……


とりあえずだ、現実逃避してる場合じゃないぞ。いや、だって、今のってどう見ても告白だったろう??
いつから告白ってのは…こんな日常会話に混じる親近感あふれる代物になったんだ??

…待て待て!とりあえず落ち着け!今は告白の定義などどうでもいいだろう…!?
それよりも佐々木にどう返答するか、それを考えねばならない。改めて佐々木を見る。…かわいい。
いや、第一声がそれってのもどうかと思うが…しかし事実なのだからどうしようもない。フィルターをのけたって、
余裕で平均は超えてるだろう。顔以外にも目を向けてみるが…そのプロポーションの良さだって言うに及ばず。

認識した途端、この状況が物凄く不思議に思えてきた。なぜ俺みたいな平凡野郎がこんな美少女と
談笑できているのかと…慣れってのは恐ろしいもんだな。そう考えるとハルヒもそうか。
あいつにも佐々木同様のことが言えるかもしれない。朝比奈さんや長門にしてもそうだが、
どうしてこう俺の周りにいる女の子はレベル高いコばかりなのか。つくづくそう思った。

「…キョン?さっきからどうしたんだい…?僕の顔や足に何かついてるのかな。」

佐々木が顔を伏せ気味にして、何やら恥ずかしそうに声を発してる。って、え?顔や足?

……

「!す、すまん!」

つい声を張り上げてしまう。そんな俺に、佐々木はキョトンとしていた。
おそらく俺は佐々木の体を…舐めまわすかのごとく見てた…んだと思う。何やってんだ俺…!?

「いや、まあ、別にいいんだけどさ。僕も一応女の子だから、殿方に理由もなしに
ジロジロ見られるのは恥ずかしいんだ。そこはわかってほしいな。」
「あ、ああ…すまん。次からは気をつける。」
「というか…何をそんなに動揺してるんだい?まさかとは思うが…『好き』をそういう意味でとった?」

え…?どういうことだ??『そういう意味』って何??【好き】は【好き】でしかないんじゃないのか…!?

「あ、あのねえキョン。さっき言った好きってのは友達としての好き、つまりlikeだよ。
愛してるのloveじゃないんだ。状況的に後者じゃないってことは言わなくてもわかると思ってたけど…」
「……」

あまりの脱力で死にそうになった。何この茶番は?そして、俺のあのドキドキも一体何だったのか。
いろんな意味で涙が出そうになった。とりあえず、心の中だけでいいから一言叫ばせてください。



まぎらわしすぎる…っ!!



「ああぁ…悲しい顔をしないでキョン。こっちも悪かったよ…安易に好きって言ったりしてゴメンね。」
「いや、いいんだ。もうそれについては…」

疲れた。以上。

「ただ、涼宮さんがlikeかどうかはわからないけどね。案外loveだったりするかもしれない。」
「佐々木…この局面でからかうのはやめてくれ…俺をオーバーキルしたって良いこと何もねえぜ…?」
「別に冗談で言ったんじゃないけどなぁ今のは。で、実際のところどうなんだい?彼女は。」
「どうなんだって…俺にそれを聞くか!?どうしたもこうも、相変わらず涼宮ハルヒその人よ。
今日の昼会ったときだって、団長様以外の何者でもなかったさ。」
「今日…ああ、そういえば日曜はSOS団の不思議探索だったか。何にせよ、彼女は元気そうだね。」
「元気すぎて困るくらいだ。」
「くっくっくっ、そのバイタリティー、僕にも分けてほしいものだ。しかし…ふむ、
その様子だと何もかもうまくいったようだね。本屋で会った時点でなんとなくわかってはいたけど。」
「?何の話だ?」
「隠さなくていいよ。昨日何があったかは…橘さんや周防さんから聞いたからね。」

っ!

