機械知性体たちの即興曲 メニュー

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□第四日目/朝

すずめ      「ちゅんちゅん……」

にゃがと    「……にゃ」(眼が覚めた)
あちゃくら  「すうすう」
ちみどり    「うーん、うーん……眉毛が……眉毛が」
にゃがと    「(キョロキョロ)……おしっこ」(ムク)

あちゃくら  「すうすう……むぐっ!?」
にゃがと    「……なんか踏んだ」(トテトテ)
あちゃくら  「ぬおおお。な、なにが……」
にゃがと    「…………」(トテトテ)

ちみどり    「うー……どうしたんです、そんな声だして。こんな朝早くに。ふあぁあ」
あちゃくら  「(うずくまりながら) な、長門さんにお腹踏まれました……」
にゃがと    「……トイレ」(トテトテ)
ちみどり    「寝ぼけてる……?」
あちゃくら  「ちょ、長門さん。そっちは」
ちみどり    「あ、あぷな……!」
にゃがと    (トテトテ)「トイ……」(ゴスッ)

あちゃくら&ちみどり「あ、落ちた」

 

 

 一方その頃。キョン自宅玄関にて。

キョン        「さて。じゃあ、行ってくるか」(靴を履きながら)
妹              「(トテトテ)……どうしたのーキョンくん。こんな朝早くから。まだ六時半だよー?」
キョン        「(見つかったか……)いろいろあるんだよ。高校生にもなると」
妹              「ふーん。それって、昨日の夜、わたしの持ってるお人形の服を借りたこととか関係あるの?」
キョン        「う。まぁ……そうだな」
妹              「それとか、朝から台所でなにかお弁当みたいなの作ってたのとか」
キョン        「……よく見てるな、おまえ」
妹              「自分のお兄ちゃんが夜帰ってきたと思ったら、妹の持ってる人形の服だけ貸せ、とか言い出したんだよー。気になるもん」
キョン        「俺も自分の行動の意味不明さに、たまに言い知れぬ不安を感じるのだが……」
妹              「もう遊んでない人形の服だから別にいいけど……変なことに使っちゃ駄目だよ? 人として」
キョン        「どこでそういうことを教わってくるのか、一度きちんとお話しような。約束だぞ」

 自転車漕ぎつつ――

キョン        「くそ……あいつからああいう視線で見られたのは初めてじゃないか? こう……憐憫ともとれるような寂しい眼差しは」
キョン        「……早くこのアホらしい状態が改善されることを祈るぜ。ほんとに」

 七〇八号室へ

キョン        「おとなしくしててくれればいいが……昨日の様子だと、なにしでかすかわからん子供みたいになってたからな――」 
キョン        「(ガチャ)おーし。起きてるか、みんな? 学校行く前にメシだけでも……」

キョン        「……どうしてこうなった」

 

 

にゃがと    「 …………」
ちみどり    「うぇええん、うぇええん」

キョン        (またもや散らかった部屋に、救急箱の前に座る長門。ひたすら泣きじゃくる喜緑さん。朝倉のやつはどこだ……?)

キョン        「……長門。おまえはなにしてる」
にゃがと    「(振り向いて)……ちょうどいいところに来た。頭に絆創膏を張ろうと思っていた」
キョン        「なんだ、このでかいたんこぶは(絆創膏を張ってやる)」
にゃがと    「打撲によるもの。予想外の危険がこの部屋に潜んでいることが改めて確認された」
キョン        「いや、そういう意味不明な説明ではなくてだな。どうして、たんこぶができたのか、それをわかるように言いなさい」
にゃがと    「……意識朦朧状態だったため、記憶領域にはっきりとしたデータが残ってない。説明は困難」
キョン        「……どうせ寝ぼけてトイレに行こうとして、ベッドから落ちたんだろう。それも、頭から」
にゃがと    「……どこかに盗撮用カメラを設置していた? いくらあなた相手でも、我々のプライベートは考慮されるべき。推奨できない行動」
キョン        「そんなの覗き見するまでもなくわかるわ」

ちみどり    「うぇええん、うぇええん」
キョン        「(長門を肩に抱きかかえつつ)……で、喜緑さんはどうしたんです。あなたもどこかケガを?」(喜緑をひょいと持ち上げる)
ちみどり    「うぇええん、キョンく~ん」(しがみ付く)
キョン        「……泣いてばかりじゃわからないですよ」
にゃがと    「…………」
ちみどり    「朝倉さんが……朝倉さんが(グスグス)」
キョン        「朝倉が……? どうしたんです。さっきから姿が見えないと思ったんだが」

