はぁ~、鶴屋さんお話止まらなかったなぁ。私は少し早足で部室に向かいました。
すると、 廊下の途中でしゃがみ込んでいる長門さんがいました。

 

なんでドアを開けて入らないんだろ?

 

 

 

少し不思議に思って近づいた瞬間に振り返って彼女は口元に指を当ててってそれ、私の真似ですかぁ…。

 

 

 

「…静かに」 
あっ、今頃私の顔は真っ赤になってるんだろうなぁ。 

 

 

私は小声で挨拶を続けました。
「こんにちわぁ~、あの、長門さん、何をしていたんですか?」
お祭りで見た記憶のある団扇をもって、焼き肉屋さんに設置されている装置の上の粉?の前に屈んでいる。

 

 

「………香を焚いていた」

 

 

いいのかな?学校なのに。でも長門さんがお香かぁ。ちょっと以外。でもなんでそんなところで………

 

 

「長門さん・・・正直僕には瀟洒な光景にほど遠い空気を感じるのですが、その粉末はいったい何でしょうか」
不意に囁き声が聞こえて振り返ると古泉君がこちらを覗き込んでいます。笑顔の会釈に、私は挨拶をしました。

 

 

「長門さん・・・先程部室の方が異空間化していたようなのですが、何かご存じではないでしょうか」
少し困ったように肩をすくめる仕草にちょっと無粋な感じを受ける。む~、お香の話したいのに。

 

 

「それが正常。いくつもの力場が重なり合って「僕の受け売りですし、あれを覆い尽くすような強力なものだったのですが」」

 

 

古泉くん、人の話はちゃんと聞かなきゃだめですよ。って焦ってるのかしら。

 

 

 

「…すみません。信じられない位、涼宮さんの精神が不安定、いえ安定…
したもので…そうですね、なんの香りだったんですか?」

 

 

 

やれやれとキョンくんの真似をする古泉君。

 

 

あ~長門さん、何かやってたのかな?

 

 

 

「・・・喜緑江美里から譲り受けた。本来彼女の任務であったが私が引き受けた」

 

 

 

「穏健派ですか。正直申し上げてある意味急進派の行動にも見えるのですが、彼らにとっても、僕にとっても」
「古泉君は中で何が起こってるのか分かるんですか?長門さん、何をしてたんですか?」

 

 

「長門さんの焚いているお香なのですが───

 

 

 

 

───媚薬ですね。

 

 

 

 

 

 

「ふぇ!?えぇぉぁん~ん~…モガモガモガ………」
長門さんに口を押さえられてしまいました。媚薬って、そんな…

 

 

 

 

「あぁ…中ではめくるめく甘美な一時を過ごしているんでしょうか、僕は今涼宮さんの精神とリンクしている事を
今までとは別の意味で呪っていますよ……」
なんか古泉くんがふらふらしています。そりゃそうですよね。

 

 

 

「…ただ、予期せぬ効果を生み出した。対象である2人の精神の高揚と性的興奮及び多幸感の発生を
想定し作成されていたのだが私の危惧していたように涼宮ハルヒと彼の間では意図通りにはいかなかった」

 

 

 

だ、大丈夫なんですかぁ?

 

 

「そのようですね。結果は似たような状態でしたが。お2人ともとりあえず校舎の外にでましょう
恐らく今日の活動は無いはずでしょうし」

 

 

…私達は結局、家に帰ることにしました。

 

 

 

岐路の途中、私はどうしても気になってしまって古泉くんにもう少し聞いてみました。

 

 

 

「…そうですね。お2人共があまりにも素直じゃない事に起因します。
涼宮さんも彼もありきたりな恋人の囁きや体の触れ合いを敬遠したようでして」

 

 

ええと、ありきたりっていうのは、好き、とか、あ…愛してるとか、キスするとか
一緒にいてくれとか、ひ…一つになろうとか
ありきたりじゃないっていうのは、いきなり子供をつくきゃあああああああああああああああああ…………

 

 

「…なさん………朝比奈さん!お気を確かに。彼らはそのいずれも殆ど実行していません」

 

 

えぁ、そうなの?

 

 

「ええ、彼らはある意味で彼ららしい愛の確かめ方をしていたようです。
ぶっちゃけてしまうとお2人は溶けて一つになったんですがいえ…溶け合うとは違って、ええと……
一応、言葉と体は必要だったみたいですけど、あまりこの年齢であのような……うらやましいですよ、ほんとに。
作ってしまったみたいですよ。自分達に合った愛の確かめ方を」

 

 

「お香の効果の完全消滅を確認した。私は魂が入れ替わるかと思った。情報思念体は今回の件に満足している。
現在の対象の状態…………惹かれ合う魂、神話的なバカップル魂」

 

 

長門さん…後のは意味が良く分からないんですけど。魂については禁則事項じゃ……

 

 

はぁ、2人だけのやり方かぁ……いいなぁ~

 

 

 

坂を下りきった所で古泉さんが突然体を跳ねさせるような仕草をしました。

 

 

 

長門さんも後ろを振り返って部室のあるほうを眺めてるみたい。

 

 

「あの、どうしたんですか?」

 

 

「いえ、涼宮さんが普通の女の子の、ありきたりの言葉と行動を欲しているようでして。
具体的に言いますと、熱いベーゼを交わしていますね。ええと……これ以上聞きますか、朝比奈さん?」

 

 

 

 

………もう結構です。

 

 

 

 

 

長門さんの家の近所まで来ました。すると喜緑さんが頭を深々と下げてお辞儀してらっしゃいました。
その手には確か秋刀魚だったと思う物がぶら下がっています。すごくたくさん。

 

 

 

私ももう帰らないと。

 

 

「それでは僕も失礼しましょうかね。あ。、長門さん、睡眠薬はありませんかね。今夜僕は眠れなさそうなんですが」
「…・処方する。時限式プログラム内包のナノマシンでかまわなければ。
…それと今日はこの七輪を使い魚を焼きシーフードカレー。ついでだから私の家に来るといい」

 

 

長門さん・・・焼き魚はシーフードカレーには使わないんじゃ。 秋刀魚を焼いていれるの?

 

 

 

結局、古泉くんの精神疲労は酷いものだったらしく、彼は長門さんの家に上がっていく事になりました。
私は家に帰って今日の事を報告する事にしました。なんか私も疲れちゃったし。
帰り際に喜緑さんが私達にお詫びの言葉を掛けていました。でもそのあと長門さんが

 

 

 

「…先程の香は構成が間違っていた可能性がある。故に部屋で再検証する予定」

 

 

私にはよくわからないんですが、古泉くんが気を失ってしまい、腕を掴まれてマンションに消えていく所をみて
私は自宅に向かいました。

 

 

 

翌日、古泉くんは学校を休みました。

 

 

 

着替えを終えてお茶を入れてると心配になったので彼に電話してみる事にしました。
…ええと森さん、園生さんが電話にでました。大丈夫かしら古泉くん。

 

 

「古泉ですが、2箇所からの精神的攻撃、その一方からは肉体へ直接的な攻撃を受けたようでして
ですが、ご心配には及びませんよ。古泉も若いですからね。どうかお気になさらないでください。」

 

 

……絶対に嘘です。古泉くんがどういう状態なのか、想像つきますよ私だって。

 

 

 

 

部室で本を読んでいる、いつもよりつやつやした長門さんの顔を見て、怖い気持ちになりながら

 

 

 

 

今日はキョンくんと涼宮さんを待つことになりそうです。

 

 

 

 

 

 

「………干物にした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門さん、最低です。

 

 

 

 

 

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最終更新:2020年03月12日 16:05