※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「では、今日は新入部生、仮入部生に、お茶点て体験を、してもらおうと、思います」
穏和そうな部長さんが、着物を身に着けて、言う。
そう、今日はようやくお茶点てができる日。
それは、部員募集のポスターにも書いてあったことで、
ずるい人なら、今日だけ仮入部ということもあるだろうけど、
一人だけ、はっきりと今日だけと分かる人がいる。

涼宮ハルヒ

話によると、いろんなところに仮入部して、どこも1日でやめてるらしい。
しかも、どこも完璧にこなして、運動部だと間違いなく、入部を薦められているとのこと。
この部活も例外ではないと思う。
特に、今回の場合、他にも誰か今日だけの人がいるだろうし。

ちなみに、あたしはこないだ入部して、袱紗さばきの基本やらを教えてもらっていたのだが、
お茶点ては初めての体験。うまくできたらいいんだけどね。

「では、まずは二人一組になって、互いに向かい合って座ってください」
と、部長さん。
ということは、相手を探さないといけないわけなんだけど・・・
ほかの人はみんなは友だちをつれてきているらしく、まあその人たちはほとんど今日だけの仮入部なんだろうと思いながら、
結局、あたしは必然的に涼宮さんと組むことになった。

「では、まずは挨拶から」
仕方ない、やろう。
ある意味、おとなしい子だから、そういう風に考えたら、いい子とあたったのかもしれない。
「大野木です。よろしくお願いします」
「………」
「………」
「………」
「あの、挨拶は?」
「よろしく」
・・・そんな、変換したら夜露死苦ってなりそうな言い方しないでよ。

「まずは西側の人がお茶点てをします」
ちなみに、あたしが座ってるのが西。涼宮さんが東。
茶碗がそれぞれにまわされる。それと、お茶の粉と茶せん。
どうやら、これだけのよう。

そこで、いったんあたしは回りを見回してみた。
どうやら、残念がってる人もいるよう。
茶菓子もあるのかと思ったんだろう。
・・・あたしもだけど。

「では、まずはわたくし達がお手本をやらせていただきますので、それを見て、同じようにやってください」
そう言って、部長と副部長が見本を見せてくれる。
はっきり言って、真剣なまなざしで見てる人はほとんどいない。
あっ!あそこの人、足痺れだした。

ところで、涼宮さんはちゃんとマジメ・・・かどうかは分かんないけど、部長さんのお手本を見ているみたい。
あたしは、昨日までに部長さんにある程度のやり方は教わったから、今は見てないけどね。
いや、でも一応見ておいたほうがいいかな。

「では、どうぞ」
さて、ようやくお茶点てができる。
あたしは、昨日までに部長から教わった、お茶点てのやり方を丁寧にやっていく。
自分で、味が分からないのがつらいけど、まあいいや、後で涼宮さんに感想を聞こう。

「どうぞ」
涼宮さんにお茶を渡す。涼宮さんはゆっくりその茶碗を手にとって・・・
音もたてずに飲んでくれた。
うまい!
無愛想な顔さえしてなければ、立派な日本女だよ。

涼宮さんが、茶碗を床に置く。
あれ?まだお茶残ってるよ。
まあいいや、とりあえず、
「どうだった?」
「……」
「……」
「……」
また無言か。
何か言ってよ、本当に。
「まあまあじゃない」
・・・今の無言は言うことを考えてくれたのかな?
まあいっか、感想はもらえたし。
いまいち、うれしくない感想だけど。
この子の性格から考えて、褒め言葉と受け止めてもいいだろう。

「続いて、東側」
どうせなら、相撲みたいに「ひがーしー」と言ってくれたら面白いのにな、と思いながら。
あたしは、涼宮さんがお茶点てをやっているのを見る。
飲み方もうまかったけど、お茶点てもうまい!
もしかして、やったことあるんじゃないの?って思うぐらい。

「……」
無言でお茶を渡される。
あたしは先ほどの涼宮さんと同じようにお茶を飲む。
ん!
「おいしい」
思わず声がでてしまうほどおいしい!
いや、別に出たらダメっていうわけじゃないんだけど。

でも、せっかく褒めたのに涼宮さんは無反応。
もっと感情豊かにならないもんかなー?
あなたかわいいんだから、もっと素直に喜んで。

「さて、今日はこれにて終わりとさせていただきます。みなさん、どうも今回はお忙しいところ、ご参加くださいまして、ありがとうございました」
部長さんが終わりの合図を言った。
部長さん、忙しかったら今日だけの仮入部の人がこんなところ来ません。
むしろ、皮肉に聞こえますよ。
もしかしたら、本当にそのつもりなのかもしれないけど。

そして、仮入部の人(もちろん、涼宮さんも含む)は帰っていった。
さて、今からは片づけだ。
と思ったんだけど、その前にあたしがさっき作ったお茶が入った茶碗があることに気づく。
もしかしたら、涼宮さんは、自分で味を確かめたほうがいいと思って、残してくれたのかな?
そう考えておこう。なかなかいい人じゃん。
さて、じゃあ自分の実力を確認してみることにしますか。

と、その時、部室のドアがノックされ、そこからあたしの友だちの阪中が入ってきた。
「おっ!迎えに来てくれたの?ちょっと待って。今、片付け中だから」
あたしは阪中を見て言う。
でも、なんか阪中の目線があたしに向いていないような気がするんだけど・・・

「涼宮さん、ここに来たよね?」
阪中がそんなことを聞いてきた。
確かに来たけど、そんなこと聞いてどうするの?
「うん。あたしとペアだったよ」
「じゃ、じゃ、じゃあ、そのお茶は涼宮さんが作ったのね?」
と、あたしが今持っている茶碗を指差して言う。
「いや、これはあたしが作ったので、涼宮さんが半分残してくれたから、今から飲もうとしてたとこ」
「そ・・・そ、それ本当なのね?」
「うん」
何か、目の色が変わったような気がするけど、気のせいということにしておこう。

ってか、さっきからずっと目線が茶碗なんだけど、そんなにあたしが作った茶が飲みたいのか?
「飲む?」
そう言うと、阪中は犬のように首を縦にふりだした。
あんたが犬が好きなのは知ってるけど、犬にならなくてもいいよ。

そして、あたしが茶碗を渡そうとすると、すばやく阪中は茶碗をとった。
そんなに早く飲みたいか?
とは思ったんだけど、口元まで茶碗を近づけて、その後は震えたまま止まっている。
「あの、阪中。今はそんな上品に飲まなくてもいいよ。別にあんた茶道部じゃないんだし」
「分かってるけど、緊張するのね」
そんなことで緊張しなくても・・・
と思っていると、まるで勇気をだしてまずいものを飲むように、いっきに中身を飲んだ。

・・・・・・・
もう飲み終わったと思うんだけど、いつまで茶碗に口をつけてるの?
と思った数秒後、ようやく阪中は茶碗から口を離した。
「おいしいのね」
「そう、ありがとう」
その後、阪中はすっごい幸せそうな顔になった。
それだけ、幸せそうな顔になってくれたら作ったこっちもうれしいよ。
今度、自分で自分のを飲んでみよ。
|