一瞬びっくりした俺だったが…よく考えれば、佐々木が知っていても別段不自然というわけではない。
昨日の事件に橘や周防たちが介入してきた時点でな。

「…どこまで知ってるんだ?」
「大方の事情は知ってるかな。涼宮さんが何者なのか…いや、何者だったのかという点も含めてね。」
「……」

一昨日ハルヒが卒倒した際、長門が観測した未特定情報の大規模拡散。
もし長門がいなければ俺は…そして古泉や朝比奈さんも今回の事件の核心に迫ることは決してなかったろう。
それほど長門のはたらきは必要不可欠だったわけだが…長門が観測できたということはつまり、
天蓋領域の周防だってそれは可能だったんだろう。ということは、真実を知った奴らが
別世界の朝比奈さん殺害を決定したのも…このときか。時を同じくして俺らは大混乱だったわけだな。

「聞けば、じきに世界が崩壊するらしいとのことじゃないか?それを知った僕は自分も何かできないかと
橘さんたちに打診してみたんだが…ことごとく断られてしまった。そのため彼女たちが何をしたのかも
結局は教えてくれなかったが…まあ、僕は関わるべきではなかったってことなんだろうね。
僕にはキョンたちの無事を祈ることくらいしかできなかった。」
「…そうだったか。」

その一点においてだけは連中に感謝してやろう。佐々木を巻き込んでくれなくて本当によかった…
まあ、連中からすりゃ佐々木は重要な保護対象なんだから当たり前っちゃ当たり前なのかもしれないが。
それと、『僕は関わるべきではなかったってことなんだろうね。』だが…俺からすりゃ、
関わるべきじゃなかったってよりは、知る必要のなかったって表現のがシックリくる。
なんせ、結果として奴らは朝比奈さん殺害を断行したのである。結局未遂に終わりはしたものの…
そんな物騒なこと佐々木に教えられるわけがない。知る必要のないこととは、まさにこのことだ。

「…それにしても涼宮さんの過去には驚かされたよ。
僕が彼女の立場だったら…とてもではないが耐えられないね。おそらく発狂して終わりだ。
そうならなかっただけでも彼女の、その強靭な精神力には目を見張るものがある。
ただ、そんな彼女も…昨日でようやく終わったのだろう?君が…彼女を【解放】した。違うかい?」
「…そうだな。何もかも…全て終わったと思う。」

あくまで『思う』としか言えない。ハルヒの一連の能力も…消えた可能性こそ高いが、まだ断定できた
というわけじゃないからな。とりあえず、古泉曰く閉鎖空間自体は一切見えなくなったとのことらしいが。
そしてここで気付く。ハルヒの能力の、それに至る過程を知っているということはつまり…

「…なあ佐々木。もしかして、お前のそれも消えちまったのか?」

つい代名詞を使ってしまい、しまったと思ったが…
今の話の流れならおそらく『それ』でも佐々木には十分伝わったはずだ。

「察しがいいね。そうだね…消えてしまった。気付いたのは今日の朝かな。
目眩がしたり、どこかが痛かったわけでもないんだが…何かこれまでとは違う強烈な違和感をを覚えたんだ。
具体的に説明できないとこが歯痒いけれど。それで気になって橘さんに電話してみたら…
案の定というわけだよ。」

……

本人がここまで言うということは佐々木の…能力は消滅したとみてもいいんだろう。
となると、逆算的に…ハルヒの能力もなくなってるってことになる。まさかの古泉説当たりか?
『やれやれ』とか言って気だるそうに話聞いて悪かったな古泉。

「…そうか。消えて何か思ったりしたか?」
「いや、特別には。今までが大した能力じゃなかったからね。
そもそも、閉鎖空間が存在してるだけのそれを能力と言えたかどうかも怪しい。
大体そんなところではあるけど。敢えて言うならば、なくなって少し不安だったかな。」

不安?




……




一瞬意味がわからなかった。逆ならすんなり通るんだが…

「…すまない。涼宮さんの気持ちを考えるなら、なくなって不安だとか
そういうことを言うべきじゃなかった。僕ときたら…本当自分勝手な人間だ。」
「いや、別に俺はそんなこと思っちゃいないが…」

逆に俺はその理由が気になっていた。確かに…ハルヒならばありえないだろう。なくなった今、
あいつは幸せなはずだからな。だからこそ、なぜ佐々木がそんな正反対のことを言ったのかが気になるのだ。