ちみどり     「 ……そこのゴミ箱の中から出られなくなりました」
キョン         「ふたりもいて助けてやれないのかよ!」 

あちゃくら   「(……たーすーけーてー……)」

 

 

 

あちゃくら  「朝から酷い目にあいましたよう、もう……」
にゃがと    「実に迂闊。自身の身体構造の変調を考慮し、もう少し注意して行動するべき」
ちみどり    「……元はといえば、全部長門さんのせいなんですけどね」
キョン        「……いったい、なにがあった」

あちゃくら  「長門さんが起きたそうそう、寝ぼけてわたしのお腹を踏みつけて、そのままベッドから転落しちゃいまして」
キョン        「そのまんまじゃねぇか」
にゃがと    「実に不幸な事件だった」
キョン        「人ごとにすな」

ちみどり    「それでそのあとすぐ、朝倉さんが落ちた長門さんを助けるべく駆け寄ったのですが……」
あちゃくら  「……かぶっているシャツが大きすぎることを忘れていて、足で踏みつけ、転びそうになってしまって。
          勢いあまってベッドから飛び出してしまい……」
キョン        「……そうか。しかし、ゴミ箱の中に入っていたのはなんでだ」
ちみどり    「落下ではなく、ほんとうに飛んだのです。見事なまでに」
にゃがと    「飛び出した朝倉涼子は、そのままゴミ箱にホールインワン。狙ったとしか思えない芸人的な機動。実においしい。 
                    もともと地球における機械計算は弾道ミサイルの軌道計算を目的として開発されたものだが、
                    そういった意味で、我々機械知性体ともいうべき存在がその真の能力を如何なく発揮した事例ともいえる」

キョン        「いろいろ小難しいこと言ってごまかそうとしてるようだが、要するにおまえのせいなんだな? そうだな、長門?」
にゃがと    「……さあてね」(ぷい)
キョン        「……反抗期かよ」

キョン        「しかしだな。たった一晩も、なんの事件もなく過ごすことができないのか、おまえたちは。心配で学校に行けないぞ、これだと」
にゃがと    「これはあくまで偶発的な不幸が重なって発生した事故。まるでわたしたちが、手のかかる乳幼児であるかのような評価は心外」
キョン        「自覚がないだけだろ。てぃ」(指でおでこを押す)
にゃがと    「 ……あぅ」
あちゃくら&ちみどり  「やーい、怒られた」
にゃがと    (両手でおでこを押さえながら涙目)
キョン        「……ほんとに子供か、おまえたちは」

キョン        「すんだことはいい。お説教はここまでだ。ちょっと待っててくれ……」(ガサゴソ)
にゃがと    「……?」
キョン        「ほら」バサッ
にゃがと    「ほう」
あちゃくら  「う わーそれって」
ちみどり    「まぁ」

キョン        「(こほん)……妹に無理をいって貸してもらった人形用の衣装だ。
                    さすがに今日の夕方まで、そんなぶかぶかのシャツをかぶらせてるわけにもいかんだろうからな」
にゃがと    「感謝する。あなたは優秀。とても優秀」
あちゃくら  「ありがとうございます! キョンくん」
ちみどり    「すごいですねー……かわいい服ばかり」
キョン        「五着程度だが、どれでもいい。好きなのを選んで着てくれ。借り物だから大切に着てくれよ?」
三人          「はーい」
 

 

 だいたい五分後。

 

キョン        「よし全員着替えはすんだな。入るぞ?」
にゃがと    「どうぞ」

キョン        「……ほう。それっぽいというか、なんというか」
にゃがと    「なにか問題が?」
あちゃくら  「へへー。似合います?」
ちみどり    「(もじもじ)」

キョン        「長門のはボーイッシュなジーンズか。らしいといえばらしいが……」
にゃがと    「活動に支障がなければ、どれでもいいと考えた」
キョン        「朝倉のはシックなワンピース。喜緑さんはそのまま西洋人形みたいだな。みんなよく似合ってる」
あちゃくら  「ありがとうございますー」
ちみどり    「…………」

