって消されたはずだ。なのに何でここにいる?」
「うふふ、知りたい?まあいいわ大サービスで色々教えてあげる。」
朝倉は教師が生徒に授業をするような態度で行ったり来たりしながら話し始めた。
「私は新しい任務のために再構成されたの。バックアップとしてではなく単独個体としてね。」
「新しい任務・・・?」
確か高校卒業の別れ際、長門もそんなことを言っていたことを思い出した。
「情報統合思念体が自立進化の道を探っているのは既に知ってるわよね。」
「ああ。」
「あなたは情報統合思念体がこの星に興味を持ったのは涼宮さんのため
だけかと思っているかもしれないけど、実際にはもっと昔からアプローチ
していたのよ。」
「昔から・・・?ハルヒを観察するだけじゃなかったのか?」
「あなたたちが高校時代には涼宮さんの監視が私たちの目的だったわ。
事実あなたを殺して涼宮さんの出方を見ようともしたし。」
高校時代に殺されかけた嫌な思い出が蘇る・・・
「でも高校卒業後、涼宮さんの力がなくなると、もはやその意味はなくなった。
そこで情報統合思念体の中でも少数派だったこの星の住人と直接接触し、
共に人類を支配下において自立進化の道を探ろうとする流派が台頭して来たの。」


「俗に言われている『宇宙人』ってやつか」
「そうね。そんな感じで言われてるわね。UFOとかも。で、その流派が今は
主流派となり活動を行ってるわけ。」
「で、その任務にお前や長門が選ばれてるってわけか。」
「まだ大勢いるけどね。でも、まさかあなたに会えるとはね♪」
「俺は会いたくなかったけどな。」
「ほんと、つれないこと。長門さんだったらホイホイついていくのに。」
「そうだ!長門はなんで俺たちのことを覚えていないんだ?」
「長門さんの記憶が封印されているためよ。初期化も考えたらしいけど
今まで蓄積していた知識なども考慮すると封印したほうがいいというのが
結論だったみたい。ま、私にはどちらでもいいけど。」
「封印・・・それでか・・・」
俺は空軍基地で長門に襲われた一件を思い出した。
「喜緑さんはどうなんだ?」
「あの人は特別ね。未だに穏健派に属していて、穏健派は各派の暴走を
押さえるのが目的なの。喜緑さんはいわば監査官ってところね。」
「喜緑さんだけは昔から立場が変わってないってことか・・・」
「そうね。でもなんであなたたちを助けたのかはわからないけど。まあ、
今回はここの情報を遮断フィールドで覆ってるし、助けに来ないと
思うけどね。」
「俺を殺すつもりか?」
「まあね。それが命令だし。人間最後まで片をつけないとね♪」
お前人間じゃないだろ・・・などと思いつつとりあえず絶体絶命だと言うことは
理解できた。
「それじゃ、私はまだ用事があるから失礼するわ。おとなしくしててね♪」
そういうと朝倉は闇に消えていった。
「ハルヒ・・・今頃どうしているだろうか・・・」
俺は悲嘆にくれながら月明かりが差し込んでくる窓のほうを見た・・・


あたしはキョンを救う鍵を手に入れるべくフォートマリン隔離施設へ
向かった。ディープスロートが用意してくれた偽のIDで難なく潜り込む事が
できた。あたしはエレベーターまで行くと最重要フロアまで一気に登った。
フロアに着くとあたしは”氷雪学”の研究施設を目指した。その施設は
すぐわかり、その部屋に入った。部屋に入ると”ガチャン”という音と共に
ドアがロックされた。奥の部屋に入るには更にIDカードでの認証が必要なようだ。
あたしはIDカードを差し込んだ。その途端スピーカーから声が聞こえた。
扉の横に警備員が待機していた。
『名前は?』
「涼宮ハルヒ。」
『所属は。』
「連邦政府。」
『パスワードを。』
パスワード?そんなの聞いてなかったわ・・・わたしが考え込んでいると、
『パスワードを言ってください。』
警備員に怪しまれ始めていた・・・その時ある言葉があたしの頭に浮かび
上がった。
「純度調整」
そう言った瞬間、ドアのロックが開いた。あたしはドアの中に入り、
「ここに署名を」
と言われ、それに従い名前を書いた後目的の部屋に入っていった。
部屋の中は冷凍保管室だった。いくつかのケースが保存されており、
その中のひとつを探し出してケースから中の容器を取り出した。
容器を開けて中身を見るとそれは・・・宇宙人の胎児だった・・・
「これが”源”・・・」
これがあればキョンが救える。あたしは容器の中身を元に戻すと
容器をダンボールに入れ、冷凍保管室を後にした・・・
───待っててねキョン、今助けるわ!


