※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 駅に着いた頃には朝比奈さんの身体が動くようになり、名残惜しみつつも背中から下ろして、駅内に入るのを見送った。途中、コンビニによって新聞を確認してみると、今は、ナツキとキョンがデートをした日の深夜、やっと振り出しに戻ったわけだ。


 そして、家に帰るとすぐに部屋に行き、制服から着替えることにを着替えることにした。が、俺が部屋に入ると、またまたとんでもない光景が目に映った。ベッドには……、俺に似ていたそっくりさんが寝ていたのだ。
 

「どうなってんの、これ?」
 

つまりはこういうことか。元の世界に戻される前の俺が、今もいるってことか。待てよ。そういえば、朝比奈さん(大)が
 

(家に帰ったら、あなたの今日の行動をよく思い出してください。そして、あなたの思う行動を取ってくださいね)
 

って、言ってたな。なるほど、そういうことね。
 

 俺は、机に置いていたノートを切りとって例のメッセージを書き、制服のポケットに紙を入れて、俺の身体の上に制服を置いた。これでいいはずだ。過去で雨に打たれ、身体が冷えたから風呂に入るか。風呂に入り、さっぱりして部屋に戻ると、俺の姿はベッドから消えていた。向こうの世界に旅立ったんだな、うまくやれよ、健闘を祈る。
 

 しかし、過去にさかのぼるってのは、何度もやるもんじゃないな。なんというか、いろいろ気を回しすぎて疲れた。さっさと寝よう。
 

 

「うっ……。身体が……、いてえ……」
 

 目覚ましの音に目が覚め、まず最初に感じたのは身体の節々に感じる痛みだった。それと、どうにも頭がぼーとして、うまく動いてくれない。
 

 身体を引きずって、日課通り窓から外を見ると、都会の風景。だが、いつもと雰囲気が違っていた。今日はお天気様の機嫌は悪いようで、どんよりとした雲が広がり、大粒の雨が降っている。最近はクソ暑い毎日だったのに、今日は比較的涼しく、過ごしやすい気温だ。
 

 夏の雨っていうのは、俺は好きだ。毎日、とんでもない光を放っている太陽も、雲の前に元気をなくし、辺りは暗くなってなんとも言えない不安な気持ちになるのだが、その不安が「何かおもしろいことが起こる予兆かもしれない」と考えてしまい、どこかワクワクしてしまうんだ。
 

 これと同じように、台風が来た時や、雷が鳴り響く豪雨ってのもワクワクさせてくれるので好きだ。ガキなんだろうな、きっと。
 

 とまあ、景色を見ながらどうでも良いことを考えていたのだが、やっぱりおかしい。頭と全身の不調はもとより、なぜか体が寒くなったり、熱くなったりを繰り返していた。どうも気になって体温を計ってみるとわかった。体温が38度ちょっとあったのだ。
 

「風邪引いたな」
 

 きっと、過去の世界で雨に濡れたせいと、寝不足で疲れているのも原因だろう。だめだ、熱があるとわかった途端、身体に力が入らなくなった。一応、学校に休むことを連絡して、再び眠ることにした。
 

(ここはどこだ?)
 

 俺は、真っ暗な世界に独りぼっちでいた。あまりにも暗すぎて、自分の姿すら見えない。闇ってのは、なんでこんなに怖いんだろう。例え親がいなくても、一人で生きていける。そう思って、両親を海外に送り込んだ。それから、一人では手に余る家で生活してきたわけだが、別に不自由なことはなかった。食べて寝て、学校に行ってどうでもいい毎日を過ごし、精神的に平穏だったさ。
 

 それが、あのナツキのいない、偽物の世界に行った瞬間、地盤から全てが崩れていたわけだ。俺の知らない世界。そんなところに一人でいて、正気でいられるのか?朝比奈さんがいなかったら、間違いなく精神崩壊を起こしていた自信があるね。
 

 俺は、あの世界が怖かった。なぜか?宇宙人、超能力者、わがままな神様がいない、「普通の世界」に、どうしてここまで恐怖を抱くのか?

 

次へ

|