俺は、適当な理由をつけて、みんなと別れ、ダッシュで再び洋館に戻った。洋館に到着したところ、詩織さんが出入口前で待っていてくれた。洋館の風景に詩織さんの存在はジグソーパズルのように、ぴったりとはまっている。洋館の持ち主と聞いて、納得しない奴はいないだろう。
「お待たせしました」
「いいえ、無理言ってすいません」
申し訳なさそうな、それでいてとても綺麗な顔をして謝った。うーん、かわいい。ナツキや涼宮に、このかわいらしさを見習わせてあげたいぞ。
「それでどうしたらいいんですか?」
「とりあえず、中に入って下さい」
詩織さんは、鍵を使って洋館の扉を開け、中に入っていった。洋館の中は誇りっぽく、物がないため殺風景だったが、何故か人がいるような、暖かい気配を感じる。
「不良は、もう少ししたら来るはずです。陰に隠れて、脅かしてくれませんか?」
「なるほど、わかりました。万が一ってこともありますので、詩織さんは外にいてくれますか?俺に何かあったら、その時は警察に通報してください」
詩織さんは、うなづいて静かに洋館から出て行った。さて、どうなることやら。
数分待つと、なにやら足音と話し声が聞こえてきた。どうやら来たらしいな。陰から様子を見ていると、金髪の3人組が我がもの顔で廊下を歩いている。いかにも不良ですよってな感じだ。
いろいろ考えたが、結局、真っ向勝負しか思いつかなかった。あんな格好をしている奴らは、脅かしても効果がないだろう。
俺は覚悟を決め、物陰から出て
「おい、お前ら!」
精一杯強がって言った。
俺がいたことに3人は驚いたようだが、
「なんだ、お前は?」
いかにも悪役らしいセリフを放つ。
「ここは、人の家だ。勝手に入っていい所じゃない。すぐに出て行け。そして2度とここに来るな」
精一杯虚勢を張って言ったんだが、たいした効果はないようで
「お前も勝手に入っているじゃねえか」
ニヤニヤして全く悪いと思っていないようだ。
「俺は管理人から頼まれてここにいるんだ。お前らとは違う」
「管理人ってのはどこのどいつだよ?俺達に連絡先を教えてほしいね。元々ここに住んでいた奴は、引っ越してずっと放置されてるんだ。管理人なんていやしないって知ってんだよ。はったりはやめとけ」
「本当だ。今は外にいるんだが、今頃警察に通報しているだろう。捕まりたくなかったら、さっさと出て行け。そして、2度とここに来るな」
俺の言っていることが本気だとわかったようで、3人は顔を見合わせた。これで終わるだろう。そう思っていたが甘かった。
「しょうがねえな。けど、俺達のたまり場をつぶしてくれたんだ。一発殴らせてもらうぜ」
おい、マジかよ。喧嘩なんかしたことないって。俺は格好だけのファイティングポーズをして、身構えた。男の内1人が、俺にゆっくり近づき、目の前で立ち止まったかと思うと、拳を振り下ろしてくる。
避けようとしたのだが、スローモーションになって拳が俺の顔に近づいていき、当たると思った瞬間、目の前でパチッと火花が飛んだ。