俺は殺される・・・死刑執行を待つ死刑囚のような気分だった。
うなだれていると奥の方から小柄な人影がこっちにやってくるのが見えた。
「長門!」
そう、それはかつての、いや、俺は今でも仲間と思っている長門有希だった。
長門は俺の前に立ち無言でいる・・・俺を殺すのは長門なのか・・・?そう考えて
いると長門が突然口を開いた。
「なぜ...あなたは私を知っているの...?」
「共に活動した仲間だからだ。」
「私はあなたと活動した記憶は無い...」
「それはお前の記憶が封印されているんだ!思い出してくれ俺を!」
「封印...?私は最初からこの記憶しか持っていない...」
「ちがう!それは情報操作されているんだ!お前は、俺の、俺たちの大事な
仲間なんだ!」
「なか...ま?」
「そうだ、無口で寡黙でそれでいていつもみんなを見守っていてくれていた
存在、それが長門有希、お前なんだ!」
「みんなを...見守る...」
そういうと長門は右手で頭をかかえた。
「お前はそんな命令しか聞かない人形じゃなかった。最初は無表情だったが
徐々に人間らしい感情を持ってきた、そんな女の子だったじゃないか!」
「かん...じょう...」
「思い出せ!SOS団で活動したことを!最初にお前と行った図書館のことを!」
「SOS団...図書館...」
そういうと長門は直立不動になり目を閉じた。


「封印シーケンス無効化。自律動作開始。これより自発的行動に移る。」
「長門・・・思い出してくれたのか!?」
「キョン...あなたに会いたかった...」
長門は目を開け微笑みながら涙を流し、俺を見た。
「俺も会いたかった、長門・・・」
「私は記憶を封印されていた。でも深層心理下ではいつもあなたを想っていた。」
「長門・・・」
「私はあなたを助ける。とりあえずここを脱出する。」
そういうと長門は俺が縛られていたロープを切ってくれた。と同時に、
「あらあら、長門さん裏切るつもり?」
闇の中から朝倉が現れた。
「裏切るのではない。元の自分に戻っただけ。」
「あなたは今昔の立場では無いわ。だから裏切りよ。」
「なんとでも言うといい。でも私は彼を守る。」
「ふふふ・・・あの時の再来かしら。でも今は私はあなたのバックアップ
じゃないわよ。同等の機能を持つ!!」
そういうとあたり一面が砂漠化した。
「くっ、情報操作か!」
「私から離れないで。あなたを絶対に守ってみせる。」
「出来るかしらね・・・行くわよ!」
長門と朝倉の激しい戦いが始まった。朝倉のターゲットはどうやらまずは
俺らしい。俺に向かって執拗に攻撃してくる。それを防いで反撃する長門。
「あら、なかなかやるわね。でもこれはどうかしら!」
そういうと朝倉は俺たちの周りに電撃をまとった黒い球体をいくつも
出現させていた。そして一斉に俺たちに向かってその球体が向かってきた。
長門はその瞬間体を発光させて全部の球体の攻撃を受けた。
「長門!大丈夫か!」
俺に当たるのを防ぐために攻撃をもろに受けてしまった長門は、
体がボロボロになり倒れていた。俺は長門を抱きかかえた。