「…佐々木。よければその理由教えてくれないか?なに、それで怒るほど俺は卑小な人間じゃない。」
「……」

言うのを躊躇ってたようだが、やがて彼女は決心したのか、静かに口を開く。

「…怖かった。」
「え?」
「怖かった。君との接点がなくなるのが、怖かったんだ。」
「……」

一体何を言い出すのか?と思ったが、なんとなくその意図は伝わった。いや、確かに伝わった。
決して特別なことを佐々木は言ってるわけじゃない。彼女もまた、古泉・長門・朝比奈さんたちと
同じだった、ただそれだけだ。今日の不思議探索時、俺は古泉・朝比奈さんと…ハルヒの能力がなくなっても
SOS団であり続けることを確かめ合った。元々の存在意義を失ってまでも2人は、俺たちと一緒にいてくれることを
選んでくれた。最初はなかったかもしれない繋がり…だが、今ではちょっとやそっとの理由じゃ決して離れない、
そんな強固な絆が確かに俺たちにはあった。だからこその『SOS団であり続ける』という答え。そしてそれは、
後で確認した長門も同様の答えだった。しかし…一方の佐々木はどうだろうか?

俺には、佐々木に対してそこまで露骨な役割意識はもってなかった。が、それでもだ。
SOS団と敵対してたはずの藤原・橘・周防が佐々木に接近、ないしは取り込もうとしていた客観的事実。
それを前にして俺たちと佐々木の能力に、果たして接点がないと言えただろうか?中学の卒業以来、
俺と佐々木が塾という学習環境以外で会うことが多くなったのも、これらの要素が無関係だと果たして
言えただろうか?残念ながら答えはNoだ。一部においては、俺はそれを認めなくてはならない。
佐々木本人も俺たちの関係がそれを前提として成り立ってたことを知っていた。
それは先程の彼女の言葉から明らかである。ならば、ここからが問題だ。

その接点が消えてしまったとき、俺と佐々木は一体どうなるのか?それを考えなくてはならない。
さて、どうなるのだろう。まず古泉や長門、朝比奈さんにはSOS団という明確な繋がりがあった。
だからこそ、ハルヒの能力が消えても俺たちは『俺たち』であり続けられた。しかし、佐々木はどうだ…?
彼女には…SOS団のようなわかりやすい繋がりというのがない。…繋がりがない。
つまり、接点無き今、佐々木とは元の白紙の関係に戻るというわけだ。

……

…ちょっと待て、それはおかしくないか?第一、この論法には俺個人の感情が全く反映されていない。
佐々木の感情だってそう。機械的概念で割り切れるほど、人との付き合いってのは無機質なものだったか??
そんな単純なものだったか??…何か違う気がする。

そこでふと、佐々木との会話を思い出す。今日俺に投げかけてくれた、その一連の数々を。

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「とはいえ、いきなり話しかけたりしてすまなかったね。久々に君を見てしまったんで、つい…ね。
衝動が抑えきれなかったんだよ。旧友との素晴らしき再会、それに免じて許してはくれないかな?」

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「僕はキョンが食べるのと同じものにするよ。」」
「それまたどうして?」
「気分さ。」

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「その意見は至極妥当だと言える。そしてサイズだって、自分に不釣り合いなのはわかってたよ。
それでも今日だけは君と同じ…あ、いや、何でもない。とりあえずさ、食べるの手伝ってくれないかな?」

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「僕はねキョン、君に行動原理をしっかりと把握されてる、そんな涼宮さんが羨ましいと言ったんだよ。そして、
そんな彼女も君のことを把握してるからこそ、理不尽な要求が通せるんだ。互いが互いのことをわかってる…
なんとも理想的な、仲睦ましい男女じゃないか。」

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「あ、あのねえキョン。さっき言った好きってのは友達としての好き、つまりlikeだよ。」

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「…そうか。消えて何か思ったりしたか?」
「いや、特別には。今までが大した能力じゃなかったからね。
そもそも、閉鎖空間が存在してるだけのそれを能力と言えたかどうかも怪しい。
大体そんなところではあるけど。敢えて言うならば、なくなって少し不安だったかな。」

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「怖かった。君との接点がなくなるのが…怖かったんだ。」

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…なるほど。冷静に回想してみて、なんとなくわかった。佐々木が…俺のことをどう考えていてくれたか。
そして、これから俺とどういう関係でいたいのかってのがな。接点が切れてしまった今どうするのか?
その解決法はあまりに単純だった。

