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「前も言ったと思うけど、話したら楽になると思うよ。それとも俺には話しづらいことかな?」


「ううん……。実は、引っ越すことになりそうなんだ。お母さんが今の家にいるのはお父さんを思い出すからつらいからって……。学校も転校することになったの……」
 

 なるほど、それで悩んでたってわけか。ナツキが転校……?なんだろう。胸がチクチクする。
 

「違うよ。転校することには、納得してるの。あたし、お母さんのために我慢することにしたんだ。でも、隣に住む幼なじみとの別れがつらくなると思って、引っ越すこと黙ってた。けど、結局ばれちゃって喧嘩になっちゃった」


 そうだ、思い出した。たしか、中学1年のときのことだ。学校から帰ると、ナツキのお母さんとお袋が話をしていたわけだが、それが、引っ越すって話だった。正直、ショックだったわけさ。ずっと、一緒にいたくせに、転校するなんて一言も言わなかったし、そんな様子もなかった。どうしても信じられず、問い詰めるため、ナツキの家に行ったんだ。

 

「あれ?あんたが、こんな時間に来るなんて珍しい」


 いつのもの調子で、軽口を叩いてくる。やっぱり変わった様子なんてない。それが、なおさらショックだった。

 

「ナツキ、引っ越しするって本当なのか?」
 

「あっ、えーと……」

 

「正直に言えよ」

 

「あはは、ばれちゃった……」


目をそらして、ナツキは笑いながら認めた。それでだ。大人げない、実にガキだった俺は、腹の奥底でむかついたわけさ。


「なんで、今まで黙ってた?」
 

「黙ってた方が、いいかなーと思って。わざわざ、言うことでもないじゃない」
 

 わざわざ言うことでもないだって?転校することは仕方ない。それは百歩譲っても、黙っていなくなるって、どういう神経してんだよ。お前はいいかもしれないが、俺は……。やりようのない怒りが頭の中で巡り、だが、頭に来すぎて、言葉が出なかった。

 

「ああ、そうかよ!俺とお前の付き合いはそんなもんだったんだな。よーくわかった」
 

「ちょっ、待って」


「転校でもなんでも、勝手にしろ!」
 

 止めることも別れを言うこともできず、結局ナツキを突き放すことしかできなかった。なんで、俺はあの時、あんな心ないことを言ったんだ。今思えば、一番つらい思いをしていたのはナツキなのに、ガキだった俺は察してやることができなかったんだ。本当に言いたかったのは、あんなことじゃない。あぁ、くそ。胸がチクチクして、いてえよ。


「どうしたらいいんだろう……」


 ナツキは下を向いて、またため息をついた。

 

 俺は後悔してるんだ。あの時、本当に言いたいことを、伝えることができず、ナツキを傷付けてしまったことを。でも、今なら伝えることができるんじゃないか?事情の知らないガキの頃の俺と、今の俺は違うんだから。

 

「きっとその男の子は、ナツキちゃんと離ればなれになりたくなかったんだ」


「それはないよ……。だって、勝手にしろって言って、飛び出したんだよ。すぐに追いかけたけど、見つからなくて……」


「でも、それは本心じゃない」
 

「そう……、なの?」
 

 ああ、間違いないさ。昔の俺は、怒りで本当の想いってやつに気づくことができなかった。けど、今なら俺の正直な気持ちってやつがわかる。

 

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