他の方のSSを拝見していると、話の間に区切りのような横線が貼ってあったりしてますが・・・・・・あれってどうやるんだろう? 人に聞くのは今更という感じがするので言い出しにくい・・・・・・。

 

「古泉くんの平穏」

 

ちょうど北校の朝会が終わり、キョン達が教室で会長の評価をしていた頃・・・コンテナが無造作に並べられた隣町の港にて。


銃というのは、本当に恐ろしい武器ですね。気に入らない相手に標準を合わせ、引き金を引く、これだけで相手の命を奪うことが出来るの

ですから。目の前にいる男の命も、僕の人差し指に懸かっていると思うと・・・これはちょっとした恐怖ですよ。

 

バァン!


・・・・・・今のは、僕じゃありませんよ。
「油断は禁物よ。古泉」
僕の左手側からそんな言葉が聞こえる。振り返ると、銃口をこちらに向けた森さんの凛々しい姿がありました。
僕「わかってましたよ。背後から誰かが僕を狙っていたことくらい、この人の表情に余裕がありましたからね」
恐らく僕の後ろでは、この男の仲間が血を流して倒れているのでしょうね。男の顔から一気に余裕が無くなったかと思えば、無謀にも隠し

持っていたナイフを手に取って突っ込んでくる。残念ながら、隠しナイフには二度も引っ掛かりませんよ。


バァン!


人の命は、人差し指を動かすだけで消えてしまうほど脆いものなんですかね?
森「ここは片付いたわ。次は新川達がいるポイントへ急ぎましょう」
僕「それなら、僕らが行く必要は無いと思いますが?」
森「そういうわけにはいかない。目標があそこにいるのは確実だから」
僕「新川さんはプロです。それに加えて一個小隊に匹敵する数の同僚達を相手に、ターゲットが生き延びられるでしょうか?」
森「・・・・・・随分と不機嫌ね」
僕「・・・・・・」
森「確か、今日は始業式だったかしら? あなたが気分を害する気持ちはわかるけど、今は気を引き締めないと危ないわよ」
僕「わかってますよ」
僕達は弾を装填して新川さんのいるポイントへ向かった。

わかってますよ。自分がどんな存在で、どんな職業に就いているのかくらいわかってます。だけど、こんな日に僕を呼び出さなくても・・・・・・。
司令「不服なのかね? 一樹くん」
数刻前に司令が僕に言った言葉が頭に浮かんでくる。
僕「なんのことでしょう?」
司令「顔を見ればわかる。君の学校は今日、始業式だったな。どうりで娘が久しぶりに制服姿だったわけだ」
僕「・・・・・・」
司令「君が普通の高校生なら、今頃は教室で久々に再開した友人達と雑談でもしているはずだったろうな。だが、そうはいかない。何故な

ら君は普通ではない。事件が起きればそれに立ち向かわなければならんし、奴らが現れればそれを駆逐しなければならない」
僕「それを自覚させる為に、わざわざ僕を呼び出したのですか?」
司令「そう思ってくれても構わない。今の君は平穏な生活に慣れすぎて、自分がどんな存在なのかを忘れている・・・そんな気がするからな。勘違いしないでもらいたいが、マフィア共が今日を取引の日として選んだのは偶然だよ」
僕「・・・・・・」
司令「良いかね? 君の使命は、この平穏な世界を守ることだ。我々が戦うからこそ、君の友人や私の娘が平和に暮らせる。かつて君の父

親が君を守る為に戦っていたのと同じようにね。もっとこの仕事に誇りを持ちたまえ、一樹くん」

銃声がコンテナに反響してあちこちから響いてくる。どうやら仲間達が頑張っているみたいですね。おっと、前方に三人。みんな黒いスーツに黒いサングラスを着けているせいか、同じ顔に見えてしまいますよ。三人共、並んでこちらに真っ直ぐ発砲してくる。
森「単純ね」
僕と森さんは瞬時に左右に分かれて弾を避けると、森さんが左側の男を、僕が右側の男を撃つ。相手はどちらも頭から血を噴出して倒れた

。森さんは残った真ん中の男が動揺している隙を逃さず、すぐさまその頭に銃弾を浴びせる。
僕「相変わらず容赦ないですね・・・・・・」
あまり一息吐く暇も無く、背後から殺気を感じて振り返る。今度は二人ですか。申し訳ありませんが、今日の僕は虫の居所が悪いんですよ

。そっちがその気なら容赦はしません。生身の人間でも、犯罪者に同情の余地はありませんからね。
このようにして僕達二人は次々とマフィアを駆逐していった。マフィアと言うからどんなものかと思えば・・・これでは本気を出すまでもないでしょう。
僕「もうそろそろ、新川さん達がケリをつけていても良い頃合ですね」
森「どうかしら? なんせ相手は一個小隊分の戦力をも凌駕する可能性が・・・・・・」


バァアアアアアアアアアン!!!

