「お待たせしました」


 目の前の台には、いつの間にかカップが1つ置かれている。中には、薄く色のついた液体、レモンの香りがする。
 

「レモンバームがあったので、煎れさせてもらいました」
 

「レモンバーム?」
 

「ハーブティーです。ご両親が用意していたんですね。リラックス効果があるんですよぉ」
 

 口に含むと、
 

「おいしい……」
 

思わずつぶやいていた。臭いからして、酸っぱいものと思っていたが、緑茶のような味。でも緑茶とは違って、味が柔らかく身体が温まって、文句なくうまい。俺が今まで飲んだ中でナンバー1のうまさだ。
 

「こう思うんです」
 

「えっ?」
 

「涼宮さんは、すごい力を持ってます。その力に気づいていないせいで、いろいろと事件が起きるんですけど……、今まで起きた出来事って、意味があるんじゃないかって」
 

 自信を持って言っているので、何かしら根拠があるのだろう。だったら、今の状況も何かしら意味があるというのだろうか?そんなこと、俺にはわからない。だって、頼みの綱の長門だっていないんだ。
 

「あたし、信じてるんです」


「信じてる?」
 

「涼宮さんのことを。もちろん、元の世界に戻してくれるって言ってくれた、あなたの事もですよ。だって、あたし達は……」
 

 朝比奈さんは、眩しい笑顔を振りまいて、こう言うのだった。
 

「SOS団の仲間でしょ?」
 

朝比奈さんの笑顔から、後光が見えた気がした。元旦に初詣に行ったり、クリスマスにキリストの誕生日を祝ったり、大晦日に除夜の鐘を律儀に聞いている、典型的な信仰心が一切ない俺だが、「朝比奈教」なる宗教があったら、速攻で入信する自信があるね。生まれる前から、朝比奈さんの誕生日を祝い、メイド服を着て子ども達にプレゼントを配っているだろう。

 

なんとなく、胸が熱くなって手を当ててみた。俺が信じるべきもの。それは、朝比奈さんと一緒だ。違う世界に来てしまったのなら、戻ればいいだけ。涼宮やナツキがいるみんなの世界。勝手に呼び寄せて、勝手に吹き飛ばすなんで反則だ。別れる時、挨拶をするってのは常識だろっ!


「俺って馬鹿ですね。こんな単純なこと、言われて気づくなんて」
 

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