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第二章<断絶>
週のあけた月曜日。あたしは不機嫌オーラをばらまきながら登校した。
半径5メートル以内に人がいないのがわかる。
教室に入り、誰も座っていない前の席を睨む。
二年生になっても変わらないこの位置関係に怒りを覚えたのは初めてだ。
あいつを見ていなければいけないなんて。

幸いなことに今日は席替えがある。
入学してからずっと続いていた偶然が途切れることを祈った。

遅刻ギリギリにあいつが教室に入ってくる。
席に鞄をおろして声をかけてくる。
「土曜日はすまなかった」
無視。
「今度からはちゃんと行くからさ」
無視。
「……?おーい」
無視。
ため息をつくとキョンは前を向き、岡部が入って来た。

授業中はイライラしっぱなしでろくに話も聞いていなかったけど
学校の授業なんて余裕よ、余裕。
こんなのもわからないなんて本当にキョンはバカよね。

待ちに待った席替え。
あたしは窓際一番後ろ。
キョンは廊下側一番前。

教室はパニック寸前だった。
……この程度のことで騒がないでよ。
キョンを谷口のバカと国木田が慰めている。キョンは憮然と、と言うか唖然としている。
キョンは鞄を持つと教室をでた。

掃除を終わらせ我がSOS団部室へ向かう。
扉を開けるとそこには古泉君と有希とみくるちゃんと……
キョンがいた。

あたしの我慢は限界に近づいている。
あたしたちに嘘ついてまでデートしてたやつがのうのうと
『あたしたち』といようとする。
「キョン」
「何だ?」
普段と全く変わらない様子についに切れた。
「なんでここにいるの」
「いちゃ悪いのか?」
「ここはSOS団の部室よ」
「それが?」
「あたしたちに嘘ついて、SOS団の用事を放って、デートしたやつに
ここにいる資格はないわ」
怪訝な顔をするキョン。
「ちょっと、ま……」
もうこれ以上聞きたくない。
『『出てけ!』』
”四重奏”とともに古泉君につかみあげられて廊下に引っ張られるキョン。
ほかの四人も我慢の限界だったみたい。
「おい、ちょっと待てって。話を……」
鈍い音がしてキョンが黙る。
やけにニコヤかな古泉君が部室に入って鍵を閉めた。

改めて部室内を見渡すとみんなの怒り具合がわかる。
古泉君はボードゲームを出してなかったし、
湯のみも有希と古泉君の分しか出てない。
「はい、みんな注目!邪魔者も出てったところで次回の不思議探索について
ミーティングを行います」
ここでいったん間。
「今度の土曜日十時に街に集合よ。遅れたら、罰金だから!」
空気が一瞬重くなる。
「罰金=キョン」の方程式が成り立っているみたいだ。
「そうですね。そっちの方がいいでしょう」
古泉君がいつものように朗らかに同意する。
「はい、お茶です」

それから他愛もない談笑で時が過ぎ、有希が本を閉じてあたしたちは下校する。
そのときあたしは廊下にあるものを見つけた。
「ねえ、古泉君」
「何でしょう?」
笑って答えながら、古泉君もあたしと同じ場所を見ている。
「どのくらい強くあいつを殴ったの?」
転々と跡を残しているそれは……。
「見た通りだと思いますよ」

そう、それは血だった。


<幕間2>

朝、学校についてハルヒに土曜日のことについて謝ったが無視された。
悪いことしたな、とは思ったけどここまでひどい扱いを受けるとは。

そのことに少なからずへこんでいて、授業には全く身が入らん。
わかんねえ……、ってつぶやいたら後ろのハルヒに鼻で笑われたような気がする。
俺が何をしたってんだ。

席替えがあった。どうせハルヒの前だろうって思ってたんだが
何が起きたのか、一番遠いところに座るはめになった。
……ざわざわしすぎだお前ら。
偶然だろ、席替えなんて。
国木田と谷口がどうやら慰めてくれてるらしいがそんなことは気にならなかった。
とりあえず部室に行ってほかのやつらに話でも聞こうか。

と思ったんだが、みんなの反応がなんか――というか、ものすごく――よそよそしい。
古泉はボードゲームを誘ってこないし、朝比奈さんは俺にお茶を入れてくれない。
長門に至っては怒りの視線をぶつけてくる。
……はげるって。ストレスで。

しばらくして掃除当番だったハルヒが入って来た。
こっちを見てものすごく不快そうな顔をする。
そして訳の分からん難癖を付けてきやがった。
「ここはSOS団の部室よ」
ってそれくらい知ってるさ。なんで俺がいちゃいけないんだ?
……。
土曜日?デート?
ああ、『あれ』か。『あれ』を見られてたのか。
そりゃ、事情を知らなきゃ怒るだろうな。
とりあえず説明しようと口を開いた俺を……。
古泉がつかんで廊下に投げ飛ばしていた。
長門にまで「出てけ」って言われたのは正直きつい。
もう一度説明しようとした俺を古泉が思いっきり殴る。
壁に頭をぶつけて意識が遠ざかる。

気づくと部室内では次の土曜日のことを話していた。
こうなったら最終手段かな。
痛む頭を抑えて俺は学校を後にした。


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