 

僕「!!?」
森「・・・・・・」
文字にするとチンケな表現になってしまいますが、その爆発音は僕の耳を五秒くらい麻痺させるには十分でした。
森「急ぎましょう!」
僕「はい!」
ここからでも確認出来るくらいの大きな硝煙が立ち昇っている場所へ走る。あそこへ近付けば近付く程、息苦しくなってくるのは気のせい

でしょうか? 森さんもそれに気付いたらしく、僕達はすぐにダース○イダーを彷彿とさせるデザインの酸素マスクを装備した。
今までゲームの雑魚キャラクターのように出てきていたマフィア達の姿も見えなくなったせいか、現場に到着するのは容易でした。
僕「これは・・・・・・」
地面とコンテナが、まるで溶岩に直撃したかのように溶けている・・・・・・。
僕「爆弾?」
森「本部。至急、救護班をこっちに転送して!」
巻き添えを食らって負傷した仲間達が数人・・・その中に新川さんの姿もあった。
僕「大丈夫ですか!?」
新川「私は・・・大丈夫だ。それよりも・・・他の者達を頼む」
森「地雷でも仕掛けてきたの?」
新川「いや、これは強力なナパーム弾の一種だ。避けるのが遅れていたら、恐らく私も・・・・・・」
新川さんは爆炎に巻き込まれた同僚に目を向けた。ナパーム弾とは、900~1200度という高温の炎によって相手を焼き尽くす、焼夷弾系の爆弾。その残虐性から、殆どの国で使用が禁止されている武器なのですが・・・・・・なるほど、マフィアは考えることが違う。
僕「目標は?」
新川「恐らく、もうここにはいないだろう」
森「作戦失敗か・・・・・・」

 

コンピューターYUKIの治療によって、新川さんや数名の同僚が助かりましたが・・・その数は死傷者に比べて少数でした。
司令「今回の作戦では大勢の同胞が犠牲になってしまった」
僕「・・・・・・」
司令「最近はあそこまでの規模を誇る事件は無かった。恐らく、彼らも油断していたのだろう。その結果がこの有様だ」
彼ら・・・も・・・ですか。
司令「事態は今後、危険度中~大に値するものになる可能性がある。目標はYUKIが捜索中だが、命を狙われていることを知ったマフィ

ア共が今度は我々に牙を向けてくるかもしれん。近々、また呼び出されることを覚悟しておいてほしい。わかったな?」
僕「・・・・・・はい」
司令「では、もう下がってくれたまえ。私はこれから被害者の家族に色々と報告せねばならんからな」


森「まさか、もう少し駆けつけるのが早ければ同僚の命は助かったかも・・・なんて思ってないでしょうね」
僕「そこまで自惚れてはいませんよ。あのときに間に合っていたとしても、結果は変わらなかったでしょう」
森「それなら・・・何故そんな暗い顔してるの?」
僕「・・・・・・今日、目の前で彼らが死んでいくのを見て、思ったんです。今まで高校生として過ごしてきた平穏な世界。でも、その世界は彼らのような人間達の犠牲の上に成り立っているものなんだってね。平穏な日常に慣れすぎて自分がどんな存在なのか忘れていた・・・まったくもって、司令の言うとおりです」
森「・・・・・・」
僕「僕達が何とかしなければ、確実にあの世界は崩壊するでしょう。世界の表と裏を知る者として、我侭なんて言ってられない。これからは僕も作戦に参加させてもらいます。父や死んでいった仲間達が守ろうとした世界を崩壊させたくはありませんからね」
森「そう・・・」


