機械知性体たちの即興曲 メニュー
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□第三日目/昼
にゃがと 「…………」
あちゃくら 「…………」
ちみどり 「うぇーんうぇーん」
にゃがと 「ここまで彼女の精神面が脆いというのは意外といえる」
あちゃくら 「いやぁ。体の構造と一緒に、内面にも相当の変化が出てるんじゃないですか?」
にゃがと 「と、いうと」
あちゃくら 「ほら。わたしなんて言葉遣いまで変わってしまってるんですよ。もう違和感ないですけど」
にゃがと 「言われてみれば」
ちみどり 「うう……ぐすぐす」
にゃがと 「こうしていても仕方ない。ほかに食べられるものがないか、もう一度室内をくまなく探索することを提案する」
あちゃくら 「ですね……今、十二時ですか。キョンくんが来るまではまだ五時間くらいありそう……」
ちみどり 「うう……わかりました」
室内探索中――
にゃがと 「?……これは?」
あちゃくら 「なんです、長門さん。なにか見つけました?」
ちみどり 「え……?」
にゃがと 「ただ食料であることに変わりはない。これをどうするのか――」
あちゃくら 「そぼろのあんかけ麺……」ゴクリ
ちみどり 「ふふ……うふふ……」
にゃがと 「……喜緑江美理……?」
ちみどり 「(ユラッ……)ここに来て。これまでのあなたたちへの無償の支援が、ついに実を結んだといえるでしょう」
あちゃくら 「き、喜緑さん……?」
ちみどり 「元はといえば、それを買ってきたのはわたし。わたしなのです……!
ということはつまり、そのそぼろあんかけ麺八〇gの正当な保有者はこのわたしということです!」
あちゃくら 「ちょっ……そ、それを言うんだったら、急進派リソースから経費を引き出すといったのは喜緑さんじゃないですか!
出資者の資格があるのはわたしですよ?」
にゃがと 「ふたりとも落ち着くべき。もともとその離乳食は、わたしが乳児化したために必要とされたもの。
当然、目的はわたしがそれを食することにある。このそぼろあんかけ麺の正当な保有権を主張する」
ちみどり 「な、なんですって……?」
あちゃくら 「な、長門さん……」
にゃがと 「…………」(そぼろあんかけ麺……初めて食べる)
あちゃくら 「…………」(わたしのもの。絶対わたしのもの)
ちみどり 「…………」(ふふ……うふふふふ……)
にゃがと 「……なぜ、このビニール袋を中心に、同心円状に位置してわたしから距離をとるのか。ふたりとも」
あちゃくら 「ふふ……そういう長門さんだって」
ちみどり 「……ふふ……」ジリジリ
にゃがと 「……ここはひとつ。本来の任務の重要性を考慮して提案したい」ジリジリ
あちゃくら 「へー……またどうせ適当なことを言って煙にまこうとしてるんじゃないですか?」ジリジリ
ちみどり 「なにを言ってもムダですよ。これだけはもう譲れないのです」ジリジリ
にゃがと 「我々が生み出された最大の目的。それを達成するべく我々は活動している」ジリジリ
あちゃくら 「ええ、たしかにそうですね……でもそれが?」ジリジリ
ちみどり 「もっとも目立たないところで活躍するわたしには、それなりに権利が主張できると?」ジリジリ
にゃがと 「……つまり、涼宮ハルヒに最も接近し、今計画、自立進化探求計画において重要な端末は誰か、ということ」ジリジリ
あちゃくら 「ちょっと待ってくださいよ。それって要するに自分のことじゃないですか」ジリジリ
ちみどり 「もともと常に思念体の予想しない奇抜な行動を取るあなたをサポートするほかの端末たちが
どれくらい苦労してるのか、それも検討していただきたいものです」ジリジリ
にゃがと 「説得は無理ということか」
あちゃくら 「ええ……残念ながら」
ちみどり 「そういうことになりそうですね」
にゃがと 「三人に芽生えた淡い友情もこれまでということ。きわめて遺憾」
あちゃくら 「食い物の恨みは恐ろしいという人間の言葉。身にしみて実感してますよ、今」
ちみどり 「では……」
全員 「戦争だーっ!」
―第三日目/夕につづく―
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