ああ、悪かったよ。お前の説明を聞けば、軽はずみなことを言ってしまったと後悔してるさ。だが、あれはお前が無茶振りをするからいけないんだぞ。

「そのことについては謝ります。それで今回呼んだ目的は、これから発言を気を付けてほしい、ということを伝えたかっただけです」

 最初からそう言え。自分の存在がどうのこうのって余計だろ。マジでへこんだんだぞ。

「すみません、少し驚かせすぎました。あと、これはついでなのですが、今後協力してくれませんか?涼宮さんがこの世界に飽きてしまうと、世界を壊して再構築してしまうかもしれない。そのために僕はいろいろと苦労して涼宮さんを退屈させないよう手回ししているんです。協力してくれるなら、見返りというわけではないのですが、あなたが元の世界に帰れるよう、精一杯のバックアップをさせていただきます」

 はあっ……。俺はため息をついた。なんで、こんな重い気分にならないといけないんだ?これが朝比奈さんとのティータイムの中での会話なら、有頂天になって首を上下に振っていただろう。

 

 古泉の言うとおりにするのは納得いかなかったが、ただうなづくしかなかった。なんせ、元の世界に帰るにはこいつらに頼るしかないからな。どうせ、すぐに元の世界に帰ることになるんだ。面倒事に巻き込まれる前に、元の世界に帰ってやる。
 

 と、心の中に誓って翌日のことだ。この世界に来てからというもの、どうやら面倒ごとに巻き込まれるという確率変動が起こっているらしい。面倒事は、またしても俺の前に立ち塞がってくる。

 

 俺が2年4組の教室に入ろうとしたところ、廊下に古泉が立っていて、むかつくほどさわやかな笑顔で

「おはようございます」

挨拶をした。何か嫌な予感がするな。こいつが意味もなくここにいて、挨拶をするはずがない。

「実はあなたにお願いがあります」

ほらきた、思った通りだ。だいたい、昨日の今日だぞ。もうちょっと遠慮しろよな。

「すみませんが、そうもいかないようです。先日の幽霊屋敷では、残念ながら何も起こりませんでした。どうやら、涼宮さんが退屈をしているみたいなんです。この辺りで事を起こす事が、ベストタイミングだと判断しました」

 幽霊屋敷で、何もなかったわけではないぞ。俺は、一生忘れる事ができない経験をしたんだからな。まあ、そんな事件を涼宮は全く知らないわけで、幽霊屋敷から帰る時の涼宮は、明らかに不機嫌な顔をしていた。古泉の心配は、ほんの数ミリだけ納得できる。

「それでどうすればいいんだ?」

「昼休みになったら生徒会室に来て下さい。詳しいことは、それから話しましょう。それでは」
 

手を挙げ、少女漫画の王子様並の微笑みを残して、古泉は9組へ歩いていった。

 

 生徒会室って、なんでだ?俺の世界の生徒会長は、ちんちくりんで明らかに内申点狙いの坊ちゃんが会長をしていた。この世界の生徒会長はどんな奴なんだろうか。

 自分の席に向かうと、すでに長門は登校していて、席に座って本を読んでいた。

「よう、長門」

俺が挨拶すると、身体はそのままに顔だけを横に向け、じっと俺の目を見てきた。あの幽霊屋敷の事件以来、長門のちょっとした表情の変化が読み取れるようになった……、気がする。

 ちなみに今の長門は、心の中で「おはよう」と挨拶をしている……、はずだ。うん、おはよう。長門が本に目を戻し、言葉のキャッチボールがない会話はこれで終了。この世界に来て、俺って成長しているんだなと、長門によって実感したのだった。

 

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