長門から借りた本。
さすがに児童向けとあって、ページもそこそこ、字もでかくフリガナがふってある。
俺はサクサクと読み進めた。
内容は決して哲学的な小難しいものではなく、甘酸っぱい『恋』の物語だった。
主人公は宇宙人の女の子。
地球人の生態を観察するために地球に潜入し、地球人の小学生として生活を送る。
そして、そこで同じクラスの男の子に恋をするのだ。
最初は、自分とは違う存在である男の子に対する『自分の思い』に戸惑い、正体がバレたらせっかく仲良くなれたのに嫌われてしまうのではないかと悩み、言い出せずにいる。
でも、いつまでも嘘をついていたくない。本当の自分を知ってもらいたい。そう決心して、ある日、全てを打ち明ける。
怒られるのではないか、嫌われてしまうのではないか。不安だった女の子にかけられた言葉は、とても優しいものだった。
「君が宇宙人でもいい。僕は、君が君ならいいんだ」
…。
読み終わって一息つく。
男の子の台詞。
まったく俺の言ったことと同じだ。そうとう臭い台詞を言ったらしいな、俺は。
天井を眺める。
長門はこの本を読んで、自分と重ねていたのかも知れない。
そういえば長門の好きなキャラクターであるギロ○伍○も、宇宙人でありながら地球人の女の子に恋をしていた。
電気を消し、ふとんに潜り込む。
地球人に恋…?
…ハハ……まさかな。
俺は目を閉じた。
これからハルヒを取り巻いて、とんでもないことに巻き込まれるかもしれない。
だが、俺に知るよしもない。
どうにかなるさ。
それよりも、明日。
この本の感想を伝えなきゃならんな。
どう言ったら長門は喜ぶのだろう。
俺はベッドに入りながらも、そんなことを考えて、頭を冴えさせていた。
寝れん。
END