森「家まで送ってあげるわ。今日はあなたも疲れたでしょう?」
僕「え・・・いいですよ別に。なんのお構いも出来ませんから」
森「なにを勘違いしてるのか知らないけど、私は転送機で送ってあげるって言ったの」
僕「あ・・・そうでしたか」
転送機のおかげで、家は文字通り目の前。もう学校は終わった頃でしょうね。今日は森さんの言うとおり、ちょっと疲れました。んふっ、これからはこの疲れすら慣れてしまうくらいに頑張らなくてはいけませんね。
キョン「んん?」
谷口「!?」
国木田「ケホッ?」
僕「・・・・・・え?」
な・・・なんで彼らがここに? いや、彼らからすれば風邪を引いている筈の僕がここに立っているのが不思議なことなんでしょうね。疲れているとは言え、顔色もそこまで悪くはないでしょうし・・・どうしたら良いんでしょうか。ああ・・・仮病で学校を休んだ人の気持ちがわかったような気がします。
僕「えっと・・・」
谷口「ストップ!」
僕「!!?」
谷口「当ててやろう。ん~と・・・わかった!」
僕「え?」
谷口「冬休み中に付き合ってた女の子に別れを告げられたショックで休んでいたんだろ? まさに恋の病ってやつだな」
国木田「谷口じゃあるまいし、彼に限ってそんなことありえないと思うよ」
谷口「んなっ!? じゃあ、お前当ててみろよ!」
国木田「そうだね~きっと全身からスパゲティが生えてくる夢でも見て気分が悪くなっちゃったんだよ。コホッ!」
キョン「お前じゃあるまいし、こいつに限ってそんな夢見るわけないだろ」
国木田「え~? じゃあ、当ててみてよ」
キョン「そうだな・・・校長の長話を聞かされるのが億劫だったんじゃないのか?」
谷口「ああっ! あれか! ホントにあの校長の長話ったらたまんないよな! 立ちっぱなしにさせられてる生徒の身にもなれっての!」
僕「いや、あの・・・」
谷口「まあ、理由なんてどうでもいいさ。ほれ、今日のプリント」
・・・・・・なるほど、プリントを届けに来てくれたんですね。そのうえ休んだ理由も聞かないでいてくれるとは。
僕「ありがとうございます」
谷口「おうっ!」
キョン「そんじゃあ、帰るとするか」
国木田「また明日ね、古泉くん」
僕「・・・・・・」
再び司令の言葉を思い出す。
司令「良いかね? 君の使命は、この平穏な世界を守ることだ。我々が戦うからこそ、君の友人や私の娘が平和に暮らせる。かつて君の父

親が君を守る為に戦っていたのと同じようにね。もっとこの仕事に誇りを持ちたまえ、一樹くん」
僕達の使命は、この世界を守ること。そしてこの世界に住む彼らを守ること。今日、犠牲になった人達も家族の住む世界の為に戦っていた

。自分を迎えてくれる家族の待つ場所、自分の帰る場所、心休まる場所を、守る為に。僕には家族はいない。自分の家の中にも待っていて

くれる人はいない。その代わり、僕なんかの為にプリントを届けてくれる人達がいた。家族ではないけど、彼らと一緒にいると心が休まる・・・そんな気がするんです。
僕「あの・・・」
谷&キ&国「ん?」
僕「家に上がっていきませんか? プリントを届けてくれたお礼に紅茶をご馳走させてください」

 

森「ふふ、なんのお構いも出来ないんじゃなかったのかしら? ・・・・・・私としては、あなたにもう少し普通の高校生として生きてほしいと思っているのだけどね。古泉」

終わり

前回同様、今度は森さんと新川さんの口調がわからない(笑)


「プロローグ」

県立北高校・・・通称北高は小高い山の上に存在している。その為、北高に通う生徒達は北高名物、心臓破りの坂と呼ばれる道を通らなければならない。今、その坂道をほぼ無表情に近い顔で歩いている少年がいた。
「キョン!」
キョン・・・それはその少年に付けられた渾名である。正直、本人はその名で呼ばれるのをあまり好まないが・・・最近ではそう呼ばれると思わず振り返ってしまうほどに馴染んでしまった。
キョン「おう、谷口か」
彼の後ろから谷口と呼ばれた、今どきオールバックという珍しい髪型をした少年が駆け寄ってくる。
谷口「ふう・・・さすがにこの坂道にも慣れてきたな」
キョン「まあ、もうすぐ一年経つしな」
谷口「ところでよ、昨日のニュース見たか?」
キョン「ニュース?」
谷口「隣町の港に隕石が落ちてきたってやつだよ」
キョン「ああ、あれのことか」
そのニュースなら、人気アイドルの引退やら政治問題に興味の無い彼でも知っている。もっとも、それは携帯電話という小さな端末内で出会った友人達のおかげではあるが・・・・・・。