「大...丈夫。遮断フィールドである程度防いだ。」
「しかしもう体がボロボロじゃないか。」
「ボロボロでも...絶対にあなたを守ってみせる。それが私の使命。意思。」
「長門・・・ありがとう・・・」
「あらあら、焼けるラブシーンだこと。涼宮さんが見たらどう思うかしらね。
でも、次の攻撃で終わり。どうせ涼宮さんも後を追うだろうからあの世で見せ付けてあげて♪」
朝倉は右手のを俺たちにかざすと俺たちの頭上、周りに膨大な炎が出現した。
「これはもう長門さんじゃ防げないわよ。覚悟を決めることね。」
そういうと炎が一斉に俺たちに向かってきた・・・万事休すか!
俺は目をつぶった。しかし次の瞬間、炎は全て消えていた。
「どういうことだ・・・」
「まさか・・・あなたが現れるなんて・・・」
朝倉は信じられないと言う感じで俺の後ろを見ていた。振り向くとそこには
喜緑さんが立っていた。喜緑さんはすぐに俺たちのところへやってきて長門の
体を治してくれた。
「遅くなりました。長門さんがこの空間の隙間から連絡をしてくれたので
ここが分かりました。間に合ってよかった・・・」
「喜緑江美里ありがとう。助かった。」
「いいんですよ、長門さん。あなたはやっと本来の自分を取り戻してくれました。
私はこのときを待っていました。彼や涼宮さんのために。あなたのために。」
「喜緑さん、どうして俺たちを助けてくれるんですか?」
「長門さんと共に朝倉さんと戦わねばならないので簡潔にお話します。
私の属する穏健派は現在の情報統合思念体の主流派の行動があまりに行き過ぎて
いるという考えを持ち始めました。そこで涼宮さんやあなたを助けることで
主流派の暴走を食い止めようと考えたのです。」
「だからあの時長門に襲われた俺たちを助けてくれたんですね。」
「はい。さあ、時間がありませんキョン君あなたをこの空間から脱出させます。
その後は急いでそこから遠くに逃げてください。」
「わかりました。長門また負担をかけてすまん。これが終わったらまた会おう。」


「了解した。あなたも気をつけて。」
「では行きます。」
そういうと俺は情報統制空間から脱出した。
「さあ、朝倉さんあなたの暴走を止めさせていただきます。長門さん準備は
いいですか?」
「いつでもいい。」
「くっ、まさかあなたが出てくるとはね・・・さすがに2人がかりで来られては
勝てないわ。今回は逃げさせてもらう。でもこれはお土産よ!」
砂漠化した情報統制空間中で連続して大爆発が起きた。そして情報統制空間は
消えた。


俺は廃工場の外に転送されていた。一刻も早くここを離れなくては・・・そう思うと
とりあえず廃工場から全力で離れていった。と、その時!


『ズドーン・・・ズドーン・・・ドカーン───』


廃工場がいきなり大爆発を起こした。
俺は爆風で少し吹き飛ばされ倒れた。が、怪我もなかったのですぐに立ち上がり、
「長門───!!喜緑さん───!!」
大声で叫ぶも燃え上がる廃工場からは何の返事もなかった・・・
「くそっ・・・せっかくまた会えたのに・・・」
燃え上がる廃工場を見ながら俺は涙を流しつつ拳を地面に叩きつけた。
だが、長門や喜緑さんの犠牲を無駄にしてはならない。そう考えると涙を拭き
立ち上がった。
「しかし・・・一体どこへ行けばいいんだ・・・」
そのとき、月明かりに照らされた人影から声が聞こえた。
「キョン君、こっちです!早く!急いで!」
その人影は・・・未来から来た高校時代の天使、朝比奈みくるさんだった。
「朝比奈さん、なんでここに!?」


「訳は後です。規定事項が迫っています。そこに涼宮さんもいます。私に
ついて来て下さい!」
「わかりました、いきましょう。」
俺と朝比奈さんは急いでその場を後にして、朝比奈さんに指定された場所に
向かった。


その時俺は気が付かなかった、近くの物陰で監視されていたことを。
監視していた女性が無線機を取り、
「スネーク、彼が逃げました。そちらに向かっています。」
『もうすぐ取引が終わる。問題ない。』
「わかりました。気をつけて。」
『そちらもすぐに撤収しろ。以上だ。』
無線機の先の男は車のハンドルを握りながら一粒の涙を流していた・・・


あたしは車でディープスロートとの待ち合わせの場所に向かった。しばらく
待っているとディープスロートを乗せた車がやってきた。
「涼宮捜査官、例のものは持ってきたかね。」
「ええ、ここにあるわ。」
「じゃあ早く私に渡すんだ。」
「いやよ、あたしが直接交渉するわ。」
「いいかね、この段取りをつけたのは私だ。私でないと相手は信用しない。」
「そうね・・・わかったわ。」
あたしは持ってきた宇宙人の胎児をディープスロートに渡した。
ディープスロートは受け取ると車を少し先に進ませた。あたしは車に戻り
サイドミラーを調節してディープスロートの車が写る様にした。その時
あたしの車の横を黒いバンが横切りディープスロートの車の横で止まった。
ディープスロートは車を降り、バンから出てきた男に宇宙人の胎児を手渡した。
と同時にディープスロートは男から撃たれた!!バンの男はすぐに車に乗り込み
走り出した。あたしは車を降りると、
「キョンは!キョンを返してー!」
と叫びながらバンに走って近づいていったが逃げられてしまった。追いつけない
ことを確認するとあたしは撃たれたディープスロートのところへ走っていった。
「う・・・嘘でしょ・・・なんで・・・」
撃たれて倒れていたのはディープスロートではなかった。高校時代SOS団副団長、
古泉一樹君だった・・・


