俺の頭の中で、何度も映像がフラッシュバックした。きらびやかな洋館にいる詩織さん。詩織さんは北高の制服を着て学校に通っていた。そして、同級生の男と出会い、すごく優しく笑っていた。詩織さんは男と喧嘩をして落ち込んだり、優しく見守っていたり、毎日が本当に楽しそうだった。

 ある日の光景。これは洋館の中だろうか?詩織さんが悲しそうな顔をして、床の下に箱を隠している。床に落ちているのは涙。詩織さんの顔に少しずつ元気がなくなり、どんどん悲しそうな顔をしていた。

 そして、病院。病室で寝ている彼女は、本当に生きているのかと疑いたくなるような青白い顔をしてベッドに寝ていた。

 

 最後に、これは……。彼女はさっきと同じようにベッドに寝ているのだが、彼女の近くには男が泣いて立っていた。

 気が付いたら、俺も泣いていた。詩織さんの悲しいっていう気持ちが伝わってきて、動けない詩織さんの代わりに泣いたんだ。
 

 パンッ!

 大きな音がして、現実に引き戻された。俺は、さっき不良に殴られそうになった格好で立ちつくしている。目の前を見ると、不良が3人とも倒れ、その中心になぜか長門がいた。

「あれ?」

なんで長門がいるんだ?さっきのは一体?長門は俺の顔を見てつぶやいた。

「涙」

 長門に言われて初めて気づいた。俺はどうしてかわからないが、泣いていたんだ。くそ、女の子の前で泣くなんて最悪だ。手で顔を拭き、気になることを聞いてみることにした。

「どうしてここにいるんだ」

「情報統合思念体の亜種が一ヶ月前に降り立った。その場所がここ」

「情報なんとかってのは、長門の親玉……、宇宙人のことだよな?亜種ってのは人種が違うようなもんか?」

「違う。種族そのものが異なるのと同意。全く別物」

「じゃあその亜種とかいうのを退治するために戻ってきたら、俺がいたと?」

「そう」

なんてこった。こんなところで、長門が宇宙人だと確信するような出来事が起こるとは思わなかった。しかし、さっきの映像はなんだったんだろう?

「あなたは、彼らと共に虚数空間に捕らわれていた」

 虚数空間だって?その空間にいたから、さっきの映像が頭に入ってきたのだろうか?それにしても、何で亜種とかいうやつはこんな洋館にやってきたんだろう。わからないことだらけだ。

 

「そうだ、詩織さんっていう綺麗な女の子が外にいたろ?なんて言って中に入ったんだ?」

 すると、長門はぞっとするような静かな口調で俺に言った。

「その人間は、すでに死亡している」

なんだって?長門の言っている意味がわからない。冗談であってほしい、そんな願いを込めて長門の顔を見たのだが、相変わらずの無表情。だが、真剣な眼差しを俺に向けている。嘘じゃないっていうのか?

「そんな……、馬鹿な……。さっき確かに話をしたんだぞ!顔だって覚えている」

 俺は、長門の言ったことがどうしても信じられず、外に出て詩織さんを探した。しかし、いくら探しても、名前を呼んでも、詩織さんを見つけることはできなかった。おいおい、マジかよ。本当に幽霊だったっていうのか?

「ここに降りた亜種は人の思念を好み、増幅する特性を有していた。ここに降りたのも、残された思念が強かったから」

 強い思念?もしかして詩織さんか?一体それはなんだ?

 

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