俺は春休み前から思っていた。
高校に入ったら、自分を変えてみようと。
ただ、決心するのはまだかかりそうだ。
なんたって、野球部に入ったのはいいが、俺はいまだにロングヘアーだからな。
まあ、男の場合はロン毛と略したほうがあってるかもしれない。
とりあえず、ピアスは外した。
しかし、まだ坊主にする勇気がもてなく、いまだにロン毛だ。

どうやら、仮入部中は坊主にしなくていいらしいので、まだ仮入部の状態。
そろそろ、切ろうとは思うのだが・・・。

ところで、今俺は先輩達がバシバシ放つボールを拾っている。つまり、球拾いだ。
ありきたりすぎる。しかも、ここ何日かずっと。
と、そんな俺の横にいるのは、今日仮入部してきた、俺と同じクラスの女の子、

涼宮ハルヒ

普通、他人がどんな自己紹介をしたかなんてすぐに忘れてしまうだろうが、この子の自己紹介はすこし衝撃的。
後、10年は忘れそうにない。

ところで、何で女の子なのに野球部なんだろうな?
ソフトボール部に入ったらいいのに・・・
と思って、言ってみたのだが、
「そこには昨日仮入部したわよ。あんたのせいで、最後の1点とれなかったけどね」
と、睨まれながら言われた。
ああ、あれ試合中だったのか。
そんな感じは、確かにしたんだが・・・
球拾いをずっとしてたから、そのまま返しちゃったんだよ。

「ソフトボールも野球も似たようなもんだと思うけど」
「あんたには関係ない」
なんか分かんないけど、怒られた。

ところで、いまだに球拾いか筋トレしかやってないんだが、いつバットを握らせてくれるんだろうね?
まあ、仮入部の俺がそんなこと言えるわけがないが・・・
というより、仮入部の人までこんなことやらせるのはどうかと思う。
仮入部生にまでそんなことさせたら、その生徒がやめたくなるぞ。

もちろん、そう思ってるのは俺だけじゃないらしい。
隣の女の子も、先ほどからイライラオーラを出している感じだ。
多分、そろそろやめるだろう。聞いた話によれば、毎日、行く部活を変えてるらしいからな。
球拾いばかりで面白くないと分かったはずだ。

と、思ったのだが、そう思っていると部長がこちらへやってきて、
「お前ら、これつけろ」
と言いながら、グローブが山のように詰められているダンボールを持ってきた。
「適当に二人一組になってキャッチボールしろ」とのことだ。
キャッチボールか・・・どことなく懐かしい響きだ。

さて、誰と組むか・・・
「一緒にやる?」
「別にいいけど」
ということで、俺はこの涼宮ハルヒという女の子とキャッチボールをすることになった。
他にもこの女の子とやろうとしてた人がいるらしいが、多分、俺はそいつらと同じ理由でこの子を誘ったのではない。
ただたんに、近くにいたから・・・それだけだ。

でも、やることになったのはいいんだが・・・。
「……」
「……」
会話がない。
いや、普通、部活中のキャッチボールは話しながらするものではないが、何か言わなきゃいけない気もする。
「あの、俺の名前知ってる?」
「知らないわよそんなこと」
「花瀬。同じクラスなのは知ってるよね?」
「だから知らないって言ってるでしょ」
・・・・・この子はどうやら、人と話すのを嫌うらしい。
それとも、ただたんに苦手なだけなのか?
「そういえば、入学式の自己紹介だけど・・・」
「あんた何か知ってんの?宇宙人?」
「いや、どこまで本気かな?と」
「・・・あんたもそれ。どうせ、何でもないんでしょ。だったら話しかけないで」
「ごめん」
自分でもなぜ謝ってるかが分からない。

「あっそうそう、言い忘れてたが、50回したらこっち戻って来い!」
やばい!数えてなかった!
「31回目」
・・・怒ったような口調で言ってくる。
どうやらこの女の子は意外とマジメらしいな。
その口調とかなおせば、かわいらしい感じになるのに。

「50回やったけど」
「じゃあ戻ろうか」
で、戻ろうとした時だ。
先輩が打った球がこちらの方向に飛んできて、そのまま来ると涼宮さんにぶつかってしまう。
と思ったと同時に、俺はその女の子の腕をつかみ、こちらに引き寄せて、ボールを避けた。
よかったぶつからなくて。
・・・と、思ったのだが、その拍子で、しりもちをつき、しかも腕をつかんだまんまだった。
この状況を詳しく説明しなくても、分かってもらえたらうれしい。
これまた、よくあるパターンだ。
 
「何すんのよ!!」
「グハッ!」
腕をふるい、そのままおもいっきり腹を蹴られた。痛い。
とりあえず、説明しなければ。
「だって、君あのままだとボールに・・・」
そう言ってくれたら分かってくれると思ったんだけど。
「あれぐらい自分で避けれるに決まってるでしょ!あたしは掴もうと思ってたけど」
・・・かなりまずいことをしてしまったようだ。
今度はグローブを投げつけられた。痛い。
まだ、バットじゃなかっただけよかったと思うべきなのかもしれないけど。

「つまんないし、あんたみたいな男もいるみたいだからさっさとやめる」
はい、ごめんなさい。できたらもうちょっと早くやめていてほしかったです。

それから、その子は教室に戻っていった。
「お前、何、女押し倒してんだよ!!」
いや、そのつもりはなかったんですけどね・・・
とりあえず、俺は必死になって先輩とか、同輩とかに事情を説明。
分かってもらえたかは分からない。

でも、今日、一つだけ分かったことがある。
あの女の子には近づかないほうがいい。
 

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最終更新:2020年03月12日 14:09