「…佐々木。」

俺は思ったことを素直に口に出す。

「なければ…作ればいいんじゃないか?」
「え?」
「接点をだ。」

佐々木はわけがわからないといった顔をしている。まあ、それも当然だろう。俺がお前の立場だったとしても、
そりゃ頭を抱え込むさ。昔、誰かさんとそういうやり取りがあったから尚更そう確信できる。

「接点って…どういうことだい??」
「どういうことって…お前が今日、俺に散々言ってたことだろう?…まあ、わからんようならストレートに言ってやる。」

一息つき、俺は言い放った。

「たった今から俺とお前は正式に『親友』とする。一方的なもんじゃなく、互いがそれを認め合う仲だ。
それは…これからもずっとだ。どうだ?これで接点ができただろう?お前が不安がる心配なんか、
どこにもなかったんだよ。」

……

「くっくっ…アッハッハッハ!!」

それまでの重い空気を吹き飛ばすかのごとく、緊張の糸でも切れてしまったのか…佐々木は笑い出した。

「おいおい、何も笑うことはないだろう?」
「いや、この状況で笑うなってほうが無理だよ…!くっくっく…というか、
まさか君が真顔でそんなセリフ言うなんてね…!夢にも思わなかったよ…!」
「……」

俺の真顔というのは、それはそれはシリアスとは程遠いらしい。…地味に傷つきましたよ佐々木さん。

「…で、面白かったのはわかったから、結局お前はどうなんだ?『親友』になるのかならないのか?」
「おお、怖い怖い。まるで『イエスかノーか』で英軍司令官アーサー・パーシバル中将相手に
降伏勧告を迫ったマレーの虎、山下奉文大将そのものだね。いや、マレー作戦時においては
彼の階級はまだ中将だったから、山下中将と呼んだ方が適切なのかな?」
「…ぶっとんだ例えで俺を幻惑するのはやめてください…。」
「くっくっく、ゴメンゴメン、ついノリで。」

ノリであんな例えを即座に思いついたのか!?

「もちろん、答えはYesだよ。正直、キョンに面と向かって言われたのにはびっくりしたけど…
でも、僕はそれを聞けて本当に嬉しかった。冗談じゃなくね。だからキョン、ありがとう。」
「…お、おう。」

こっちこそ、面と向かって礼を言われるとは思わんかったぞ?いかんな…こういう場面は恥ずかしくなる。
などと思ってた矢先



…?



佐々木はいつもと変わらないニコやかな表情をしていた。…気のせいか?
一瞬表情に陰りが生じたように見えたんだが…

「あれ?あんなところに涼宮さんが。」





現実に引き戻された。





「ハ、ハルヒだと!!?」

俺はパニックになった。いや、決して佐々木とやましいことをしてるわけじゃないが、このタイミングで
鉢合わせはいろいろとマズすぎる…!?というか、なぜここにハルヒが!?どうして!?Why!?
佐々木が向けていた視線の先…もはや何も考える気は起きなかった。俺はただただ一目散に振り返った。

……

「なあ、佐々木…」
「何だい?キョン。」
「ハルヒなんてどこにもいないんだが…」
「軽いジョークさ。」
「……」

俺は考えることをやめた。

「ゴメンねキョン。つい魔が差しちゃった。」
「魔が差したってお前…いや、もういい。」

俺はテーブルにうつ伏せた。もはや語ることなど何もない。
というか佐々木よ、まさかこの局面でからかってくるとは、よもや思わなかったぞ…??
俺の心臓はというと、いまだバクバク波を打っていた。お前のその『魔が差した』とかいう
刑事史上最低最悪の動機で、俺がショック死という最低最悪の死を遂げそうだったというこの客観的事実ッ!!
原因と結果のあまりの落差に目眩がしてきた。…マジで、いきなりハルヒの名前を出すような真似は
やめてほしい。切実に、本当に切実にそう思った。寿命が10年は縮まったのは言うまでもない。
ということは、これを後6回くらいやられたら、俺は死ぬのだろうか?

