機械知性体たちの即興曲 メニュー

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□第六日目/昼

七〇八号室

みくる         「ふんふ~ん♪」(バタバタ)
みくる         「シーツも、みんなのお洋服もきちんとお洗濯して」
みくる         「空気も入れ換えてー」
みくる         「それから掃除機かけて、と……」(ちらりと時計を見る)
みくる         「……そうか。もうお昼ごはんの準備しないといけない時間になるんだ」
みくる         「こうしてみると、お母さんって結構忙しいのね」

みくる         「……お母さん」(ちょっと考えて)
みくる         「……やだ。あれ? えへへ。あれ?」(テレテレ)

みくる         「……でも……キョンくんがお父さん、だよね……そうすると」
みくる         「…………」(なにか考えてる)
みくる         「……えへへ」(はたきをパタパタ)

 

 

台所

キョン        「……朝比奈さんの機嫌がよさそうなのは、なによりだが(ゴソゴソ)」
キョン        (『機関』の支援物資を漁りながら)
キョン        「こちらとしては、今頃、ハルヒがどんなになってるのか、そっちの方が気になって仕方な……?」
キョン        「? 箱の中に……俺宛の張り紙のついた小箱……?」
キョン        「なんだ、こりゃ(ゴソゴソ)」

キョン        「……おいおい……マジかよ……これ」


七〇八号室・トイレ

にゃがと    「……ふたりは?」
ちみどり    「朝比奈さんはお掃除洗濯。キョンくんは荷物の整理してますけど」
あちゃくら  「……なんでこの三人でトイレに篭らないといけないんですか」
にゃがと    「気づかれていない?」
ちみどり    「ええ、それはだいじょうぶかと」

にゃがと    「……あなたたちだけに話がある。そのためにこうして隠れている。
                    昨日から、なかなか三人だけになる機会がなかった」
あちゃくら  「? なんです? あらたまって」
ちみどり    「いえ。にゃがとさんは、昨日の思索派端末からの情報をほとんど話してくれてないのですよ、あちゃくらさん」

にゃがと    「……これから話すことは、思念体総体の最終決定。我々の今後についての話」
ちみどり    「……あのふたりには聞かせられない内容ですか。やはり」

 

 

 

あちゃくら  「? そういう話なんですか? どうして?」
ちみどり    「そういう話でなければ、昨日のうちに話してくれていたでしょう
                    ……それほど聞かれたくない内容なんですね? ……あのふたりには」
あちゃくら  「え……」
にゃがと    「そう」
あちゃくら  「……それって、どんな」

ちみどり    「もしかして……再生できないと?」
にゃがと    「そうではない。再生はされる。明日の夜には。思念体から直接、再構成のための修復コードが実行される」

あちゃくら  「なんだぁ。だったら別にいいじゃないですか」
ちみどり    「……いえ。まさか、その修復コードって……」

にゃがと    「…………」

 

 
七〇八号室・居間

みくる        「ふぅ……。だいたいこんなものかな」(掃除機を片付けながら)
みくる        「お洋服、人形サイズだけど生地は普通のものだから、そのまま洗濯してよかったのかしら」
みくる        「運んでくれてた着替えはこれと……あ、キョンくん」

キョン        「朝比奈さんひとりに、家事全部させてしまってすいません」
みくる        「ううん。別に。わたしが自分でそうさせてくれってお願いしたんですもの」

キョン        「…………」(服の上からお腹を押さえている)
みくる        「? どうしたの? お腹、痛いんですか?」
キョン        「あ。ああ、いや。そうじゃないんですが」
みくる        「?」
キョン        (これは……ちょっとやりすぎだろ、古泉。こんなもん……どこに隠しておくんだよ)
キョン        「(これはなんとか誤魔化さないと)……あれ。長門たちは?」

みくる        「え……。そういわれれば……さっきまで足元を走り回ってたと思ったのに」
キョン        「あのサイズだからな……遊びでも、隠れられると探すのが大変なんだが」

 

 

 

にゃがと    「……遊んではいない。ここにいる」(トテトテ)

キョン        「……なんだ。三人そろってどこに隠れてたんだ。心配するじゃないか」
あちゃくら  「へへー。残念ですけどパパにも内緒なのです!」
キョン        「パパ……いや、もうそれでもいいが」
みくる        「クスクス」

