機械知性体たちの即興曲 メニュー

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□第五日目/深夜

にゃがと    「……むにゃ」
キョン        「……違う。違うんだハルヒ……これは訳があってだな……朝比奈さんまでそんな……」
にゃがと    「……寝言?」
あちゃくら  「くー……くー……」
ちみどり    「すー……」
にゃがと    「……なぜ、全員で寝ている?(覚えていない)」

にゃがと    「それに、この配置は」
あちゃくら  「えへへー……キョンく~ん……」
にゃがと    「あちゃくらりょうこが、彼の右腕にしがみつき」
ちみどり    「すー……」
にゃがと    「ちみどりえみりが、彼の左腕に抱きつき」
キョン        「くかー……これは……浮気とかじゃなくてだな……違うんだ……話を聞け……」
にゃがと    「……あとで制裁を加える。主流派を出し抜くとはいい度胸」

にゃがと    「……喉渇いた」(トテトテ……)
にゃがと    「ベッドから降りるのも一苦労」(ヨジヨジ)
にゃがと    「台所には上がれないからと、ミネラルウォーターを買ってくれたのがあったはず」(キョロキョロ)
にゃがと    「……居間か」(トテトテ)

 

にゃがと    「……思ったより明るい」
にゃがと    「今夜は月がはっきり見える。月明かりで、こんなに部屋の中が明るいとは」
にゃがと    「……ベランダのカギが開いてる?」
にゃがと    「ちょっと開けてみる」

 サーッ……

にゃがと    「……風が気持ちいい」
にゃがと    「ペットボトルは……あった」

 ザザーッ……

にゃがと    「くぴくぴ」
にゃがと    「……水がおいしい」
にゃがと    「……ここのところ、大騒ぎの連続で、ひとりでいるという時間がなかった」
にゃがと    「……とても、静か」

にゃがと    「……ちみどりえみりの言っていたことは理解してる」
にゃがと    「自分が自分でなくなってしまうような、この感覚」
にゃがと    「彼や、朝比奈みくるに見守られながら、あちゃくらりょうこや、ちみどりえみりと暮らすこの生活……」

 ザアッ……
 
にゃがと    「……嫌ではない。けっして」
にゃがと    「もしこのまま……彼らと一緒にいられたら……」
にゃがと    「自分に与えられた任務を忘れて、このまま……こうしていられたら……」
にゃがと    「子供になるのだろうか。ほんとうの人間の子供に」
にゃがと    「こんないびつに歪んだものではなく」
にゃがと    「……もしそうだったとしたら……」
にゃがと    「わたしは、ほんとうの――”ヒト”になれるのだろうか」

ベランダ    「――もともと――気づかないだけで――その素養はあった」
にゃがと    「……誰?」

 ザアッ……

ベランダ    「――あなたたちは――情報統合思念体に属するモノたちは――ずっと人間を――
        ほんとうに永い時間をかけて――観測していたのだから」
にゃがと    「……ここまでの侵入を許すとは……」
ベランダ    「――わたしは――それを知りたい――」

 ヒュウウ……

周防          「――あなたたちが――知った――ヒトの中にあるモノ――それを――わたしに」
にゃがと    「……天蓋領域……」
 

 

にゃがと    「……っ!」
周防          「今は――なにもできない――でしょう?」(スーッ)

にゃがと    (情報操作……は、なにもコマンドが出せない……)
にゃがと    (いや、してもいいが……確実に体が、消失する……)

周防          「ここまで――精錬されていたとは――予想よりもはるかに早い」
にゃがと    「……なにをいっているの?」
周防          「余計なモノを――パージして――純粋に残されたモノ――ここにある――綺麗で――単純で――原始的で――」
にゃがと    「…………」
周防          「――ずっと――我々が欲していたモノ――あなたたちは――持っていたにも関わらず――気がつかなかったモノ――」
にゃがと    「……”コア”……」
周防          「――さあ――わたしに――それを――」(両手を差し伸べる)
にゃがと    「……っ!」(ダッ)

周防          「――逃がさない」
にゃがと    「……くっ(いけない。この体の大きさでは……走っても追いつかれる)」
周防          「恐れることは――ない――ただ――与えてくれるだけでいい――」

周防          「あなたの――体ごと――すべて――!」(ガシッ)
にゃがと    「うにゃう」(ジタジタ)
周防          「――捕まえた――」
にゃがと    「……はなして」(ジタジタ)
周防          「――ダメ――これで――ついに――知ることができる――から」
にゃがと    「ううーっ!」(ジタジタ)
周防          「おとなしく――して」
にゃがと    「うう……っ! うーっ!……」(ジタ……)
周防          「――?」

にゃがと    「……お……お父さぁんっ!!」

周防          「――!?」

 
にゃがと    「うわあああっんっ! うわあああっ! うわぁあああっ!」(ジタジタッ)
周防          「この――反応は――?」
にゃがと    「おとうさあぁぁんっ! うわあああっ!」(ジタバタッ)

キョン        「……長門かっ! なんだっ!?」(ドタドタ)

周防          「――これは――」(スゥッ……)
キョン        「周防……九曜……消えた……?」
にゃがと    「(トサッ)うわあぁぁんっ! お父さぁあん!」(ズリズリ)

キョン        「な、長門……だいじょうぶか! おい」
にゃがと    「うわぁあっ! ……うわぁあああっ!」(しがみつく)
キョン        「おまえ……まさか。ほんとに泣いてるのか……長門」
にゃがと    「わああんっ! うわぁあああっ!」(ギュウ)
キョン        「長門……もうだいじょうぶだ。もう、あいつはいないから。安心しろ。俺は……」
にゃがと    「お父さん……お父さん……! うううっ……うううううっ!(ボロボロ)」
キョン        「……お父さんは、ここにいるから……もうだいじょうぶだから」(ギュウ)

あちゃくら  「……どうしたんですかぁ……?」(トテトテ)
ちみどり    「……これは」
にゃがと    「ううう……ううっ(グスグス)」
キョン        「怖かったな……怖かったな。長門……よしよし」

ちみどり    「……もう……これ以上は、持たないのかも……」

 

 

――第五日目/朝につづく――

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最終更新:2020年08月21日 21:31