「ハルヒー!」
あたしの後ろからキョンの声が聞こえた。振り向くとキョンがこっちに走って
きていた。と、その後ろをみくるちゃんが追いかけて走ってきていた。
「ハルヒ大丈夫か?」
キョンが心配そうに話しかけてきてくれた。
「ええ、大丈夫。でもなぜみくるちゃんがここに・・・」
「訳は後で話す。で、どうなったんだ?」
「キョン、これを見て・・・」
俺はハルヒがどいた先を見つめた・・・そこには銃で撃たれた古泉がいた!
「古泉!何でお前が!?」
「ふふふ、ディープスロートの正体は僕だったんですよ。」
「ディープスロートの正体が?どうやって・・・」
「『彼ら』の技術を使って『機関』が開発した特殊偽装装置を
使いました・・・ぐっ!」
「喋るな、病院へ連れて行くから待ってろ。」
「もう助かりませんよ・・・だからここで話せるだけお話します。」
「なんで・・・なんでこんなことを・・・命をかけてまで・・・」
「僕は以前言いましたよね、『SOS団に危機が迫った時1度だけ機関を
裏切ります。』と。」
「だからって・・・こんな・・・こんなことってあるかよ・・・」
俺は涙を流しながら古泉を抱きかかえた。後ろではハルヒ・朝比奈さんも
涙を流していた。
「『機関』はすでに情報統合思念体の新主流派と接触を持っています。
ありとあらゆるところに根を張り巡らしていることでしょう・・・」
「それで『機関』のスポンサーがアメリカ政府になったのか・・・」
「まあ・・・そんなとこ・・・ろ・・・です。」
抱きかかえる古泉の命が弱くなっていくのを感じる。


「高校時代は・・・楽しかった・・・ですね。」
「ああ、今でも戻りたい気分だ。最初は嫌だったけどな。」
「世界で・・・我々だけですよ、あれだけの・・・楽しみを得られたのは。」
「そうだな。そのことを世界中のやつに自慢してやりたいよな。」
「SOS団に入れて・・・本当によかった・・・です。」
「俺もお前と会えて本当によかったよ。」
古泉の命が今まさに燃え尽きようとしている・・・
「まさか・・・僕はあの人に撃たれるとは・・・思いま・・・せん・・・でした。
いいですか、涼宮さん、キョン君。これからは誰も・・・信じ・・・ては
いけ・・・ま・・・せ・・・ん。」
そういうと古泉は息を引き取った・・・
「古泉───!」
俺は古泉の体を抱え大泣きした。
「なんで、なんで古泉君がこんな目にあわないといけないの!?
キョンどうなってるの!?」
ハルヒが俺に泣きながら問いかけてきた。
「ハルヒ、お前には話していないことがある。とりあえずオフィスへ
戻ろう・・・」
そういうと俺はハルヒの車に古泉をのせハルヒ・朝比奈さんと共に
FBIのオフィスに向かった・・・


FBIのX-FILE課のオフィスには俺・ハルヒ・朝比奈さんがいる。
俺は今までのことを全てハルヒに話した。そしてハルヒは落ち込みながら、
「そう・・・やっぱり有希は宇宙人だったのね・・・いつかキョンが喫茶店で
言ってた3人の話って本当だったんだ・・・」
「今まで黙っていて御免なさい、涼宮さん・・・」
朝比奈さんが申し訳なさそうに言う。
「いいのよ、事情が事情だったしね・・・でも、なんで今日古泉君が
撃たれるのを止められなかったの!?未来からならわかるんでしょ!?」
「それは・・・」
「ねえなんで!?、みくるちゃん。なんで・・・」
ハルヒは涙を流しながら朝比奈さんに詰め寄っていた。
「よせハルヒ。古泉が撃たれる事は規定事項だったんだ。これが変わって
しまうと未来まで変わってしまう。だから止められなかったんだ。」
「そう・・・よね。ごめんなさい、みくるちゃん。問い詰めたりして。」
「いえ、いいんです。私も止めたかった。でも・・・」
朝比奈さんも泣き出した。
「長門は記憶を取り戻し俺を助けてくれて犠牲になった・・・古泉は
最初から命の危険をおかしてまで俺たちを助けてくれた・・・失った
ものが・・・大きすぎる・・・」
「キョン君・・・」
「キョン、でも有希はまだ生きているかもしれないわ。だって宇宙人
なんでしょ。しかも喜緑さんもいたんでしょ。」
「ああ・・・そうだな。まだ希望は捨てられないな・・・いや、またきっと
会える日が来る。」
「みくるちゃんはこれからどうするの?」
「わたしは本来の時空に戻ります。今回はキョン君のサポートとして命令を受けたので・・・」
「そう・・・また会えるわよね。」
「ええ。きっと。それでは涼宮さん、キョン君気をつけて。」
そういうと朝比奈さんは部屋を出て行った。もうこの時空にはいないだろう。


