夏休みが数週間後に迫ったある日の放課後。場所は文芸部の部室。いつもどーり、涼宮1人が騒ぎ、勝手に解散宣言をした後、部室を飛び出していった。

 

 いつも思うんだが、あいつのエネルギーはどこから持ってきているんだろうな。大抵の健全な学生は、放課後ともなると、メーターがエンプティを示すもんだ。それが、あいつは時間が経てば立つほど、元気になっていきやがる。幸せな奴だ。きっと悩みなんてもんがないんだろう。まったくもって、羨ましい限りだよ。

 

 さて、さっさと帰ることにするか。涼宮と違って、俺は永久機関なんてもんが備わってない。そう思い、席を立つと、いつもの微笑をたずさえ、古泉が俺に近づいてきた。

「この後、時間はよろしいですか?」

俺は、断ろうと一瞬思ったのだが、理由が思いつかず

「別に構わんぞ」

承諾した。

 古泉に着いていくと、到着したのは駅前にある喫茶店だった。

「実は、僕のこと、涼宮さんのことを話したいと思います」

 古泉と涼宮のことだって?まだ隠していることがあるってのか。悪いが、他人のことより、自分自身のことで精一杯なんだ。何しろ、どこから来たのか迷っている途中なんだからな。

「いいえ、そうではありません。涼宮さんが、あなたをこの世界に呼んだというのはすでにお話ししましたよね?」

 ああ、わかってる。ほんと迷惑なこと、この上ない。平穏に暮らしたかったってのに、なんでこんな目にあわなきゃいけないんだか。面と向かって文句を言わない自分を褒めてやりたいぞ。

「なぜ涼宮さんが、あなたをこの世界に呼んだのか、その詳しい理由はわかりません。ですが、こうも考えられる。涼宮さんが異世界人の存在を願ったという、ただそれだけの理由で、あなたはこの世界にいると」

 それだけの理由で俺が呼ばれたっていうのか?なんでよりによって俺なんだよ。わけがわからん。
 

「涼宮さんがあなたという存在を選んだ理由は僕にもわかりません。あるのかもしれないし、ないのかもしれない。では質問です。あなたは本当に異世界から来たのですか?」

 こいつは何を言っている?俺は確かに元の世界にいたんだ。今だってはっきりと思い出すことができる。
あの、たいした特徴のない田舎町。そこで、俺は育ってきたんだ。間違いないさ。
 

「本当にそうでしょうか?例えば、こういうことは考えられませんか?あなたは、あの日涼宮さんによって作られた存在である……、とね」

 またとんでもないSF話だな。俺が涼宮の都合がいいように作られた存在かもしれないだと。だったら、俺という存在は一体なんなんだ?涼宮のおもちゃってことかよ。そんなの信じられるか。

「怒らないで聞いて下さい。これはあくまで僕たちの組織の理論なのですが、涼宮さんは神のような存在だと考えています。彼女は願望を叶える力を持っている。この世界は彼女が見ている夢のようなもの。不可能を可能、あるものをないことにでき、ないことをあることにもできる」

 

 言っていることは、理解できる。だが、それがどうした。俺はこうして生きているんだ。俺の人生が涼宮に作られたものかもしれないと、不安にさせて狂わせたいのか?こいつは、俺を落ち込ませてどうしたいんだ?

「そうではありません。涼宮さん以外の存在は、あなたと同じ条件を持っています。僕だって、涼宮さんが必要ないと思ったら、存在そのものが消えてしまうでしょう。もちろん、この世界もです。幸いにも、涼宮さんは自らが持つ力に気づいていない。気づいてしまったら、この世界は今とは違った変貌を遂げるでしょうね」

 涼宮の存在自体が反則なんだな。俺を勝手に巻き込んで、勝手に消すなんて冗談じゃない。

「去年の5月、世界は破滅を迎えそうになったのですが、彼のおかげで防ぐことが出来ました。しかし、現在我々の世界は、綱渡りをしているような危うい状態です。そして、ここからが本題なのですが……」

 こいつは前置きが長すぎる。さっさと言え。

「あなたが、入団する時のことを覚えていますか?あなたは自分のことを異世界人だと涼宮さんに紹介したのですが、これは大変危険な発言なのですよ。先ほど言ったとおり、彼女に宇宙人や異世界人が存在していることに気づかれると、世界の常識が覆り、崩壊することになります」

 

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