高校では普通にあろう行事、「大学見学会」というハルヒ曰く「志望もしない大学行ってどうすんの!」が何事もなく終了し、
岡部含む教師方の「各自レポートと班レポート提出」を宣告されいつのまにか提出期限が明日にまで迫っていた。

 

現在、俺とハルヒは放課後の教室で宣告の課題と格闘中である。
普段なら旧館の文芸部部室、SOS団のアジトにいるはずなのだが、今日から先1週間はそこに出向くことは出来なくなっている。
何故かと言うと話は簡単だ。最近新型インフルエンザが各地で猛威を振るっているのはご存知であろうか。
今日まで北高は次々と学校閉鎖された連鎖に巻き込まれることもなく、予防対策をしていながら学校生活を日々謳歌していた。
しかし、なんと俺らの上の学年―つまり3年生、朝比奈さんの学年だ―の生徒、確認しただけで計8名がインフルエンザにやられちまったらしい。
その結果、3学年は学年閉鎖で1週間の学校生活没収を引き換えにかなりの宿題を得てしまったというのだ。
俺はいいと思うんだが。なんせこの北高直通急勾配を毎朝汗水垂らして登ることを1週間放棄できるんだからな。
で、その影響が俺ら2学年に出てしまったわけだ。部活も1週間自粛しろ、だとさ。
最初こそハルヒはそんな説明おかまいなしに俺を引き連れて部室に足を運んだが、あの生徒会長でも頭に浮かんだんだろう、教室に戻ってきたのだ。
その理由は当然、旧館の部屋一角にでも明かりがついていればおかしいと目を光らせるあの演技会長さんが喜緑さんを連れて即刻退場を宣告すること必至である。
あんなものに絡まれてる時間は惜しいわね、と大人しく教室でレポートと格闘しはじめた。宿題とかは早く終わらせるこいつが今日まで課題にかかるなんざ意外だ。
かくいう俺もやってないけどな。つーこって俺も格闘中だ。

 

「あ~終わらないわね。何でこんなもの押し付けてくるのかしらあのハンドバカ岡部は!」
この課題を押し付けたのは2学年教師全員であって岡部一人じゃないんだが。
ちなみにここに岡部教諭はいない。5組の生徒、俺ら以外の生徒は全員帰っちまった。国木田はともかく谷口だってレポート終わってないくせに。
というか真面目に受験勉強に励む上級生がいる3年の教室と職員室以外明かりがついているのはここ―2年5組だけだぜ。
なのでハルヒ、大声で叫ぶな。間違って職員室にまで届いて岡部の耳に入ったらどうする。
「いいわよ、別に。あたしにはどうでもいいしね。というか文句はまだあまり余るほどあるわよ!」
「・・・・ところでハルヒ。明日から部活はどうする気だ?朝比奈さんたち上の学年は登校禁止命令受けているのだが。」
俺は話をそらす事にする。これ以上教師への愚痴議論を繰り広げても無意味だな。
ハルヒは「あんたも少しは団員としての自覚が出てきたようね」とも言いたげな表情で、
「そうなのよ。みくるちゃんが学校に来れないからって呼び出して、学校外活動で巡回する教師らに見つかるなんて論外だし。
まったく、インフルエンザが何よ。そんなもの気合でどうにかしなさいっての。」
いくら人間の体内抵抗力がフル活動しててもそりゃ限度がある。ハルヒ、一般人なる枠に収められている俺を含む生徒連中がお前のように無敵だとは限らんぞ。
「あたしが無敵だと思ってんの?風邪ならフツーに引いたことあるわね。インフルエンザのような大仰なものにかかった覚えだけはないけど。」
「お前に対抗する病原菌がいたとは驚きだ。でも高校から引いてないな。」
「4年前からパタッと音信不通ね。ま、風邪なんて生命活動の妨害以外の何者でもないからせいせいするわよ。」
4年前―つーとハルヒが変態的パワーを手に入れた情報爆発の件のかな。まあ納得はいくが。
「まあいいわ。さっさと終わらせましょ。」
ハルヒは溜息のついでにといったような感じで言葉を吐き出した。


ちなみに言うと俺は完成までもう少しといったところであった。
何の感想も持てなかった「大学見学会」だったが、嘘八百を書き連ねてまで書いたのだ。まあいいだろ別に。
ハルヒはどうもさっきからペンが進んでない。その理由を聞いたところ、
「あのね、あたしはあんたと違って早く終わらせたのよ。そしてさっさと提出したら、あのバカ教師なんて言ったと思う!?」
『あのバカ教師』とは岡部のことか?
「そうよ!アイツ、『明日にやるレポート発表会でお前を代表で出すから、もっと長くまとめてこい』なんて言うのよ!勿論最初は断ったわ。
『断固拒否』ってね。そしたら学年主任まで引っ張り出してお願いされちゃったのよ!いくらあたしでも断れないじゃない!!」
俺に怒鳴られてもな。つーかまた至近距離で唾を飛ばすな。いらぬ動作が一つ増えただろうが。
・・・・ま、なるほどな。どおりでまだレポートが終わってなかったのか。大変だねぇと他人事でほっといていいかい?
ことのハルヒはまだ文句が足りないようで、
「まったく、何であたしが!キョン、あんたあたしの代わりに出るってのはどう?礼として――そうね、罰金を1回分無効でいいかしら?」
罰金免除は嬉しいが喜んで拒否権を発動するぜ。俺が出てもその場のひやかしにしかならん。
「はぁ。少しは団長に貢献してくれてもいいじゃない。」


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