佐々木の顔色が一瞬だが悪かったような…とかいう昔のことは、今となってはもはや忘却の彼方だった。

「ところでキョン、話は戻るけど…」

戻るも何もお前がとばしたんだがな…それも1歩どころか別次元へ。

「戻るって…どこまでだ??」
「さっきのお礼の続きからだよ。」

ああ、マジメな話をしてたあの頃か。ひどく懐かしく感じる。

「『ありがとう。』と言ったのはもちろん本心だったんだけど…君にはもう1つ言うべきことがあったんだ。」
「…何だ?言っとくけどな、さっきみたいな不意打ちはもうナシだぜ??」
「大丈夫。もう変なことは言わないよ。」

一息つき、覚悟を決めたかのごとく俺に視線を合わせ、そしてヤツはこう言い放った。

「キョンは…涼宮さんとくっつくべきだ。」
「……」

……

さっき変なことは言わないって言いませんでしたっけ?人間不信に陥りそうなんですが…

「…とりあえず聞いていいか?くっつくってどういうこと?」
「付き合うってことさ。」

さらりと言ってのけた。

……

これが…さっきの話の続き?ちょっと待て。一体どこがどこに繋がってんの??互いを親友だと
確認したまでは覚えてる。それに対し、佐々木が俺に伝えたかったこと…それが『ありがとう。』のお礼、
そしてさっきの『キョンは…涼宮さんとくっつくべきだ。』の台詞。なるほど、よく考えたら繋がってるように…











ダメだどう考えたって見えない

「あのなぁ…前後関係が全く見えないんだが!?どうしてそこでハルヒが出てくる!?」
「…なるほど、君はやっぱり気付いてなかったんだね。キョンが…あの場面で強く『親友』という
ワードを強調したこと。とっさに出てきた言葉が『親友』だったこと…それが全てというわけさ。」
「??」
「親友というのはね、辞書には載ってないだけでもう1つ意味があるんだよ。
まあ、わからないならわからないでいい。君は…知らなくてもいいことさ。」

やはりというか、やはり意味がわからなかった。ちょっと気になるところではあるが…まあ、本人が知らなくても
いいって言ってるなら別段気にする必要もないか、といった具合で俺の中で、それは完結したのである。

……

どこか遠くに視線をずらしたかと思うと、再びこちらに向き直る佐々木。

「…君だって満更じゃないはずだ。涼宮さんのことが…好きなんだろう?」
「……」

……

「…ああ。」

気付けばそう答えてしまっていた。肯定するのは少し恥ずかしかったが…しかし後悔はしてない。
そもそもの自覚は…第三世界終焉の地だったか。その思いを昨日、俺は確かに【ハルヒ】に伝えた。
その思いに偽りはなかった。

「…なるほどね。君の口からそれを聞けてよかった…ともなれば、後はタイミングだ。
涼宮さんも、キョンのことは好きに違いないからね。付き合う前からすでに相思相愛だなんて…
もはや幸せな未来しか見えないな!いやー、実に羨ましい限りだね?キョン。」
「…勝手に決めつけられても困るんだが?なぜそう根拠もなしに
ハルヒが俺のこと好きだって断定できるのか…その自信の在りかを知りたいもんだね。」
「じゃあキョン、君と涼宮さん以外のSOS団のメンバーにそれを聞いてみてごらん?
きっと僕と同じ回答をするだろうからさ。」
「いや、そんなバカな話が…」

あった。

「くっくっくっ、これで当事者を除いて満場一致だね。
そういうわけで、つまりは君たちの仲をみんな応援してるんだよ。
…僕も含めて。だから、後は君が一歩踏み出せばそれでフィナーレということさ。頑張ってねキョン!」
「そんなお前、他人事みたいに…」

……

しかし、応援されてるってのは、少なくとも悪い気分ではない。
みんなが俺たちのことを祝福してくれてる…実感こそなかったが、実はこれって凄く幸せなことなんじゃ…?
と心地よい感傷に浸ってたところに佐々木が一言。

「あ、キョン。後5分で9時だよ。」

…佐々木よ。お前、本当なりふり構わずだな?こんなときまで俺をからかおうってか?
さすがにその手はもう喰わんわ…俺にも一応学習能力はある。で、俺はもう少しこの感傷に浸っていたい。