キョン        「これなら別に幼児用の服を買ってこなくても良さそうだな……しばらく、それでしのぐか」
にゃがと    「必要になったら買い足せばいい。予算はある」
キョン        「わかった。それじゃあ朝飯にしよう。いちおう作ってきたんだ(ドサ)。……ま、簡単なもんだけどな」
あちゃくら  「え? キョンくんが作ったのこれ?」
にゃがと    「サンドイッチ。ハム、チーズ、レタス、目玉焼き。とても分厚い」
ちみどり    「豪快ですね(クス)。でもおいしそう」

あちゃくら  「ここで作ってもよかったのに。どうして」
キョン        「ああ。ここの台所だと使い勝手がわからんからな。家の方が手早くできるだろ? 朝だと時間もないし」
ちみどり    「……キョンくん、こういうことしてるって、全然SOS団では見せていないですよね」
キョン        「ハルヒや、朝比奈さんがいますからね……不器用なのをわざわざ見せることもないでしょう。
                    あんまり上手にできてるわけじゃないけど、我慢してください」
ちみどり    「これで文句をいう人はバチがあたります」(にっこり)
あちゃくら  「さ、食べましょう食べましょう」
にゃがと    「……感謝する」


 学校

 

キョン        「……あいつらが復活するまで、なにごともなく済めばいいんだが」
キョン        (しかし気がかりがないわけじゃないんだ……周防九曜。あいつがもし絡んでいるとしたら)
キョン        (わざわざ俺の前に現れたのはただの偶然か? いや……そんな偶然があるわけない)
キョン        (ほかに相談できるとしても……古泉や朝比奈さんには言わないように口止めされてるし)
キョン        (ほんとうならこういう時こそ長門に頼るべきなんだが)
キョン        (……肝心かなめのあいつが、当の問題の中心だからな……) 

(に ゃがと「さあてね」(プイ))

キョン        「(頭を抱える)……あれが長門か。信じられん」
ハルヒ       「なによ、朝っぱらから景気の悪い顔しちゃって」
キョン        「ハルヒか……」
ハルヒ       「今、有希の教室行ってきたけど、今日も休みなのね」
キョン        「ああ。らしいな」
ハルヒ       「知ってたの? 朝倉も休みだとかいってるし。どうしたのかしら」
キョン        「……いやぁ、ほんと。どうしたんだろうな」

(あちゃくら「ありがとうございますー」)

キョン        「……いや、ほんと。どうしたらいいんだろうな……(ぐったり)」
ハルヒ       「……?」

 

 

 七〇八号室

 

にゃがと    「……彼の献身的支援行為により、この異常事態も沈静化の傾向を見せつつある」
あちゃくら  「なんです唐突に」
ちみどり    (似合ってるって言われた。似合ってるって言われた♪)

にゃがと    「生存環境が整いつつある今、本来のこの異常現象に対する検討をするべきだと思う。主流派的に考えて」
あちゃくら  「例のリンクの件ですか?」
ちみどり    (キョンくんに似合ってるって言われた。言われちゃった~♪)
にゃがと    「……喜緑江美里。その軽快なステップはどういう意味なのか、説明を」
ちみどり    「いえ。別に?」
あちゃくら  (……これは……まさかライバルが増えたということ……!?)
にゃがと    (……油断も隙もない。まさか彼があのような一面を持っているとは完全に想定外ではあったが)
ちみどり    (朴念仁だとばかり思ってたキョンくんが、あんなに尽くしてくれる人だったなんて……ふふ……)

にゃがと    「…………」
あちゃくら  「…………」
ちみどり    「…………」

三人          ( ……この事件の解決までに……ケリはつけるべきか……!)


にゃがと    「(こほん)……話を元に戻す。例のあのリンクについてだか、仮にそれを踏んだとして、本来であればそれは当の端末、

                    つまりPCにのみ影響を与えるだけのものであったはず」
あちゃくら  「どういう手段で、長門さんそのものに侵入してきたか、ということですね」
ちみどり    「……やはり我々の構造、世界構築の仕組みを知っているものの仕業と考えるのが妥当でしょうか」
にゃがと    「当然、最有力候補にあげられるのは、すでに接触を果たしている存在。天蓋領域」
あちゃくら  「かつて、広域帯宇宙存在と呼ばれた……」
ちみどり    「いまだにその完全な正体は不明のままです。彼らについては」

 

にゃがと    「……今の我々の体の再生は順調に進んでいる。そのはずなのだが……」
あちゃくら  「全然、背伸びませんよね。せっかく喜緑さんからもリソース吸収させてもらったのに」
ちみどり    「ほんとに甲斐のない人たちですよね。このわたしが犠牲になったというのに」
にゃがと    「我々と同様の情報端末が長時間そばにいると、自動的に対象の情報リソース吸収する、というのは、
          これは統合思念体端末の緊急モードであるから、制御はできない」