ちみどり    「(キョロキョロ)あ、お掃除、ありがとうございます」
みくる        「いえ。簡単にしかしてませんから。そうそう。今日のお昼ご飯はなにがいいですか?」
あちゃくら  「みくるママの作るのならなんでもいいです!」
みくる        「でも、食べたいものがわかった方が助かるんですよ。なにかいってみて?」

あちゃくら  「んー。だったら焼きそばとかいいです!」


北高

ハルヒ       「…………」
ハルヒ       (キョンの携帯に連絡してみようかしら)
ハルヒ       (昨日の夜のうろたえようから考えて、あの馬鹿が絶対なにか知ってる)

ハルヒ       (でも、かなりいっぱいいっぱいな感じだったし)
ハルヒ       (あたしに話せるようなことなら、さすがになにか言うだろうし)
ハルヒ       (……よほど、あたしに話せないことでもあった……?)

 

 
ハルヒ       (……どんなことだろう。あたしに、なにもいえないようなことって)
ハルヒ       (有希のご両親のことから始まって……朝倉も一緒に休んで)
ハルヒ       (キョンが来なくなって)
ハルヒ       (とうとう今日はみくるちゃんと古泉くんまで……)

ハルヒ       (SOS団員が次々と、なんかしらの理由で学校に来れなくなった……)
ハルヒ       (……もしかして、これって、なんかの陰謀?)
ハルヒ       (SOS団に対する、攻撃とか)

ハルヒ       (……怪しい)ニヤリ

谷口          「……おい。見たか、涼宮のやつ」
国木田      「ああ。すごい表情だね。まるで――ライオンが笑ったみたいな」
谷口          「今日はあいつに絶対近づくなよ。声をかけられても、聞こえないふりをしてやり過ごすんだ。それがいい」
国木田      「それができたらいいんだけどね……できるかな、僕たちにそんなこと」


七〇八号室

にゃがと    (じー)
あちゃくら  (じー)
ちみどり    (じー)

キョン        「……静かだな。テレビの音しか聞こえてこない」(食器を洗いながら)
みくる        「テレビ、子供向けのもの観てるみたいですよ。三人並んで、見入ってます」(食器をキョンのところに持ってくる)
キョン        「子供向け……あいつらが」(カチャカチャ)
みくる        「仲良く並んで座ってるんですよ、テレビの前で。小さいからすごいかわいいんです」
キョン        「……なんだかな」

 

 

 

テレビ        「しゃ~ぼんだ~ま~と~んだ~。や~ね~ま~で~と~んだ~♪」

にゃがと    (じー)
あちゃくら  (じー)
ちみどり    (じー)

みくる        「……なにみてるんですか? みなさん」(後ろから覗き込むように)
にゃがと    「童謡というもの、らしい」
あちゃくら  「かわいい歌ですねー」
ちみどり    「不思議な感じ……」

テレビ       「や~ね~ま~で~と~ん~で~。こ~わ~れ~て~き~え~た~♪」

みくる        「……か~ぜ~かぜ吹くな~……ふうん」
にゃがと    「……知ってる?」
みくる        「あ、いえ。わたしはこの時代の歌とか、ほとんど知らないので……」

あちゃくら  「とってもいい歌だと思うのです。かわいいですよね」
ちみどり    「しゃぼん玉が飛んだだけの、それだけの内容ではないですか」
にゃがと    「……そう、ではあるが」
あちゃくら  「ちみどりさん、理論的でないとか、そういうことばっかりいうんですよね」
みくる        「クスクス」

キョン        「その歌か。すごく有名な歌じゃないか」(台所から)
みくる        「あ、キョンくん。知ってるんですか?」
キョン        「まぁ。幼稚園とか、学校でも教わるくらい有名ですよ。これ」

 

 

 

キョン        「……どこかでなんか聞いたことがあるような」
にゃがと    「? なにを?」
キョン        「いや……この歌がどんな意味の歌だったか……いつだったかな。忘れた」
あちゃくら  「なんだぁ」

