そうだ、この世界の俺のことをそれとなく、聞いてみるか。元の世界から来た俺と、この世界に元々いた俺に、何かズレがあるかもしれないし。

 しばらくナツキと昔話をしたのだが、ちゃんと子どものころの思い出もあった。ふとした疑問なんだが、元々こっちの世界にいた俺はどこにいってしまったんだろね?

 ナツキは、話をしている間、笑ったり怒ったり、表情豊かだ。こいつはいつだってそうだ。何があったって、笑ってやり過ごすような図太さを持っている。俺が知っている、元の世界のナツキと全く変わりはなかった。

 

 そんなナツキだけど、結構苦労してるんだぜ。実は、小学5年の時に不慮の事故でナツキのお父さんが亡くなったているんだ。あの時のナツキの様子は、今でも覚えている。お父さんっ子だったナツキはショックで、毎日泣いていたんだから。

 

 だが、ある日を境に泣かなくなった。きっと小学生ながら現実を受け止め、強く生きていこうと決めたのだろう。自分だけでも精一杯だろうに、俺まで巻き込んで元気を分けてくれるんだから、ほんとたいしたもんだ。こいつの心の強さってのは誰よりも知っている。
 

 俺が今の状況にたいして悩まずにいられるのは、こいつがいるおかげだと言ってもいい。16年の付き合いがある兄妹みたいな存在が近くにいるってのは、とても安心するものだ。

 

 もし俺が1人ぼっちでこの世界にいたら、気ばかり焦って正気でいられる自信はない。面と向かってナツキに礼なんて言えないけど、本当に感謝しているよ。

 さて、明日からどうしたもんかな。いつまで俺はこの世界にいることになるのだろう?
 

第2章に続く

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最終更新:2011年01月15日 19:43