あちゃくら  「そんなの全然知らなかったんですけど。わたしの時は全然そんなことなかったのに」

ちみどり    「わたしも知りませんでした。変ですよね……」

 

にゃがと    「……すまない。実は勝手にプロトコルを構築した。吸収した時の情報交換の際、全員にフィードバックされたものと思われる」

あちゃくら  「……あ、あ、あああ……」

ちみどり    「……あなたが、吸収モードをわたしたちに感染させたのですか……?」

にゃがと    「結果的には。意図的なものではない。これは事故」

あちゃくら  「どこまで人……いや端末迷惑なんだーっ!」
なゃがと    「(キョロキョロ)……てへ」

ちみどり    (元に戻ったら報復する……絶対報復する……穏健派的に考えて)


あちゃくら  「(気を取り直して)……それでも変ですよ。喜緑さんから吸収した分、ほとんど修復できてないというのは……その、五ミリくらいは回復してるんですけど」
ちみどり    「(白い目で)あなたたち二体の吸収機能効率が悪いだけでは?」
にゃがと    「……ほぼ同時期に、同アーキテクトから創造されたのがこの三体。設計は派閥ごとに詳細は違うとしても、
         基本的な部分での性能は大きく変わっていないはず」
あちゃくら  「いちおう、最後の三機ということらしいですからねー……最新鋭のはずなんですが」
ちみどり    「では、修復が進まないというのは、別の理由があると?」

にゃがと    「……常に周辺状況を走査しているはずの静観派端末とコンタクトを取れれば一番いいのだが」
あちゃくら  「無理ですよ。端末支援システムにすらコネクトできないんですよ、今のわたしたちだと」
ちみどり    「やってできないことはないでしょう。質量を失うという危険はあるにせよ」
にゃがと    「……物理的なものの創造であれば、それを再変換することで元に戻ることはできるが、ダイレクトリンクを使用するとなると、
          一度使用したリソースは回復できない。これ以上、身体特性を失うのは、その後の保障がない限り危険すぎる」
あちゃくら  「……以前も喜緑さんが言ってましたけど、ほかの派閥の端末に直接支援を受けるというのは?
        これ以上キョンくんに迷惑かけるのもかわいそうな気がしますし、第一、危険がほんとうというのなら彼の安全も……」 

にゃがと    「それは、難しい」
あちゃくら  「どうして?」
にゃがと    「これまでのパターンから言うと、仮にほかの派閥の端末が派遣されたとしても、あなたたち二体のように、
          我々に質量情報を吸収され、第四、第五のお子様端末が誕生してしまうだけであると考えられる」
あちゃくら  「全部、長門さんのせいじゃないですか。それにしても……さらに子供が増えたらキョンくん、喜んでくれるかなー……」
ちみどり    「……いや、それは絶対ないと思いますけど」

にゃがと    「……ミイラ取りがミイラということだけは避けるべき。独自に、我々だけで、この問題を解決する必要がある」
あちゃくら  「えー。こんな体のわたしたちだけでですか?」
ちみどり    「……長門さん。急ぐ必要があるとお考えなんですね?」

にゃがと    「そう。このままだと、完全修復がかなうと予測された七日後……今からだとあと三日後となるが、
          今の修復状況の推移を見ると、それまでに我々が復活できる見込みはかなり低くなったと考えるのが妥当。
          現状だと、我々のこの状況はいつまでも続く可能性が高い」
あちゃくら  「やっぱり、なにか妨害されてるんですね」
ちみどり    「……この七〇八号室は、長門さんの家であると同時に、情報端末の駐留拠点でもあります。
         それなりに防護措置は採られているはずなのですが……それでも?」
にゃがと    「おそらく。なんらかの手段でこの部屋に侵入されている。状況判断以上のものではないが」
あちゃくら  「では、具体的にはどうしたら?」
ちみどり    「いえ、それよりもです。仮に天蓋領域がこの件の真犯人だったとして、幼児化させるその意味は?
          目的を知ることが最優先だと考えます」
にゃがと    「……これはまだ推測の段階ではあるが……わかるような気もする」
あちゃくら  「それは……?」

 

にゃがと    「……彼らの最終目的は、わたしたちの”コア”にある。おそらく」

 

 

―第四日目/昼につづく―

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