立花「昨日の正午、〇〇市のコンテナ港に隕石落下!? 現場にあったコンテナがまるで溶岩に直撃したかのように溶けていて、付近にいた漁師達も大きな爆発音を聞いたらしいです!」
蘇芳「宇宙人?」
ジョン・スミス「それはないだろ・・・・・・」
笹の葉「面白そうなニュースだね。しかもここ、僕達が住んでる所の隣町じゃないか」


正直、キョンにとっては隣町に隕石が落ちた事なんてどうでもいい事だった。
谷口「みんな隕石落下なんて言ってるがよ、俺は違うと思うね。だって実際には何かが当たった痕しかなかったんだろ?」
キョン「ほう、じゃあお前は何があったと思ってるんだ?」
もちろん、これは事件の真相に興味があるわけではなく、この友人がどんな意見を述べてくるのかに興味があるだけ。
谷口「あれだ、極道同士の戦争だよ。よく映画とかでマシンガン持って戦ったりするだろ? あの焼け跡はきっとそいつらが投げた爆弾なんだよ」
キョン「そりゃ良かったな」
谷口「反応冷たっ!」
そのあとも谷口が仕入れてきた様々な情報を聞いていたが、これといって興味をそそられるような話は無かった。自分に直接関係の無い事件に対して全く興味が持てない。どこかの国で戦争が勃発しようと、国内のどっかで大きな地震が発生しようと、隣町で大火事があっても、それは所詮他人事なのだ。そのようなニュースを見て自分の事のように心配する母親が馬鹿らしいとさえ思っている。会ったこともない誰かさんの事を心配するほど、彼は広い心を持っていない。関心があるのは自分の身の回りで起きる出来事だけ・・・それで充分だ。平和な日常を平和のまま過ごす、それがキョンという少年だった。


「おはようございます」
「おはよう、古泉くん」
古泉と呼ばれた少年は隣の席に座ったクラスメイトに挨拶をした。その顔に乙女の心を誘惑する成分が含まれているに違いない、爽やかな笑顔を浮かべている。といっても、挨拶した相手は同姓である為・・・まったくもって意味が無く、本人も別にその笑顔で世の女性を誘惑する気など無い。単に彼が笑えばこの顔になるだけであって、そこには何の意図も存在しない。あえて言うなら、その笑顔を向けるのは彼の処世術・・・癖のような感じなのだ。
古泉「おや? 国木田くん、風邪は治ったのですか?」
昨日会ったときに、国木田と呼ばれた少年の童顔を包み込んでいたマスクが無くなっている。
国木田「うん。もう大丈夫だよ。咳も出なくなったし。君は大丈夫? 風邪、伝染ったりしてない?」
古泉「んふっ、ご安心を。こう見えても体は丈夫な方ですから」
国木田「ふふっ、良かった。ねえ、ひとつ聞いていい?」
古泉「はい? 別に構いませんよ?」
国木田「昨日、どうして休んだの?」
古泉「・・・・・・」
正直、それは答えにくい質問であった。彼の脳裏に、コンテナの陰から銃を向けてくるマフィアの姿が浮かんでくる。そして、冷徹な笑顔を浮かべながら相手を射殺する自分の姿も・・・・・・。
国木田「やっぱりキョンが原因だったりするのかな?」
古泉「はい?」
国木田「この前の遊園地の事だよ。キョンってば、実は気付いていたみたいでさ。こっぴどく怒られちゃったよ。もしかしたら君もキョンに何かされたのかと思ってね」
古泉「あはは、そういうことですか。別に何もされてはいませんよ」
国木田「ふ~ん・・・キョンは昔から怒ると恐いから、次はバレないように気をつけなきゃね」
彼がキョンに抱いている友情を超えた感情。それを手伝ってあげると言ってキューピッド役を買って出た国木田。恐らく遊びのつもりだろうということは古泉にもわかっていたが、この平凡な毎日に退屈しているという国木田の楽しみのひとつになってやれるなら、良いことだと思う。これもまた、友人の日常を守っているという事に違い無いのだから。この世界を蝕んでいこうとする存在・・・・・・彼や、彼のバイト仲間達がそれと戦うことによってこの世界が平和でいられると言うのなら、とても誇らしいことではないか。平和な日常を守る為に戦う、それが古泉という少年だった。