「キョン、真実ってなんなんだろうね・・・」
ハルヒがか弱く俺に問いかける。
「さあな・・・今はわからん・・・でもいつかわかるさ。」
「そうね。」
「今日はもう遅い。とりあえず帰ろう。」
「私はまだもうちょっと1人でここにいるわ。先に帰ってて・・・」
「わかった。あまり考えすぎるなよ。」
「ありがとう。キョン・・・」
俺は天井を向きながら考え事をしているハルヒを残し家に戻っていった。


俺は家に戻りベットに横になって色々考えていた・・・
長門のこと、喜緑さんのこと、朝倉のこと、古泉のこと・・・などを。
考えながら、うとうとしていると突然電話が鳴った。
「もしもし」
『キョン・・・X-FILE課が閉鎖になることになったわ・・・』
「なんだって!」
『スキナー副長官からの直々の命令よ。私たちはバラバラに
転属になるわ。』
「そんなこと・・・許されるもんか!!」
『あたしは明日もう一度命令の取り消しを求めてみるわ。』
「俺も一緒に行くぞ。」
『ありがとう、キョン。あたしは絶対に諦めないわ、真実を求めるまで!』
「ああ、そうだな。死んでいった古泉のためにもな。」
『じゃあ明日またオフィスで会いましょう。おやすみ。』
「ハルヒ、おやすみ。」
そう言って俺は電話を切った。X-FILE課が閉鎖だと!これも真実に
近づきすぎたためか?俺はやりきれない気持ちで一杯だった。
未来は変えられないのか・・・いやきっといつかこの絶望の未来を
変えてみせる。その時まで俺はハルヒと共に戦う。そう決心した・・・


最後に俺たちや同じように閉塞した絶望に襲われている人たちに1つの
メッセージを送りたい。
───Fight the future(未来と戦え)



<終章・終>



涼宮ハルヒのX-FILES あとがき


涼宮ハルヒのX-FILESを応援してくださった方、ご覧になってくださった方、
支援してくださった方、本当にどうもありがとうございました。


涼宮ハルヒのX-FILESはとりあえず全5話で完結になります。
この各5話は参考ストーリーのシーズンがバラバラですが、一応本家シーズン1を想定
したものとなっています。
最初の発端は「スカリー役のキョンが朝倉に拉致されたら面白いのでは」と言うもの
だったのですが、この拉致される本家X-FILESシーズン2からは国家による陰謀色が
強くなり、モルダー役のハルヒでは少々役不足になると考え、陰謀色が薄いシーズン1
のみを想定してSSとして書かせていただきました。
なお、本家X-FILESではシーズン1~6までで1つの陰謀話になっています。
涼宮ハルヒのX-FILESにおいては私の作成能力不足のためいくつか伏線を残す結果と
なってしまいました(文章においても変なところが多いですが・・・)。
ただ、これらを回収するにはシーズン2以降の話をかなり書かなければならず、
かなり長くなってしまうため不本意ながら断念しました。


本家X-FILESでは陰謀の絡まない単発ストーリーがまだいくつかあります。
機会があれば短めな外伝としてそれらをSSとして書くことも考えています。


最後になりますが、ある一曲を紹介したいと思います。
それは日本でシーズン3が放映された際のエンディングテーマでTWO-MIXの曲である
「TRUE NAVIGATION」です。
この曲はモルダーとスカリーのお互いの信頼関係がテーマの曲ですが、
ハルヒ・キョンに当てはめてもまったく遜色が無い曲だと思っています。
私はシリアス版ハルヒ・キョンのテーマだと思いながら執筆中に聞いていました。


どんな形になるかわかりませんが、長編次回作が出来ましたらまた恥ずかしながら
発表させてもらいたいと思っています。
それまでは小粒な作品などをちょくちょく書きたいな・・・と。それでは。


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