みくる        「……みんな一緒に歌いましょうか? キョンくん覚えてます?」
キョン        「そりゃ、簡単な歌だから覚えてますけど」
あちゃくら  「わぁ! じゃあ、みんなで一緒に歌って覚えるのです!」
ちみどり    「……でも、こんなことしてて……」(にゃがとをチラリ)

にゃがと    「いい。やってみたい」
ちみどり    「……にゃがとさん」
あちゃくら  「パパとママと一緒に歌うのです!」
キョン        「……ああ。いいさ。じゃあみんなでな」
みくる        「ふふ……こうしていると、まるでほんとの家族みたい」

あちゃくら  「……家族ですよ!」

みくる        「……え?」
あちゃくら  「お父さんがいて、お母さんがいて、それでわたしたちはとっても安心していられるのです。
                    みんなで一緒にいて。それって、家族じゃないですか」
キョン        「この歳でなぁ。それを感じるってのも貴重な体験なのかもしれんが……」
にゃがと    「…………」
ちみどり    「……こういうものなんですか? ヒトの感じる、家族って」
みくる        「そう……でしょうか」
キョン        「間違ってはいないがな……」

 

 

 

にゃがと    「わたしたちは、子供という状態の経験がない。生み出された時から、すでに完成されたものだから」
みくる        「長門さん……」
にゃがと    「だから、それがたとえ仮想であるとはいえ、体感することはなかった。
                    こうしてここにいるのは……そしてその経験をしている端末は、我々が初めての存在」
キョン        「…そうか」
にゃがと    「……迷惑をかけてすまないと思う。実際にこうして甘えるような行動しかできない、機能不全状態。
                    あなたたちにすがらなければ、生きていくことすら困難。だが……」

キョン        「……気にするな」(ちょん、とにゃがとのひたいをつつく)
にゃがと    「にゃう」
あちゃくら  「キョンくん?」

キョン        「子供ってのは、それでいいんだ。親に甘えて、それで育ってくれればいい。
                    迷惑なんてのは考えるもんじゃない。親は……笑ってるおまえら見てたら、それだけで幸せなんだよ」 
にゃがと    「…………ありがとう」


『機関』主流派の保有するワンボックスカー

古泉          「……どうです?」
森              「依然、反主流派の動きがつかめない……すでに動いているのは確実なのに」
新川          「いかがされますか。やはりあのマンションで張っていた方が」

森              「いえ。さすがに日中から彼らが動くとは考えにくい。派手なことは得意だとしても、あくまで隠密裏に動くはず」
古泉          「これまでの傾向から、ではね」
森              「(爪を噛んで)……あのふたりからは?」
新川          「田丸兄弟からの連絡はいまだ。鶴屋家への接触は進めてはいますが……」

 

 

 

森             「なんとしても、彼らの目論見は阻む。長門有希たちを、彼らの手に渡すわけにはいかない。

                   これまで慎重に、彼ら情報統合思念体とは"緩やかな相対関係"を構築してきたのに。
                   その努力がすべて無に帰してしまう」

新川         「その、別の端末からの提案に乗ったというのは」
森             「向こうも、我々と同様、内情は一枚岩ではないということなんでしょう。人間と同じような権謀術数を駆使しているのかは別として」
古泉         「かつて、朝倉涼子と長門有希との間に、なんらかの確執があったのは確実です。
            それと同様、ほかの派閥との間で、彼女たち以上に対立する意識があっても不思議ではないでしょう」

森             「革新派……といった。でもその彼女の思惑通りにはさせない。絶対に」
新川         「同意ですな。あの健気な子たちを見放すことはできそうにない」
古泉         「……涼宮ハルヒがその後、どう動くのかを考えると、特にですね」

森             「それで。彼には渡ったのかしら。例のもの」
古泉         「たぶん。彼なら気づくでしょう。それと……使いどころも理解するはずです。否でもね」
森             「……そう」

森            「……いい? たとえ我々にいかなる損害が出たとしても、彼らを守り抜く。それが『機関』主流派の総意よ。
                  組織の半分をこれで失ったとしても。これだけは譲れないわ」


七〇八号室

    ――や~ね~ま~で~と~んで~。こ~わ~れ~て~き~え~た~……。
    ――か~ぜ~か~ぜ~ふ~く~な~……。


―第六日目/夕につづく―

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