谷口「そしたらよ、親父の奴が猛反対。ちくしょう! バイクの免許を取るくらい別に良いじゃねえかよ」
キョン「親父さんはお前のことが心配なんだろ」
谷口「あのな、昔からよく言うだろ? 獅子は子を崖から突き落とし、自力で這い上がってきた奴を我が子と認めたってな。うちの頑固親父も、いい加減自分の息子を束縛しないでもらいたいぜ」
キョン「崖から突き落としてほしいのか?」
谷口「それは違~う! まあいいや、ところで・・・・・・」
谷口は喋り続けた。話題作りの為に仕入れてきた情報や、自分の体験談を休む間もなく話し続ける。彼はあまり沈黙というものが好きじゃない。だからそうすることによってその場を盛り上げたかったのだ。彼にとって残念なのは、話し相手が傍目から見るとクールで自分に関係ないことには無関心なキョンであることだ。この男は自分の言葉がどこまで耳に入っているのかが、その表情から読み取りにくい。そして聞いてないのかと思えば突然ツッコミを入れたり、手が飛んできたりするから油断出来ない。昔からつるんでいた友人はみんな谷口と性格が似てるタイプだったせいか、彼の話題に同調し、一緒に笑ってくれる奴ばかりだった。だが、今の友人達は一味違う。さっきも言ったようにクール&無関心なキョン、小悪魔な国木田、見るからに優等生っぽい古泉。正直、谷口にとっては扱いにくい連中ばかりだ。
谷口「少し前の話だけどよ、俺が病気で保健室行ったことあったろ?」
キョン「ああ」
谷口「そしたら保健の先生がすっごい美人さんでよ!」
キョン「マジかよ?」
谷口「俺の美的ランクAAA間違い無し! そんな人が俺の為に熱心に診察してくれてさ、あれはもう天国だったぜ・・・・・・」
キョン「そのままホントの天国に行っちまえば良かったものを・・・・・・羨ましい!」
谷口「嫉妬は良くないな~キョンくん。なんなら今日にでも保健室行ってみるか? ちょうど現在進行形で病気してる国木田の付き添いって事でよ」
キョン「お前にしては良い案だな。早速、国木田に交渉しようぜ」
さすがにキョンも男ということか。谷口としては自分の話題に他の奴を・・・特に自分とは違うタイプの奴を同調させることに成功して満足だった。別に相手を支配したいとかリーダーになりたいとは思っていない。ただ、他人と会話がしたい・・・それだけだ。他人の存在があるからこそ毎日が楽しい。彼にとっては世界が平和だろうとそうじゃなかろうと、話相手がいてくれればそれで充分だ。平和な日常を友人と一緒に過ごしたい、それが谷口という少年だった。


国木田「なるほどね、僕をダシにしてその先生とお近づきになりたいのか。でも残念・・・今の僕は宇宙人でも未来人でも病人でも無い、ただの国木田に戻ってしまったよ」
谷口「なんだよ~!」
国木田「うわあ・・・風邪治ったのに落胆されるなんて生まれて初めてだよ」
と言いつつ、国木田自身もあと一日くらい病人でいた方が面白かったかも・・・と思っていた。昨日までは咳が酷くて寝ることさえ出来ず、早く治まってほしかったのだが・・・・・・いざ治ったら今度はつまらなくなった。物事を楽しむ為には自分も何かを引き換えにする必要があると考えている彼にとっては、当然の感情なのかもしれない。
キョン「今からでも遅くはない、冬のプールに飛び込んでぶり返してこい!」
国木田「そんなの無茶だよ」
キョン「やらないで後悔するよりやって後悔した方が良いだろ?」
国木田「やって後悔するのって確実に僕だけだよね?」
キョン「その代わり得もするだろう。美人の先生の診察を受けられるんだぞ?」
国木田「う~ん・・・・・・」
古泉「あの、そこは悩むとこでしょうか?」
谷口「古泉がツッコむなんて珍しいな」
古泉「また風邪を引かせるなんて国木田くんが可哀想ですよ。寒いし、プールだって汚れてます」
キョン「冗談だよ。仕方ない、帰りにでも覗きに行くか」
予鈴が鳴った。キョンも谷口も自分の席へ戻り、教室に担任の岡部先生が入ってくる。
阪中「起立、礼」
昨年の春に転校した朝倉さんの跡を継ぐ形でクラス委員になった阪中さんの号令で、クラスのみんなが朝の挨拶をする。ここまでは、いつもと同じ・・・変わることのない流れだ。変わり映えのない日常に退屈している彼にとって幸いだったのは、授業というものが日々、新しい情報を与えてくれるという事と、日常を変える力のない自分に様々な体験をさせてくれる友人達がいる事だ。谷口がいなければ、ナンパなんてすることも無かった。古泉がいなければ、キューピッド役なんて出来なかった。キョンがいなければ、他人に関心を持つ事さえしなかった。どんなに退屈な世界でも、誰かのおかげで楽しくなるのなら喜んでついていこう。平和な日常を他人に巻き込まれる事で楽しむ、それが国木田という少年だった。


