わたしは焦っていた。

ない。

持ち歩いていた手帳がない。

日記代わりに、……、彼の観察日記のようなメモを書き綴った手帳。
何枚か彼の写真がはさんである手帳がない。

まずい。非常にまずい。しくじった。
あの手帳が誰かに、特に涼宮ハルヒに見つかると非常に困る。
彼が見つけたとなるとそれはそれで困る。
せめて朝比奈みくるが拾ってくれればありがたい。 

あんなものを作るべきではなかった。
どうして作ってしまったのだろうか。
小説によく出てくる『日記』というものに若干興味があったのは事実。
そして彼についてなにか綴ってみたくなったのも事実。
朝比奈みくるに貰ったSOS団の活動記録写真のなかに
偶然彼とわたしだけが写った写真が存在していたことに、
正直な思いとして嬉しくなったのは事実。
いつもその写真を見たくなり、持ち歩くようになったのも事実。
だが、それは自宅に置いておくべきものではなかったのか。
夜、一人でながめ、想いを綴るべきものではなかったのか。

焦り。
泣きたくなるという感情。そう、感情。




校内の走査は終わったが手帳は見つからない。
となるとこの異空間と化した文芸部室にあるはず。



朝早く登校し、もう一度部室を捜索するが見つからない。
しかたがない。自分の不覚を責めよう。
せめて涼宮ハルヒには見つかってほしくない……。 








涼宮ハルヒと彼が恋愛関係として正式に交際することになった。
『鍵』である彼が涼宮ハルヒを安定させることは間違いない。
情報統合思念体は観察対象の動きに興味を示している。



古泉一樹がわたしに交際の申し込みをしてきた。
わたしとしては承諾する理由はないが断る理由もない。



彼がわたしの態度が昔に戻ったようだという。
何を意味しているはよくわからない。
朝比奈みくるからも同様の発言を受けた。
彼や彼女の態度からは『寂寥感』と表現されるものが現れていたと思う。


古泉一樹は自分と交際していて楽しくないのかと質問された。
知的生命体の行動と、その知的生命体が残した書物による記録の比較が興味深い、と答えた。
ほどなく古泉一樹より交際の解消を申し込まれた。
わたしとしては断る理由はない。



朝比奈みくるにSOS団の活動記録写真を貰った。
過去に貰ったはずなのだが紛失してしまったようで見つからないものがある。
今回はなくさないように封筒に入れ、自宅の押し入れに保管することにした。

fin

|