1章-1

 


話は先週の土曜日に遡る。あたし率いるSOS団はいつもの不思議探索を中止して地元の街から少し離れた田舎へやって来ていた。理由は至極簡単。美味しい果物が食べたかったから。それだけ。
前日の昼休み、誰かの弁当箱にリンゴが入っていたのを見て先述の思考に至ったあたしの脳はすぐさま部室へと足を向かわせ、到着と同時にパソコンを立ち上げさせたのだ。すぐさまネットに繋いで簡単に検索してみると意外にもかなりの数がヒットする。

そこからはもう早かった。ものの数回クリック音を響かせるだけであっという間に近くの農園で果物狩りができるのを確認し、更に数分経てばいつかのバスセンターから先述の農園まで乗り換えなく行けることも判明していたのだった。後はそれを紙にまとめてパソコンのお役は御免となる。


それから数時間後の団活時。そのイベントを盛大に発表した時は四者四様思い通りの反応が返って来た。

 

「なるほど、さすがは涼宮さんです」
「楽しそうですねぇ…。あ、お弁当は任せて下さい!」
「……」
「また急だな…。ま、何処を転がっているかも分からない不思議を無闇に探し回るよりはマシか。木の枝や土の中に間違いなくお宝は実っているだろうからな。お前にしちゃ上出来な思想だよ」

 

キョン…それ褒めてるつもり? でもまあいいわ。遅刻厳禁だからねっ!!

…そんなやりとりから一晩を挟んであたし達は目的の農園の中をうろついていた。もちろん五人で。

 

 

「朝比奈さん、それ持ちますよ」

 

キョンが言いだした提案にあたしは反応した。別に口を挟むつもりは無かったのだが、何となく目が行ったのだ。

 

「ええ? いいですよぉ…。これはわたしの仕事ですから……」

 

舌っ足らずな甘い声で人数分の昼食を持った我が団のマスコットがその申し出を拒む。

 

「そんなこと言わずに。ただでさえ大食らいな集団の昼飯を全部一人で作ってきてもらってるのに、これで持たせっぱなしだった

ら男じゃないですよ。なあ古泉」

 

キョンは同性の副団長に同意を求める。

 

「そうですね。僕も思いつかずに申し訳ありませんでした」

「で…でもぉ……」

 

我が団のマスコットはその申し出に答えるのが余程申し訳ないのか、こちらをチラチラ見て助けを求めているようだ。

 

「みくるちゃん、遠慮せずに持たせなさい!あなたは副々団長なんだから雑用のキョンが荷物を持つのは当然よ!」

ふえぇ~…と更に顔を顰めるマスコット。その困った顔に更に追い打ちをかける。

 

「ほら早くしなさい!そのか細い腕が太くなる前に!」

 

そう言い終るか終らないかの内に、大きな大きな荷物はマスコットの手からキョンが奪い去ってしまっていた。

 

「団長命令みたいなので俺が持ちますね。それに、ハルヒの言うことも尤もですよ。朝比奈さんの腕がボディービルダーみたいに

 

なったら俺は全校の男子生徒から体育館裏に呼び出されちまうことになるんで」
そう言ってマスコットに微笑みかけるキョン。


「じゃ…じゃあお願いしますね。キョン君、古泉君、ありがとうございます」

 

二人に微笑み返すマスコット。軽く礼で返して歩き出す二人。なんだかとても微笑ましい光景にすっかり心が綻んだ。

 

「キョン、つまみ食いしちゃダメよ!ちゃんと見張ってるんだから!みくるちゃんのお弁当を一番最初に食べられるのは団長の特権なんだからねっ!」
「分かってるって、団長様」

 

いつも通り眉を八の字に変えて「やれやれ」と呟くキョン。

 

「でもね…」

 

全員の視線があたしに集まる。

 

「女性に気を遣えるのはいいことよ。なかなかいい心掛けじゃない!」

今後も精進しなさい、と続けたあたしに四者四様の視線が浴びせられる。案の定な視線ばかりではあったが。

 

 

赤色エピローグ 1章-2


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