~谷口~


はは、チャンスってのはいつ訪れるかわかんないもんだな。それは四時限目の保体の授業中に起きた。
俺「驚天動地シュート!」
古泉「お見事。谷口くんは運動神経高いですね」
俺「おうよ! 運動出来る奴は女にモテる・・・これも俺の経験から知り得た法則だ」
キョン「その運動能力をどうにかして頭の方に振り分ける事は出来ねえのかよ?」
俺「少なくともお前には言われたくない台詞だなぁ! それっ!」
国木田「その運動能力をどうにかして頭の方に振り分ける事は出来ないのかな?」
俺「WWWWWWWWWW」
古泉「その・・・・・・」
俺「お前も言うのかよ!」

今回の保体はバスケ。で、俺達の試合は最後に始まったんだが・・・問題はくじ引きで適当に決めたチーム分け。キョン&古泉&手島&花瀬&垣ノ内VS俺&国木田&榊&豊原&山根。これはあるサイトで作者がうちのクラスメイトを調べて、画像の見た目で判断しただけにすぎないが・・・・・・俺のチーム弱くないか!? なんで俺と国木田以外は眼鏡キャラばっかりなんだよ! そして戦力になりそうな奴って俺と榊ぐらいじゃねーか! 実際、試合が始まって五分、うちのチームは予想通り無得点! 最悪だ!
俺「畜生! せめて一点ぐらいは入れてやらあああああああ!」
じゃないと隣でバレーボールやってる女子達に格好がつかないだろうが!
榊「燃えてる・・・・・・」
古泉「んふっ、そうは行きませんよ?」
この野郎、よけいな邪魔を! 豊原はキョンにマークされてるし・・・ええい! 山根、パスッ! 山根はまるで爆弾でも投げ渡されて迷惑しているような表情を浮かべながらボールを受け取ると、すぐに他の奴にパスしやがった・・・・・・やる気あんのか!? って、なんであいつがあんなとこに? 山根からのパスを受け取ったのは、何故か誰からもマークされておらず、どういうわけか相手のゴール下に突っ立っていた・・・国木田だった。おっしゃあ! 千載一遇のチャンス、入れろ~!


~国木田~


正直に言うとスポーツって苦手なんだよね。こういう球技系の場合は、出来ればボールなんか受け取りたくないんだ。試合が始まって五分間、ずっと花瀬の後ろに隠れて僕はマークされてますよ的な位置を確保して難を逃れていた。ところがぎっちょんってやつで、突然気合を出した谷口が物凄い勢いで突撃してきて、花瀬はそれを止める為に僕から離れていってしまう。お~い、僕を忘れないでよ。そんなに目立たないのだろうか? あ、谷口の前に古泉くんが立ち塞がった。ほらほら、もう大丈夫だから戻っておいでよ花瀬く~ん。そんなことを考えてるうちに谷口はボールを山根に渡す。あれ?


