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(その2/3)



佐々木「きょ、キョン。あんまり見つめないでくれないか、恥ずかしいじゃないか」

キョン「お前、何か隠してるだろ」

佐々木「そ、そんなことないったら」

キョン「んー?」じー

佐々木「だ、だから……その、ええと」

キョン「ははあ、わかったぞ」

佐々木「!」

キョン「さてはお前、ほんとはこっちのテリヤキの方がよかったんだろ」

佐々木「……はあ?」

キョン「チーズバーガー頼んだものの、俺がテリヤキ頼んだの見て、急に食べたくなったんだな」

佐々木「いや、あのね」

キョン「皆まで言うな、ある、俺にもあるぞそういうこと。だから気持ちはよくわかる」

佐々木「キョン?」

キョン「まあもともとお前の金で買ったハンバーガーだ。好きなだけ食えよ」

佐々木「……なんだかなあ」
 

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キョン「確かにこのテリヤキの匂いは殺人的だからな」

佐々木「くっくっ、まあそういうことにしておこうか」

佐々木「(助かったね、これは)」

キョン「ほれ」

佐々木「ん?」

キョン「食っていいぞ。ほれ、あーん」

佐々木「……え?」

キョン「お前におごってもらったんだ、遠慮するなよ」

佐々木「いや、そういうことじゃなくて……」

きゅん

佐々木「(あ、あれ……?体が勝手に)」

佐々木「……あむ」

キョン「そうそう、我慢はよくないぞ」

佐々木「(これは、いわゆる間接キスというやつじゃないか……というか、あーんって)」

佐々木「(ぼ、僕はなんて恥ずかしい真似を……でも、でも)」
 

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佐々木「……はっ」

キョン「?」

佐々木「危ない危ない、僕としたことが、状況に流されるところだったよ」

キョン「何だ、流されるって」

佐々木「いや、こっちの話だよ。気にしないでくれ」

キョン「なんだそりゃ。まあいいか、ほれ、それよりもっと食べるか?」

佐々木「いや、もう結構だよ……あーん」

キョン「それは新しいギャグなのか?」

佐々木「い、いや!ちがっ……これは」

キョン「……ほれ、あーん」

佐々木「あむ」

キョン「ははは」

佐々木「(だ、だめだ……だんだん抗えなくなってきている様な気がする……)」
 

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佐々木「ね、ねえキョン。もうやめにしないか、周りが見てるよ」

キョン「え?そうか?」

佐々木「周りから、恋人か何かかと思われてしまうよ」

キョン「別にいいじゃないか」

佐々木「え?」

きゅんっ

佐々木「はう……」

キョン「知り合いに見られてるわけでもなし、そんなに気にするなよ」

佐々木「ぽけー」

キョン「おい、聞いてるか?」

佐々木「そ、それは告白と受け取ってもいいのかな」

キョン「はい?」

佐々木「はっ……うわぁぁっ!な、なんでもない!なんでもないよ!」 
 

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キョン「なあ、体調悪いのか?」

佐々木「……ある意味そうかもね」

キョン「なんだ、無理させちまったみたいで悪かったな」

佐々木「いや、気に病むことはないよ。僕は君とこうして二人でいるのが好きだからね」

キョン「え?あ、そ、そうか?」

佐々木「あ、その……うん、それは本当に」

佐々木「(これは本当にそうだからなあ……否定もできないけれど……あれ)」

佐々木「(ちょっと待てよ……僕が飲んだのは素直になる薬だったな)」

佐々木「(僕はさっきから、薬のせいで変になっていると思っていたけれど)」

佐々木「(あれは全部僕の本心なのか……?自然な気持ち……?)」

佐々木「……」

キョン「なんか本当に具合悪そうだな、とりあえず家まで送ろう」

佐々木「え?あ、ああ……すまないね」
 

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キョン「ちゃんと掴まってろよ」

佐々木「うん」

キョン「なんか久しぶりだな、こうして二人で自転車乗るのも」

佐々木「そうかもしれない」

キョン「学校は楽しいか?」

佐々木「それなり、かな」

キョン「そうか」

佐々木「……ねえ、キョン」

キョン「ん?」

佐々木「風が気持ちいいね」

キョン「そうだな」

佐々木「(僕の、素直な気持ち……か)」
 

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佐々木「……」

ぎゅっ

キョン「え?」

佐々木「ちゃんと掴まってろ、って言っただろう?」

キョン「あ、ああ」

佐々木「あのね、キョン」

キョン「ん」

佐々木「正直なところ、僕は今現在のこの生活に結構満足しているんだ」

佐々木「それなりに充実もしているし、そんなに退屈だとも思わない」

佐々木「むしろ、劇的にいろいろなことが起こり続けていて、驚きの連続さ」

キョン「そいつはよかった」

佐々木「でもね」

佐々木「そんな慌ただしい毎日の中でも、こうして君と二人で自転車に乗っていた時のことを思い出すんだ」
 

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佐々木「僕らが中学生だった頃、周りの景色はとても退屈に見えたよ」

