『続く空AFTER:A』


翌日、あたし達は久々にあの喫茶店で不思議探索の班分けをしていた。
その日は珍しく古泉君がくじを用意していた。
くじの結果、あたし1人のグループと残りの3人のグループになった。
「では、これで決まりですね」

「え?ちょっと、あたし1人なんだけど・・・なんで?」

「涼宮さんには急ですがちょっと遠征して頂きます」

「は?何言ってんの古泉君?」

「実はアメリカに住んでいる知り合いから連絡がありまして。あっちでUMAらしきものが目撃されたそうなので現地に行ってもらいます。こちらがアメリカ行きのチケットです」

「ちょっと待ってよ!!いきなり過ぎるわ!!それにあたしパスポート持ってないし」

「これ」
有希があたしの名前が書かれたパスポートを差し出してきた。
「ゆ、有希?これってまさか偽ぞ「違う」
有希があたしの手にパスポートを握らせながらあたしの言葉を遮った。
「これは正規のルートから確保した。大丈夫」

「あ、そ、そうなの?だったらいいけど」

「これ、梅干です。良かったら食べてください」

「・・・ありがと・・・」
そういえばみくるちゃんはキョンの時は沢庵渡してたわね。
そんなに漬物好きなのかしら・・・

って、そうじゃない!!いくらなんでも準備が良すぎるわ。
「ねぇ、これ何なの?」
3人が一瞬ぎょっとした。
「いやいや、見抜かれてしまいましたか。実は3人で相談しまして、涼宮さんが寂しそうなので彼に会いに行ってもらおうと思ったわけです」

「気持ちは嬉しいけど行けないわ!!あたしはキョンと約束したの!ここでキョンを待ってるって!!」

「そんなのあなたらしくない」

「有希・・・」

「そうです!いつもの涼宮さんだったらしたいと思った事を真っ先にやってます!それが涼宮さんです」

「み、みくるちゃん」

「失礼ながら僕もそう思います。あなたの一番の魅力はそのズバ抜けた行動力です。きっと彼も寂しがってると思いますよ?」

「古泉君まで。どうしたらいいのよ!?」

「答えはあなたの中にしかない。どうするかはあなたが決めて」
ここまで言われたらもう行くしかないじゃない!!
「あぁもう、分かったわよ!行けばいいんでしょ!?行ってくるわよ!!」
あたしはテーブルの上に置かれたチケットとパスポートを掴んで喫茶店を後にした。
帰宅途中、出発日が今日の夕方と書かれているのに気付いたあたしは急いで家に戻って支度をした。
なんで当日になってチケット渡すのよ!?
なんか3人にいいように操られている気がしたけどそれ以上にワクワクしていた。
キョンに会えるんだ!!
そればかりがあたしの頭の中にあった。
母さんに事情を説明したら「そう、気を付けて行ってきなさい」とだけ言ってくれた。

少しは止めるとかした方がいい気がするけど、今のあたしにはそれがありがたかった。
もう、目の前にあたしを妨げる物は何も無い。
さぁ、今から行ってあげるから待ってなさいキョン!!
あたしは家を、いえ日本を飛び出した。
遂にSOS団が海外に進出よ!!
飛行機に乗る事数時間でアメリカに着いた。
機内でずっとキョンの事を考えていたからあっという間だった。
空港を出てからやっとこれからどうしたらいいのか分からない事に気付いた位キョンの事で頭がいっぱいだった。
はぁ、これからどうしよう・・・
そう考えていた時、不意に誰かに後ろから抱きしめられた。
え?何?あたし何されてるの?
それを理解したと同時に声が出た。
「嫌ぁあ!!離しなさいよ!!この痴漢!!」

「おい、急に大きな声出すなよ!ビックリするだろ」
その声を聞いた時、耳を疑った。
それはなんだか懐かしい声で、一番聞きたかった声だったから。
「どうした?おーい」
どうやらこいつはあたしがどれだけ決意して来たのか分かってないみたい。
これはたーっぷりお灸を据えてやらなきゃね!!
「久し振りだな。元気しtガハッ!!!!」
あたしはすっかりアメリカに染まった愛しの彼氏に渾身の右ストレートを喰らわした!!
「い、いきなり何しやがる!?」
あたしはキョンの前に仁王立ちした。
「あーんーたーねー!!いきなり何してくれてんのよ!!」

「ただの愛情表現じゃないか?そんなにカリカリするなよ」

「・・・はぁ、もういいわ。さっさと立ちなさい」

もう怒ってんのがバカらしくなってきた・・・
せっかく、ロマンティックな再会を夢見てたのに全部台無しよ!!
「ふぅ、久し振りだなハルヒ。元気してたか?」

「それだけ?」

「ん?」

「久し振りの再会で言う事それだけなの!?」

「あぁ、そうか。会いたかったよハルヒ」
そう言ってキョンがあたしを優しく抱きしめる。
「ふん、最初からこうしなさいよね」

「なぁハルヒ、俺も言ってほしいんだけど」
まったく、しょうがないわね!!
「キョン!!会いたかったよ!!」



FIN



『続く空AFTER:B』


「おいおい、勝手に俺をお星様にしないでくれないか?」
不意に背後から声が聞こえた。
それはずっと聞きたかった声で・・・懐かしい声だった。
「こんな所で何してんのよ?」
あたしは振り向くのが恐かった。
だって、これはあたしの空耳かもしれないから。
振り向いた先にあいつは・・・いないかもしれないから。
「随分な挨拶だな。あっちが夏休みだから帰って来たんだよ」

「だって・・・立派になるまで帰って来ないって言ったじゃない!!」

「それはそうなんだが・・・。まぁ、その、なんだ。急にハルヒに会いたくなったから帰ってきちまった」

「はぁ?バッカじゃないの!?」
振り向いた先にはあの時と同じマヌケ面をしたキョンが立っていた。
その事が嬉しかったけど同時にムカついた。
あたしのさっきの決意をどうしてくれんのよ!!
「はぁ、やれやれ。相変わらずだなお前は・・・」

「あんたねぇ、もっと先に言う事あるんじゃないの?」

「それはお互い様だろ?」

「あんたが言ったらあたしも言ってあげるわよ!」

「はいはい、そうですか」

「ほら、さっさと言いなさい!」

「あぁ、ただいまハルヒ」

「キョン!!」
あたしは勢い良くキョンの胸に抱きついた。
「おい、言ってくれないのか?」

「何をよ?」

「いや、そのー、おかえりって言ってほしいんだが・・・」

「それはまだお預けよ!!これはあたしに戻ってくるって言わなかった罰なんだから!!」
いきなり過ぎてそんな事言えるわけないじゃない!!
だから、ちゃんと帰って来た時に言うわ。
『おかえりなさい』って!!


FIN

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最終更新:2020年03月12日 14:44