「信じてないって顔だね…くっくっくっ、まあ、それならそれでいい。
ただ、僕が現代に生きるイソップ物語の体現者になるというだけさ。」
「……」

凄まじく嫌な予感がした俺は、自分の携帯で時刻を確認した。

「8時…56分!?」
「あちゃー、どうやらこうやって話してるうちに1分経っちゃったみたいだね。どうするのキョン?」
「どうするって…帰るに決まってるだろう!?」

















そういうわけで、急いで勘定を済ませた俺たちは直ちに店外へ出たというわけさ。
…12月の夜ということもあって肌寒かったのは言うまでもない。こっちの意味でも早く帰る必要がありそうだ。

「で、後3分で9時だけど。」
「あのな…常識的に考えて間に合うわけがないだろ…!?死のカウントダウンのごとく
時を宣告すんのはやめてくれ…それより、お前だって門限は9時なはずじゃなかったか??」
「確かに。けど言ったよね?今日は両親がいないって。だから、今日に限ってはそれは通用しないのさ。」

ああ、そうですか。だからお前は余裕もって笑顔でカウントしてたんだな。納得したよ。
しかし…どうせ間に合わないのなら焦るのもバカらしくなってきた。もちろん、早く帰るに越したことはないが…

「佐々木、帰りは送っていかなくていいか?」

かなり暗くなってたんで、一応気になった。

「いや、心配は無用だよ。明るいところを通って帰るからね。
その好意だけ受け取っておくよ。…それに、今日は1人で帰りたい気分なんだ。」
「…そうか。ま、それならいいんだけどな。」
「ところで…キョン。体のほうは大丈夫なのかい?明日学校行ける?」
「ん?ああ…そうだな。」

いつからだろうか。体の倦怠感はすっかり取れてしまっていた。死に体になってた食事前が
嘘みたいなこの感覚。人間の体はうまい具合にできてると聞いたことあるが、それがまさにこれってやつか。

「いつのまにか回復してたらしい。学校にも行けそうだ。」
「そうか…それはよかった。確かに、今は元気そのものと言っていいくらい生き生きとしてる感はあるよ。」
「これも全てはオクラ牛丼特盛りのおかげだな。食べもんの力は偉大だ。」
「おいおい…ここはお世辞でも『佐々木が一緒にいてくれたおかげだ』って言う場面じゃないかな?」
「ははは、そう呆れなさんなって。今のは冗談だ冗談!もちろん、お前にだって感謝してるんだぜ?」
「…別の意味でまた呆れたよ。随分とまあ、してやったり顔だね。よもや君が僕にそんなことを言うとは…。」
「『親友』…だからな。これくらいの言葉のキャッチボール、お前からすりゃまだ全然遊び足りねーだろ?
これからもいろんな種類、試していけたらいいよな?」
「…キョン。まったくもう、君ってやつは。仕方のない人だ。」

そう言いながらも、そんな佐々木の顔は…とても笑顔に富んでいたように思えた。
俺の他愛ない言葉一つで楽しんでくれるなら…俺はそれで満足だ。

「ちなみに、それはデッドボールも可なのかな?」

そして、笑顔で何を言い出すんだ?このお方は。

「お前の言うデッドボールって、一体…?」
「うーん、暴言とかその類かな。」
「全力で断る!!そんなのハルヒだけで十分だッ!!」

佐々木に『バカ』とか『死ね』とか言われた日にゃ全力で泣く。いや、マジで。

「ほう…なるほどね。デッドボールは恋人だけの特権というわけだ?
まったく、そこまで涼宮さんを特別視するなんて、君の熱の入れようにはあっぱれだよ。」

ヤツはこれを本気で言ってるのか…
それとも、すでに俺の反応を伺う変化球タイムに突入してしまってるのか…
今の俺には判断のしようもなかった。これからも親友を続けていればいつかは…
こういった差異も見抜けられるようになるのだろうか?ふと、そんなことを思った。

……

「…羨ましいな。」

「?何か言ったか?」

「くっくっく。なぁに、ただの独り言だよ。キョン。」

 

  

 


Fin


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