佐々木「まるで世界が止まってしまっているような閉塞感の中にいた」

佐々木「今振り返るとそんな気がしてならない」

佐々木「でも、それでも、僕はあの時のことをしつこく思い出す」

佐々木「過去のどこかに落とし物でもしてきたみたいにね」

キョン「ふむ」

佐々木「それでね、思ったのさ」

佐々木「あの頃の僕にあって、今の僕にないもの」

キョン「なんだそりゃ」

佐々木「……キョン」

ぎゅっ

キョン「わわっ!?」

佐々木「君が隣に居ない、ただ、それだけの違いなんだけれど」

佐々木「でも、それは……僕にとって、世界がまるで変わってしまうことより大きな出来事みたい」
 

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キョン「さ、佐々木?」

佐々木「ねえ、どうしてだろうね」

キョン「え?」

佐々木「こうして君の傍にいると、僕はなんとも言えない気分になるのさ」

キョン「はあ」

佐々木「なんというか、気兼ねなく、自分らしくいられるんだ」

佐々木「自分自身を演じたり、体面を取り繕ったり、そういう煩わしいことを考えなくてもいい」

佐々木「ある種の心地よさ、とでも表現すると、一番近いのかな」

キョン「まあ、長い付き合いだからな」

佐々木「そうだね」

佐々木「その、こんなことを言うと、変に思われるかもしれないけれど」

佐々木「僕は、君の隣に勝手に自分の居場所を見つけていたのさ」

キョン「……」

佐々木「悪いね、つまらないことをベラベラとしゃべってしまって」

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キョン「……かまわんさ」

佐々木「はー」

佐々木「(随分と好き勝手に喋ってしまった……きっと、薬の効果が切れたらとんでもなく恥ずかしいんだろうな)」

佐々木「(でも、いいじゃないか。今は、こうして身を任せていたいよ)」

ぎゅっ

キョン「なあ、佐々木」

佐々木「なんだい?」

キョン「たとえばの話なんだが」

キョン「もし、俺に彼女がいたら、どうする?」

佐々木「……え?」
 

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佐々木「……それは、涼宮さんのことかい?」

キョン「今、俺はたとえばの話をしてるんだ」

佐々木「……そうか」

キョン「お前さっき、俺といると楽だっていっただろ、自分の居場所みたいだって」

佐々木「いざ振り返ってみると、なんだか恥ずかしいね」

キョン「もし、俺に誰かそういう、いわゆる恋人がいたらさ」

佐々木「(なんだろう……胸の奥がちくちくするな)」

キョン「お前は、こうやって俺と過ごすことも、なくなっていくんだろうか」

佐々木「そうかもしれないね」

キョン「やっぱり、そうだよな」

佐々木「現に君は涼宮さんたちと過ごす時間が増えて、僕らはめったに会わなくなっただろう」

佐々木「誰かと誰かの距離が近づくっていうことは、また別の誰かと距離をおくことでもあるのさ」
 

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佐々木「どうしたんだい、急に。よくわからない仮定の話なんか持ち出してさ」

佐々木「(なんだかイライラするな……)」

キョン「なあ、佐々木」

佐々木「だから、なんだい」

キョン「お前が、自分の居場所を見つけたって言うならさ」

キョン「俺は、なるべくならそれを守ってやりたいと思うんだ」

佐々木「え……?」

キョン「あんまり、お前がつまらなさそうな顔をしてるのを見るのが好きじゃないからな、俺は」

佐々木「きょ、キョン?」

どくん

佐々木「(あ、あれ……なんだろう、この感じ……)」

キョン「だからさ、俺はお前とこうして気楽に過ごす時間を大事にしていきたいんだよ」

佐々木「う、うん」
 

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キョン「ははは、悪いな、俺もつまらんことをベラベラとしゃべっちまった」

佐々木「ううん……そんなことないよ」

佐々木「つまらなくなんか、ない」

キョン「ま、彼女なんか出来る見込みもさらさらないんだけどな」

佐々木「……」

佐々木「ね、ねえキョン」

佐々木「……はっ」

キョン「ん?」

佐々木「(僕は今、何を言おうとしたんだ?)」

佐々木「い、いや、なんでもないよ」

キョン「そうか。なあ、どうでもいいが少し休憩しないか?どうも最近運動不足でな」

佐々木「あ、ああ、ごめんよ。随分長い間走らせてしまったね」

キョン「そこの公園でいいか。コーヒーでも買ってくるよ」

佐々木「……うん」
 

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キョン「あー、ダメだな。もう年だ」

佐々木「くっくっ、バカなこと言わないでおくれよ。まだ高校生だっていうのにさ」

キョン「まあ、さっきの話だが、忘れてくれて構わんぞ」

キョン「俺に彼女ができるような遠い未来までには、お前も別の居場所を見つけてるさ」

佐々木「……」

キョン「?」

佐々木「なんだか寂しいね、それも」

キョン「そうか?」

佐々木「……」

佐々木「(さっきから、胸の奥の方でもやもやしているもの)」

佐々木「(僕は、とっくの昔にその正体に気づいていたのかもしれない)」

佐々木「(でも、それだけはだめなんだ。それだけは、言っちゃいけない)」

佐々木「(僕は本当に、キョンとのこの関係にやすらぎを感じてるんだ。それを、壊すことなんてできない)」
 

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キョン「どうしたんだよ、急に黙っちゃって」

佐々木「え?あ、ああ、な、何でもないよ」

キョン「そんな下手くそな動揺の隠し方があるか」

佐々木「うう」

キョン「やっぱりお疲れの様子だな」

佐々木「(色々考えすぎて、頭が疲れちゃってるんだよ)」

キョン「まあ、無理もないさ。お前もあの素っ頓狂な連中に日々振り回されてるんだろう」

佐々木「当たらずとも遠からず、かな」

キョン「お互い苦労するよな、やれやれ」

佐々木「(僕は今、まったく別件で気を揉んでいるんだけどね)」

佐々木「(はあ、とにかく落ち着かなきゃいけないな)」

ごそごそ

佐々木「(ん……ポケットにアメ玉が入ってるな。糖分でも取れば、少しは気分転換になるかもしれない)」

佐々木「ぱくっ」

佐々木「……あれ、これって」


 (その3/3)

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