翌日の放課後、俺は速攻で生徒会室に向かい、中に入ると、すでに会長が来ていた。

「会長!」

「何かね?」

 

 いつもどおり、無機質な目を向け、俺を見据えた。さあ、言え。俺が出した答えってやつを!

「悪いが、俺の居場所はここじゃなかったみたいだ。生徒会を辞めさせてもらう」
 

「ほお……。君はそれでいいのか?」

 

「ああ。もう何も考えずに、立ち止まるのはやめたんだ」


「そうか。酔狂なことだな」

会長は、驚いた様子を見せず、興味ないように言った。ああ、そうだな。俺もそう思うぜ。せっかく平穏ってものを手に入れたってのに、大馬鹿野郎だ。だけどな、妙に居心地がいいんだよ。そんなところが、居場所ってやつじゃないのか?だから、行くんだ。


 俺は走った。あいつらに言うべきことがある。キョンと朝比奈さんは笑って許してくれる気がする。だが、涼宮と長門はマジで怒っているだろう。ひたすら謝るしかない。そして、事情を話して誤解を解くんだ。

 古泉、勝手に俺をSOS団に入れて、勝手に止めさせるんじゃねえ。何もせず、人任せで元の世界に帰るなんてできるか。お前らばっかり迷惑をかけれるかよ。俺も一緒に考えさせろ。その変わりってわけじゃないが、俺ができる事があれば必ず力を貸す。涼宮の退屈しのぎだって、なんだってやってやる。世話になった分だけ恩返しって奴をしないと、気持ち悪いタチなんだよ。これなら、文句ねえだろうが!

 

 文芸部の部室に到着し、ノックをした。こんなに緊張するのは、最初に来たとき以来だ。 しかし、返事がなく、さらに緊張感が高まる。数回深呼吸し、ドアをゆっくり開けると……、

 

「なんだよ、くそっ!」

 

誰もいなかった。

 タイミングが悪い。今日は涼宮の思いつきかなんかでどこかに行ったのか?精一杯の勇気とノリだけでここまで来たってのに、萎えちまった。一気に力が抜け、数日前まで俺が座っていた椅子に座りこんだ。何やってんだろうな、俺は……。
 

 

 俺を呼ぶ声が聞こえる。どこか懐かしい響き……いつだったか。少なくとも最近は聞いていない。

「さっさと、起きなさーい!」

「うわっ!」

鼓膜が破れるのではないかと思うくらいの大声が聞こえ、驚いたせいで、椅子から転がり落ちてしまった。

 頭が働かない。どうやら俺はいつの間にか寝ていたようだ。目の焦点が合ったかと思ったら、涼宮が俺の目の前に立ち、俺をにらんで腕組みをして立っている。

「あんた、何やってんの?」

 寝起きで心の準備ができていない。えっと、俺は一体何しに来たんだ?そうだ、言うべきことがあったんじゃないか。

「涼宮すまなかった!俺をもう一度SOS団に入れてくれないか!」
 

 涼宮は数秒黙っていたのだが、じっと俺の目を見て静かに

「ということは見つかったのね」

不敵な顔をした。何が見つかったって?

「生徒会長の弱みを、握ってきたんじゃないの?」

弱み?こいつは何を言っているんだ。だめだ、寝起きでぼーとする。

 

「まさか、あれだけいて、何も無かったっていうの?」

 

 待て待て、手の骨を鳴らすな!えっと、そういや会長のことで、ちょっとした疑問があったんだ。


「ああ、そういえば不思議に思ったことがある。どうやら、会長ダテ眼鏡をかけてるみたいなんだよな。眼鏡なんて面倒なのになんで……、ぐわっ!」

 涼宮は胸ぐらをつかみ、馬鹿力で立ち上がらせた後、

 

「いてえ!」

 

思いっきり、頭突きをした。

 

「おい、何すんだよ!」

 

「あはははは、そういうことね。あんた、でかしたわ!」

さっきまで、冬眠中に腹が減って起きた熊みたいな血走った目をしていた癖に、今では満腹になったような上機嫌になっている。相変わらず、忙しい奴。

 

次へ


|