「ボールを入れる自信が無い」原曲、エ〇ーマンが倒せない。作詞、歌、国木田くん。

 

気がついたら、いつの間にかゴール下。僕はすぐに離れ・・・ようとする~! 山根の奴・・・僕に気付いてボールを投げてきた、や~る気あるのかあいつ~!
僕「人のことは言えないけどね」
ボールを受け取った僕に・・・みんなは、期待をしてるけど!
僕「でも・・・」
練習のときに・・・何回やっても・・・シュートが入ったこ~とな~い! そりゃあそうだよ、僕は運動苦手だもん! 後ろに・・・下がって入れようとするけど・・・ダメだ入る気がしない! 敵と谷口が近づいてきた・・・どうしよ緊張高まる! どうしても入れる自信ないから、僕は咄嗟に谷口にボールを投げ渡す~!
谷口「うおっ!? がはあっ!」
顔面直撃~!


~キョン~


鼻から大量出血を起こした谷口は、そのまま保健室へと向かうことになった。うわあ・・・古泉のハンカチが血まみれだぜ。
谷口「なんであそこで俺にボールを投げて来るんだよ! ゴールは目の前だったんだから普通入れるだろ?」
国木田「ごめん、入る自身なくってさ」
俺「でも良かったじゃねえか。念願の保健室へ行けるんだからよ。怪我の功名とはこの事だ」
谷口「つか何でお前ら三人でぞろぞろ付き添って来るんだよ? 一人で充分だろ」
俺「保健の先生の顔を拝む為だ。ちょうどお前が痛みで呻いてるときに授業終わったし」
国木田「僕は一応怪我をさせた張本人だからね。付き添うのは当然でしょ?」
古泉「僕も正直、保健の先生には興味があるので同行させてもらいます(好敵手になるかもしれない人物の情報は必要ですからねぇ)」
谷口「お前ら全員、下心丸見えだっつの! ん?」
「あんな会長の書記なんて大変じゃないのかい? 江美里」
「そんなことありませんよ。ああ見えても優しい人だし・・・あら?」
廊下の向こうから見覚えのある女子が二人、肩を並べて歩いてきた。
古泉「こんにちは、鶴屋さんに喜緑さん」
鶴屋「やあっ! 久しぶりだね~! 古泉くん。あ、一緒にいるのは文化祭の時にうちのメイド喫茶に来てくれたお友達だね? おや? それってもしかして鼻血かい?」
谷口「は・・・はい。バスケで顔面にボールが当たって」
鶴屋「あっちゃ~災難だったね! それで古泉くん達に付き添ってもらってるんだ? みんな良いお友達だね~」
うっ! 今の発言で俺の良心が・・・・・・。
喜緑「ふふっ、それならここで立ち話している場合ではありませんね。行きましょう、鶴屋さん」
鶴屋「そうだね。じゃあ、まったね~!」
喜緑「お大事に」
・・・・・・保健の先生と言い、彼女達や今はいない朝倉と言い、なんでこの学校には美人さんが多いのだろう? 既に谷口と国木田の視線は彼女達に釘付けだ。古泉だけは何故か複雑そうな目で見つめていたが・・・・・・。
俺「ほら、行くぞ」
保健室はもう目の前だった。谷口が扉をノックする。
「どうぞ」
中からそれはもう聞いただけで美人さんだと確信の持てる声が聞こえた。
谷口「失礼しまーす!」
「あら? あなた、この前の・・・・・・」
谷口「はいっ! あのときはホントにお世話になりました! 朝比奈先生」
特盛り!?


~古泉~


油断していました。まさかこの学校にあんな強敵が存在していたとは・・・・・・。
キョン「クソ~! なんだあの美人先生は! 想定の範囲外だぜ! 国木田、今すぐ俺を階段から突き落としてくれ!」
国木田「あの先生に診察されたい気持ちはわかるよ、だが断る! さて、僕ちょっとプールに用事があるからここで・・・・・・」
キョン「ふざけるな! 風邪をぶり返そうだなんてそうはイカの銀魂だ! 古泉、国木田を拘束してくれ!」
僕「了解しました。さ~て、良い子だから大人しくしていましょうね」
国木田「うわあ! ちょっと、どうして子供扱い? というかこの拘束の仕方は問題あると思うよ? 古泉くん」
はい? 相手の両腕を頭の上で交差させて壁に押し付けるという方法に何か問題あるんでしょうか? 独房とかでよく見ると思いますよ?
キョン「確かにお前が国木田にやるには問題あるな・・・それ。じゃあ、急用を思い出したからここで・・・・・・」
僕「おやおや、どこへ行くつもりですか~? 冬のプールは寒いし、汚れているからダメですよ~?」
キョン「構うものか~! 手を放せ古泉~!」
まったく・・・困ったものです。遊園地の件で距離が近づいたと思ったのに、この様ですか。やはり彼女は愛しのキョンくんを惑わす危険な存在だと認識するべきですね。診察に集中出来ないからと言う理由で廊下に追い出されて幸いでした。
朝比奈「廊下は静かに!」
突然、扉を開けた彼女は開口一番、そう言い放った。
キョン「はい! すんません!」
愛しのキョンくんに土下座をさせるとは! ますますもって許せません! ひとつ言っておきますが、原因はあなたなんですよ?
国木田「痛い痛い痛い!」
僕「はっ! すいません!」
国木田「急に強く握り締めるから腕が折れるかと思ったよ。それにしても古泉くんってさ」
僕「はい?」
国木田「純粋に見えて、意外と嫉妬深いよね」
僕「・・・・・・」
朝比奈「それじゃあ谷口くん、お大事に」
谷口「ふあ~い、ありがとございま~す!」


