僕が、美術部に入ったのは、活動日程が少ないからだ。
運動部なら、毎日にように部活があるけど、美術部は週に数回しかないからね。
でも、そのぶん休みの日には、弟や妹の面倒も見なきゃいけないけど。
吉崎家の長男として。

現在、僕たち美術部は有名な名画の写真を元に、それを写し描くという作業をしている。
僕はモナリザ、左隣にいる成崎さんはゴッホのひまわり、そして、僕の右隣にいる同じクラスの女の子。

涼宮ハルヒ

入学式のときのあの発言には驚かされた。
別に、ああいう心の持ちようはいいとは思うんだけど、あの発言はちょっと・・・
成崎さんも驚いてたかな。
成崎さんは、どちらかというとキョトンとしてたという表現があってるような気がするけど。

ちなみに、彼女はムンクの叫びの絵を描いている。

それにしても、二人とも絵がうまい。
それに比べて、僕のモナリザは幼稚園児が描いた落書きのような・・・
いや、さすがにそこまで悪くはないか。

ところで、モナリザというといろいろ謎があるらしい。
たとえば、この笑いかた。
微笑んでいるのか、ひねた笑いか、半笑いか。
多分、半笑いではないんだろうけど、とにかく謎らしい。
僕にしてみちゃ、どれでもいいとは思うんだけど。
他にも、男か女か・・・いや、女でしょ?
ただ、僕でもなぜか分からないのが、何枚かの絵の上に描かれているらしいということ。
何か、ダヴィンチのメッセージコードじゃないか?と言われているけど、
実際のところは僕にはよく分からない。
僕は、モナリザは、美しい絵としか解釈していないしね。
専門家じゃない人は、その程度の考えで充分だと思う。

それにしても、本当に二人とも上手。
「絵、上手だね」
成崎さんに言ってみた。
「ありがとう」
微笑みながら、僕にそう返事してくれた。
あっ、今ちょっと胸がドキッとした。
成崎さんかわいいからなー。

同じように涼宮さんにも言ってみる。
「絵、上手だね」
「うるさい!」
・・・・・ごめん、集中して描いてるのに。

そして、僕も集中して筆を進めることにした。
タイムリミットまであと30分。
間に合うとは思えない。

思ったとおり、時間が来ても、僕は完成させることができなかった。
まあ、もともとのモナリザも未完と言われてるけれども。
でも、ほとんどの人はまだ終わってないみたい。
美術部だから、つづきを描く機会ならいくらでもあるだろうしね。

で、そんな中、成崎さんと涼宮さんはほぼ完成というところまでいっていた。
ところで、涼宮さんは顧問の先生が、やめの合図をしたとたん、鞄をとって帰ろうとしている。
というより、帰ってしまった。
と言っても、この後は描いた絵を提出するだけだから、何も言わずに机の上に置きっぱなしということは、僕に任せたと言っているのだろうか?
まあ、別にそれぐらい苦にならないからいいけど。

「成崎さんのぶんも、一緒に提出しとくよ」
「えっ?じゃあ、お願い」
そして、僕は二人の絵を預かって、顧問の先生に提出することになった。

でも、その前に二人の絵をよく見てみる。
成崎さんが描いた絵は、本当にそっくりだ。
全く同じとはいえないものの、ほぼ同じ。
ひまわりの絵なんてどこにもありそうなんだけど、これははっきりとゴッホのひまわりをマネた絵だというのが分かる。
うまいなーやっぱり。
確か、このひまわりの絵はユートピアの尊重として描かれたんだけど。
本当にそんな感じが伝わってくる。
成崎さん自身がそんな感じだけどね。
ユートピアにいる天使のような・・・

対して涼宮さんの絵だけど、こちらも上手だ。
でも、どことなくアレンジがくわえられているような気がする。
確か、この人物は世界が急に変わってしまって、その自然の叫びを聞かないために、耳をふさいでいるような状況を描いた作品なはずなんだけど、
涼宮さんの描いた絵は、どこか耳を澄ましているような・・・そんな印象を受ける。
まるで、この絵の人物は、世界が変わってしまったことにたいして、不安がってるはずなんだけど、逆に喜んでるような・・・
何かのメッセージ?

いや、深読みしすぎか・・・
ただたんに、ちょっとだけ手の位置と大きさがずれてるだけで、勝手に僕がそう解釈してるだけだ。
上手な絵とだけ思っておけばいい。

そしてなぜか僕は、僕が描いた下手くそなモナリザの絵を見て、
それから、先ほどこのムンクの叫びの絵を描いていた涼宮さんを思い出し、
キレイな人だなとか思ったりした。

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