やっとこさ、家に辿り着いた。太陽はとっくに沈んで辺りは暗くなっている。自分の部屋に入ったところ、いつもどーりナツキが俺の部屋にいた。いたのだが、おとなしい。というか、俺のベッドで寝てやがる。
「おい、起きろ」
「ううーん……」
なんだ、こいつ。妙に色っぽいな。前から思っていたのだが、高校に入ってからというもの、どんどんかわいくなってないか?これで、性格が良ければ言うことないんだろうが。あと、もうちょっと女らしさというか、恥じらいというものを覚えて欲しい。一応男の部屋なのだから、少しくらい抵抗があってもいいと……
俺は何を考えてるんだ!アホな事を考えている自分に腹が立ち、ナツキの頬をつねった。おら、さっさと起きろ。
「んあ、痛い……」
ナツキは目を大きく開いて飛び起き、顔を真っ赤にして
「変なことしてないでしょうね!」
叫ぶ。こういう女の子らしい反応もするのか。というかナツキに変なことなんかするわけないだろ、失礼な。
「あんたの方が失礼でしょ!だいたい、どこ行ってたのよ。退屈で死にそうだったわ」
なぜ俺は非難されないといけないのだろう。俺には俺の予定がある。1人で暇なら彼氏でも作れ。
「前に言ったでしょ?あの人以外、興味ないの。そういうあんたは、長門さんとデートでもしてたんじゃないの」
ナツキがにやけながら言った。適当にごまかせばよかったのだろうが、俺は不覚にも言葉につまってしまった。あれはデートとかそういうもんじゃないが、長門と2人でいたのは事実だからな。
「うそ……」
ナツキは、幽霊でも見ているかのように驚いていた。ここはごまかしておくか。
「そういうわけじゃない。駅前をぶらついたら、たまたま長門に会って話をしただけだ」
実は俺がSOS団に入ったということをナツキに言っていない。こいつに知られたら、いろいろと面倒なことになりそうだからだ。放課後はやることがあるとかなんとかごまかして、いつも先に帰ってもらっていた。
「ふーん、そう……」
ナツキは考え込んでいた。なんかいつもと違うな、変な奴。
ああ、そうだ、一つの意見としてこいつに聞いておくか。
「なあ、もし恋人が病気か何かで死んでしまうって知ったら、お前ならどうする?」
ナツキは固まった。いや、そんな反応されても……。
「変な物でも食べた?あんたが恋愛に興味あるなんて以外……」
俺だって彼女くらい欲しいっての。聞いた俺が馬鹿だったと後悔していたところ、ナツキは真顔でこう言ったのだった。
「あたしだったら、一緒にいたいと思うだろうな。最後までずっと」