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「なぁ古泉」
朝比奈さんが入れてくれて最高級静岡産の激アツな日本茶に息を吹き掛け冷ましながら
俺はオセロの白のエリアを次々と黒へと塗り替えていった。
「何でしょうか?」
古泉は涼しげな笑顔の奥でゲームに負けて悔しいのか、いや、元々のこいつの性質なのだろう。
笑っていない眼でこちらへと視線を移してきた。
古泉に関して以前から疑問に思っている事がある。
しかし、それを聞いたところでこいつは素直に答えるだろうか?
答えはしないかもしれない。
だが、からかい半分でも聞いてみる価値は0とは言えないし、何より俺の興味をそそる。
ハルヒも長門もまだ姿を見せていない。
朝比奈さんはお茶をいれてくれた後、多分お手洗いにパタパタと駈けて行った。
「古泉、お前の中には恋愛感情や性欲なんてものは存在するのか?」
古泉は切れ長で涼しげな眼を驚いたように見開いた。
こいつが直球を投げ込まれてこういう風に動揺している様子を見るというだけでも
少しだけの優越感と悪戯心で笑みがこぼれる。
「驚きましたね。どうしたのです?突然」
「以前から聞いてみたかっただけだ。女性陣のいない場でしか聞けない話題だからな」
古泉はふむ、と一言発した後、腕組みをしながら思案している。
そんなに真面目に考えなくてもいいのだが…
「ありますよ、それは当然。人並みにですが」
「お前もオナニーとかするのか?」
「今日のあなたは何かが乗り移ったのか、
それともあまりの心労でストレスを抱え込んでいらっしゃるのでしょうか?
何より唐突過ぎて驚嘆するばかりですね。あなたはどうなのです?
プライベートな問題を議題にあげるならばまず自ら切り出すべきですね、特に下ネタならば」
「確かにな」
「僕から見ればあなたの方が余程、不可思議な存在だ。
これだけ魅力的な女性陣に様々なアピールを受けているにも関わらず
柳に風と言った風情で全てを受け流していらっしゃる」
生憎、俺はそんな甘酸っぱい青春真っ盛りな恩恵を受けた記憶はほとんどないがな。
しかし…
「そんな事はない。俺も一介の男子高校生だ。欲望が火の如く、滾りまくる日もある」
「ほほぅ、それは意外です。てっきり去勢でもされているのかと」
「そんな訳あるか」
「こういう時は友人としてどんなコメントが相応しいのでしょうか…オカズは何ですか?でしょうか」
朝比奈さん、ごめんなさい…。
時々ハルヒ。
「お前のオカズは何だ?古泉」
「それはさすがにお答えしかねますが…。
なんだか今日この瞬間にあなたと初めて心から通じ合う友人となれた気がします」
そうか。
「ところであなたはオナニーコントロールという概念をご存知でしょうか?」
は?オナニーコントロール?何を言い出してるんだ、こいつは。
古泉は窓から差し込む日の光を受けながら尚も涼やかな微笑をたたえながらこちらを見ている。
「オナニーコントロールとは高度なオナニーテクニック、通称オナテクの一つであり
約3日で精子がMAXになるという生理現象を利用したオナニー管理の事です。
レベルの高いオナニストは「オナコン」または「寝かせ」と呼ぶ事もありますが…。
オナニーコントロールは毎日精子欠状態で快感の薄いオナニーを続けるよりも
2,3日オナ禁を己に課した後の爆発的快感を伴うオナニーの方が
前者の快感をはるかに凌駕するという驚異的な発見から生まれた概念です。
快感に飼いならされている若く無知な男は我を忘れ
毎日ペニスをしごき続けているため短い周期の
オナ禁は意外と盲点になりがちな発想ですからね。
これは長い間、人類の歴史的な進化の過程から考えても
ただ単に洗練され、昇華されただけでは生み出される事のない実に革新的手法です。
「快感に支配されるのではなく快感を支配する」という逆転の発想から生まれた
オナニーに対する新機軸とでも申しましょうか。
オナニーコントロールをマスターすれば至高のオナニーライフを
手に入れることが可能です。いざ無限の可能性へ、と言った所でしょうか。
どうです?あなたも今夜からLet'sオナニーコントロール!」
その時だった。
どこからともなく冷たい風が背筋を駆け上って行った。
「古泉君も、キョンも、最低ね…聖域であるこのSOS団の部室内で…ほんっとに最低…」
入り口の扉に眼をやるとその半開きの扉の陰からそっと覗く半開きの二つの眼。
そこには滅多な事では引く事のない、いつも超攻撃的ポジティブスタイルな涼宮ハルヒの
ドン引きした顔と虫けらを見るような眼がこちらへと冷たく向いていた…。
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最終更新:2009年11月08日 21:47