~放課後~


保健室から戻った四人は早々に着替えを済ませる。そしてホームルームが終了したにも関わらず、四人を教室で待っていてくれた岡部先生に挨拶をしてから帰路についた。
谷口「午前授業だと昼飯無いから腹が減るな」
古泉「それは言えてますね。にしても、岡部先生はやはり良い教師ですね」
キョン「ああ、みんなからの評判も高いしな」
国木田「教師の評判と言えば朝比奈先生だっけ? あの人に診察された感想はどうなの? 谷口」
さっきは谷口が嬉しさのあまり放心状態で、感想を聞くに聞けなかったのだ。
谷口「もう俺はいつ死んでも悔いは無いと思ったぜ」
キョン「ええい! 今すぐ死んでしまえ!」
古泉「何か変なことされませんでしたか?」
谷口「お前って案外エロいこと聞くんだな。はあ・・・どうせなら変なことの一つや二つぐらいされたかったぜ」
キョン「そんなことが起こった時には、お前を社会的に抹殺してやる!」
国木田「同感だね。病院送りになるくらいボールを強くぶつけてやれば良かった」
谷口「おやおや、やきもちか? はは、お前には感謝しなくちゃな、国木田。おかげであの人の診察を二回も受けどわあああ!」
思いっきり余所見をして歩いていた谷口は、階段の踊り場に差し掛かったところで向こう側から曲がってきた人影に激突する。
古泉「大丈夫ですか!?」
谷口「舌噛んだ」
「廊下はちゃんと前を見て歩きたまえ」
相手は長身の男性で、やたらと細長い眼鏡が特徴的だった。
国木田「あ、生徒会長」
谷口「ほえっ!?」
古泉以外の全員の脳裏に、昨日の始業式で先公に対する宣戦布告とも取れる演説を行っていた彼の姿が浮かぶ。
生徒会長「・・・・・・」
生徒会長はその視線を全員に向けた。思惑の全てを上昇志向で占めていそうな、若手キャリアを思わせる非情そうな気配をその目つきに感じ、全員が反射的にこの男とは仲良くなれそうにないなと思った。その視線が古泉の前で止まると、何故か唇の端を嫌な感じに動かして、笑みの表情を浮かべる。ただし、冷徹そうな表情自体は変化がなく、
生徒会長「次からは気をつけたまえ。では、失礼する」
そう言ってその場を後にした。
国木田「はあ・・・緊張したね」
谷口「畜生、偉そうにしやがって! 何が「廊下は前を見て歩きたまえ」だ!」
キョン「んな蚊の鳴くような小声で講義してどうする」
国木田「う~ん、気のせいかな?」
キョン「どうした?」
国木田「微かに煙草の匂いがしたような気がする」
古泉「・・・・・・」


谷口「そうだ、今度の休日にカラオケ行かないか? よくCMでやってるボーリングも出来てカラオケも出来る何とやらが近所にオープンしたんだよ」
国木田「ラウンドツーの事? 確かに面白そうだね」
キョン「まあ、暇だったし・・・俺も行くよ」
古泉「僕も今度は参加させていただきます」
谷口「よし! 決まりだな」

続く

確か舞台は神戸市辺りだったような気がしますが・・・あの辺にコンテナ港あったっけ? やっぱり人気キャラであるせいか、鶴屋さんを喋らすのは緊張してしまう。あれで良いのだろうか?


|